不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ

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 まるで予想していない問いだったのだろう。ロッティは言葉の意味が理解できないように、ただ、目を見張っていた。その様子に、溜め込んでいたリンジーの感情がみる間に爆発していく。

「ないでしょうね。生まれてからずっと親に養ってもらい、結婚してからはジェフ様のお金で贅沢三昧。羨ましいったらないわ」

「あ、あの……」

「でもね。苦労もせず育った人って、何の魅力もないわよね。ただ弱いだけで、守られることしか能がない」

 クックッ。
 リンジーが顔を歪め、笑う。

「それって、いざ一人になったとき、何にも出来ないってことよね。情けない。誰かに守られてないと生きていけないなんて、ただのお飾りだわ。人形にだって出来るじゃない」

 リンジーはロッティの返答なんて構わず、これまでの人生を語りはじめた。最初は戸惑っていたロッティも、リンジーの異常さを感じとったのか、脅えながらも静かに耳を傾けはじめた。

「ジェフ様は、いつもこう言ってくれるの。妻に比べて、きみは何て可哀想なんだ。これまで偉かったね。頑張ったねって」

 全てを語り終えたリンジーは、最後に、頬を染めながらこう締めくくった。喉が渇いたのか、カップに残っていた紅茶を全て飲みほしてから、再びロッティに視線を向けた。

「ねえ、奥様。ジェフ様はこの科白を、いつ言ってくださると思う?」

 先ほどまでの表情とはうってかわり、リンジーの顔はワクワクとしていた。ロッティは頭が混乱していて、答えることが出来ない。するとリンジーは「早く答えて!」と、苛ついたようにテーブルを叩いた。ロッティの身体が震える。リンジーは鼻で笑った。

「やだわ。こんなことぐらいでおびえちゃって。まるで小動物ね」

 リンジーは椅子から立ち上がると、ロッティに近付いた。それからおびえるロッティの耳元で「──あたし、もう何度もジェフ様に抱いてもらっているの」と囁いた。

 ロッティの目が、驚愕に見開く。ゆっくりと顔を動かすと、醜く笑うリンジーと視線がぶつかった。ふふ。リンジーが楽しげに微笑む。

「愛を確め合ったあと、ジェフ様が言ってくれるの。苦労知らずの妻より、きみの方が何倍も魅力的だって。愛しているって」

 ロッティが「……嘘」とこぶしを握る。両目に涙を滲ませながら。

「なら、ジェフ様に聞いてみたら?」

 自信たっぷりにリンジーが答える。このときのリンジーの中ではもう、ジェフの一番は自分になっていた。この女さえいなければ、障害はなくなる。誰に気を使うことなく、ジェフとずっと居られる。

 それが揺るぎない、リンジーにとっての真実となっていた。
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