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悲報
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ベンが出かけている日、私はいつものように離れで本を読んで過ごしていましたが、突然屋敷の方が騒がしくなります。
「一体何があったのでしょうか」
そう思って遠目に様子を伺ってみますが、来客があった様子はありません。
だとすれば何か事件の知らせでもあったのでしょうか。気になりはしますが、離れにいる私の元には誰も事態を知らせに来てはくれません。
しかも屋敷での騒ぎは一向に収まる気配がありません。
そんなことを考えていると、日が沈むころ一人のメイドが離れに向かって走ってきます。
「騒がしいけど何かあったの?」
「それが、領地で大規模な賊が出たそうで、ご主人様はその討伐指揮のためにこの屋敷を離れなければならなくなりそうとのことです」
「そんな……」
元々アスカム公爵は多忙な方であまり屋敷内のことには関わっていないし、ベンがあんなになるまで放置していたと言えばそうですが、それでもベンのことを咎められる数少ない人物です。
その公爵が行ってしまうなら私はこれからどうすればいいのでしょうか。
とはいえ、ただその件を教えてくれただけのメイドがそれ以上のことを話してくれる訳もなく、彼女は屋敷の中へ戻っていくのでした。
それからさらにしばらく経って、夕暮れ間際にようやくベンが帰ってきます。
公爵はベンでは盗賊討伐は荷が重いと判断したのでしょうが、ベンがこの屋敷に残ると思うと私は大きな不安を覚える他ありません。
翌朝になると、いつも朝食を持ってきてくれるメイドが、私に屋敷に来るように声をかけます。
それを聞いて私は少し緊張しながら屋敷に戻ります。
すると、公爵の部屋では不安そうな公爵と、不満そうなベンが二人で私を待っていました。公爵は私を見て口を開きます。
「すでに聞いていると思うが、わしはこれから領地の賊を討伐するために屋敷を離れる。そのため、ベンに屋敷を任せることになったが、ベンのサポートをしてやって欲しいのだ」
「え……」
私としては構いませんが……そう思いつつ私はベンの方をちらっと見ます。
すると、ベンはなぜかうんうんと頷きました。
「分かりました。これからはちゃんとアンナの言うことも聞こうと思います」
これまでのベンなら絶対に言わないであろう台詞に私は耳を疑います。しかもベンは怒られてしぶしぶという様子ではなく、むしろ上機嫌でその台詞を発しています。
そんな彼の様子を見て私ははっとしました。
もしかしてベンはこれから公爵が去って好き放題出来るからここは適当にいい子の振りをしておこうとでも思っているのでしょうか。
そんな疑念が頭をよぎりましたが、さすがにそれを口にする訳にもいきません。
「……分かりました、微力ですがベンさんをお助けしようと思います」
「ああ、よろしく頼む」
そう言ってベンは爽やかな笑顔を浮かべます。
そんなベンの本心に気づいていないのか、公爵はほっとしたように息を吐きます。
「良かった、二人が仲直りしてくれれば屋敷のことは心配しなくて済みそうだ。わしは安心して賊を討伐してこよう」
そんな公爵の言葉に不安がよぎりますが、だからといって賊討伐に向かう公爵を引き留めるようなことを言うのは嫁に入った者として良くないことでしょう。
「はい、ご武運をお祈りします」
私はやむなくそう言うのでした。
「一体何があったのでしょうか」
そう思って遠目に様子を伺ってみますが、来客があった様子はありません。
だとすれば何か事件の知らせでもあったのでしょうか。気になりはしますが、離れにいる私の元には誰も事態を知らせに来てはくれません。
しかも屋敷での騒ぎは一向に収まる気配がありません。
そんなことを考えていると、日が沈むころ一人のメイドが離れに向かって走ってきます。
「騒がしいけど何かあったの?」
「それが、領地で大規模な賊が出たそうで、ご主人様はその討伐指揮のためにこの屋敷を離れなければならなくなりそうとのことです」
「そんな……」
元々アスカム公爵は多忙な方であまり屋敷内のことには関わっていないし、ベンがあんなになるまで放置していたと言えばそうですが、それでもベンのことを咎められる数少ない人物です。
その公爵が行ってしまうなら私はこれからどうすればいいのでしょうか。
とはいえ、ただその件を教えてくれただけのメイドがそれ以上のことを話してくれる訳もなく、彼女は屋敷の中へ戻っていくのでした。
それからさらにしばらく経って、夕暮れ間際にようやくベンが帰ってきます。
公爵はベンでは盗賊討伐は荷が重いと判断したのでしょうが、ベンがこの屋敷に残ると思うと私は大きな不安を覚える他ありません。
翌朝になると、いつも朝食を持ってきてくれるメイドが、私に屋敷に来るように声をかけます。
それを聞いて私は少し緊張しながら屋敷に戻ります。
すると、公爵の部屋では不安そうな公爵と、不満そうなベンが二人で私を待っていました。公爵は私を見て口を開きます。
「すでに聞いていると思うが、わしはこれから領地の賊を討伐するために屋敷を離れる。そのため、ベンに屋敷を任せることになったが、ベンのサポートをしてやって欲しいのだ」
「え……」
私としては構いませんが……そう思いつつ私はベンの方をちらっと見ます。
すると、ベンはなぜかうんうんと頷きました。
「分かりました。これからはちゃんとアンナの言うことも聞こうと思います」
これまでのベンなら絶対に言わないであろう台詞に私は耳を疑います。しかもベンは怒られてしぶしぶという様子ではなく、むしろ上機嫌でその台詞を発しています。
そんな彼の様子を見て私ははっとしました。
もしかしてベンはこれから公爵が去って好き放題出来るからここは適当にいい子の振りをしておこうとでも思っているのでしょうか。
そんな疑念が頭をよぎりましたが、さすがにそれを口にする訳にもいきません。
「……分かりました、微力ですがベンさんをお助けしようと思います」
「ああ、よろしく頼む」
そう言ってベンは爽やかな笑顔を浮かべます。
そんなベンの本心に気づいていないのか、公爵はほっとしたように息を吐きます。
「良かった、二人が仲直りしてくれれば屋敷のことは心配しなくて済みそうだ。わしは安心して賊を討伐してこよう」
そんな公爵の言葉に不安がよぎりますが、だからといって賊討伐に向かう公爵を引き留めるようなことを言うのは嫁に入った者として良くないことでしょう。
「はい、ご武運をお祈りします」
私はやむなくそう言うのでした。
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