8 / 124
1章 始まりの街ロンドン
08 チャーリー親子の話
しおりを挟む
モルダーは二つの部屋から承諾を得たということで、まず先に003号室のチャーリー親子の話を訊くことにした。
親子は共に髪は黒く、茶色い瞳をしていた。子どもの方は小さく、大人しく母親の隣に座っており、手を繋いで此方をじっと見ていた。それは見知らぬ人を見て警戒されているようでもあった。
「ジークです」
「チャーリーです。この子はトムです」
「お幾つなんですか?」
「6歳です」
「失礼ですが今日宿泊された理由をお伺いしても宜しいですか?」
「はい。私達はロンドンに住んでいたのですが、切り裂きジャック事件ですっかり怖くなってしまい、ロンドンを明日出る予定でした。しかし、それまでロンドンにいるのも怖くて、でもここなら切り裂きジャックも来ないだろうと知り合いがここを紹介して下さったんです」
「その方とは」
「ハンターをしていましたが、もう年齢もあって引退された方です。その方はよく冬の時期はここを利用していたと言っていましたので、宿泊することにしました」
「疑うわけじゃありませんが、隣街までいって宿泊してもよかったのではありませんか?」
「せっかくすすめられたので、申し訳ないと思ったからです」
「なる程、ありがとうございます。それで、お二人はお食事はいつとりましたか?」
「18時過ぎです」
「それは私も保証します」とモルダーは言った。
「それから食後はどうされましたか?」
「部屋にいました」
「一度も出ていない?」
「はい。あ、それは騒ぎになる前までってことです」
「はい、分かっています。では、その間、隣の部屋から物音とか何か耳にしませんでしたか?」
「いえ、ありません。多分ですが、食事の時の出入りでドアの開け閉めが聞こえたぐらいだったと思います。あまり気にしませんでした」
「もし、隣の部屋で争いごとがあれば気づけたと思いますか?」
「はい、多分ですが。でも、隣からはそのような音は耳にしませんでした」
「ありがとうございます。確かに、隣の部屋は争った痕跡は見られませんでした。恐らくは被害者が抵抗されることなく殺人が行われたと思います」
「でも、知らない人が部屋に入ってきたら流石にそれはないんじゃありませんか?」
「被害者はベッド上で殺害されています。被害者は薬か何かで眠らされた可能性がありますが、まだ確証はありません。警察が来て検死を行えばそれもハッキリすると思います」
「まるで、探偵さんみたいですね」
「え?」
「事件を解決しようとしているのですよね?」
「まぁ……このままというわけにもいかないと思いますし。それで、チャーリーさん、18時から隣の部屋のドアの開閉の音なんですが、何回耳にしましたか?」
「さぁ……そこまでは覚えていません」
「ですが、とても大事な事なんです」
そう言われ、チャーリーはもう一度記憶を遡った。
「古い記憶というわけではないでしょ?」
「ええ、そうですが……ああ! 多分3回だったと思います」
「3回ですね? 間違いない?」
「そう言われると自信がなくなります。でも、3回だったと思います」
「3回となると、モルダーさんが隣の部屋に食事を届け一旦出たのが1回目で、食事後にモルダーさんが下げに来た時が2回目だとすると、2回目の時にワインを注文されワインを持ったモルダーさんが3回目の扉を開ける……」
「それじゃ犯人がその間に004号室に入るタイミングがないじゃないか」とホルトは言った。
それから皆は自然とモルダーに視線が向けられた。
「あんたなら、この犯行が一番可能なんだよな」とソニエールは言った。
「勘弁して下さい! 絶対に私ではありません。神に誓って!」
「神には幾らでも誓えるだろ」
「まさか!」
「よく言うだろ、第一発見者をまず疑えって」
「どう思う、ジーク」とホルトは訊いた。
「確かにモルダーさんがこの場合一番怪しいかたちになるし、警察の人でもまずモルダーさんを疑うと思います」
モルダーは涙目になった。
「しかし、これは計画された犯行。一番怪しまれるモルダーさんがやったと決めつけるのはまだ早いと思います」
「だがよ、チャーリーさんの証言が正しければ犯人はどうやって004号室に忍び込めたって言うんだ?」
「まだ、それは分からないけれど、例えば犯人は既に004号室に潜んでいたとか。その後でモルダーさんが発見し、人が集まったけれど、あの時に004号室を隅々まで調べはしませんでした」
「つまり、あの時に犯人はいたかもしれないってことか?」
「ただ、犯人はどうやって被害者に気づかれずに睡眠薬を飲ませたのか。普通に考えれば、食事の中に混入させた場合ですが、そうなるとタイミングが限られます。調理場に出入りできる人に限られますが、それでは自分が容疑者のリストに入ってしまう。そんなリスクを犯してまで計画された犯行なのか?」
「謎は深まるばかりだな」
親子は共に髪は黒く、茶色い瞳をしていた。子どもの方は小さく、大人しく母親の隣に座っており、手を繋いで此方をじっと見ていた。それは見知らぬ人を見て警戒されているようでもあった。
「ジークです」
「チャーリーです。この子はトムです」
「お幾つなんですか?」
「6歳です」
「失礼ですが今日宿泊された理由をお伺いしても宜しいですか?」
「はい。私達はロンドンに住んでいたのですが、切り裂きジャック事件ですっかり怖くなってしまい、ロンドンを明日出る予定でした。しかし、それまでロンドンにいるのも怖くて、でもここなら切り裂きジャックも来ないだろうと知り合いがここを紹介して下さったんです」
「その方とは」
「ハンターをしていましたが、もう年齢もあって引退された方です。その方はよく冬の時期はここを利用していたと言っていましたので、宿泊することにしました」
「疑うわけじゃありませんが、隣街までいって宿泊してもよかったのではありませんか?」
「せっかくすすめられたので、申し訳ないと思ったからです」
「なる程、ありがとうございます。それで、お二人はお食事はいつとりましたか?」
「18時過ぎです」
「それは私も保証します」とモルダーは言った。
「それから食後はどうされましたか?」
「部屋にいました」
「一度も出ていない?」
「はい。あ、それは騒ぎになる前までってことです」
「はい、分かっています。では、その間、隣の部屋から物音とか何か耳にしませんでしたか?」
「いえ、ありません。多分ですが、食事の時の出入りでドアの開け閉めが聞こえたぐらいだったと思います。あまり気にしませんでした」
「もし、隣の部屋で争いごとがあれば気づけたと思いますか?」
「はい、多分ですが。でも、隣からはそのような音は耳にしませんでした」
「ありがとうございます。確かに、隣の部屋は争った痕跡は見られませんでした。恐らくは被害者が抵抗されることなく殺人が行われたと思います」
「でも、知らない人が部屋に入ってきたら流石にそれはないんじゃありませんか?」
「被害者はベッド上で殺害されています。被害者は薬か何かで眠らされた可能性がありますが、まだ確証はありません。警察が来て検死を行えばそれもハッキリすると思います」
「まるで、探偵さんみたいですね」
「え?」
「事件を解決しようとしているのですよね?」
「まぁ……このままというわけにもいかないと思いますし。それで、チャーリーさん、18時から隣の部屋のドアの開閉の音なんですが、何回耳にしましたか?」
「さぁ……そこまでは覚えていません」
「ですが、とても大事な事なんです」
そう言われ、チャーリーはもう一度記憶を遡った。
「古い記憶というわけではないでしょ?」
「ええ、そうですが……ああ! 多分3回だったと思います」
「3回ですね? 間違いない?」
「そう言われると自信がなくなります。でも、3回だったと思います」
「3回となると、モルダーさんが隣の部屋に食事を届け一旦出たのが1回目で、食事後にモルダーさんが下げに来た時が2回目だとすると、2回目の時にワインを注文されワインを持ったモルダーさんが3回目の扉を開ける……」
「それじゃ犯人がその間に004号室に入るタイミングがないじゃないか」とホルトは言った。
それから皆は自然とモルダーに視線が向けられた。
「あんたなら、この犯行が一番可能なんだよな」とソニエールは言った。
「勘弁して下さい! 絶対に私ではありません。神に誓って!」
「神には幾らでも誓えるだろ」
「まさか!」
「よく言うだろ、第一発見者をまず疑えって」
「どう思う、ジーク」とホルトは訊いた。
「確かにモルダーさんがこの場合一番怪しいかたちになるし、警察の人でもまずモルダーさんを疑うと思います」
モルダーは涙目になった。
「しかし、これは計画された犯行。一番怪しまれるモルダーさんがやったと決めつけるのはまだ早いと思います」
「だがよ、チャーリーさんの証言が正しければ犯人はどうやって004号室に忍び込めたって言うんだ?」
「まだ、それは分からないけれど、例えば犯人は既に004号室に潜んでいたとか。その後でモルダーさんが発見し、人が集まったけれど、あの時に004号室を隅々まで調べはしませんでした」
「つまり、あの時に犯人はいたかもしれないってことか?」
「ただ、犯人はどうやって被害者に気づかれずに睡眠薬を飲ませたのか。普通に考えれば、食事の中に混入させた場合ですが、そうなるとタイミングが限られます。調理場に出入りできる人に限られますが、それでは自分が容疑者のリストに入ってしまう。そんなリスクを犯してまで計画された犯行なのか?」
「謎は深まるばかりだな」
0
あなたにおすすめの小説
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが
まっど↑きみはる
ファンタジー
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」
そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる