【完結】ついでに婚約破棄される事がお役目のモブ令嬢に転生したはずでしたのに ~あなたなんて要りません!~

Rohdea

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第3話 こんな展開は知らない

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「はぁぁぁ……どうしてこうなったの。私の婚約破棄はどこへ行ってしまったの……」

  私は大騒ぎとなっているパーティー会場を抜け出して、王宮の庭園にあるベンチにポツンと一人で座り、頭を抱えて唸っていた。

「ここはあの乙女ゲームの世界…………のはずなのに。何あれ……」

  私が思い出した前世の記憶によれば王太子殿下が悪役令嬢に婚約破棄を告げ、ジョバンニ様もついでに婚約者わたしへの婚約破棄を告げて、ゲームの物語的にも私的にもハッピーエンドとなるはずだったのに。

  確かに途中まではその通りの展開だった。
  ───そう……あの乱入者がいなければ。
  彼がいなければ、ジョバンニ様はあの場で高らかに私との婚約破棄を宣言してくれていたはず。
  あのゲームには全くもって無かった謎の展開さえなければ!

  「……まさかの悪役令嬢の逆転勝利ってどういうことなのよぉーーー……」

  私は再び頭を抱えながらそう叫んだ。
  結婚という名の絶望がどんどん押し寄せて来る。
  せっかく前世の記憶でこの世界の事を思い出したのに、なんの意味も無い……

「ただ……そうね……」

  (ジョバンニ様がこれ程までの女好きの浮気三昧なのも納得よ……全部が繋がったわ)

  ゲームの中のジョバンニ・ハウンド侯爵令息は、婚約者がいても何も気にせず、とにかく女性を取っかえ引っ変えしているプレイボーイというキャラクターだった。
  そんな彼がヒロインと恋に落ちて本当の愛を知り、婚約者クロエもろとも過去の女を全て切って最後は一途な男へと変貌を遂げる……というのが彼のルートなのだけど……
 
  (あの日、ジョバンニ様はピンク色の髪の令嬢のことを聞いてきたけど、あれはヒロインの事だったのねぇ……)

  お茶会でも嫌味を言われたように、きっと二人は密かに仲を深めていたに違いない。

「でも、ヒロインが最終的にジョバンニルートに入ってない時点で、更生は望めないじゃないの!  なんでヒロイン落とせなかったのよ……ジョバンニ様のアホ!」

  私は誰もいないのをいい事に思いっきり悪態をつく。
  こうなった以上……
  ジョバンニ様がこの先、一途な男に変貌する可能性は……ゼロ!

「無理!  本当に無理……!  やっぱりあの場で婚約破棄されたかった……!」

  (なんで“あの人”が現れちゃったのよ……)

  そう。先程、私が婚約破棄されると期待を込めていたのに、物凄くいい所で乱入してきた人というのは──……



────────

───……



「兄上!  これはいったいどういう事なのですか!」

  その人物は声を荒らげながら、攻略対象者である王太子殿下と愉快な仲間たちVS悪役令嬢の戦いの舞台へと乱入していく。
  とんだ強者の登場とその様子に会場内は再び大きくざわめいた。

「どうして皆で寄って集ってアビゲイル嬢を貶めるような事をしているのですか!」
「レイズン……」
「レイズン殿下……!」

  王太子殿下とアビゲイル様がその乱入者の名を呼んだ。
  そう。なんとこの空気の中、流れをぶった斬って現れたのはこの国の第二王子、レイズン殿下。

  私は彼の登場をポカンとした表情で見つめていた。

 (ど、どうして彼が……)

  彼も王子様。王太子殿下の弟。
  パーティー会場にいてもおかしくない。むしろ、いるべき。
  だけど、私の知っているゲームの世界の彼はここでしゃしゃり出てくる人じゃない!
 
「兄上!  あなたはそこのピンク女の馬鹿げた発言を本気で信じているのですか!?」
「なっ!  ピンク!?  レイズン殿下……酷いです!」

  ピンク女呼ばわりされたヒロインがショックを受けているのが視界の端に見えた。

「……レイズン、待て……落ち着け、落ち着いてくれ!」
「離してください、兄上!  こんなの落ち着けるはずがありません!  ご自分の誕生日パーティーだというのに何をしているのですか!」

  そして、激昂する弟王子をグレイソン殿下が落ち着かせようとするけれど、レイズン殿下の怒りは止まらない。

 (な、なんなのこの展開は……)

  私は呆然とその光景を見ている事しか出来ない。

  この国の第二王子、レイズン。
  彼もゲームには出てくるけれど、彼は隠しキャラクター。一周目での攻略は出来ず、兄のグレイソン殿下を攻略した後に彼のルートが開く。
  そして、ヒロインは二人の王子に愛されるという夢のような三角関係ルートとなるのだけど……

  (おかしくないかしら?)

  どこからどう見ても、レイズン殿下は怒っている。
  パーティーで騒ぎを起こしている兄を咎めているようにも見えるけれど───

「兄上は、アビゲイル嬢を何だと思っているんですか!」
「兄上の為にといつも必死にアビゲイル嬢は頑張っていたのに!」
「こんなにも美しくて気高いアビゲイル嬢が虐めを行っていた?  有り得ない!」

  ───ちょっ、レイズン殿下……これ……アビゲイル様の事しか言ってなくない?

「レ、レイズン殿下!  落ち着いて下さいませ!」

  さすがに名前を連呼され続けたアビゲイル様も驚きを隠せなかったのか慌てて止めに入る。
  また、その頬はほんのり赤く染まっているように見えた。
  
  (こんなに名前を連呼されたら恥ずかしいわよねぇ……)

「アビゲイル嬢……し、失礼。取り乱してしまった……」
「い、いえ……」

  アビゲイル様とレイズン殿下の二人は顔を見合せた後、パッと恥ずかしそうに目を逸らす。
  そして、すぐに気を取り直したレイズン殿下が王太子殿下の事を責め出した。

「ですが、兄上!  兄上や側近のあなた達の言うアビゲイル嬢の犯したという罪……それは矛盾だらけです!」

  (え……ちょっと待って、本当に何なのこれ……)

  そうして始まったのは、悪役令嬢を追い詰めていたはずの王太子殿下とジョバンニ様を含む愉快な仲間たちが、レイズン殿下に矛盾をつかれて逆に追い込められていく……という当然ゲームには無い展開。
  ヒロイン、ミーア嬢の発言は全て嘘とされ、ついでに、ジョバンニ様に冤罪をきせられ婚約破棄される予定だった私の罪とやらの話も当然のように綺麗さっぱり消え去っていく……

「───本当に罰を受けるべきは兄上たちの方だ!」

  と、レイズン殿下は王太子殿下と愉快な仲間たち&ヒロインを断罪した。
  そんなあまりの出来事に誰もが口を開けず唖然とする中で、おそるおそる口を開いたのはアビゲイル様だった。

「レイズン殿下……どうしてです?  なぜ、わたくしを助けてくれたのですか?」
「アビゲイル嬢……そ、それは……」

  目を潤ませたアビゲイル様に見つめられたレイズン殿下の頬がポッと赤く染まる。

  (──え!  嘘っ……これって……まさか!)

  頬を赤く染めつつも、レイズン殿下は何かを決意したような表情を見せると、兄のグレイソン殿下に向かって呼びかけた。

「……兄上!  先程述べられたアビゲイル嬢との婚約破棄……撤回されるおつもりはありませんね!?」
「あ、ああ……それは無い……が」
「それならいいです────アビゲイル嬢」
「は、はい?」

  兄王子の返答を聞いたレイズン殿下は、満足そうに頷くとそのままアビゲイル様の前で跪く。そしてそっと彼女の手を取った。

「アビゲイル・セグラー公爵令嬢。僕はずっとあなたの事をお慕いしておりました」
「え……レイズン殿下!?」
「ですが、あなたはずっと兄上の婚約者だった。だから僕は何度も何度もあなたの事を諦めようと思いました。ですが……」
「……あ、あの……」
「僕は、あなたの事が好きなんです!  アビゲイル嬢!」

  レイズン殿下はアビゲイル様の手を強く握った。

「レ、レイズン……さま」
「アビゲイル嬢……いや、アビゲイル。どうか……このまま僕の手を取ってください!」

  (待っ……こ、こんな展開知らないわよーーーー!!)

  キャーという令嬢たちの黄色い悲鳴の中に、ヒロインの「嘘よーー」という悲鳴も聞こえた気がしたけれど、今はそれどころじゃない!
  まさかの隠しキャラによる悪役令嬢への公開告白!  
  そして、ヒロインと王太子殿下と愉快な仲間たちは断罪……

  (これって、まさかの、あ、悪役令嬢の逆転勝利ーーー!?)

  私の脳内は大混乱に陥った。
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