幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路

今川幸乃

文字の大きさ
11 / 15

EX 勘違い女の末路Ⅰ

しおりを挟む
「助けてください父上、アイザックが私のことは婚約者にふさわしくないなどと言うのですわ!」

 パーティーが終わった直後、泣きはらしていたジュリーは父親の元へ走っていく。
 衆目の前でアイザックに罵られ、アイザックはローラとかいうつまらない女の婚約者であることが発覚した。その上軽蔑していたはずのクレアには彼女が婚約者とイチャイチャしているところを見せつけられる形となった。

 元々プライドの高いジュリーには一連の事件は堪えられないことだった。

 絶対に彼ら彼女ら全員を見返してやりたい。
 そのためにはアイザックやジャックを上回る素晴らしい婚約者を手に入れる必要があった。なぜかアイザックとの婚約は失敗したが、逆に行けば彼を上回る婚約者を手に入れるチャンスでもある。そして彼が自分ではなくローラをとったことを後悔させてやる。
 ジュリーの中ではすでにアイザックは憧れの男からやり返すべき仇敵に反転していた。

 ジュリーが走っていくと、彼女の父であるパウエル伯は険しい表情で待っていた。
 そして彼女が近づいていくなり怒鳴りつける。

「ジュリー、何と言うことをしてくれたんだ!」
「ち……父上?」

 味方だと思っていた父にまで怒られ、ジュリーは思わず呆然としてしまう。
 が、父は構わずに続ける。

「お前のせいで我が家の評判はガタ落ちだ! パーティーの途中からどうも周囲のわしに対する視線がおかしいと思ったらまさかお前があんな失態を犯していたとは!」
「そ、そんな……私はただ……」
「これまでお前が欲しがる物を全て与え、ドレスもお前の言う通りの物を仕立てさせてやったというのにこれまでのわしの努力を全て無に帰しやがって!」
「でも、婚約者は……」

 そもそも父上が婚約者の件さえきちんとアイザックと話をつけていればこんなことにはならなかったのに、と言おうとしたジュリーだったが、それを全て口にする前に言われてしまった。

「うるさい! 婚約者の件だってうまくいきそうだったのに、成就しなかったのは、先方がお前の器量に不満があったからだ!」
「そんな……」

 それを聞いてジュリーは目の前が真っ暗になる。
 アイザックとの婚約が流れたのは政治的な理由だと思っていたのに、まさか自分が原因だったなんて。

「もうほとほと愛想が尽きた。今後お前の我がままは一切聞いてやらない」
「そんな! すみません、今回のことは私が悪かったです!」

 ジュリーも薄々分かってはいた。自分の他人に自慢していたことは家柄にせよドレスにせよ、全て親の物、もしくは親にもらった物に過ぎないと。
 そのジュリーが父親に諦められてしまえば、文字通り何も残らない。

「そんな……お待ちください、父上!」

 だが、父はジュリーを振り返ることなく歩いていく。
 そしてその場にはその落ち込み用には不似合いな綺麗なドレスのジュリーだけが遺されたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の薔薇

ここ
恋愛
公爵令嬢レオナン・シュタインはいわゆる悪役令嬢だ。だが、とんでもなく優秀だ。その上、王太子に溺愛されている。ヒロインが霞んでしまうほどに‥。

だって悪女ですもの。

とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。 幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。 だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。 彼女の選択は。 小説家になろう様にも掲載予定です。

勘違い

ざっく
恋愛
貴族の学校で働くノエル。時々授業も受けつつ楽しく過ごしていた。 ある日、男性が話しかけてきて……。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

短編 政略結婚して十年、夫と妹に裏切られたので離縁します

朝陽千早
恋愛
政略結婚して十年。夫との愛はなく、妹の訪問が増えるたびに胸がざわついていた。ある日、夫と妹の不倫を示す手紙を見つけたセレナは、静かに離縁を決意する。すべてを手放してでも、自分の人生を取り戻すために――これは、裏切りから始まる“再生”の物語。

元夫をはじめ私から色々なものを奪う妹が牢獄に行ってから一年が経ちましたので、私が今幸せになっている手紙でも送ろうかしら

つちのこうや
恋愛
牢獄の妹に向けた手紙を書いてみる話です。 すきま時間でお読みいただける長さです!

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福

香木陽灯
恋愛
 田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。  しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。 「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」  婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。  婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。  ならば一人で生きていくだけ。  アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。 「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」  初めての一人暮らしを満喫するアリシア。  趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。 「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」  何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。  しかし丁重にお断りした翌日、 「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」  妹までもがやってくる始末。  しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。 「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」  家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

私が彼から離れた七つの理由・完結

まほりろ
恋愛
私とコニーの両親は仲良しで、コニーとは赤ちゃんの時から縁。 初めて読んだ絵本も、初めて乗った馬も、初めてお絵描きを習った先生も、初めてピアノを習った先生も、一緒。 コニーは一番のお友達で、大人になっても一緒だと思っていた。 だけど学園に入学してからコニーの様子がおかしくて……。 ※初恋、失恋、ライバル、片思い、切ない、自分磨きの旅、地味→美少女、上位互換ゲット、ざまぁ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうで2022年11月19日昼日間ランキング総合7位まで上がった作品です!

処理中です...