上 下
15 / 65

第15話

しおりを挟む
「……どうしてドラゴンが……今は魔物の軍勢が迫っているのにどうすればいいのだ……この国は終わりだ……」

城の上空を旋回せんかいする巨大な竜を見てフレッドが恐怖感におそわれた。あわあわと慌てて、どうしていいのか分からないようである。体色には金と緑色が混ざってとても優雅ゆうがな動きで舞っていた。

さらにヴァレンティノ王国には魔物の軍勢が押し寄せてきているのだ。どうしようもないほどに不幸な出来事であると理解して、フレッドは無意識に体がふるえ出す。

「フレッド落ち着け!あのドラゴン攻撃する様子がないような気がする……」
「なぜそんなことが言えるんだ!アランはドラゴンの言葉がわかるのか?」

慌てる様子をみせるフレッドにアランは冷静になれと声を上げた。そしてドラゴンが、なんだかみょうな気がすると言う。フレッドは心の底に渦巻く感情を爆発させた。どうしてお前にそんなことがわかるんだと喧嘩腰けんかごしで詰め寄ってきた。

「そんなことは俺にはわからない。だけどドラゴンがその気になれば、とっくに王都は焼け野原になっているはずだろ?」
「……そ、それもそうだな……」

アランはさとすような口調に変わって言った。竜がこの国で見境なく暴れまわればどうなるのか?フレッドは思わずはっとなるのである。竜がこの国を破壊はかいする気があれば、すでに王都の美しい街並みは更地化さらちかしている事だろう。

「ドラゴンは知性がある生き物だ。意思いしが通じ合うかもしれない」

この世界では、もっとかしこい生き物は人間ではなく竜だと言われている。言葉が話せなくて暴れて人間を襲う事しかできない魔物と違って、竜は優れた言語げんご能力を持っている。そのような事は、実際には確かめた者はいないが今はその可能性にけるしかない。

「アラン無茶なことを言うな!目の前に行って軽く触れられたり、ブレスでも吐かれたら一瞬で死んでしまうぞ!!」

フレッドは親友にやめるように要求した。竜の気分次第でお前なんか間違いなくあの世行きになる。危ないことはやめよ?君がいなくなるなんて耐えられない……切ない顔をして後ろから抱きつくような形でアランに寄りかかってフレッドは止めた。

「しかし、それしか方法がないだろう?今、この王国には魔物の軍勢が迫ってるんだぞ?」
「ま、まさかアラン……ドラゴンを仲間にするつもりか……!?」
「……そう都合よくいけばいいがな……ステファニーの聖女の力が弱まっているのは彼女が認めている。魔物の軍勢に押し寄せられて国は助からないかもしれないと彼女は答えた。それならドラゴンに頼るほかはないんじゃないか?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

mの手記

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,093pt お気に入り:0

こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

BL / 連載中 24h.ポイント:944pt お気に入り:783

ここはあなたの家ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49,494pt お気に入り:2,025

婚約破棄されたので、被害者ぶってみたら国が滅びた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:923pt お気に入り:2,790

赦(ゆる)されぬ禁じられた恋

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:674pt お気に入り:4

男装の薬師は枯れぬ花のつぼみを宿す

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:465

進芸の巨人は逆境に勝ちます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:142pt お気に入り:1

記憶がないっ!

青春 / 連載中 24h.ポイント:1,476pt お気に入り:1

さっさと離婚に応じてください

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:29,592pt お気に入り:311

処理中です...