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18. ピンクの魅了を解く為の計画
しおりを挟む私達は、リシェリエ様の持っている“浄化”のスキルで、魅了にかかってしまった人達を元に戻す事が出来るのでは無いかという話をした。
「……私のスキルで?」
「リシェリエ様は、今まで浄化の力を使用した事はありますか?」
「無いわ。そもそも浄化を必要とする事態なんて起こった事が無かったもの」
リシェリエ様の言う事は最もだ。
単なる治癒ならば、闇の力で事足りてしまう。
浄化は呪いや……今回のような精神干渉系のスキルによってもたらされたものを治すもの。そんなに出番があってはむしろ困る。
「学院の皆を元に戻す為には、リシェリエ様の力が必要なんです」
「……私に出来るのかしら?」
リシェリエ様の声はとても不安そうだった。
今まで使った事が無いのなら、リシェリエ様にとっても“浄化”は未知の力。
どういった方向に左右されるかは全く不明。
……不安になるのも当然だ。
(それと、気になるのは……浄化の力の範囲)
一人一人にかけないといけなかったりすると時間と手間もかかるし、リシェリエ様の魔力だってきっと持たない。
何よりエリィ様に気付かれてしまう可能性が高い。
(一度で広範囲にかけれるものでないといけない)
そう思った私はリシェリエ様に訊ねる。
「浄化の力は一人一人にかけないといけないものですか?」
「……」
リシェリエ様は少し考えてから答えた。
「一人一人にかける場合もあるし、空間全体にもかけられると聞いているわ」
「空間! それなら……!」
「ですけど、私の力で浄化出来たとしても、肝心のエリィ様を捕まえない事には意味が無いのではありませんの? 再び彼女が皆に魅了をかけてしまったら意味がありませんわ」
リシェリエ様の懸念は最もだ。
せっかく解いても再び力を使われてしまったらただの追いかけっこでしかない。
だからこそ、1度でも皆を正気に戻すことが出来たならば、その後は……私の出番だ。
「それですが、1度浄化してもらえば、再び皆が魅了にかからないようにすることは可能かと」
「何ですって!?」
リシェリエ様の驚きの声が響く。
「私のスキルを使います」
「フィーリーさんのスキル?」
「私のスキルは“無効化”です」
「無効化?」
リシェリエ様は聞いたことがない、という顔をして首を傾げている。
やはり、私のスキルは珍しいみたい。
「私の力は、魔術を無効にする事が出来ます。もちろん特殊能力もです。すでにかけられているものを打ち消す事は無理ですが、術をかけようとする際に弾く事が可能です」
「まぁ!」
「ですから、浄化され一旦皆の魅了が解けた後、私が皆に無効化の力をかけます。その間にエリィ様を捕まえてしまいましょう」
「皆ですって!?」
無効化は浄化と違って空間全体にかけるものでは無いけれど、学院全体にかける事は私の魔力なら可能。学院全体にかける事でその場にいる皆にも無効化の力がかかる。
その事にリシェリエ様は驚きを隠せない様子だけど、なんて事は無い。術の範囲を広げるだけなのでさほど問題は無い。
「あー……フィーリーは……その、なんだ。色々と規格外なんだよ」
ルシアンがあっさりとしたフォローを入れてくれた。
便利な言葉よね、“規格外”
「え? これって規格外で済む問題なんですの!?」
「いや。だが、他に表現の仕様がない」
「えぇ~……?」
リシェリエ様はとにかく驚いていた。
こうして私達は、魅了の魔法を解くためにすべき事の算段をつけていく事になったのだけど、残念ながら早々に行き詰まる事となった。
「問題は……いつ、どのタイミングで浄化や無効化をかけるのかだよな」
「空間全体でないと私は無理ですわよ……一人一人になんて魔力が持たないもの」
うーん、と3人で唸る。
「学院の皆が一同に集まる機会があれば良いのだけど」
私がそう小さく呟いた時、リシェリエ様が大きく反応した。
「それですわ!! もうすぐ、学期が終わるので長期休暇に入りますわよね? いつも休みに入る前には締め括りのパーティーがあるはずですわ! そのパーティーなら学院の皆が集まるのではなくて?」
「……来賓も来るから、ついでにあの女のした事を知らしめる事も出来るんじゃないか?」
なるほど。
いつもは平民の私にとっては、いつも妙にルシアンが絡んで来るのでルシアンと喧嘩するだけのよく分からないパーティーだと常々思っていたけれど、これは絶好の機会と言える。
「そうなるとー……」
幸い、パーティーまではまだ日にちがあった為、私達は計画を練りに練っていった。
また、リシェリエ様が目覚めている事をエリィ様が知ったら何を仕掛けてくるのか分からないので、引き続きリシェリエ様には学院には登校せずに療養してもらう事になった。
「ごめんなさい。せっかく目が覚めたのに」
「構わないわ。元々、お父様にもしばらく休むように言われていたもの」
リシェリエ様は笑顔でそう言ってくれた。
「ありがとうございます」
「その代わりですけど、絶対皆を正気に戻しましょうね! 正直、私も不安ですけどやり遂げてみせますわ!」
「はい、必ず!」
リシェリエ様の言葉に私は力強く頷いた。
学院を休み続ける事になるリシェリエ様には申し訳ないけれど、1日も早く皆を元の状態に戻したい。
だから、どうか計画がうまくいきますように。
そう願わずにはいられなかった。
*****
実行日のパーティーの日まで私達は、策を練りつつも至っていつも通り過ごすようにした。
ただ、エリィ様はルシアンを取り込みたい気持ちを諦めていないのか、しきりにルシアンに話しかける事が多くなっていた。
「……はぁ。本当にしつこいぞ、あの女」
「お疲れ様、ルシアン」
私の目の前で呼び出しから戻って来たルシアンが疲れ切った表情をしていた。
エリィ様は、事ある事にルシアンを呼び出し近寄って来ては“魅了”の力を使おうとするらしい。
「何度もかけようとしてくるから、さすがに力を使おうとする時が分かるようになって来たぞ」
「そんなに?」
それでも諦めずにルシアンを魅了しようとするエリィ様って……
(そんなにルシアンの事が好きなのかしら?)
「……」
困ったわ。胸がモヤモヤする。
「ルシアン、石は?」
「ん、コレだ。頼む」
ルシアンがペンダントにしている魔石を私に渡す。それを受け取った私はその魔石に新たに“無効化”の力を込めた。
(確かに無効化の力が発動しているわね)
エリィ様も必死だわ。
「ったく、何が『未来の大魔術師様は私と添い遂げるべきだと思うんです』だ! 自分が添い遂げる人間は自分で選ぶに決まってるだろ」
「え?」
「どうした?」
ルシアンのその言葉に私は思わず疑問を返してしまった。
だって以前、婚約者の話をした時に結婚相手は自分で選べないような事を言っていたから。
「あ、ううん、ルシアン自分で選べるの? と思って」
「あ? ……あぁー……前に言った話の事か?」
私は無言で頷く。
「まぁ、確かにこのままだと協会が選んだ女性を押し付けられるだろうなぁ」
「!」
「でも、俺は従う気は無い」
「え!?」
ルシアンのその言葉に驚いてしまう。
逆らうの!? 逆らっちゃうの!? 大丈夫なの!?
「前に言っただろ? “決めた”って」
「え? うん」
その時は何の事かまではよく分かってなかったけれど。
それって、未来の結婚相手の事だった?
「フィーリー。例え困難でも、俺は自分の意思で相手を選ぶ。そう決めたんだよ」
「!」
ドキンッ
そう言って私を見つめるルシアンの顔がいつもと違ったので、また私の胸が大きく跳ねた。
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