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「お前の狂った高笑いは、階段を下る途中から聞こえていた。むろん、何を言っていたかもきちんとわたしたちの耳には届いていたぞ。よほど興奮していたらしいな」
「……そ、そんなの嘘です!」
「嘘? 何がだ? その顔が見たかった。やはり殺すよりよほど愉しめそうだ、か? それとも早くその女を犯せ。そしてその女を無価値にしろ。そしたらわたしも、すぐにその女を構わなくなる。役立たずは死刑になるかもしれない、か? わたしは記憶力には自信がある。どこか間違っているのなら、訂正してみろ」
「わ、わたくしがそのような恐ろしいことを言うとでも?!」
「現に、言っていただろうが。ここにいる全員が、証人だ」
「違います違います! 言っていたのはアーリンです!!」
ルーファスが「言っていることが無茶苦茶だ。気でもふれたか」と吐き捨てる。
「ルーファス様! この中でもっとも付き合いが長く、あなたが誰より信用する人物は誰ですか! わたくしでしょう?!」
「付き合いが長いからこそ、お前の声を聞き間違えるはずがない。あれは確かに、お前の声だった──それにな」
ルーファスはアーリンに視線を落とした。アーリンはルーファスの上着を両手で握り、ぶるぶると震えていた。
「……ここまで恐ろしいことをする女だとは流石に思っていなかったが、少なくともお前が純粋無垢とはかけはなれた存在であることは、随分前から知っていたよ」
ブリアナはぶわっと涙を浮かべた。
「ひ、酷いですルーファス様……何を根拠に……っ」
「根拠か。お前がわたしに話しかけてきてくれる者、男女問わずに脅迫まがいに圧をかけていたことだ。おかげでわたしには、学園に友と呼べる者は一人もいない」
ブリアナはふるふると否定するように首を左右にふった。
「そのようなことしておりません……誰がそのようなでたらめを……っ」
「……お前は息をするように嘘をつくのだな。恐ろしいよ」
ルーファスはアーリンを横抱きにし、立ち上がった。とたん、ブリアナは目を吊り上げた。ルーファスはそれを見逃すことなく「その女を捕らえろ!」と、瞬時に兵士に命じた。
ブリアナがショックを受けたように動かなくなったので、兵士は難なく手枷をすることができた。ブリアナは自身につけられた手枷を呆然と見ている。
「……ルーファス様。婚約者であるわたくしに、これはあまりでは?」
「罪人のお前がまだわたしの婚約者気取りか。呆れたな」
「……罪人? わたくしが?」
訳がわからない。そういった風に首をひねるブリアナに、ルーファスは怒りを通り越して、いっそ恐ろしくなった。
「……ルーファス様。その女は聖女とはいえ、他国の孤児、他国の平民。公爵令嬢であるわたくしと、その女。この国にとって、どちらが大切かなんて、考える必要もないのではなくて?」
「……お前は本当に、何も見えてはいないのだな」
「どういうことですか?」
「──わたしにお前の企みとこの場所を教えてくれたのは、お前の侍女だ」
ブリアナは、はち切れんばかりに目を見張った。
「……そ、そんなの嘘です!」
「嘘? 何がだ? その顔が見たかった。やはり殺すよりよほど愉しめそうだ、か? それとも早くその女を犯せ。そしてその女を無価値にしろ。そしたらわたしも、すぐにその女を構わなくなる。役立たずは死刑になるかもしれない、か? わたしは記憶力には自信がある。どこか間違っているのなら、訂正してみろ」
「わ、わたくしがそのような恐ろしいことを言うとでも?!」
「現に、言っていただろうが。ここにいる全員が、証人だ」
「違います違います! 言っていたのはアーリンです!!」
ルーファスが「言っていることが無茶苦茶だ。気でもふれたか」と吐き捨てる。
「ルーファス様! この中でもっとも付き合いが長く、あなたが誰より信用する人物は誰ですか! わたくしでしょう?!」
「付き合いが長いからこそ、お前の声を聞き間違えるはずがない。あれは確かに、お前の声だった──それにな」
ルーファスはアーリンに視線を落とした。アーリンはルーファスの上着を両手で握り、ぶるぶると震えていた。
「……ここまで恐ろしいことをする女だとは流石に思っていなかったが、少なくともお前が純粋無垢とはかけはなれた存在であることは、随分前から知っていたよ」
ブリアナはぶわっと涙を浮かべた。
「ひ、酷いですルーファス様……何を根拠に……っ」
「根拠か。お前がわたしに話しかけてきてくれる者、男女問わずに脅迫まがいに圧をかけていたことだ。おかげでわたしには、学園に友と呼べる者は一人もいない」
ブリアナはふるふると否定するように首を左右にふった。
「そのようなことしておりません……誰がそのようなでたらめを……っ」
「……お前は息をするように嘘をつくのだな。恐ろしいよ」
ルーファスはアーリンを横抱きにし、立ち上がった。とたん、ブリアナは目を吊り上げた。ルーファスはそれを見逃すことなく「その女を捕らえろ!」と、瞬時に兵士に命じた。
ブリアナがショックを受けたように動かなくなったので、兵士は難なく手枷をすることができた。ブリアナは自身につけられた手枷を呆然と見ている。
「……ルーファス様。婚約者であるわたくしに、これはあまりでは?」
「罪人のお前がまだわたしの婚約者気取りか。呆れたな」
「……罪人? わたくしが?」
訳がわからない。そういった風に首をひねるブリアナに、ルーファスは怒りを通り越して、いっそ恐ろしくなった。
「……ルーファス様。その女は聖女とはいえ、他国の孤児、他国の平民。公爵令嬢であるわたくしと、その女。この国にとって、どちらが大切かなんて、考える必要もないのではなくて?」
「……お前は本当に、何も見えてはいないのだな」
「どういうことですか?」
「──わたしにお前の企みとこの場所を教えてくれたのは、お前の侍女だ」
ブリアナは、はち切れんばかりに目を見張った。
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