探偵主人公

アズ

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1章 始まりの街ロンドン

04 登場人物

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 一旦、全員は一階のロビーへと皆集まった。
「誰が殺されたんだ?」
 そう訊いたのはソニエールだった。
「004号室のお客様はサム・ラーソン様です」
「あそこは一人部屋だろ? もう一人は?」
「仰る通り二人部屋ですが、ラーソン様はそれを一人でご利用になられていました。その方が広々と使えるからと仰られました」
「第一発見者は?」
「私です。ワインを頼まれましたのでお持ちしましたがノックをしても返事がなく、しかし扉に鍵はかかっておりませんでしたので失礼すると、既にラーソン様は……」
「それじゃ悲鳴をあげたのはあんたか?」
「いえ。直ぐに他の従業員を呼んで、悲鳴をあげたのはオリビアです」
「申し訳ありません」
 女の従業員は頭を下げた。
「いや、別にいいんだ。すると、従業員は全員見たんだな」
「はい。といっても従業員は私とオリビアとシェフのカーティスだけですが」
「ここの経営者はどうなっている」
「ホテルの経営はヒーリー様になります」
 それを聞いたホルトは驚いた。
「ヒーリー家か。慈善家で有名な方だ」
「はい。しかし、ヒーリー様は他の事業もありお忙しい身。たまにいらっしゃるぐらいで、管理は私に一任しております」
「そうか。なら、こういった場合どうするんだ?」
「流石に殺人事件に遭遇するとは想定外の出来事でして……それにこの天候では今日中に警察の方が来るのは難しいでしょう」
「え!? それじゃ私達は人を殺した犯人と一緒にいなきゃいけないって言うわけ!?」そう言ったのは若い女性だった。
「申し訳ありませんがフィービー様、皆様には明日になるまで鍵をかけて用心していただく他ありません」
「だが、こんな天候だ。犯人だって俺達と同じく足止めをくらっているんじゃないのか? だったら犯人はこのホテルの中にいる筈だ。そいつを探して捕まえた方が早いんじゃないのか?」と言ったのはフィービーのそばに立っていた男だ。
「マーク様、それでは危険過ぎます」
「全員で探せば問題ないだろ。それとも、全員がホテル内を歩き回られたら困ることでもあるのか?」
「いったい何のことを言っておられるのですか」
「とぼけるな! 噂では貪欲なドーソン家がこの別荘に大金を隠したって話だ。秘密の金庫って言われてる」
 それを聞いて二人の男が反応したのをジークは見逃さなかった。
「それは噂であって実際にはそのようなものは見つかっておりません。第一、その大金があるのでしたらドーソン家が没落することもなかったのでは?」
「いや、その大金は汚れた金で、出来れば使いたくはなかったとか。ドーソン家ならあり得そうな話だ。実はそれを狙ってたんじゃないのか、ヒーリーって奴は」
「そんなまさか!」
「でなきゃ、こんな場所に没落した貴族の別荘を買い取ってホテルにする意味あるか? 狙いはドーソン家の秘密の金庫じゃかいのかよ。それなら納得がいく!」
「ヒーリー家を侮辱することはいくらお客様でも許されませんぞ」
「だったら何だって言うんだよ! ええ? 俺達を追い出すのか?」
「流石にそのようなことは致しません」
「まぁまぁ、冷静になりましょう」
 二人の間に入ったのは小太りのシェフ、カーティスだ。
 すると、ホルトは皆の前で一歩出た。
「お互いを監視しながら犯人を探すのも結構だが、まずはお互いに自己紹介から始めないか? 俺はホルトだ。それから」そう言ってホルトは俺達の紹介もついでに行った。
「それで、あんたは?」
「俺はマークだ。それ以上は言うつもりはないぞ」
「どうして?」
「全員がバカ正直に答えるとは思えないからだ。もういい。こいつの言うとおり部屋に戻って鍵を閉めるさ。行くぞ」
 男は女性にそう言ってから、二人は階段へと向かっていってしまった。
「それなら俺達もそうさせてもらおうか」
 さっき、秘密の金庫で反応した二人だった。
 その二人も自分の部屋へと向かっていった。
 他の客達も各々部屋へ戻っていく。そんな中、モルダーが俺達のところへ来た。
「先程はお恥ずかしい姿を晒してしまいました」
「いや、あんたの指摘は正しい」とホルトは言った。
「実はお願いがありまして、お客様はギルドの会員登録もしてありますし、身分がその……他のお客様と違ってそのぶん判明しております。つまり、あなた方を信用した上でお願いしたいのですが、他のお客様をお守りするのにご協力をお願いしたいのです。本来、お客様に対しお願いすることではないことは重々承知しておりますが、流石に我々三人では不可能に近いです」
「どうする、皆?」
「俺はどっちだっていいぜ」とソニエールが言うと、他の皆もそれに同意した。
「ジークはどうだ?」
「あ、俺も構いません」
「なら、協力しよう」
「ありがとうございます」
「だが、その前に泊まっている客達のことを教えてくれないか。さっき、自己紹介を断られちまったし」
「分かりました。まず、先程のマーク様ですが、フィービー様とは夫婦の関係にあります。宿泊しているお部屋は001号室になります」
「こんなこと訊いちゃ悪いが、ここに来るような客ってどんなんだ? 正直、吹雪とかになれば外には出れないだろうし、周りに観光があるような場所でもないだろ」
「はい、仰る通りです。特にこの時期はハンターしか宿泊しません。冬でなければ、登山シーズンをむかえますので、登山客には一定のご利用はあります」
「因みにその夫婦がホテルに宿泊した理由とかは?」
「流石にそこまではお客様にお伺いは此方の方からは致しません」
「まぁ、そうか」
「ですが、今の会話から察するにあの夫婦の狙いは秘密の金庫なのかもしれません。たまに、宿泊されるお客様の中にホテル内を散策しながら秘密の金庫の場所を探している方は実際にいらっしゃいます。中には事務所まで侵入しようとした人までいました」
「だが、ないんだろ」
「はい。少なくとも我々は承知しておりません」
「他の宿泊客も教えてくれ」
「はい。先程、秘密の金庫の話をマーク様がされた際に少し反応を見せたお客様がいました。その男性客二人はマット・ディークス様とリチャード・ウォーカー様となります。お部屋は002号室になります」
「その二人はハンターなのか?」
「いえ、違います。ここへは初めてのお客様になります」
「覚えているのか?」
「はい」
「凄いな」
「お二人についてご質問は?」
「あの二人も秘密の金庫狙いだと思うか?」
「分かりませんが、全くないとは断定出来ないかと」
「なる程。ここに来ている客はなんだか怪しいな」
「いえ、全てがそうとは限らないと思います。例えば、008号室はハンター二人がお泊りになられています」
「ああ、その二人なら知っている」
「そうでしたか。スミス様とエニス・パーカー様です。お二人は冬の時に此方をご利用になられます」
「逆にあんたから見て怪しい奴はいるのか?」
「それはなんとも……正直、ハンターのお二人以外は初めてのお客様なので」
「え!? そうなのか」
「はい」
「それで、003号室は誰が宿泊しているんだ?」
「004号室の隣ですね。そこはチャーリー様とトム様です。此方は親子になります」
「今度は母親とその息子か。ロビーで見かけたが、若いお母さんだったな」
「そうですね。私からもそう見えました。20代でしょう。そして、申し上げた通り、004号室はサム・ラーソン様になります。005号室はキング夫妻となります」
「夫婦でよく来る場所なのか?」
「いえ、やはりこの時期は珍しいかと」
「すまない、続けてくれ」
 ホルトはそう言ったが、かなり重要なことがある。それは、殺人現場の左右の客室には人が泊まっていたということだ。
「一ついいですか。その003号室と005号室の方と実際にお話が訊けたりは出来ないんでしょうか?」
「後で二つの部屋からお伺いしておきます」
「あ、もう大丈夫です」
「はい。それでは006号室ですが、ノーラン様とムーア様になります。若い男性二人組になります。それでなんですが007号室は現在使われていないんです」
「007号室に何かあるのか?」
「007号室には妙な噂がありまして、今までは普通に客室として使ってきましたが、そこに宿泊されたお客様全員が幽霊を見たと申し上げまして」
「幽霊!?」
「私は霊など信じてはおりませんが、これ以上噂が広がっては影響が出ると思い、使用を控えているのです」
「なる程」
「最後が011号室の一人部屋に宿泊されているドレイク様となります」
「ありがとう」とホルトはお礼を言った。
「いえ。お役に立てるならなんでもお申しつけください。犯人が見つかれば本当はいいのですが」
「あの、でしたら現場をもう一度見せていただくことは出来ませんか?」とジークは訊いてみた。
「ええ、いいでしょう」
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