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第63話

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他の客の迷惑になるということで店の裏のスタッフの休憩所に移動して話し合いをしていた。 

「私はこの人の彼女ではありません。ナンパされて食事に行こうと誘われただけで……おごってくれると言っていたのに食事代を割り勘にしようと言われたので口論になってしまって……」

女性はやりきれない気持ちで話し始めた。恋人同士だと思われていたが実際にはそうではなかった。散歩していたところ女性はナンパされたという。女性の言い分によると最初に男性は道を聞いてきたが、それから雑談ぽくなってお腹が空いてきたのでちょっと食事に行きませんか?と誘われたという。

ナンパに慣れてる感じだと思ったが男性は話し上手で悪い気はしなかった。女性はご飯をご馳走してくれるならと言ったら、男性はいいですよと言って誘った自分がご飯をおごるのは当たり前だという感じで快く了解した。

連れてきてくれた店は精霊のレストラン。ちょっとお高めだけどとてもおしゃれなたたずまいの店で美味しくて評判。おまけにイケメン店員が多いと噂の店で食事ができると女性は手をたたき歓声を上げる。

食事は噂以上にどの料理も洗練された味で信じられないほど美味しく、店員も美形揃いで女性は胸を弾ませながら質のよい男性ばかりで目の保養になる思いでした。女性は本当に幸せな気分でいられました。ナンパしてきて食事に誘ってくれた男性に感謝して涙が出るほどありがたく思っていた。

「やっぱり食事は割り勘にしよう」
「は?」
「だって僕たちは付き合って日が浅いし」
「別に付き合ってないでしょ?突然何を言ってるの?」

男性は食事を終えていざ支払いになったら、食事代を割り勘にしようなどと学生みたいなことを言い出してきた。さらに男性は付き合って日が浅いのにと頭のおかしい事を言ってくる始末。

この人は突然何を言ってるんだろう。女性の顔は不安そうになって焦燥感しょうそうかんのようなものを心の中に感じ始めた。奢ってくれるって言うから好きでもない男と食事をしたのに。ご馳走してくれると言ったのに嘘だったの、話が違うと女性が不満をぶつけるのも当然のことだった。

「――これは男が悪いな。ナンパしといてそれはないだろ!」

女性の話を聞いてアランが仏頂面で口を開いた。ナンパをしておいて食事を奢らないなんて許せない。この男はふざけ過ぎているという思いでキレ気味に言う。アランは肩が激しい怒りに震えていた。アランは男気があり一度口にした約束は必ず守る。それゆえにアランは約束を破るいい加減な男性が許せなかった。

※※※
新作【聖女の妹に幼馴染の王子をとられて婚約破棄「神に見捨てられた無能の職業は追放!」隣国で優秀な女性だと溺愛される】を投稿しました。あなた様のお情けとご援助をお願い申し上げます。
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