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第21話
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「――もう死にたい……」
まさか自分の人生が失敗するとは思わなかった。絶対に幸せになれると漠然と考えていた。いつもの日常がずっと続くと信じて疑わなかった。
ディオール帝国魔法部隊に所属していた元超エリートで公爵令嬢のアンナは、最悪の事態に陥ってしまったようである。魔法が使えなくなって、あまりにも残酷すぎる運命のはじまりであった。
「マイケルは今どうしてるのかな?」
少し前までは豪華な装飾が施された部屋は、大きく様変わりしてしまった。今は信じ難いほど貧しく質素な生活を送っている。ベッドのなかで涙をこぼして、恋人関係を結んでいた男の名前を口にした。
彼とは婚約中で挙式寸前というところで魔法が使えなくなった。アンナとマイケルは共に精鋭部隊に選ばれた超一流の魔法使いでした。彼は平民だが上級貴族並みの特別な待遇を受けていたが、魔法が使えなくなって田舎の実家へ戻されて現在は農作業に従事する。
「――私が農夫と結婚して畑仕事なんかするわけないでしょ!」
彼は実家に帰る時に、アンナに一緒に来てくれないか?と真剣な顔になって言った。当然ながらアンナは即座に断ると、しつこく絡んでくる彼に一転してお怒りモード全開になったのだ。
「え……?アンナどうしてなんだ……!?」
「ふざけないで!私は魔法が使えるあなたが好きなの!!」
「そんなこと言わないでくれ。僕の人間性が好きだと言ってくれた君はどこに行ってしまったんだよ?あんなに愛し合ったじゃないか……?」
「ちょっと気安く触らないでもらえるかしら?」
「必ずアンナの心をまた奪って見せる。この恋は持久戦でいくからアンナ覚悟してろよ!」
「ばかじゃないの?さっさと田舎に帰って農業してろっ!!」
マイケルはアンナの言葉が理解できなかった。あり得ないという面持ちで突っ立っていた。どうしてなんだ……?彼女なら間違いなくついて来てくれると何の疑いもなく信じていた。
ところがアンナはそうではなかった。今日は、ただの別れ話だと思って来た。田舎の実家に帰るマイケルを元恋人として、見送りに来ただけでした。
さすがに魔法が使えなくなった男と結婚する気持ちは、ほんの少しもございません。むしろ貴族令嬢の自分が元彼とは言え、平民の見送りに来ていることに感謝してほしいくらいだと思っていたのでございます。
「アンナ……」
「……なんで貴族の私が農民の家に嫁入りしなくちゃいけないの?元々あなたは貴族の私と話せる立場じゃないのよ?正直に言うと顔もタイプじゃないのよね。中途半端に安っぽい美形なのよ……さよなら……」
次の瞬間とうとうマイケルは泣きついてきましたが、アンナは情け無用に本気で見捨てる視線を彼に向ける。そして体から離れようとしない彼にイライラして、拳を握りしめて全力で殴ってしまった。
「ちょ待てよ!……ぎゃああぁあぁああぁああぁあああぁあぁああぁああぁああぁーっ!!!――アンナなにするんだよ……痛いじゃないか……」
*****
新作「聖女に王子と幼馴染をとられて婚約破棄「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で価値の高い女性だった。」を投稿しました。よろしくお願いします。
まさか自分の人生が失敗するとは思わなかった。絶対に幸せになれると漠然と考えていた。いつもの日常がずっと続くと信じて疑わなかった。
ディオール帝国魔法部隊に所属していた元超エリートで公爵令嬢のアンナは、最悪の事態に陥ってしまったようである。魔法が使えなくなって、あまりにも残酷すぎる運命のはじまりであった。
「マイケルは今どうしてるのかな?」
少し前までは豪華な装飾が施された部屋は、大きく様変わりしてしまった。今は信じ難いほど貧しく質素な生活を送っている。ベッドのなかで涙をこぼして、恋人関係を結んでいた男の名前を口にした。
彼とは婚約中で挙式寸前というところで魔法が使えなくなった。アンナとマイケルは共に精鋭部隊に選ばれた超一流の魔法使いでした。彼は平民だが上級貴族並みの特別な待遇を受けていたが、魔法が使えなくなって田舎の実家へ戻されて現在は農作業に従事する。
「――私が農夫と結婚して畑仕事なんかするわけないでしょ!」
彼は実家に帰る時に、アンナに一緒に来てくれないか?と真剣な顔になって言った。当然ながらアンナは即座に断ると、しつこく絡んでくる彼に一転してお怒りモード全開になったのだ。
「え……?アンナどうしてなんだ……!?」
「ふざけないで!私は魔法が使えるあなたが好きなの!!」
「そんなこと言わないでくれ。僕の人間性が好きだと言ってくれた君はどこに行ってしまったんだよ?あんなに愛し合ったじゃないか……?」
「ちょっと気安く触らないでもらえるかしら?」
「必ずアンナの心をまた奪って見せる。この恋は持久戦でいくからアンナ覚悟してろよ!」
「ばかじゃないの?さっさと田舎に帰って農業してろっ!!」
マイケルはアンナの言葉が理解できなかった。あり得ないという面持ちで突っ立っていた。どうしてなんだ……?彼女なら間違いなくついて来てくれると何の疑いもなく信じていた。
ところがアンナはそうではなかった。今日は、ただの別れ話だと思って来た。田舎の実家に帰るマイケルを元恋人として、見送りに来ただけでした。
さすがに魔法が使えなくなった男と結婚する気持ちは、ほんの少しもございません。むしろ貴族令嬢の自分が元彼とは言え、平民の見送りに来ていることに感謝してほしいくらいだと思っていたのでございます。
「アンナ……」
「……なんで貴族の私が農民の家に嫁入りしなくちゃいけないの?元々あなたは貴族の私と話せる立場じゃないのよ?正直に言うと顔もタイプじゃないのよね。中途半端に安っぽい美形なのよ……さよなら……」
次の瞬間とうとうマイケルは泣きついてきましたが、アンナは情け無用に本気で見捨てる視線を彼に向ける。そして体から離れようとしない彼にイライラして、拳を握りしめて全力で殴ってしまった。
「ちょ待てよ!……ぎゃああぁあぁああぁああぁあああぁあぁああぁああぁああぁーっ!!!――アンナなにするんだよ……痛いじゃないか……」
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