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第22話

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誰も彼も口をつぐみまたしばらく沈黙する病室。

気持ちが落ち着いて穏やかな顔に戻った美少年が喋り始める。

「ご無事で何よりです。倒れたと聞かされた時は心臓が張り裂けそうな思いでした」
「…ありがとうリカルド」

アイラ令嬢は話しかけられて少し戸惑いお礼を言いました。

何しろつい先ほどとは様子が異なり子供のように無邪気な笑顔の中にも異性が引き込まれるような視線を向けるのです。

弟のリカルド令息は体の弱い姉のアイラ令嬢のことを幼い頃から日々気にかけて優しい眼差しで見守っていました。

何をされてもよいほどアイラ令嬢のことを溺愛しているリカルド令息は、倒れたと聞いて心臓が震えるくらいに怖い気持ちが押し寄せてくる。

リカルド令息の姉への愛情は凄まじくアイラ令嬢には伝えてはいませんが、心の中では結婚したいし自分の子供を姉に産んでほしいと思っているくらい脳内全体が天国に上っているのです。

リカルド令息はいつも姉の体をいたわり優しく暖かさがこもった愛情に満ちた顔をして、容姿にこぼれるような魅力を感じさせながらアイラ令嬢に話しかけていました。

姉と話すときには、ことさらに感情を抑えていますが、見つめるたびに胸が息苦しいほどの気分になり日々切なさに胸が突き上げられ恋してたまらない。

姉のアイラ令嬢は弟のそんな心の内は知らないので、自分にとても懐いてくれる可愛らしい自慢の弟だと思っています。

弟のリカルド令息のことは家族として愛している気持ちはありますが、当然ですが恋人のような恋愛感情はちりほどもありません。

そういう訳でリカルド令息の思いが達成することは、姉のアイラ令嬢の気持ちが変わらない限り一生ないと言えます。

そんな自分の命よりも100倍は大事な姉が倒れたと聞かされれば、不安で頭が混乱し落ち着かない気分を掻き立てられるのも無理もない。

美少年の表情はありえないほど激しく歪み膝がガクガクするくらい心配になり、今にも永遠の眠りにつきそうな血の気の引いた顔で金魚のように口をパクパクさせる。

リカルド令息の胸の中でこみ上げてきた姉への感情が膨らみ胸をいっぱいにし、数秒後には叫ばずにはいられなかった。

「姉さん一握りの灰にならないで!僕を置いて永遠に帰らぬ旅に出ないで!姉さんは僕の全てなんだ!」

いても立ってもいられないリカルド令息は目に溢れんばかりの星のように輝く止まることのない涙を湧かせて熱狂的に愛する姉アイラ令嬢の元へ大慌てで向かう。
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