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1章 始まりの街ロンドン
03 事件発生
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ドーソン家の別荘をホテルにしたと言われるだけあって、中に入って直ぐに大きな絵画が来客者を出迎えた。
「絵画は売りに出されなかったのか」
ホルトはここまで案内してくれた青年に訊いた。
「この絵画はドーソン家の肖像画です。有名な画家に描かせたものなら、その画家の名でそれなりに売れたかも知れませんが、この絵を描いた画家はそこまで有名ではなかった筈です」
「そうか。君に色々と質問して悪いな。それにしても君は若いのに物知りだ。名を訊いてなかったな。私はホルトだ」
それからホルトは全員を紹介する。
青年は帽子を取り顔を見せた。ブルーの瞳が美しい青年だった。
「俺はパーカー」
「フルネームは?」
「エニス・パーカー」
「エニスか。歳は幾つ?」
「19です」
「ではもうすぐで二十歳だ。その若さでハンターか。ハンター歴は何年だ」
「二年です」
「ほぉ」
「でも、スミスさんは俺のことをまだ一人前だと認めてはくれない」
その言い方はどこか不満がありそうな感じだった。
「では、俺達を救ってくれたのは」
「俺だ」
後ろから渋い声がした。
振り返ると、同じハンターの格好をしたスキンヘッドの中年が立っていた。
「俺がスミスだ」
「見事な腕前だった。おかげで此方は助かった」
「お礼なんていい。当たり前のことをしただけだ。あんたらは? 見た感じ登山客って感じじゃなさそうだな」
そう言いながらスミスはジロジロと見回した。
「そうだ。俺達は依頼で来た」
「そうか。だが、残念なことにこの天候じゃ無理だ。もう外は吹雪。今から外に出るのは自殺行為だ」
「実は泊めてもらおうと思っていたところだ」
「賢明だ」
ホルトは皆の方へ振り向くと「ということで今から部屋がとれるか訊いてくる」と言って受付へ向かっていった。
俺達は暫く待つことにした。
そして、ホルトが戻ってきて「部屋はとれた」と言った。それを聞いて皆が安堵した表情を浮かべた。
「ただ、とれた部屋は二人部屋二つと一人部屋が一つだ。贅沢は言えない」
そうして、オッドとホワイトは同じ部屋で、残りがホルトとソニエール、一人部屋は自分が使うことになった。
部屋割りが決まったところで、ルームキーを渡された。
「なくすなよ」
そこにホテルの従業員、スーツ姿の背が高い男がやって来た。
「皆様、ようこそいらっしゃいました。わたくし、モルダーと申します。お疲れかと思いますので先に部屋のご案内をさせていただきます。どうぞ此方へ」
そう言って、階段をのぼり二階へと向かった。
従業員のモルダーは歩きながら俺達へ説明を始めた。
「まず、ホテルのご説明から。当ホテルはかつて貴族だった別荘を買い取り、ホテルへとリフォームをしました。無論、貴族の別荘だったという名残はあります。客室の中には元からあったものもあります。勿論、新たに客室にした部屋もありますが、合わせて12部屋の客室がございます。うち、二人部屋は10部屋、残りは一人用となります。客室は全て二階になります。一階はパーティー用の食堂、ロビー、御用の際はロビーのカウンターへ起こし下さい。食事は3食全て客室へお届けに参ります。時間は朝は8時、昼は12時、夜は6時となります。しかし、今日は急にいらしたこともあってか皆様方の夕食の準備に遅れが出ます。よって、本日のみ夕方の皆様方への提供時間は夜の7時となります」
「遅いなぁ」とソニエールが言った。
「申し訳ありません。これもシェフは一人で切り盛りしている為、これが限界となります。どうかご了承下さいませ」
「ソニエール、文句言っても仕方がない。急で部屋が確保出来ただけよしとしよう」
「まぁ、それもそうだな」
「ありがとうございます」
それから、俺達は各客室へと案内された。
俺の部屋は一番端で、部屋番号は012号室だった。011号室はさっき説明があった俺と同じスペースの一人部屋で、その部屋を挟んだ状態で009号室と010号室が二人それぞれの客室になる。
ただ、ホテルとは言え内装は豪華でまさに貴族の暮らし、といった雰囲気のある部屋で泊まれるのは夢が一つ実現した気分だった。 ……言うまでもないが、実際は現実ではない。それでも、ゲームの世界ではそれをよりリアルに体験させてくれる。
ドアのノックがした。
俺は返事をしてドアを開けた。
「お食事をお持ちしました」
ノックをしてきたのはモルダーだった。
食事はコース料理で、前菜、スープ、メイン、デザートだった。かなりの量だ。
ゲーム世界でも味覚、食感がリアルに再現されており、満足いった。
皿が下げられ、あとは寝るだけになった。
部屋には窓があり、そこから外の様子が伺えるのだが、かなりの吹雪になっていて、本当に泊まっていってよかったと思う。
俺はふかふかのベッドに寝っ転がった。
「ああ~俺の部屋のベッドと交換して欲しい」
願望を口にしていると、どっからか悲鳴がした。
なんだと起き上がり、部屋を出た。すると、通路のある部屋の前で人が集まっているではないか。
イベント発生か!?
俺は皆が集まっている所へ向かった。
「なにかあったんですか?」
そこは004号室の部屋だった。部屋の番号は扉に書かれてあった。
だが、4という数字は本来縁起がよくないとされ、部屋番号や病室には4という部屋番号はない筈。それとも舞台は日本ではないからなのか?
その扉は開いており、部屋の奥へが見えた。
だが、それだけでは何が起きたのか分からない。なのに、皆は部屋に入ろうとさえしなかった。
「どうしたんですか?」
近くにいたエニスに訊いた。
「それは……」答えに困った顔をした。
俺はますます気になって部屋の中に入ろうとした。
「いや、入らない方が」
でも、俺は部屋の中に入った。そして、目撃した。
ベッドの上に寝ているように見える客の胸辺りに掛け布団の上から深くナイフが突き刺さったまま、赤い血だけが滲んでいた。
004号室の客は死んでいた。
「絵画は売りに出されなかったのか」
ホルトはここまで案内してくれた青年に訊いた。
「この絵画はドーソン家の肖像画です。有名な画家に描かせたものなら、その画家の名でそれなりに売れたかも知れませんが、この絵を描いた画家はそこまで有名ではなかった筈です」
「そうか。君に色々と質問して悪いな。それにしても君は若いのに物知りだ。名を訊いてなかったな。私はホルトだ」
それからホルトは全員を紹介する。
青年は帽子を取り顔を見せた。ブルーの瞳が美しい青年だった。
「俺はパーカー」
「フルネームは?」
「エニス・パーカー」
「エニスか。歳は幾つ?」
「19です」
「ではもうすぐで二十歳だ。その若さでハンターか。ハンター歴は何年だ」
「二年です」
「ほぉ」
「でも、スミスさんは俺のことをまだ一人前だと認めてはくれない」
その言い方はどこか不満がありそうな感じだった。
「では、俺達を救ってくれたのは」
「俺だ」
後ろから渋い声がした。
振り返ると、同じハンターの格好をしたスキンヘッドの中年が立っていた。
「俺がスミスだ」
「見事な腕前だった。おかげで此方は助かった」
「お礼なんていい。当たり前のことをしただけだ。あんたらは? 見た感じ登山客って感じじゃなさそうだな」
そう言いながらスミスはジロジロと見回した。
「そうだ。俺達は依頼で来た」
「そうか。だが、残念なことにこの天候じゃ無理だ。もう外は吹雪。今から外に出るのは自殺行為だ」
「実は泊めてもらおうと思っていたところだ」
「賢明だ」
ホルトは皆の方へ振り向くと「ということで今から部屋がとれるか訊いてくる」と言って受付へ向かっていった。
俺達は暫く待つことにした。
そして、ホルトが戻ってきて「部屋はとれた」と言った。それを聞いて皆が安堵した表情を浮かべた。
「ただ、とれた部屋は二人部屋二つと一人部屋が一つだ。贅沢は言えない」
そうして、オッドとホワイトは同じ部屋で、残りがホルトとソニエール、一人部屋は自分が使うことになった。
部屋割りが決まったところで、ルームキーを渡された。
「なくすなよ」
そこにホテルの従業員、スーツ姿の背が高い男がやって来た。
「皆様、ようこそいらっしゃいました。わたくし、モルダーと申します。お疲れかと思いますので先に部屋のご案内をさせていただきます。どうぞ此方へ」
そう言って、階段をのぼり二階へと向かった。
従業員のモルダーは歩きながら俺達へ説明を始めた。
「まず、ホテルのご説明から。当ホテルはかつて貴族だった別荘を買い取り、ホテルへとリフォームをしました。無論、貴族の別荘だったという名残はあります。客室の中には元からあったものもあります。勿論、新たに客室にした部屋もありますが、合わせて12部屋の客室がございます。うち、二人部屋は10部屋、残りは一人用となります。客室は全て二階になります。一階はパーティー用の食堂、ロビー、御用の際はロビーのカウンターへ起こし下さい。食事は3食全て客室へお届けに参ります。時間は朝は8時、昼は12時、夜は6時となります。しかし、今日は急にいらしたこともあってか皆様方の夕食の準備に遅れが出ます。よって、本日のみ夕方の皆様方への提供時間は夜の7時となります」
「遅いなぁ」とソニエールが言った。
「申し訳ありません。これもシェフは一人で切り盛りしている為、これが限界となります。どうかご了承下さいませ」
「ソニエール、文句言っても仕方がない。急で部屋が確保出来ただけよしとしよう」
「まぁ、それもそうだな」
「ありがとうございます」
それから、俺達は各客室へと案内された。
俺の部屋は一番端で、部屋番号は012号室だった。011号室はさっき説明があった俺と同じスペースの一人部屋で、その部屋を挟んだ状態で009号室と010号室が二人それぞれの客室になる。
ただ、ホテルとは言え内装は豪華でまさに貴族の暮らし、といった雰囲気のある部屋で泊まれるのは夢が一つ実現した気分だった。 ……言うまでもないが、実際は現実ではない。それでも、ゲームの世界ではそれをよりリアルに体験させてくれる。
ドアのノックがした。
俺は返事をしてドアを開けた。
「お食事をお持ちしました」
ノックをしてきたのはモルダーだった。
食事はコース料理で、前菜、スープ、メイン、デザートだった。かなりの量だ。
ゲーム世界でも味覚、食感がリアルに再現されており、満足いった。
皿が下げられ、あとは寝るだけになった。
部屋には窓があり、そこから外の様子が伺えるのだが、かなりの吹雪になっていて、本当に泊まっていってよかったと思う。
俺はふかふかのベッドに寝っ転がった。
「ああ~俺の部屋のベッドと交換して欲しい」
願望を口にしていると、どっからか悲鳴がした。
なんだと起き上がり、部屋を出た。すると、通路のある部屋の前で人が集まっているではないか。
イベント発生か!?
俺は皆が集まっている所へ向かった。
「なにかあったんですか?」
そこは004号室の部屋だった。部屋の番号は扉に書かれてあった。
だが、4という数字は本来縁起がよくないとされ、部屋番号や病室には4という部屋番号はない筈。それとも舞台は日本ではないからなのか?
その扉は開いており、部屋の奥へが見えた。
だが、それだけでは何が起きたのか分からない。なのに、皆は部屋に入ろうとさえしなかった。
「どうしたんですか?」
近くにいたエニスに訊いた。
「それは……」答えに困った顔をした。
俺はますます気になって部屋の中に入ろうとした。
「いや、入らない方が」
でも、俺は部屋の中に入った。そして、目撃した。
ベッドの上に寝ているように見える客の胸辺りに掛け布団の上から深くナイフが突き刺さったまま、赤い血だけが滲んでいた。
004号室の客は死んでいた。
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