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始まりは断罪の目撃から
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ん?浄化遠征の衣装?協力して欲しいとは言われたけど、行くと決まっていないよ?
「ど、どこの情報、でしょうか?」
自分に関する不確定情報が他者からぶっ込まれるとかなにそれ超恐い。
「あら?伯父様が近々聖女が浄化に来るのでもてなす準備がしたい、と教えて下さいましたの。アリナ嬢は行かれないでしょうから、ファルム様が代行なさるのでしょう?」
アリナ嬢行かないの確定なんだ…というか、俺が行く事が決まっているみたいな口振りですね?しかも代行?勿論聞いてませんよ。そしてリネット嬢が言っている伯父様というのは、ラウレスタ・グローデン辺境伯の事ですね。国境を護る最強の武人とお噂で聞いております。というか、浄化遠征はグローデン領まで行くというのも今ここで聞きましたが?
「ファルム様の事をお伝えしますので、食事好き嫌いなどありましたら教えて下さいませ!」
「えっ?好き嫌いは特には…いえ、行くと決まってな…は?枕にこだわりは、ないです…」
グイグイくるリネット嬢に押される中、視線を感じて目を向けると他のご令嬢方が「あらあら、うふふ」と微笑んでいる。止めてもらえますか?しかもメルネ嬢が大きな瞳をキラキラさせて俺を見ている。何故?期待を込めた眼差しを向けないで欲しい。俺に何を期待しているんですか?いや、この状況でなければ目線もっと下さいと言えたのだろうか。いや、そんな事言えない!
「お姿が映えるドレスをお仕立てしますわ!」
浄化という大仕事にご令嬢方の好みに沿ったドレスは不要です。俺を見ながら言わないで下さい。
「イメージが降ってまいりました!デザインを出しますので、皆様でまた集まってお話しましょう!」
輝かしい笑顔になったメルネ嬢が立ち上がり、本日の解散を告げる。
「わたくしも案を出しますわ!」
「勿論わたくしも仲間に加えていただけるのでしょう?」
辺境に映えるには、フリルはどのくらい盛り込めばいいのか、などというとんでもない話で令嬢方の会議が再発した。さっきより盛り上がっておられる。解散、しないんだ…
後日、義姉上に連行された先で強制採寸が行なわれ、俺の意思が全く反映されない浄化遠征の計画が着々と進んでいることを知る事となる。
どこから情報が漏れてるの?漏らしてるのは誰だ?行くって言ってないぞー!まずは俺に情報を寄越せ!
遠征に関してはもうなるようになれ、状態だが、浄化に関しては確かに思うところがある。何故光の加護持ちにしか使えないのか、ということは以前から思っていた。
ここは剣と魔法のファンタジックな世界。モンスターがいて、瘴気があり、放置すると更なる穢れを喚ぶので浄化の力があるなら遠征してでも祓うのを国政として行う事は間違いではない。だが、その為に聖人聖女を求めるのは正直疑問しかない。しかも、国内に居ないなら召喚だ!の発想はギャンブルがすぎる。今回のハズレをいい教訓にして欲しい。
安易に召喚させないための対策もしなくては。俺の仕事じゃないとは思うが、落ち着いたらゆっくり考えよう。聖女に関する記録も見ておきたい。
この世界に来る際、ラキアータ様が属性の説明をしてくれたのだが、その時「光と闇が他の属性と異なる点は純粋な力(世界が持つエネルギー)にあり、その能力に大きな差はない」的なことを言っていたなと思い返す。
俺はそれを「属性によって得意不得意はあるのだろうが、大体同じことが出来るはず」と解釈した。
聖教会の書庫整理をした時に読んだ本には治癒も浄化と同じく光属性と書かれていた。だが、力の強弱に拘らなければ水や風の属性だけでなく、火や土の属性持ちも治癒を使え、専門職である治癒士になることができる。
俺はこの治癒の例を基軸にし、光属性に頼らなくても浄化はできるはずという予想を立てた。今はまだやり方も判らない状態なので時間はかかるだろうが、できるということが判れば聖人聖女に振り回されなくてすむ。
召喚は儀式のあれこれを見ていたから判るが、手順も大変だし魔力消費も大きい。回復手段があるとはいえ貴重な魔力。無駄打ちは避けたい。当たりを引けなかったダメージを考えると、やっぱり全属性浄化の案を推すべきだ。
あれこれ考えているうちに、これは企画書を出さねばならぬ!と会社勤めの性が出てしまい、そこそこの量の書類が出来上がった。
この考えを検証し、企画書をより確実なものにするため、いずれは浄化遠征に同行して隅の方でいろいろ試してみよう。
まずは闇属性の俺に浄化ができるかを試してみるところから……とは思っていた、のだが…
「うわあああ!こっち来るなああああああぁぁぁ!」
フリルを盛りに盛ったローブを身にまとった俺は、何故か獣型のモンスターに追われる事になる。護衛!護衛はどうした!?
ヤバい!俺の全力疾走のスピードが遅すぎて詰む!
このデコローブ、見た目に反して凄く動きやすいということに逃げながらビックリした。令嬢方の本気ってすげぇな!
「ど、どこの情報、でしょうか?」
自分に関する不確定情報が他者からぶっ込まれるとかなにそれ超恐い。
「あら?伯父様が近々聖女が浄化に来るのでもてなす準備がしたい、と教えて下さいましたの。アリナ嬢は行かれないでしょうから、ファルム様が代行なさるのでしょう?」
アリナ嬢行かないの確定なんだ…というか、俺が行く事が決まっているみたいな口振りですね?しかも代行?勿論聞いてませんよ。そしてリネット嬢が言っている伯父様というのは、ラウレスタ・グローデン辺境伯の事ですね。国境を護る最強の武人とお噂で聞いております。というか、浄化遠征はグローデン領まで行くというのも今ここで聞きましたが?
「ファルム様の事をお伝えしますので、食事好き嫌いなどありましたら教えて下さいませ!」
「えっ?好き嫌いは特には…いえ、行くと決まってな…は?枕にこだわりは、ないです…」
グイグイくるリネット嬢に押される中、視線を感じて目を向けると他のご令嬢方が「あらあら、うふふ」と微笑んでいる。止めてもらえますか?しかもメルネ嬢が大きな瞳をキラキラさせて俺を見ている。何故?期待を込めた眼差しを向けないで欲しい。俺に何を期待しているんですか?いや、この状況でなければ目線もっと下さいと言えたのだろうか。いや、そんな事言えない!
「お姿が映えるドレスをお仕立てしますわ!」
浄化という大仕事にご令嬢方の好みに沿ったドレスは不要です。俺を見ながら言わないで下さい。
「イメージが降ってまいりました!デザインを出しますので、皆様でまた集まってお話しましょう!」
輝かしい笑顔になったメルネ嬢が立ち上がり、本日の解散を告げる。
「わたくしも案を出しますわ!」
「勿論わたくしも仲間に加えていただけるのでしょう?」
辺境に映えるには、フリルはどのくらい盛り込めばいいのか、などというとんでもない話で令嬢方の会議が再発した。さっきより盛り上がっておられる。解散、しないんだ…
後日、義姉上に連行された先で強制採寸が行なわれ、俺の意思が全く反映されない浄化遠征の計画が着々と進んでいることを知る事となる。
どこから情報が漏れてるの?漏らしてるのは誰だ?行くって言ってないぞー!まずは俺に情報を寄越せ!
遠征に関してはもうなるようになれ、状態だが、浄化に関しては確かに思うところがある。何故光の加護持ちにしか使えないのか、ということは以前から思っていた。
ここは剣と魔法のファンタジックな世界。モンスターがいて、瘴気があり、放置すると更なる穢れを喚ぶので浄化の力があるなら遠征してでも祓うのを国政として行う事は間違いではない。だが、その為に聖人聖女を求めるのは正直疑問しかない。しかも、国内に居ないなら召喚だ!の発想はギャンブルがすぎる。今回のハズレをいい教訓にして欲しい。
安易に召喚させないための対策もしなくては。俺の仕事じゃないとは思うが、落ち着いたらゆっくり考えよう。聖女に関する記録も見ておきたい。
この世界に来る際、ラキアータ様が属性の説明をしてくれたのだが、その時「光と闇が他の属性と異なる点は純粋な力(世界が持つエネルギー)にあり、その能力に大きな差はない」的なことを言っていたなと思い返す。
俺はそれを「属性によって得意不得意はあるのだろうが、大体同じことが出来るはず」と解釈した。
聖教会の書庫整理をした時に読んだ本には治癒も浄化と同じく光属性と書かれていた。だが、力の強弱に拘らなければ水や風の属性だけでなく、火や土の属性持ちも治癒を使え、専門職である治癒士になることができる。
俺はこの治癒の例を基軸にし、光属性に頼らなくても浄化はできるはずという予想を立てた。今はまだやり方も判らない状態なので時間はかかるだろうが、できるということが判れば聖人聖女に振り回されなくてすむ。
召喚は儀式のあれこれを見ていたから判るが、手順も大変だし魔力消費も大きい。回復手段があるとはいえ貴重な魔力。無駄打ちは避けたい。当たりを引けなかったダメージを考えると、やっぱり全属性浄化の案を推すべきだ。
あれこれ考えているうちに、これは企画書を出さねばならぬ!と会社勤めの性が出てしまい、そこそこの量の書類が出来上がった。
この考えを検証し、企画書をより確実なものにするため、いずれは浄化遠征に同行して隅の方でいろいろ試してみよう。
まずは闇属性の俺に浄化ができるかを試してみるところから……とは思っていた、のだが…
「うわあああ!こっち来るなああああああぁぁぁ!」
フリルを盛りに盛ったローブを身にまとった俺は、何故か獣型のモンスターに追われる事になる。護衛!護衛はどうした!?
ヤバい!俺の全力疾走のスピードが遅すぎて詰む!
このデコローブ、見た目に反して凄く動きやすいということに逃げながらビックリした。令嬢方の本気ってすげぇな!
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