探偵主人公

アズ

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1章 始まりの街ロンドン

08 チャーリー親子の話

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 モルダーは二つの部屋から承諾を得たということで、まず先に003号室のチャーリー親子の話を訊くことにした。
 親子は共に髪は黒く、茶色い瞳をしていた。子どもの方は小さく、大人しく母親の隣に座っており、手を繋いで此方をじっと見ていた。それは見知らぬ人を見て警戒されているようでもあった。
「ジークです」
「チャーリーです。この子はトムです」
「お幾つなんですか?」
「6歳です」
「失礼ですが今日宿泊された理由をお伺いしても宜しいですか?」
「はい。私達はロンドンに住んでいたのですが、切り裂きジャック事件ですっかり怖くなってしまい、ロンドンを明日出る予定でした。しかし、それまでロンドンにいるのも怖くて、でもここなら切り裂きジャックも来ないだろうと知り合いがここを紹介して下さったんです」
「その方とは」
「ハンターをしていましたが、もう年齢もあって引退された方です。その方はよく冬の時期はここを利用していたと言っていましたので、宿泊することにしました」
「疑うわけじゃありませんが、隣街までいって宿泊してもよかったのではありませんか?」
「せっかくすすめられたので、申し訳ないと思ったからです」
「なる程、ありがとうございます。それで、お二人はお食事はいつとりましたか?」
「18時過ぎです」
「それは私も保証します」とモルダーは言った。
「それから食後はどうされましたか?」
「部屋にいました」
「一度も出ていない?」
「はい。あ、それは騒ぎになる前までってことです」
「はい、分かっています。では、その間、隣の部屋から物音とか何か耳にしませんでしたか?」
「いえ、ありません。多分ですが、食事の時の出入りでドアの開け閉めが聞こえたぐらいだったと思います。あまり気にしませんでした」
「もし、隣の部屋で争いごとがあれば気づけたと思いますか?」
「はい、多分ですが。でも、隣からはそのような音は耳にしませんでした」
「ありがとうございます。確かに、隣の部屋は争った痕跡は見られませんでした。恐らくは被害者が抵抗されることなく殺人が行われたと思います」
「でも、知らない人が部屋に入ってきたら流石にそれはないんじゃありませんか?」
「被害者はベッド上で殺害されています。被害者は薬か何かで眠らされた可能性がありますが、まだ確証はありません。警察が来て検死を行えばそれもハッキリすると思います」
「まるで、探偵さんみたいですね」
「え?」
「事件を解決しようとしているのですよね?」
「まぁ……このままというわけにもいかないと思いますし。それで、チャーリーさん、18時から隣の部屋のドアの開閉の音なんですが、何回耳にしましたか?」
「さぁ……そこまでは覚えていません」
「ですが、とても大事な事なんです」
 そう言われ、チャーリーはもう一度記憶を遡った。
「古い記憶というわけではないでしょ?」
「ええ、そうですが……ああ! 多分3回だったと思います」
「3回ですね? 間違いない?」
「そう言われると自信がなくなります。でも、3回だったと思います」
「3回となると、モルダーさんが隣の部屋に食事を届け一旦出たのが1回目で、食事後にモルダーさんが下げに来た時が2回目だとすると、2回目の時にワインを注文されワインを持ったモルダーさんが3回目の扉を開ける……」
「それじゃ犯人がその間に004号室に入るタイミングがないじゃないか」とホルトは言った。
 それから皆は自然とモルダーに視線が向けられた。
「あんたなら、この犯行が一番可能なんだよな」とソニエールは言った。
「勘弁して下さい! 絶対に私ではありません。神に誓って!」
「神には幾らでも誓えるだろ」
「まさか!」
「よく言うだろ、第一発見者をまず疑えって」
「どう思う、ジーク」とホルトは訊いた。
「確かにモルダーさんがこの場合一番怪しいかたちになるし、警察の人でもまずモルダーさんを疑うと思います」
 モルダーは涙目になった。
「しかし、これは計画された犯行。一番怪しまれるモルダーさんがやったと決めつけるのはまだ早いと思います」
「だがよ、チャーリーさんの証言が正しければ犯人はどうやって004号室に忍び込めたって言うんだ?」
「まだ、それは分からないけれど、例えば犯人は既に004号室に潜んでいたとか。その後でモルダーさんが発見し、人が集まったけれど、あの時に004号室を隅々まで調べはしませんでした」
「つまり、あの時に犯人はいたかもしれないってことか?」
「ただ、犯人はどうやって被害者に気づかれずに睡眠薬を飲ませたのか。普通に考えれば、食事の中に混入させた場合ですが、そうなるとタイミングが限られます。調理場に出入りできる人に限られますが、それでは自分が容疑者のリストに入ってしまう。そんなリスクを犯してまで計画された犯行なのか?」
「謎は深まるばかりだな」
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