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演技し倒しスフォルツァをダマしにかかるアイリス

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 肩で息を吐くスフォルツァを寝台に横たえたまま。
アイリスは寝台横のテーブルに乗った、手拭き用の布を取り、手の汚れを拭う。

そっ…とスフォルツァの股間を拭き取り、そしてのし掛かり、スフォルツァの唇に軽く、口付けた。

体を起こそうとした時、腕をスフォルツァに掴まれ、引き留められる。

その一瞬でアイリスはスフォルツァが。
一日、何回でもこなせる強者だと気づく。

例えイった後でも、直ぐ。

だから出来るだけ、素っ気なく告げた。
「もう駄目だ。
後は夜。
待てないなら、君とは終わりだ」

スフォルツァの瞳が一瞬、見開かれる。

そして、弱々しく告げる。

「随分、冷たいな?」

アイリスは途端、チャーミングにすら見える、困惑した表情を浮かべる。

「だってまだ、荷物の整理が残ってる。
教科書だって…読んでおきたい」

スフォルツァは途端、可憐な美少年に戻るアイリスを、身を起こし正面で見つめ、微笑む。

「随分、真面目だ」

アイリスは俯く。
「不安なだけだ。
君だって…ここで不出来を晒せば、家名を汚す。と。
家族や親戚達に、言われてないのか?」

スフォルツァは笑う。
そしてアイリスの白く形の良い頬を、その手で触れて囁く。

「君に、首ったけだ。
…出来れば君の、全てが見たい」

引く気の、まるで無いイケイケなスフォルツァについ内心、アイリスは憤る。

『見せてたまるか!』

最も。
スフォルツァが強気でイケイケになるのも、無理は無い。

強引にダダをこねようが…嫌味は無いし、格好良くすら、見えるし、ともかくいい男だったから。
ナニをしてもサマになってる。

逆に彼が、我が儘なんて言えば。
相手は狂喜して喜びそうだった。

…自分で、なければ。

アイリスは、演技に戻った。

とても、不安げにささやく。

「実は…私は良く、原因不明の熱を出す…。
だからあんまり、無茶が出来ないんだ………」

スフォルツァはアイリスが、どうして一番高い身分にも関わらず自信が無さそうなのか理解でき、そして同情した。

「そうか…………」
そうつぶやいて、顔を下げる。

アイリスは自分の嘘を真に受けて、同情を示すスフォルツァを見て。
“騙してる”
と心の隅がチリ…と、罪悪感で痛んだ。

が、ここの出方次第でこの先、スフォルツァにことごとく彼の魅力で押し切られ…。
毎度、抱かれるハメになるのも困る。

「(貞操の、危機なんだから。
罪悪感なんかに、負けてる場合じゃ無い…!)」

アイリスはそう、自分に言い聞かせた。

スフォルツァは俯く顔を上げ、ささやく。

「…身分の高い者は時に、戦場に出る事無くその知恵を。
参謀として生かす事も出来る…。
君はそちらの道を、選ぶ気か?」

アイリスはすっかりダマされるスフォルツァに、『しめしめ』と内心囁くと、真顔を作って、こっくり頷く。

「けど近衛に在籍する以上、ある程度剣が使えなきゃ、誰にも認められない…!」

悲しげに、そう小声で叫ぶと。
スフォルツァは完全に、同情した。

そっ…とアイリスを見つめ、ひそめた声で尋ねる。

「夜…なら、完全に君の全てを、見られるのか?」

アイリスは、あくまでも自分をモノにする気のスフォルツァに、更なるかせめるため、演技し倒す。

可憐に俯き、微かに身を震わせて…囁く。

「それでも…あまり無茶は出来ないんだ…。
幼い頃…私は家庭教師に夢中で。
彼は…私を自分のものにしたかった。
けれど………」

最も、手でスフォルツァに触れてイかせたりしたから。
今更このテが、どこまで通用するか。
分からなかった。

だがこの路線で、突き進むしか無い。

スフォルツァは言い淀むアイリスを見つめ、不安げに小声で尋ねる。

「…でも?」

アイリスは躊躇い、スフォルツァを見つめ、できうる限りの同情を買おうと。
罠にかかった可憐な小動物のように震え、ささやく。

「…出来なかった……!
彼が少し、私の後ろに入っただけで、私は………!」

スフォルツァがじっ。と。
とても不安げに、その気品の塊の美少年を見つめる。

アイリスは、とどめを刺す。
「…あまりの痛みで、気絶したから…………」

思い通り。
スフォルツァは落胆したように首を下げ、溜息を吐き出す。

けれどそっ…と。
小声で告げた。

「けど…俺は幾らでも、方法を知っている。
勿論、無茶は絶対しない。
が、結ばれる事は、絶対可能だ」

アイリスは内心
「(こいつ、どんだけ自信家だ!)」
と怒りと呆れでいっぱいになった。

だが、演技は崩さず、悲しげに俯いたまま。
こっくり。と、一応頷いて見せる。

スフォルツァは寝台を出ると、その上に座るアイリスに、とびきりの悪戯っぽい笑顔を向け、顔をそっと近づけて優しいキスをし、そしてささやく。

「夜…また、来る」
「(…なんで、分かんないんだ、コイツ!)」

しかし、手で擦ったのがまずかったのか。
スフォルツァはまるっと、ソノ気。

アイリスは仕方無く、大人しげな少年を装い、こっくり。と頷いて見せた。

扉の閉まる音がすると、寝台脇のテーブルの上の、ベルを取って鳴らす。
続き部屋の召使いが駆け付けると、アイリスは静かに言った。

「サフォーシャに…友達を連れて夕食後ここに押しかけてくれ。と。
使者を直ぐ、出してくれ」

召使い…シェイムは笑顔で返す。
「また…悪巧みですか?」



アイリスはとても美男で、百戦錬磨。
どんな難しい女でも垂らせてしまう、素晴らしい手管の持ち主、シェイムを見つめ、言い返す。

「人聞きの悪い……。
楽しい学園生活を満喫する為の、布石だ。
人に見られないよう、彼女らをここに入れられるか?
見つかったら、入学早々退学になりかねないから。
…出来るだけ、こっそりと」

シェイムは笑う。

「召使いの専用通路もありますしね…。
全然誰にも。って訳にはいきません」

アイリスは、頷いた。
「それでいい」

素晴らしい美男のシェイムは艶やかに笑うと、部屋を出て行った。


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