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第16話

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突然に姿を見せた竜を仲間にしようとアランは言い出す。そして、この国に迫ってきている魔物の軍勢を倒してくれないだろうかと、あまりにも危険すぎるお願いを思いついた。

「アランに任せよう……」

仕方ないなとぼんやりとフレッドは思った。それどころか、けられぬ運命に勇気を持って立ち向かう親友にれ直した。

「フレッドありがとう!」

アランは思わず感謝の言葉を叫んで、身動きができないほど強く抱きしめた。フレッドはびっくりして声を上げそうになる。

「……だが一人では危険だ」
「いや、一人のほうがいいと思う」

竜の前に一人で行くつもりか?フレッドはひどく心配そうな顔をしている。だがアランは竜と都合良く話が進むように一人で行くと言う。

「なぜだ?」
「兵を引き連れて行けばドラゴンを刺激しげきさせることになる。こちらに攻撃する意志がない事をわかってもらうためだ」

どうしてそんな無茶なことを……?フレッドはさびしい顔をして聞いた。その問いに対して、大人数で行けばのを懸念けねんしている。全面降伏こうふくしていると理解してもらうためには、話し合いは一人のほうがいいというのがアランの考えだった。

「……わかった。王国のためにアランよろしく頼む……」

ようやく納得したのか、フレッドは親友に向けてわずかな笑顔を見せて肩を叩いた。アランの後ろ姿を見送りながら、何だか取り残されたような不安な気持ちになっていた。


「――ドラゴン様、何が目的でやってきたのですか?私の言葉がおわかりになりますでしょうか?」

生まれて初めて見る光景に、感動で細かく震えているのを感じていた。見るともなく眺めていると、一種の威圧いあつ感を覚えていた。ヴァレンティノ王国の第三騎士団の団長であるアランは、今までずっと過酷かこく戦闘訓練せんとうくんれんを受けて魔物と戦ってきた。

一般的に、かなり強力な魔物と言われる獅子ししの胴体にわしの頭と大きなつばさを持つグリフォンや頭は獅子に尾はへびに胴は山羊やぎのキマイラと戦って倒したこともある。当然ながら選抜せんばつされた騎士たち総出で行い、瀕死ひんしの怪我人が続出して苦しい戦いになった。アランも怪我を負って何とか勝てたという内容でありました。

今は、その魔物よりも数段格上の伝説と言われる生き物の竜である。アランは恐る恐る近づいて興奮こうふん気味に声をかけた。

「……なんじが交渉相手か……人族にしては少々武術に長けているようだな……われと比べれば米粒こめつぶほどの強さだがな……」
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