31 / 69
始まりは断罪の目撃から
31
しおりを挟む
倒れ込んできた兄上からは、すぅすぅと寝息が聞こえる。どうやら魔法で眠らせた様だ。
兄上の瞳の奥がヤバそうな気配をしていたから、強制終了であっても視線が逸れたのは正直ありがたい。
さすがにもたれかかられたままでは重いので、背中に手を回して支える。まあ、重さが変わるわけではないので、単なる気休めなのだが。
うん。重みがかかると足がやばいな。ヒール辛いから脱ぎ捨てたい!
「美人に抱かれて眠れるなんて、幸せ者だね」
アーデルハイド殿下、笑いが過ぎて涙が見えてますよ。
自分より大きい男性を支えるのはつらいので、助けてくださると非常に嬉しいのですが。
兄上が突然眠りに落ちたのは、ウィー君の能力らしい。ホーンラビットが元々持っていた催眠能力(個々の力は弱いので、野生では群れで使うらしい)が俺の浄化によって強化されたのだそうだ。
アーデルハイド殿下曰く「人前で一線は越えたくないでしょ?」との事だが、人前じゃなくても兄上と越える線は無いです。
兄上との関係はずっと平行でいて欲しい。むしろちょっと離れて下さい。
「一人落ちたところで、会場を騒がせた君たちの進路を公開しよう」
アーデルハイド殿下が何事も無かったかのように話を進めようとする。
進路!いや、卒業後の配属なら間違いでは…ないのか?
…うん、もう些事を深掘りするのはやめよう。
アーデルハイド殿下が申し渡した愉快な仲間たちの処遇は次の通りだ。
メガネとロン毛はグローデン領での軍役。ラウレスタ様がゴリッゴリに鍛えてくれるらしい。
ルーベンス殿下とマッチョは王立書庫館で国史編纂チームに。資料に埋もれる職場だと聞いた。書庫館は国政に関わる文書や資料を保管して後世に残すとかいう場所らしい。
メイジはキュレム衣料商会の縫製部門で針子修行をすることに。メルネ嬢の手腕のおかげで人手が足りないので、猫の手扱いのようだ。男女比が大体2:8の世界に耐えられるだろうか。
各々苦手であろう分野に放り込まれる形になった。期間は半年から一年程度の予定らしい。
まあ、更生の見込みがあるなら牢に入れるより働かせた方がいいもんな。
原因とも物理的に離した方がいいというのもあるだろう。
その後のことは、この期間の動向を見て判断するということのようだ。
挽回の余地があるだけ有情ですね。
アリナ嬢は準備が整い次第元の世界に送り返す事になった。「予定」ではなく「確定」だ。
兄上が召喚関係者をあたって返還のやり方を調べていたらしい。
送り返した記録が無さすぎてかなり難航したらしい。なりたくなかったレアケース。
準備が間に合ったらこの場で儀式するつもりだったとか。それはそれで見たかったな。
暫くは別室で控えてもらう。って言ってたけど、愉快な仲間たちと接触しないように貴人牢とかに入れられるんだろうな。
アーデルハイド殿下の宣告の後、構えていたかのように近衛兵(警備の人より豪華な服を着てたから、アーデルハイド殿下が連れてきたんだろうと勝手に判断した)がルーベンス殿下と愉快な仲間たちを連行して行った。
兄上の余波が抜けてなかったのか、反論ひとつなく連れていかれた。
アリナ嬢は軽く抵抗したけど、イケメンの近衛に「こちらへどうぞ」とにこやかにエスコートされたらホイホイ着いて行った。
え?あっさりついて行っちゃうの?元の世界に戻ってもアレなら、心配だよ? 詐欺とか誘拐とかどの世界も残ってるでしょ?
危機感ゼロとか怖いわァー
スヤスヤタイムの兄上は聖協会のランカ様預りになった。義姉上が「軽いのではなくて?」と、増刑を申し立てたところ、近衛兵の後からゆっくりやってきたランカ様は「私の聖国行きについてきてもらいます」と笑顔で返した。
聖国は創世神であるラキアータ様を筆頭に、神々を祀る神殿や宗教を束ねる国だ。我が国からは移動だけで往復半年はかかる。
勿論俺は同行しないので、ブラコン兄上には(心が)過酷な旅になるだろう。
それを聞いたら義姉上もにっこり落ち着いた。ははっ、その笑顔怖いです。
兄上は無意識に俺を抱きしめていたため、引き剥がすのに少し手間取りはしたが、眠ったままの退場となった。
兄上の俺に対する執着はいつ見ても怖い。体感させられる度にブラコンやべぇ!って震える。なんなんだろうな、アレ。
前世でも兄弟いたはず(記憶が曖昧)だけど、そこまでの執着はなかった様な…あったら多少なりとも記憶に残ってるだろうし。
兄弟ってもっとドライな関係だと思うんだ。
俺も兄上と一緒に退場したかったのに、アーデルハイド殿下がさせてくれなかった。何でよ!もう役目終わりでしょ?
何で「まだだよ」ってアイコンタクトしてくるの?帰してよ。
「やあ、賑やかしが退場しきったね」
アーデルハイド殿下が今日イチ晴れやかな顔で言う。
賑やかしって…貴方の弟君が煽動したやつ…いや、突っ込むの疲れるからやめよう。
「門出の日に騒がせてしまったこと、改めて謝罪をしよう。代わりというのも申し訳ないが、卒業パーティのやり直しをしようじゃないか!勿論王家主催で、卒業生全員に招待状を送らせて貰うよ」
詫びパーティとはいえ全負担とか太っ腹すぎじゃ?と思っていたら「私の立太子式典に被せるから大丈夫」とウインクを食らった。
予算の問題はさておき、嫌な予感がじわじわ湧いてくるのはなんででしょうね?
「パーティにはメロディアス家の秘蔵っ子、ファルムファス君も招待するから楽しみにしてくれたまえ」
アーデルハイド殿下の宣言に、会場が何故か今日イチの盛り上がりをみせた。解せぬ。
嫌な予感はコレか……!
兄上の瞳の奥がヤバそうな気配をしていたから、強制終了であっても視線が逸れたのは正直ありがたい。
さすがにもたれかかられたままでは重いので、背中に手を回して支える。まあ、重さが変わるわけではないので、単なる気休めなのだが。
うん。重みがかかると足がやばいな。ヒール辛いから脱ぎ捨てたい!
「美人に抱かれて眠れるなんて、幸せ者だね」
アーデルハイド殿下、笑いが過ぎて涙が見えてますよ。
自分より大きい男性を支えるのはつらいので、助けてくださると非常に嬉しいのですが。
兄上が突然眠りに落ちたのは、ウィー君の能力らしい。ホーンラビットが元々持っていた催眠能力(個々の力は弱いので、野生では群れで使うらしい)が俺の浄化によって強化されたのだそうだ。
アーデルハイド殿下曰く「人前で一線は越えたくないでしょ?」との事だが、人前じゃなくても兄上と越える線は無いです。
兄上との関係はずっと平行でいて欲しい。むしろちょっと離れて下さい。
「一人落ちたところで、会場を騒がせた君たちの進路を公開しよう」
アーデルハイド殿下が何事も無かったかのように話を進めようとする。
進路!いや、卒業後の配属なら間違いでは…ないのか?
…うん、もう些事を深掘りするのはやめよう。
アーデルハイド殿下が申し渡した愉快な仲間たちの処遇は次の通りだ。
メガネとロン毛はグローデン領での軍役。ラウレスタ様がゴリッゴリに鍛えてくれるらしい。
ルーベンス殿下とマッチョは王立書庫館で国史編纂チームに。資料に埋もれる職場だと聞いた。書庫館は国政に関わる文書や資料を保管して後世に残すとかいう場所らしい。
メイジはキュレム衣料商会の縫製部門で針子修行をすることに。メルネ嬢の手腕のおかげで人手が足りないので、猫の手扱いのようだ。男女比が大体2:8の世界に耐えられるだろうか。
各々苦手であろう分野に放り込まれる形になった。期間は半年から一年程度の予定らしい。
まあ、更生の見込みがあるなら牢に入れるより働かせた方がいいもんな。
原因とも物理的に離した方がいいというのもあるだろう。
その後のことは、この期間の動向を見て判断するということのようだ。
挽回の余地があるだけ有情ですね。
アリナ嬢は準備が整い次第元の世界に送り返す事になった。「予定」ではなく「確定」だ。
兄上が召喚関係者をあたって返還のやり方を調べていたらしい。
送り返した記録が無さすぎてかなり難航したらしい。なりたくなかったレアケース。
準備が間に合ったらこの場で儀式するつもりだったとか。それはそれで見たかったな。
暫くは別室で控えてもらう。って言ってたけど、愉快な仲間たちと接触しないように貴人牢とかに入れられるんだろうな。
アーデルハイド殿下の宣告の後、構えていたかのように近衛兵(警備の人より豪華な服を着てたから、アーデルハイド殿下が連れてきたんだろうと勝手に判断した)がルーベンス殿下と愉快な仲間たちを連行して行った。
兄上の余波が抜けてなかったのか、反論ひとつなく連れていかれた。
アリナ嬢は軽く抵抗したけど、イケメンの近衛に「こちらへどうぞ」とにこやかにエスコートされたらホイホイ着いて行った。
え?あっさりついて行っちゃうの?元の世界に戻ってもアレなら、心配だよ? 詐欺とか誘拐とかどの世界も残ってるでしょ?
危機感ゼロとか怖いわァー
スヤスヤタイムの兄上は聖協会のランカ様預りになった。義姉上が「軽いのではなくて?」と、増刑を申し立てたところ、近衛兵の後からゆっくりやってきたランカ様は「私の聖国行きについてきてもらいます」と笑顔で返した。
聖国は創世神であるラキアータ様を筆頭に、神々を祀る神殿や宗教を束ねる国だ。我が国からは移動だけで往復半年はかかる。
勿論俺は同行しないので、ブラコン兄上には(心が)過酷な旅になるだろう。
それを聞いたら義姉上もにっこり落ち着いた。ははっ、その笑顔怖いです。
兄上は無意識に俺を抱きしめていたため、引き剥がすのに少し手間取りはしたが、眠ったままの退場となった。
兄上の俺に対する執着はいつ見ても怖い。体感させられる度にブラコンやべぇ!って震える。なんなんだろうな、アレ。
前世でも兄弟いたはず(記憶が曖昧)だけど、そこまでの執着はなかった様な…あったら多少なりとも記憶に残ってるだろうし。
兄弟ってもっとドライな関係だと思うんだ。
俺も兄上と一緒に退場したかったのに、アーデルハイド殿下がさせてくれなかった。何でよ!もう役目終わりでしょ?
何で「まだだよ」ってアイコンタクトしてくるの?帰してよ。
「やあ、賑やかしが退場しきったね」
アーデルハイド殿下が今日イチ晴れやかな顔で言う。
賑やかしって…貴方の弟君が煽動したやつ…いや、突っ込むの疲れるからやめよう。
「門出の日に騒がせてしまったこと、改めて謝罪をしよう。代わりというのも申し訳ないが、卒業パーティのやり直しをしようじゃないか!勿論王家主催で、卒業生全員に招待状を送らせて貰うよ」
詫びパーティとはいえ全負担とか太っ腹すぎじゃ?と思っていたら「私の立太子式典に被せるから大丈夫」とウインクを食らった。
予算の問題はさておき、嫌な予感がじわじわ湧いてくるのはなんででしょうね?
「パーティにはメロディアス家の秘蔵っ子、ファルムファス君も招待するから楽しみにしてくれたまえ」
アーデルハイド殿下の宣言に、会場が何故か今日イチの盛り上がりをみせた。解せぬ。
嫌な予感はコレか……!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる