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事後処理とクラリス
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さて、急に気力を失ったベンから事情を聴きつつ、先ほどの執事がまとめてくれていたメモとも照らし合わせ、何があったかをまとめていきます。
基本的にそれぞれの事は大したことではなく、大体はベンが無茶な命令を出してそれを実行するために家臣が乱暴を働いていたというのが真相でした。
そのことをベンに言うと、彼はもはや否定する気力もなかったのか、「許してくれ!」ばかりを連呼するので逆に困惑してしまいます。そもそもベンがあそこまで高圧的な態度をとっていなければ、多少無茶な命令を出してしまったとしても家臣たちも無茶なことはしなかったと思うのですが。
また、私が知らなかっただけで、彼が頻繁にクラリスの元へ通っていたという“余罪”も明らかになってしまいました。
一応もっともらしい名目はついていますが、明らかにアンドリュー家のみ通っていた頻度が高いのです。
足繁く通っていたというだけならギリギリ大丈夫かもしれませんが、家にクラリスを連れ込んでいたことや私への仕打ちまで合わせると不貞行為と言わざるをえないでしょう。ある意味これが一番重い罪と言えるかもしれません。
さて、一通りの事情を把握した私たちは次に困惑しているクラリスの元へ向かいます。
「あ、あの、一体何が起こっているのでしょうか? ベン様は一体?」
何も分からないまま一人ぽつんと待たされていたクラリスは、私たちが部屋に入っていくと、困惑した様子でした。
が、私の姿を見ると急に何かに気づいたように凍り付きます。
「も、もしかしてあなたは……」
「察しの通りベンの妻のアンナですが」
私が名乗ると急に彼女の顔からさあーっと血の気が失せていきました。
彼女もベンに妻がいると知っていながら繰り返し会っていたのがまずいことだったという自覚はあるのでしょう。
「ご、ごめんなさい、私は別にそんなつもりでは……」
「じゃあどういうつもりだった?」
「そ、それは……」
私が尋ねると、彼女は声を震わせてうつむきます。
「黙っていてもいいけど、このままではベンを私から寝取ろうとしていたと思われるだけだけど」
「そ、それは違います! 私はただアスカム家の跡継ぎの方と仲良くなっておけば家のためになるかもしれないと思っただけで、寝取るとかそんなことは考えていません! 大体、そんなことしてもスペンサー家を敵に回すだけではないですか!」
クラリスは必死で否定します。本当にそれだけだったのか、ベンを寝取るつもりだったのを必死で隠そうとしているのかは私には分かりませんが、積極的に関係を続けていたのはベンなので彼女のことは正直そこまで気にしていません。
「でもベンはあなたが唯一の理解者だと言っていたけど」
「そ、それもただベンに気に入られたくてそれっぽいことを言っていただけです!」
彼女が必死で否定しているのを見ると、私はそれでもいいかという気分になってきました。ベンがあんなにクラリスを心の支えのようにしていたのに、クラリスの方は全くそうではなかったというのが少し滑稽です。
「ではベンについて知っていることを教えて欲しい」
「分かりました、まず……」
クラリスの話を聞く限りベンはよほど私のことが嫌いらしく、私とは正反対の態度をとっていたクラリスに依存といって差し支えないほど好意を寄せていたようです。彼女が話している間デニスが心配そうに私を見てきましたが、今更腹が立つこともありません。
「……と言う訳です」
「ありがとう。じゃあもう帰っていいわ」
「は、はい」
私が言うと、クラリスは逃げるように帰っていきます。
こうしてベンの所業の調査は大体終わったのでした。
基本的にそれぞれの事は大したことではなく、大体はベンが無茶な命令を出してそれを実行するために家臣が乱暴を働いていたというのが真相でした。
そのことをベンに言うと、彼はもはや否定する気力もなかったのか、「許してくれ!」ばかりを連呼するので逆に困惑してしまいます。そもそもベンがあそこまで高圧的な態度をとっていなければ、多少無茶な命令を出してしまったとしても家臣たちも無茶なことはしなかったと思うのですが。
また、私が知らなかっただけで、彼が頻繁にクラリスの元へ通っていたという“余罪”も明らかになってしまいました。
一応もっともらしい名目はついていますが、明らかにアンドリュー家のみ通っていた頻度が高いのです。
足繁く通っていたというだけならギリギリ大丈夫かもしれませんが、家にクラリスを連れ込んでいたことや私への仕打ちまで合わせると不貞行為と言わざるをえないでしょう。ある意味これが一番重い罪と言えるかもしれません。
さて、一通りの事情を把握した私たちは次に困惑しているクラリスの元へ向かいます。
「あ、あの、一体何が起こっているのでしょうか? ベン様は一体?」
何も分からないまま一人ぽつんと待たされていたクラリスは、私たちが部屋に入っていくと、困惑した様子でした。
が、私の姿を見ると急に何かに気づいたように凍り付きます。
「も、もしかしてあなたは……」
「察しの通りベンの妻のアンナですが」
私が名乗ると急に彼女の顔からさあーっと血の気が失せていきました。
彼女もベンに妻がいると知っていながら繰り返し会っていたのがまずいことだったという自覚はあるのでしょう。
「ご、ごめんなさい、私は別にそんなつもりでは……」
「じゃあどういうつもりだった?」
「そ、それは……」
私が尋ねると、彼女は声を震わせてうつむきます。
「黙っていてもいいけど、このままではベンを私から寝取ろうとしていたと思われるだけだけど」
「そ、それは違います! 私はただアスカム家の跡継ぎの方と仲良くなっておけば家のためになるかもしれないと思っただけで、寝取るとかそんなことは考えていません! 大体、そんなことしてもスペンサー家を敵に回すだけではないですか!」
クラリスは必死で否定します。本当にそれだけだったのか、ベンを寝取るつもりだったのを必死で隠そうとしているのかは私には分かりませんが、積極的に関係を続けていたのはベンなので彼女のことは正直そこまで気にしていません。
「でもベンはあなたが唯一の理解者だと言っていたけど」
「そ、それもただベンに気に入られたくてそれっぽいことを言っていただけです!」
彼女が必死で否定しているのを見ると、私はそれでもいいかという気分になってきました。ベンがあんなにクラリスを心の支えのようにしていたのに、クラリスの方は全くそうではなかったというのが少し滑稽です。
「ではベンについて知っていることを教えて欲しい」
「分かりました、まず……」
クラリスの話を聞く限りベンはよほど私のことが嫌いらしく、私とは正反対の態度をとっていたクラリスに依存といって差し支えないほど好意を寄せていたようです。彼女が話している間デニスが心配そうに私を見てきましたが、今更腹が立つこともありません。
「……と言う訳です」
「ありがとう。じゃあもう帰っていいわ」
「は、はい」
私が言うと、クラリスは逃げるように帰っていきます。
こうしてベンの所業の調査は大体終わったのでした。
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