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1章 始まりの街ロンドン
09 005号室
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チャーリー親子と話を終えたジーク達は005号室へと向かった。モルダーが先にその部屋の扉をノックした。
「キング様、モルダーです」
しかし、反応がない。モルダーはもう一度ノックをしたが同じく反応がなかった。
「キング夫妻には話しを訊きにいくと了承を得ていたんだよな」とホルトは訊いた。
「は、はい。その通りです」
「まさか、寝ちまったのか?」とソニエールは言った。
「そんな筈はないかと思いますが」
ジークはなんだか嫌な予感がした。
「キング夫妻、失礼します」
そう言ってドアノブに手をかけた。
「鍵は閉まっていると思いますよ」とモルダーは言ったが、ドアノブは抵抗せず簡単に回った。
「鍵は開いているようです」
ジークはそう言って中へ入った。
部屋は真っ暗で、まるでサム・ラーソンの部屋と似た状況だった。
唯一、暖炉だけが明るかった。
部屋の奥へジーク達が進むと、ベッドの上で夫婦並んでサム・ラーソンの時のように同じ刃物で二人揃って胸辺りに突き刺さった状態で二人とも死んでいた。
「ああ! そんな!!」
モルダーは悲鳴のような声をあげた。
「おい、見てみろ!」
何かを見つけたホルトが叫ぶ。
それは白いレースだ。この時間、本来ならカーテンがかかっている筈だが、そんなことよりも、白いレースに赤く書かれた文字。
切り裂きジャック
「おい、切り裂きジャックだと!?」
この場にいた全員が驚いた。
「まさか、このホテルに切り裂きジャックがいるって言うのか! 冗談だろ!?」とソニエールは慌てた様子で「早くホテルから出た方がいい! 全員殺されるぜ!」と叫んだ。
だが、冷静にホルトは止める。
「待て。外の天気を見ろ。そんなことをすればそれこそ無事では済まされない」
「ここにいても同じこったろ! 第一なんで殺人事件が起きたって言うのにキング夫妻は部屋の鍵を閉めていかなかったんだ」
ソニエールの言うとおりだった。いくら、あとから自分達が訪ねに来ると分かっていたとしても、その間鍵をかけておかなかったのは納得いかない。犯人が開けたまま逃走したから? いや、だったら犯人はどうやってこの部屋に侵入できた?
「あの、もしかしてこれのせいかも」そうモルダーがいきなり言い出した。
皆がモルダーの方を向くと、モルダーはジークが開けた扉の内側を見せた。そのドアには同じく赤い文字で『鍵をかけても無駄だ。全ての鍵を私は開けられる』と書かれてあった。
「マジかよ!?」とソニエールは頭を抱えながら言った。
「おい、モルダー。スペアはあるんだろ? その鍵はどうしてる」
「ここに」
モルダーはポケットから各部屋のスペアキーを見せた。
「なら、やっぱりお前が犯人じゃないか! お前しか出来ないだろ」
「そんな! 私はやっていません。第一、さっきまで皆さんと一緒に行動していたじゃありませんか」
「お前がキング夫妻に声をかけにいった時に殺害した。もしくは、その前からキング夫妻は殺されていたかだ。どっちにしろ、お前が一番怪しいのは間違いないんだ!」
「私には動機がありませんよ」
「そんなもん知ったことか!」
「ジーク様、どうかお助け下さい。あなたの知恵が私には必要です」
「ソニエールさん、確かにモルダーさんは状況からして不利なのは間違いないが、それでも確たる証拠があるわけじゃあない。それに、モルダーさんの言う通り、動機も不明だ」
「それじゃあどうするよ。鍵をかけたって奴はドアを魔法のように開けちまうんだぞ」
「謎はそこじゃない! 一番の謎は今回と同様、殺され方が同じということ。どうして、今回の被害者もベッドの上で殺害をされたのか。見たところ、刃物の柄からして三つとも同じ凶器だ。でも、さっきモルダーさんに確認したけど、その刃物はホテルの物ではない。つまり、犯人はわざわざ凶器を用意したことになる。それに、キング夫妻の扉の鍵がかかっていなかったのは、先客が訪れキング夫妻はその人物を部屋に招いていれば、部屋は魔法やトリック無しでも開けられる。例えば、誰かがキング夫妻で004号室について訪ねることをキング夫妻が了承したのを知り、それを理由にドアを開けさせたかもしれない」
「普通、お願いした張本人(モルダー)が来なきゃ怪しむだろ」
「遅れてモルダーが来ると言えば、事情を知っているXはモルダーが言っていた一緒に犯人探しをしている人物だとキング夫妻は思い込んだ可能性がある。だが、この推測には一つ問題があるんだ。それは、キング夫妻をどうやってサム・ラーソンさんと同じように殺害したか」
「ジーク、お前はサム・ラーソンさんとキング夫妻の殺害は同じ犯人だって言うんだな」
「凶器がたまたま同じという偶然はまずあり得ない。ホテルになければ外から持ち出した凶器に間違いない。同じ凶器が偶然一致する可能性を考えるより、同一犯と考えた方がいいと思う」
「よし、それじゃ三人を殺害した連続犯はXだとして、そのXは切り裂きジャックってことなのか?」
「分からない」
「分からない? だが、今こうして犯人は切り裂きジャックと名乗っている」
「今回、被害者に男性が混じっている。切り裂きジャック事件は詳しくは知らないけど、その被害者の共通点くらいは覚えている」
「全員女性だったな……」
「三人の被害者が偶然女性で、犯人の狙いが別にあったとするなら別だけど、今回の殺人と今までの切り裂きジャック事件との共通点を探すより違いの方がはっきりしないか?」
「確かに……」
「勿論、Xが切り裂きジャックでないという確証にはならないけど、とりあえず切り裂きジャックは置いといた方がいい。もしかすると、此方の恐怖心を煽って嘘をついたのかもしれない」
「そう言われてみると、そっちの方が可能性としては高いな」
「Xは俺達が犯人探しをしていることに気づいたのかもしれない」
「Xの正体をこれ以上探るなっていう警告ってわけか」
「切り裂きジャックと名乗れば、皆そうするとXは思ったかもしれない」
「だが、実際に被害者は出ちまった。これからどうするよ」
「もう一度、全員ロビーに呼んで新たな被害者が出たことを知らせる」
「切り裂きジャックのことも話すのか? 大混乱になるぞ」
「それは言わないでおこう」
「その方がいいな。モルダー、そういうことだから、全員をロビーに集めてくれ」
「分かりました」
どうやら今夜は眠らせてはくれないらしい。
「キング様、モルダーです」
しかし、反応がない。モルダーはもう一度ノックをしたが同じく反応がなかった。
「キング夫妻には話しを訊きにいくと了承を得ていたんだよな」とホルトは訊いた。
「は、はい。その通りです」
「まさか、寝ちまったのか?」とソニエールは言った。
「そんな筈はないかと思いますが」
ジークはなんだか嫌な予感がした。
「キング夫妻、失礼します」
そう言ってドアノブに手をかけた。
「鍵は閉まっていると思いますよ」とモルダーは言ったが、ドアノブは抵抗せず簡単に回った。
「鍵は開いているようです」
ジークはそう言って中へ入った。
部屋は真っ暗で、まるでサム・ラーソンの部屋と似た状況だった。
唯一、暖炉だけが明るかった。
部屋の奥へジーク達が進むと、ベッドの上で夫婦並んでサム・ラーソンの時のように同じ刃物で二人揃って胸辺りに突き刺さった状態で二人とも死んでいた。
「ああ! そんな!!」
モルダーは悲鳴のような声をあげた。
「おい、見てみろ!」
何かを見つけたホルトが叫ぶ。
それは白いレースだ。この時間、本来ならカーテンがかかっている筈だが、そんなことよりも、白いレースに赤く書かれた文字。
切り裂きジャック
「おい、切り裂きジャックだと!?」
この場にいた全員が驚いた。
「まさか、このホテルに切り裂きジャックがいるって言うのか! 冗談だろ!?」とソニエールは慌てた様子で「早くホテルから出た方がいい! 全員殺されるぜ!」と叫んだ。
だが、冷静にホルトは止める。
「待て。外の天気を見ろ。そんなことをすればそれこそ無事では済まされない」
「ここにいても同じこったろ! 第一なんで殺人事件が起きたって言うのにキング夫妻は部屋の鍵を閉めていかなかったんだ」
ソニエールの言うとおりだった。いくら、あとから自分達が訪ねに来ると分かっていたとしても、その間鍵をかけておかなかったのは納得いかない。犯人が開けたまま逃走したから? いや、だったら犯人はどうやってこの部屋に侵入できた?
「あの、もしかしてこれのせいかも」そうモルダーがいきなり言い出した。
皆がモルダーの方を向くと、モルダーはジークが開けた扉の内側を見せた。そのドアには同じく赤い文字で『鍵をかけても無駄だ。全ての鍵を私は開けられる』と書かれてあった。
「マジかよ!?」とソニエールは頭を抱えながら言った。
「おい、モルダー。スペアはあるんだろ? その鍵はどうしてる」
「ここに」
モルダーはポケットから各部屋のスペアキーを見せた。
「なら、やっぱりお前が犯人じゃないか! お前しか出来ないだろ」
「そんな! 私はやっていません。第一、さっきまで皆さんと一緒に行動していたじゃありませんか」
「お前がキング夫妻に声をかけにいった時に殺害した。もしくは、その前からキング夫妻は殺されていたかだ。どっちにしろ、お前が一番怪しいのは間違いないんだ!」
「私には動機がありませんよ」
「そんなもん知ったことか!」
「ジーク様、どうかお助け下さい。あなたの知恵が私には必要です」
「ソニエールさん、確かにモルダーさんは状況からして不利なのは間違いないが、それでも確たる証拠があるわけじゃあない。それに、モルダーさんの言う通り、動機も不明だ」
「それじゃあどうするよ。鍵をかけたって奴はドアを魔法のように開けちまうんだぞ」
「謎はそこじゃない! 一番の謎は今回と同様、殺され方が同じということ。どうして、今回の被害者もベッドの上で殺害をされたのか。見たところ、刃物の柄からして三つとも同じ凶器だ。でも、さっきモルダーさんに確認したけど、その刃物はホテルの物ではない。つまり、犯人はわざわざ凶器を用意したことになる。それに、キング夫妻の扉の鍵がかかっていなかったのは、先客が訪れキング夫妻はその人物を部屋に招いていれば、部屋は魔法やトリック無しでも開けられる。例えば、誰かがキング夫妻で004号室について訪ねることをキング夫妻が了承したのを知り、それを理由にドアを開けさせたかもしれない」
「普通、お願いした張本人(モルダー)が来なきゃ怪しむだろ」
「遅れてモルダーが来ると言えば、事情を知っているXはモルダーが言っていた一緒に犯人探しをしている人物だとキング夫妻は思い込んだ可能性がある。だが、この推測には一つ問題があるんだ。それは、キング夫妻をどうやってサム・ラーソンさんと同じように殺害したか」
「ジーク、お前はサム・ラーソンさんとキング夫妻の殺害は同じ犯人だって言うんだな」
「凶器がたまたま同じという偶然はまずあり得ない。ホテルになければ外から持ち出した凶器に間違いない。同じ凶器が偶然一致する可能性を考えるより、同一犯と考えた方がいいと思う」
「よし、それじゃ三人を殺害した連続犯はXだとして、そのXは切り裂きジャックってことなのか?」
「分からない」
「分からない? だが、今こうして犯人は切り裂きジャックと名乗っている」
「今回、被害者に男性が混じっている。切り裂きジャック事件は詳しくは知らないけど、その被害者の共通点くらいは覚えている」
「全員女性だったな……」
「三人の被害者が偶然女性で、犯人の狙いが別にあったとするなら別だけど、今回の殺人と今までの切り裂きジャック事件との共通点を探すより違いの方がはっきりしないか?」
「確かに……」
「勿論、Xが切り裂きジャックでないという確証にはならないけど、とりあえず切り裂きジャックは置いといた方がいい。もしかすると、此方の恐怖心を煽って嘘をついたのかもしれない」
「そう言われてみると、そっちの方が可能性としては高いな」
「Xは俺達が犯人探しをしていることに気づいたのかもしれない」
「Xの正体をこれ以上探るなっていう警告ってわけか」
「切り裂きジャックと名乗れば、皆そうするとXは思ったかもしれない」
「だが、実際に被害者は出ちまった。これからどうするよ」
「もう一度、全員ロビーに呼んで新たな被害者が出たことを知らせる」
「切り裂きジャックのことも話すのか? 大混乱になるぞ」
「それは言わないでおこう」
「その方がいいな。モルダー、そういうことだから、全員をロビーに集めてくれ」
「分かりました」
どうやら今夜は眠らせてはくれないらしい。
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