探偵主人公

アズ

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1章 始まりの街ロンドン

17 秘密の金庫

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 ホテルに戻ると、真っ先にマークが「どうなった」と訊いてきた。その周りも似たような感じだった。
 それに対してホルトが答える。
「ウルフの群れは去っていったよ」
 それを聞いて全員が安堵した。
「おい、割れた窓をとっとと直さんか。寒くて凍え死にそうだ」
「は、はい」モルダーは急いで窓の修理にとりかかった。
「全く偉そうな奴だな。自分はなにもしてないくせに」とソニエールはボソッと呟いた。
「聞こえたぞ」
「聞こえたんならお礼ぐらい言ったらどうだ、おっさん」
「金か?」
 ソニエールは舌打ちした。その間にジークが入る。
「マークさん、あなたから話しを伺いたいのですが」
「探偵気取りか。結局、何も進展はないんだろ」
「なら、さっきのウルフを生け捕りしてお前んとこの部屋に放つか」とソニエールは言った。
「おい、ふざけるな!」
「どうですか、協力していただけますか」
「どうみても脅迫じゃないか」
「むしろ、お前が怪しいかもな」とソニエールは更に煽った。
「分かった! 応じよう」
「ありがとうございます」



 場所を変え夫婦が椅子に座ってからジークは話しを始めた。
「マークさん、それでは始めさせていただきます。まず、このホテルに宿泊されるのは初めてということのようですが、合っていますか?」
「そうだ」
「因みに、宿泊客で知っている人はいましたか?」
「いいや。全員知らんよ」
「奥さんは?」
「同じです」
「では、お二人は夕食は何時でしたか?」
「18時過ぎだ。細かい時間は見ていない」
「夕食を終えてからは何をされていましたか?」
「それは関係あるのか?」
「質問に答えていただけますか?」
「妻と一緒に秘密の金庫を探していたよ。悪いか」
「三階へは行きましたか?」
「……」
「どうですか?」
「ああ、行ったよ!」
「そこは一般の方は立入禁止でしたね。ご存知でしたか」
「それだけで罪に問われるのか」
「それは、秘密の金庫を見つけた後でご夫婦が何をするかによります」
「なんだと」
「秘密の金庫を見つけ、中身が当然気になるでしょう。中身はきっと大金だと考える。そもそも、あなた達が金庫を探す理由はそれ以外にありますか?」
「そもそもヒーリーのものではないだろ」
「あなたのものではない」
「だが、私が先に見つければ話しは違う」
「いいえ、違いません」
「なにを言う。誰もが見つけられなかったものを私が見つければそれは私のものだ。でなければ金庫の金は誰かの目にすることはないのだからな」
「警察にその説明が通じると思いますか?」
「もし、ヒーリーという野郎が分け前を求めてきたら、まぁ、応じてやる」
「そのお金は犯罪によって得られた金である可能性があります。分け前以前にそのお金は警察に届け出なければならないものです」
「堅苦しいこと言うんだな君は」
「そうでしょうか?」
「分かった、秘密の金庫は諦めよう。それに連続殺人事件が起きたんだ。今じゃ、早くホテルから出ていきたいところだ」
「そもそも秘密の金庫はあるかも分からないでしょ? そんな手掛かりもないものをわざわざ探す程お金に困っていたんですか?」
「君、いくらなんでも言葉が過ぎるぞ」
「失礼しました」
「手掛かりならある」
「え? 何ですかそれは?」
「言っとくが情報の出どころは教えんからな」
「構いません。教えて下さい」
「元々ここの主人であったドーソンは友人に金庫のありかのヒントを教えていたんだ。万が一のことを考えてのことだったらしい。それが、冬なのに赤色がない場所」
「赤色?」
「そうだ。冬だと赤色があるというのが分からなくてな」
「そうですか? そんなに難しい謎ではないと思いますよ。むしろ、そんなに考えることでもないと思います」
「どういう意味だ?」
「冬に赤色というのは、赤色がなんなのかってなりますけど、逆に夏にはないんです」
「だからなんだというんだ!」
「暖炉ですよ」
「え?」
「冬には暖炉は必要でしょ? 夏は逆に暑くて必要ない。冬に必要な赤は部屋を暖める火のことです」
「そうなると……」
「書斎でしょう。あの部屋だけは暖炉がなく、壁側が棚で覆っていました。棚には沢山の書物がありました」
「分かった! 一冊だけ仕掛けがあって棚が動き隠し部屋が出てくるんだ!」
「見取り図を見ましたが書斎の隣のスペースにそんな隠し部屋のようなスペースはありませんでした。むしろ、気づきそうなものですが」
「まさか……分かったというのか」
「気になっていたのは見取り図を見た時に階段は三階までしかありませんでした。しかし、建物は三角屋根の構造でした。スペースがあるとすれば屋根裏部屋ではないでしょうか? 書斎から上に上がる秘密階段があるとか」
「天才か君は!?」
「それぐらいで?」
「では、分け前は」
 ジークは咳払いした。
「本当に見つけても金庫の金に手をつけないと言うのか」
「さっきその話しをしたばかりじゃないですか。使えませんよ、その汚れたお金は。恐らく警察はお金に振り分けられている番号を控えている可能性もあります」
 それを言われマークはがっかりした。
「とにかく、モルダーさんに言って確認してみましょう。せっかくこのホテルまで来たんですから、一緒に確認しますか? 勿論、金庫の中身には触れないという条件ですが」



 それから、モルダーと一緒に三階へ行き、書斎の部屋に入った。
 書斎の天井を念入りに見ていくと、一箇所だけ丸い溝を見つけた。その円の真ん中に横線のくぼみがある。
 棒を探しそのくぼみにはめて回すと天井から階段が降りてきた。
「まさか、書斎に上に続く階段があったとは」
「確かに天井を見ながら金庫を探す人はいないでしょうが、こんな仕掛けは直ぐに気づきそうなものなんですが」
 屋根裏に入ると、スイッチがあり、明かりをつけた。
 しかし、そこに金庫らしきものはなかった。
「ないぞ!」とマークは大声をあげる。
「間違えた?」
 ジークはもう一度考える。
 ふと、もう一度ヒントの言葉を思い返した。
 暖炉…… 。
「そうか!?」
「分かったのか」
「ミスリードだ。暖炉のない部屋を探させるのが狙いだ。だから、友人はいくら探しても見つからなかったんだ。何故なら、本当の場所は書斎ではないからだ」
「だがお前はさっき言ったじゃないか」
「分かりやすいヒントだからこそ騙されやすい。探すべき場所は暖炉だ」
 そう言って、各部屋の暖炉を探し回った。
 三階の部屋の暖炉には何もなかった。
 二階に戻り001号室の部屋の暖炉も探してみる。
「まさか、私の部屋に実はあったというのか」
「いえ、ありませんでした。次に行きましょう」
 そう言って、隣の部屋も見せてもらうことにした。
 隣の部屋は税務署職員が宿泊する部屋だ。
「まさか、秘密の金庫が近くにあったとは」とリチャード・ウォーカーが言った。
「いえ、ありませんでした。次に行きましょう」
 隣は親子の部屋だ。
「どうですか、ありましたか?」とチャーリーは言った。
「いえ、ありませんでした。次へ行き……」
 一気に寒気がした。まさか、まさかその嫌な予感は的中してしまうのではないのか。
 急ぎ足で隣の部屋に向かう。
 そう、その隣の部屋は最初の被害者、004号室の部屋だ。
 暖炉の中にジークは入った。
 暖炉を探すと、少し上に黒いドアが目に入った。金庫のドアだった。
「あった」
「マジかよ」とマークは言った。
「これで、何故サム・ラーソンさんが殺害されたのかが分かりました」
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