心から信頼していた婚約者と幼馴染の親友に裏切られて失望する〜令嬢はあの世に旅立ち王太子殿下は罪の意識に悩まされる

第8話

アイラ令嬢はガブリエル殿下に声をかけて長々と話し合いたい気持ちはありません。

ただ遠くから眺めて頑張っている姿を一目見たかっただけで練習の邪魔するようなことはしたくなかった。

ところがいくら探してもガブリエル殿下の姿を確認できない。どこか別の場所で勉強をしているかもしれないと思いウィリアム令息に問いかけてみた。

「彼の姿が見えないんだけど、どこに居るのか知らない？」
「ガブリエルならたった今帰ったよ」
「え……？」

その言葉にアイラ令嬢は動揺して呼吸を忘れる。

「彼はいつもこの時間に稽古を済ませるの？」
「うん、ガブリエルはこの頃はこれくらいに切り上げられて稽古場から退出するんだ」
「そうなの…忙しいところ悪かったね」
「別にそんなことないよ」

アイラ令嬢はウィリアム令息に礼を言うと足早に姿を消した。

「アイラお嬢様？どうなされましたか？」

馬車の中、アイラ令嬢は馴れ親しんだ付き人のメリッサに声をかけられるまで放心状態でぼーっとしていました。

声をかけられハッと我に返ったアイラ令嬢は先ほどのウィリアム令息の言葉を思い出していた。

その時頭をよぎる。最初のほうは事あるごとにお見舞いに来てくれたが、途中から稽古が遅くまであり忙しいという理由でガブリエル殿下はあまり顔を出さなくなった。

アイラ令嬢はガブリエル殿下が来てくれないのは寂しかった。

でも稽古なら仕方がないと諦める。ガブリエル殿下は結婚に備えるために必要な様々な教養を身に付ける為に一生懸命に取り組んでいるのだと思い応援していたのです。