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クラウスとクレフト

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 バーンズ家が蜂の巣をつついたような騒ぎになっている間、私は父と相談しながら兄クレフトと手紙でやりとりしていた。

 それによると、どうも現在のダンフォード公は隙あらば周囲の家を潰して勢力を拡大することに執心しているようであったが、跡継ぎでクラウスはそうは思っていないようであった。彼はどちらかというと父が周囲の家に恨みをかったことによる報復を恐れ、周囲の家とは出来るだけ協調していきたいと考えているという。

 現在ダンフォード公はバーンズ家を陥れようとしているが、実は体調が悪く、クラウスに代替わりするのも時間の問題とのことらしい。

 私は当時幼かったので、ダンフォード家に対する恨みは実はそこまで抱いていない。むしろクレフトはいくら代替わりしたとはいえ、仇敵に頼って家を再興することをどう考えているのだろうか。

 それについて尋ねたところ、兄からは家の再興が第一であるという手紙が返ってくる。
 確かに言われてみれば、家を再興して当主となるのであれば好き嫌いや恨みだけで行動を決めることは出来ない。兄の言うことはもっともだった。

「ところでクラウス殿とはどのような人物なのか?」

 ある日、手紙の内容について父上と話していると父上がそう尋ねた。
 私も手紙を読んで密かに気になっていたが、何分接点はない。

「さあ……私も兄の手紙について書かれていることぐらいしか知りません。何分、現在のダンフォード公の評判が強烈すぎて跡継ぎの噂まではなかなか聞こえてこないので」
「確かにな」

 それを聞いて父上は少し考える。

「とはいえダンフォード家が代替わりするとなれば、いち早くその跡継ぎがどんな人物か見定めておく必要がある。もしクレフト殿がクラウス殿と懇意であるなら一度会うことは出来るか?」
「確かに、兄は何度かクラウス殿と会っているようなので可能とは思いますが……大丈夫でしょうか?」

 ダンフォード家に私がうかつに近づけば、スコット家にもどのように飛び火するかが分からない。
 そう心配したが、父上は頷いた。

「ああ。もちろん危険はあるが、どの道いつかはクレフト殿とは接触しなければならないのだ。ならば早い方がいい。それにそなたの兄と仲がいいのであれば、そなたに対しても好意的に振る舞ってくれるだろう」
「分かりました」

 実際、私もクラウスという人物に興味があった。
 今のダンフォード公爵は恐ろしい人物というイメージがあるが、そんな父親と真逆の方針をとろうというのだから、クラウスもなかなかに肝が据わった人物なのだろう。
 私は早速兄に向けて、今の話を手紙に記す。そして今度二人が会うことがあれば自分も同席したいという旨を書いた。

 それから数日後、兄から手紙が返ってくる。
 それによると二人は今度相談することがあり、それに私も同席してはどうか、と書かれていた。いよいよクラウスと実際に会うことになるのか、と思いつつ私は同意の返事を送るのだった。
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