わたしの愛しい人を傷付けた、愛する婚約者様へ。わたしはあなたを絶対に許しません。

ふまさ

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 その日は休日で、朝から雨が降っていた。エルシーはスペンサーの自室で、二人きりの時間を過ごしていた。カミラはエルシーの傍につきっきりでいたかったが、流石にそれはかなわず。けれど何かあればすぐに駆けつけようと、部屋の外で待機していた。

 雨が本降りになっていき、中の音が聞こえ辛くなってきたころ。スペンサーの部屋の扉が、勢いよく開かれた。

「?!」

 カミラが目を見開く。スペンサーの顔色は、真っ青だった。

「な、何事ですか? お嬢様は?!」

「あ、頭を打って、気を失っている……早く医者を連れてきてくれ!!」

 カミラは一瞬愕然としたが、すぐに部屋に飛び込んだ。スペンサーは「お、おい……っ」と、カミラに手を伸ばしかけたが、騒ぎを聞き付け駆けつけてきた他の使用人に、意識を移した。

「坊っちゃま! 何かあったのですか?!」

「……い、医者を呼んでくれ! 早く!!」



 部屋の外が騒がしくなる中、カミラは部屋を見渡していた。すぐに、テーブルの傍の床に横たわるエルシーを見つけた。両目は閉じられ、頭からは、血が流れていた。

「……お、お嬢様……エルシーお嬢様!!」

 涙声で叫び、駆け寄る。返事はない。身体を揺さぶろうとして、かろうじてその手を止めた。頭を打ったのだとしたら、下手に触れない。

「……あ、あああっっ」

 どうして。何があったのですか。あの男に、何かされたのですか。こんなことになるのなら、どんな罰を受けようと、お嬢様から目をはなすのではなかった。

 どっと後悔が押し寄せる。ぴくりとエルシーの閉じたまぶたが僅かに動いたのは、そのときだった。

「──エルシーお嬢様……っ!」

 祈るように、カミラがエルシーの名を呼ぶ。ゆっくりと目を開いたエルシーは、カミラの顔をぼんやりと見ながら、掠れた声で呟いた。


「…………誰?」

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