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プロポーズ。
病院に戻った後、かざねに色々検査をさせ、出た答えは『手根管症候群』。
それもかなり悪くなっていて手術はした方がいいと判断した。
千秋「しびれと痛みは少し残ると思う。」
かざね「うん。」
千秋「手術自体はそんなに難しいものじゃないから。」
かざね「うん。」
千秋「・・・いつ、手術する?」
かざね「うん。」
千秋「・・・・・・。」
かざね「うん。」
何を言っても・・・何を聞いても『うん』しか言わないかざね。
心ここにあらずって感じだ。
千秋(まぁ・・・ショックだよな。)
大好きなピアノ。
仕事にしてるピアノ人生を奪われるようなものだ。
千秋(俺としては痛みも取ってやりたいし、しびれも無くしてやりたい。でも・・・靭帯を切るってことは・・・それなりに手には影響が出る。)
俺は一点を見つめてるかざねに言った。
千秋「かざね、帰るぞ。」
かざね「うん。」
千秋「・・・・・・。」
かざね「うん。」
椅子に座ってるかざねを立たせ、俺は病院を出た。
車に乗せ、ぼーっと外を見てるかざねに話しかける。
千秋「ちょっと寄り道するからな?」
かざね「うん。」
千秋「なんか食べるか?」
かざね「うん。」
千秋「なに食べる?」
かざね「うん。」
千秋「・・・こりゃダメだな。」
かざねが何か言い出すまで、俺は車を走らせ続けた。
2時間ほど車を走らせると懐かしい景色が広がりだす。
かざね「ここ・・・・・。」
千秋「正気に戻ったか?」
シートに座り直したかざね。
きょろきょろと辺りを見回し始める。
かざね「前に・・・住んでた・・・。」
千秋「そ。もうすぐかざねの家だ。」
並木道を走り抜け、見えてきた住宅街。
一つ・・・また一つブロックを通り過ぎると見えてくる真っ白の家。
かざねが売った・・・実家だ。
かざね「家・・・・。」
千秋「今は他の人の物だし、少し離れたところから見るだけな。」
家が見えるような場所に車を止め、車内から真っ白の家を見つめた。
かざね「・・・あんまり変わってない。」
千秋「そりゃそうだろ。まだ数年だし。」
かざね「うん。」
じーっと家を見つめるかざね。
俺はかざねの右手を取った。
かざね「?」
千秋「・・・俺が切る。」
かざね「・・・・え?」
千秋「俺が手術する。できるだけしびれは残らないようにする。指も動くように・・・。」
かざね「ちーちゃん・・・。」
両手でかざねの右手を包み込んだ。
千秋「これから・・・かざねが死ぬまで俺が診るから・・・俺に切らせてくれ。」
かざね「死ぬまで・・・?」
千秋「かざねの一生を・・・俺にくれ。」
指輪も何もないプロポーズ。
今のかざねに言うことじゃないのかもしれない。
でも・・・!
俺はかざねに笑ってて欲しい。
かざねの『ピアニスト人生』を奪う手術は俺がする。
奪う代わりにはならないだろうけど・・・俺がかざねを幸せにする。
どんな手を使っても。
かざね「ちーちゃん・・・。」
俺はかざねの手を包んでいた手を離した。
かざねの体を抱きしめる。
千秋「・・・愛してる。俺と結婚してくれ。」
ーーーーーーーーーーー
しばらくの沈黙の後、かざねは俺の体を押し返した。
抱きしめていた手をほどき、かざねの目を見る。
かざね「・・・・できない。」
千秋「・・・・え?」
かざね「私からピアノを取ったら・・・何も・・・っ・・残らない・・・っ。」
ぽろぽろと涙をこぼすかざね。
自分の両手で顔を覆いながら・・・話を続ける。
かざね「無理・・・私、どうしたらいいの・・?この手が無くなったら・・・生きていけない・・・っ。」
千秋「そんなことない!」
かざね「そんなことあるっ!音楽と・・・ちーちゃん以外は何も知らないの!」
千秋「それだけ知ってたら十分だろ!?」
顔を覆っていた手を外させる。
涙で濡れた顔。
目は真っ赤だ。
千秋「かざね一人くらい余裕で養える。編曲の仕事もできるだろ?何も腕が無くなるわけじゃないんだ。ピアノを弾くことはできる。」
かざね「編曲の仕事・・・・・。」
千秋「『音楽』が無くなることはない。かざねはずっと『音』に触れ続けれるんだ。」
かざね「音楽は・・・無くならない・・・。」
こぼしていた涙は止まり、かざねは俺を見た。
千秋「もう一緒に住んでるけど・・・結婚しよう?」
もう一度言った『結婚』の言葉。
かざね「・・・私でいいの・・?」
千秋「トマトを手で割るやつなんて、俺ぐらいしか相手は務まらないよ。」
かざね「!!・・・・そのうちジャガイモも手で割るかもよ?」
千秋「!!・・・上等だ。」
もう一度・・・かざねを抱きしめる。
ふわっとっ抱きしめると、ほそっこい体を感じる。
いつまで経っても体重を増やしてくれないけど、もうこの細さに慣れてしまった。
千秋「かざね・・・返事は?」
かざねも俺を抱きしめ返す。
それだけで返事はわかったようなものだったけど、ちゃんと口から言葉で聞きたかった。
かざね「何もできないけど・・・がんばるから・・よろしくお願いします。」
それもかなり悪くなっていて手術はした方がいいと判断した。
千秋「しびれと痛みは少し残ると思う。」
かざね「うん。」
千秋「手術自体はそんなに難しいものじゃないから。」
かざね「うん。」
千秋「・・・いつ、手術する?」
かざね「うん。」
千秋「・・・・・・。」
かざね「うん。」
何を言っても・・・何を聞いても『うん』しか言わないかざね。
心ここにあらずって感じだ。
千秋(まぁ・・・ショックだよな。)
大好きなピアノ。
仕事にしてるピアノ人生を奪われるようなものだ。
千秋(俺としては痛みも取ってやりたいし、しびれも無くしてやりたい。でも・・・靭帯を切るってことは・・・それなりに手には影響が出る。)
俺は一点を見つめてるかざねに言った。
千秋「かざね、帰るぞ。」
かざね「うん。」
千秋「・・・・・・。」
かざね「うん。」
椅子に座ってるかざねを立たせ、俺は病院を出た。
車に乗せ、ぼーっと外を見てるかざねに話しかける。
千秋「ちょっと寄り道するからな?」
かざね「うん。」
千秋「なんか食べるか?」
かざね「うん。」
千秋「なに食べる?」
かざね「うん。」
千秋「・・・こりゃダメだな。」
かざねが何か言い出すまで、俺は車を走らせ続けた。
2時間ほど車を走らせると懐かしい景色が広がりだす。
かざね「ここ・・・・・。」
千秋「正気に戻ったか?」
シートに座り直したかざね。
きょろきょろと辺りを見回し始める。
かざね「前に・・・住んでた・・・。」
千秋「そ。もうすぐかざねの家だ。」
並木道を走り抜け、見えてきた住宅街。
一つ・・・また一つブロックを通り過ぎると見えてくる真っ白の家。
かざねが売った・・・実家だ。
かざね「家・・・・。」
千秋「今は他の人の物だし、少し離れたところから見るだけな。」
家が見えるような場所に車を止め、車内から真っ白の家を見つめた。
かざね「・・・あんまり変わってない。」
千秋「そりゃそうだろ。まだ数年だし。」
かざね「うん。」
じーっと家を見つめるかざね。
俺はかざねの右手を取った。
かざね「?」
千秋「・・・俺が切る。」
かざね「・・・・え?」
千秋「俺が手術する。できるだけしびれは残らないようにする。指も動くように・・・。」
かざね「ちーちゃん・・・。」
両手でかざねの右手を包み込んだ。
千秋「これから・・・かざねが死ぬまで俺が診るから・・・俺に切らせてくれ。」
かざね「死ぬまで・・・?」
千秋「かざねの一生を・・・俺にくれ。」
指輪も何もないプロポーズ。
今のかざねに言うことじゃないのかもしれない。
でも・・・!
俺はかざねに笑ってて欲しい。
かざねの『ピアニスト人生』を奪う手術は俺がする。
奪う代わりにはならないだろうけど・・・俺がかざねを幸せにする。
どんな手を使っても。
かざね「ちーちゃん・・・。」
俺はかざねの手を包んでいた手を離した。
かざねの体を抱きしめる。
千秋「・・・愛してる。俺と結婚してくれ。」
ーーーーーーーーーーー
しばらくの沈黙の後、かざねは俺の体を押し返した。
抱きしめていた手をほどき、かざねの目を見る。
かざね「・・・・できない。」
千秋「・・・・え?」
かざね「私からピアノを取ったら・・・何も・・・っ・・残らない・・・っ。」
ぽろぽろと涙をこぼすかざね。
自分の両手で顔を覆いながら・・・話を続ける。
かざね「無理・・・私、どうしたらいいの・・?この手が無くなったら・・・生きていけない・・・っ。」
千秋「そんなことない!」
かざね「そんなことあるっ!音楽と・・・ちーちゃん以外は何も知らないの!」
千秋「それだけ知ってたら十分だろ!?」
顔を覆っていた手を外させる。
涙で濡れた顔。
目は真っ赤だ。
千秋「かざね一人くらい余裕で養える。編曲の仕事もできるだろ?何も腕が無くなるわけじゃないんだ。ピアノを弾くことはできる。」
かざね「編曲の仕事・・・・・。」
千秋「『音楽』が無くなることはない。かざねはずっと『音』に触れ続けれるんだ。」
かざね「音楽は・・・無くならない・・・。」
こぼしていた涙は止まり、かざねは俺を見た。
千秋「もう一緒に住んでるけど・・・結婚しよう?」
もう一度言った『結婚』の言葉。
かざね「・・・私でいいの・・?」
千秋「トマトを手で割るやつなんて、俺ぐらいしか相手は務まらないよ。」
かざね「!!・・・・そのうちジャガイモも手で割るかもよ?」
千秋「!!・・・上等だ。」
もう一度・・・かざねを抱きしめる。
ふわっとっ抱きしめると、ほそっこい体を感じる。
いつまで経っても体重を増やしてくれないけど、もうこの細さに慣れてしまった。
千秋「かざね・・・返事は?」
かざねも俺を抱きしめ返す。
それだけで返事はわかったようなものだったけど、ちゃんと口から言葉で聞きたかった。
かざね「何もできないけど・・・がんばるから・・よろしくお願いします。」
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