溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ

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「……フィオナ? もう起きたの……?」

 眠気眼のジェマが上半身を上げ、あくびをする。窓から外を見ていたフィオナは「……ね、ジェマ」と小さく口を開いた。それからゆっくりと振り返り、不思議そうにこう言った。

「わたし、どうしてフローラお姉様の真似をしてまで、あんな家族とミックに愛されようと思ったのかしら」

 真剣な顔のフィオナ。ジェマは一瞬、固まった。それは昨日、ジェマがフィオナに訊ねた質問そのものだったから。

「えと、フィオナ……?」

「わかっているわ。おかしな質問しているわよね。でも、心から不思議で仕方ないの。だって、家族もミックも、結局愛しているのは、フローラお姉様だけ。フィオナであるわたしなんて、見ていないのよ。それで愛されたって、むなしいだけじゃない?」

 怒気を宿した双眸に、ジェマは安堵からか、思わず笑ってしまった。

「やだ、フィオナったら。その通り過ぎて、何も言えないわ」

「やっぱり? そうよね。昨日までのわたし、どうかしていたわ。わたしに価値はないと言い切ったあげく、大切な親友に手をあげたあんな最低な男に愛されたって、不幸になるだけよ。こっちから願い下げだわ」

「そう! そうよ、フィオナ! フィオナにはもっと、相応しい相手がいるはずよ──例えば、ニール様とか……?」

 ニールの名に、フィオナは苦笑した。

「まさか。ただでさえニール様がわたしなんか相手にしてくれるはずもないのに……期待を裏切るようなことしちゃったもの。絶対無理よ」

「そうかなあ。逆に、ニール様が話しかける女性って、フィオナぐらいだった気がするんだけど」

 コンコン。コンコン。
 扉をノックされたのは、そんな会話をしているときだった。

 部屋の主であるジェマが「はい」と答える。すると、

「ジェマお嬢様。ミック様が、フィオナ様をお迎えに来られたのですが」

 という、女性の使用人の声が返ってきた。部屋の空気が一気に重くなり、ジェマとフィオナは思わず、目線を交差させた。ジェマの瞳は不安に揺れていたが、フィオナは開き直ったように、ふっと口角を上げた。

「ちょうどいいわ。早くわたしの気持ちを伝えたいと思っていたところだったから」

「でも……っ。あの人に、きちんと言葉が通じるかしら」

「どうかしら。猿よりは賢いと信じたいけれど」

 フィオナが「着替えてから行きますと伝えてください」と扉の向こうに声をかける。承知しました。との返答に、支度をはじめる。

「あたしも一緒に行くわ」

「大丈夫よ。ジェマも聞いたでしょう? あの男は、フローラお姉様であろうとしないわたしに興味なんてないの。だからちゃんと、フローラお姉様の真似なんてもうしませんって告げたら、それでおしまいにできるはずよ」

「……そう、かな」

「きっとね。むしろ心配なのは──」

「……フィオナ?」

 黙り込むフィオナの名を、ジェマが心配そうに呼ぶ。フィオナは安心させるように、にっこりと笑った。


「本当に大丈夫よ。だからジェマは、朗報を期待して待っていて」

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