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両親2

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「むしろ謝らなくてはならないのは私のほうだ。すまなかったな、お前の状況に気付いてやれなくて」
「か、顔を上げてよ。お父様が悪いんじゃないんだから」
「しかし……私は自分が許せない。ロージア家の言葉を鵜呑みにして、お前が自主的に家政を頑張っているなどという思い込みをしていたんだからな……」

 ロージア家は私の両親には嘘の報告をしていた。

 私はロージア家に行ってから一度も両親と会わせてもらえなかった。

 おそらく私がロージア家での扱いを告げ口すると面倒だったからだろう。

 その間両親はというと、ランザスの両親に適当な嘘を吹き込まれていたようなのだ。

 本当にやることが汚い。

「もういいよ。私はこうして受け入れてもらえているだけで十分なんだから」
「……そう言ってもらえると救われるよ」

 力なく微笑む父。
 しかしその表情は一変する。

「それよりレイナ、本当にいいのか?」
「なにが?」
「ロージア家がお前にやったことは到底許されることじゃない。私としてはきちんと糾弾し、全員に地面に平伏させたいところなんだが?」

 先ほどまでとは違い父が怒りに震える声で告げる。

 当然だけど、ロージア家でのことはすべて家族に打ち明けている。

 両親はロージア家を徹底的に責めるつもりだったようだけど、そこは私が止めた。

 なにしろ向こうは子爵家の中でもトップクラスの存在で、たいしてうちは貧乏な男爵家。

 争いになったら勝つことはできないだろう。
 それどころか、あることないこと言われて逆に賠償金を奪われる可能性すらある。

「いいよ、それは。私のためにお父様やお母様が酷い目に遭ってほしくないもの」
「しかし……」
「いいってば。幸い向こうも私が逃げてきたことに、何の反応もしてきていないし」

 ロージア家は脱走した私を追いかけてくるようなことはなかった。

 理由は想像がつく。

 どうせ私がすぐに『すみませんでした! もう一度屋敷に置いてください!』と懇願してくると高をくくっているんだろう。

 残念ながら私にその気はまったくないけれど。

 私は書類をさらに手に取った。

「とにかく、私はここで仕事ができるだけで充分に幸せだよ。ランザス様と破談になっちゃった代わりに、領地がもっと豊かになるように仕事を頑張るね。最近は雨が多かったから、そのことの対処も色々としなくちゃならないし」
「ううっ……なんてできた娘なんだ……!」

 ぐすぐすと泣き始めてしまう父。

 出戻りの娘なので、そういう反応はちょっと複雑に感じないでもない。

 いやいや、そんなことは気にするべきじゃない。今はできることを頑張らないと。

「ご飯ができたわよ~~~~!」

 あ、母が執務室に入ってきた。

「レイナ、早くご飯にしましょう! 私腕によりをかけたのよ。ここに戻ってきたときはすっかり痩せちゃってたから、もう心配で心配で……」
「うん、ありがとう。お母様」

 うちの母は料理上手で、私が実家に戻ってからは毎回のように気合いを入れた手料理を振る舞ってくれる。

 おかげでロージア家にいて痩せてしまっていた私の体もだんだん肉付きが戻ってきた。

「それじゃあ昼食にしようか」

 父の一言で、私たちは家族で昼食をとるのだった。
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