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2章 箱の中身は
03 事件発生
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気づけば私は眠っていた。ふと、目が覚め窓の外を見た。そこは夜という暗闇で明かりがなかった。
窓から目を離すと、ドアがノックされた。
ジークは扉の鍵を開けた。
ドアを開くと、青ざめた車掌が立っていた。まるで、悪夢を見たばかりみたいな顔だった。
「ジーク様、大変申し上げにくいのですが」
「何ですか?」
「殺人が起きました」
「え?」
「殺されたのは106のカリン・ペイン様です」
「どうして!?」
「それは分かりません。ペイン様は銃で撃たれたようで、発見した時には既に亡くなられていました。皆様には自分達の客室から出ないようお願いしております。ジーク様も部屋から出ないようお願いします」
「これからどうするんですか?」
「近くの駅でこの列車は止まります。そこで警察の方に来ていただき捜査をしてもらいます。皆様にはご迷惑おかけしますが、指示があるまで動かないようお願いします」
「分かりました」
「失礼します」
車掌はそう言って去っていった。
まさか、また殺人事件に遭遇するとは思ってもみなかった。自分にとっては連続殺人事件を解決したばかりなのだが。
寝台列車は車掌の言うとおり近くの駅に停車し、暫くしてから警官達が現れた。
乗客は全員食堂車に集められ、一人の刑事が全員の前に立った。
「私は警視庁のホランドです。既に皆さんご存知の通りこの列車で殺人事件が起きました。これから皆さんには我々の捜査にご協力お願いします。まず、これから全員の荷物を確認させていただきます。それから全員に聞き取りを」と言いかけたところで、ホランド警部と自分と目が合った。
そして、ホランド警部は大きなため息をついた。
「また、あなたですか。ジークさん、今回はあなたも容疑者の一人だ。勝手な行動はくれぐれも控えるようにお願いします」
それから、乗客の荷物検査が行われた。
自分はというと、たいした荷物も持ってはおらず、ホランドは呆れながら「なんだ、これだけか」と言った。
「はい」
「しかし、運が悪い。せっかく市長からいただいたご好意が旅の途中で殺人事件になるとは」
「因みに、銃声はしたんでしょうか?」
「ああ、したよ。時間は21時を過ぎた頃だ。それは他の乗客が証言している。つまり、犯行が行われた時間ということになるな。で、お前さんはその間何をしてた?」
「寝ていました」
「証明は出来るのか? 確か、この部屋は一人の筈がだ?」
「ええ、私一人です。ですが、証明は出来ます」
「どうやって?」
「事件があった客室から自分の客室の間には食堂車があります。私が行き来していれば誰かに目撃されます」
「なる程、確かに完璧なアリバイだな。全く、本当に運がいい」
「因みに、他の方はどうなんですか?」
「お前さんに話しても仕方がないだろうが、事件のあった時間帯、三人を除いて全員食堂車にいて酒を飲んでいたそうだ。三人は当然被害者のカリン・ペイン、それに女優エレンの娘レイチェル、そしてお前さんだ。アリバイがないとしたやレイチェルになるが、あの年齢で銃で人を殺すとは思えん」
「因みに凶器は?」
「被害者の部屋にあった。指紋は無し。凶器を処分しなかったところをみると、出どころは恐らく出てはこないだろう」
「計画的な犯行ですね」
「列車は動いている。その列車から忍び込もうなんて無理な話しだ。だから、犯行は絶対に乗客の中にいる筈だ」
「他にもいますよ」
「なに?」
「車掌さんとか」
「なる程。では、訂正しよう。この列車に乗っていた全員だ」
「しかし、乗客はアリバイがあるんですよね」
「ああ。だが、おかしなことも起きている」
「おかしなこと?」
「実は荷物検査の際に乗客の一人が宝石が無くなっていることに気がついたんだ。かなり高価なネックレスだとか」
「殺人の他に窃盗が!?」
「全く、この列車の乗客はどうなってやがる。そもそも金持ちしかいないだろ、こんな高い列車」
「警部でもチケットは高いと思いますか?」
「高いな」
「では、全員の職業からおかしな人が浮上しませんでしたか?」
「流石、鋭いな」
「いたんですね」
「ああ。まず、怪しいのがスタンダードの乗客6名」
「黒い格好の男達ですね」
「やはり怪しいと思うか?」
「はい」
「だが、殺人事件には関わっていないのは確かだ」
「そうですね、殺人事件と窃盗は同一犯とは限らないと思います。他はどうですか?」
「もう一人いる。それが……」
「まさか、被害者のカリン・ペインさん?」
「そうなんだ。カリン・ペインは記者だと分かった。記者の給料にしてはファーストは高い。勿論、貯金をしてこの旅を純粋に楽しんでいた可能性もあるが」
「他の可能性が?」
「カリン・ペインが所属している会社の上司が言うには女優エレンについて特ダネがあって、あと少しでそれが掴めそうだともらしていたそうだ」
「エレンは何と?」
「しらばっくれている。何のことかさっぱり分からんとさ。カリン・ペインがファーストに乗車したのも、恐らくはエレン目当てだろう。だから、エレンの隣の部屋はカリン・ペインだった。だが、そのエレンが口封じでカリンを黙らせる為に殺害しようにも、エレンにはアリバイがある」
「エレンは食堂車には来ていないんですよね?」
「夕食以降は顔を出していない。ああ、それと」
そう言ってホランド警部は二つ折りされた一枚の手紙を見せた。
「こんな物が被害者の客室にあったんだが、どういうことか分かるか?」
あなたは、パンドラの箱を開けてしまった! パンドラの中は死だ。あなたはこれから先ずっとパンドラを開けてしまったことを後悔する。そして永遠に恐怖することになる。
「パンドラの箱?」
「単純に理解するなら、開けてはならない秘密を記者はどうやら開けてしまったってことだろう。パンドラの箱の中身は真実。だが、それを知ることは犯人にとって殺害の動機になる。ますますエレンが怪しいってことだ」
「しかし、もし犯人がエレンだとしたらわざわざ自分が疑われるような証拠を残すでしょうか?」
「そもそもカリン・ペインはこの脅迫を半分冗談程度だと思っていた筈だ。でなければ、車掌とかに通報するなりした筈だ。だが、車掌はこの脅迫文を知らん。残念なことは、それが単なる脅迫では済まなかったことだ。それは被害者も想定外だったろう。彼女自身、記者である以上、色んなところから恨みを受けていた可能性がある。この脅迫文ももしかすると、過去にも似たような脅しがあって、だからこそカリン・ペインは本気にしなかった。犯人もあの記者の問題さを理解し、脅しても通用しないと分かったからこそ今回の犯行に及んだ。確かに、状況からしてエレンは怪しいことにかわりがないが、そのエレンには鉄壁のアリバイがある」
と、そこに警官一人が警部に近づき耳打ちした。
「何っ!?」
「どうかしましたか?」
「どうやら、探偵の出番はなかったようだな。乗客の中に過去に犯罪歴のある人物がいた。101号室のカイル・フライだ。しかも、それは強盗殺人だ」
ジークは思い出す。その名前は例の老人のことだった。
窓から目を離すと、ドアがノックされた。
ジークは扉の鍵を開けた。
ドアを開くと、青ざめた車掌が立っていた。まるで、悪夢を見たばかりみたいな顔だった。
「ジーク様、大変申し上げにくいのですが」
「何ですか?」
「殺人が起きました」
「え?」
「殺されたのは106のカリン・ペイン様です」
「どうして!?」
「それは分かりません。ペイン様は銃で撃たれたようで、発見した時には既に亡くなられていました。皆様には自分達の客室から出ないようお願いしております。ジーク様も部屋から出ないようお願いします」
「これからどうするんですか?」
「近くの駅でこの列車は止まります。そこで警察の方に来ていただき捜査をしてもらいます。皆様にはご迷惑おかけしますが、指示があるまで動かないようお願いします」
「分かりました」
「失礼します」
車掌はそう言って去っていった。
まさか、また殺人事件に遭遇するとは思ってもみなかった。自分にとっては連続殺人事件を解決したばかりなのだが。
寝台列車は車掌の言うとおり近くの駅に停車し、暫くしてから警官達が現れた。
乗客は全員食堂車に集められ、一人の刑事が全員の前に立った。
「私は警視庁のホランドです。既に皆さんご存知の通りこの列車で殺人事件が起きました。これから皆さんには我々の捜査にご協力お願いします。まず、これから全員の荷物を確認させていただきます。それから全員に聞き取りを」と言いかけたところで、ホランド警部と自分と目が合った。
そして、ホランド警部は大きなため息をついた。
「また、あなたですか。ジークさん、今回はあなたも容疑者の一人だ。勝手な行動はくれぐれも控えるようにお願いします」
それから、乗客の荷物検査が行われた。
自分はというと、たいした荷物も持ってはおらず、ホランドは呆れながら「なんだ、これだけか」と言った。
「はい」
「しかし、運が悪い。せっかく市長からいただいたご好意が旅の途中で殺人事件になるとは」
「因みに、銃声はしたんでしょうか?」
「ああ、したよ。時間は21時を過ぎた頃だ。それは他の乗客が証言している。つまり、犯行が行われた時間ということになるな。で、お前さんはその間何をしてた?」
「寝ていました」
「証明は出来るのか? 確か、この部屋は一人の筈がだ?」
「ええ、私一人です。ですが、証明は出来ます」
「どうやって?」
「事件があった客室から自分の客室の間には食堂車があります。私が行き来していれば誰かに目撃されます」
「なる程、確かに完璧なアリバイだな。全く、本当に運がいい」
「因みに、他の方はどうなんですか?」
「お前さんに話しても仕方がないだろうが、事件のあった時間帯、三人を除いて全員食堂車にいて酒を飲んでいたそうだ。三人は当然被害者のカリン・ペイン、それに女優エレンの娘レイチェル、そしてお前さんだ。アリバイがないとしたやレイチェルになるが、あの年齢で銃で人を殺すとは思えん」
「因みに凶器は?」
「被害者の部屋にあった。指紋は無し。凶器を処分しなかったところをみると、出どころは恐らく出てはこないだろう」
「計画的な犯行ですね」
「列車は動いている。その列車から忍び込もうなんて無理な話しだ。だから、犯行は絶対に乗客の中にいる筈だ」
「他にもいますよ」
「なに?」
「車掌さんとか」
「なる程。では、訂正しよう。この列車に乗っていた全員だ」
「しかし、乗客はアリバイがあるんですよね」
「ああ。だが、おかしなことも起きている」
「おかしなこと?」
「実は荷物検査の際に乗客の一人が宝石が無くなっていることに気がついたんだ。かなり高価なネックレスだとか」
「殺人の他に窃盗が!?」
「全く、この列車の乗客はどうなってやがる。そもそも金持ちしかいないだろ、こんな高い列車」
「警部でもチケットは高いと思いますか?」
「高いな」
「では、全員の職業からおかしな人が浮上しませんでしたか?」
「流石、鋭いな」
「いたんですね」
「ああ。まず、怪しいのがスタンダードの乗客6名」
「黒い格好の男達ですね」
「やはり怪しいと思うか?」
「はい」
「だが、殺人事件には関わっていないのは確かだ」
「そうですね、殺人事件と窃盗は同一犯とは限らないと思います。他はどうですか?」
「もう一人いる。それが……」
「まさか、被害者のカリン・ペインさん?」
「そうなんだ。カリン・ペインは記者だと分かった。記者の給料にしてはファーストは高い。勿論、貯金をしてこの旅を純粋に楽しんでいた可能性もあるが」
「他の可能性が?」
「カリン・ペインが所属している会社の上司が言うには女優エレンについて特ダネがあって、あと少しでそれが掴めそうだともらしていたそうだ」
「エレンは何と?」
「しらばっくれている。何のことかさっぱり分からんとさ。カリン・ペインがファーストに乗車したのも、恐らくはエレン目当てだろう。だから、エレンの隣の部屋はカリン・ペインだった。だが、そのエレンが口封じでカリンを黙らせる為に殺害しようにも、エレンにはアリバイがある」
「エレンは食堂車には来ていないんですよね?」
「夕食以降は顔を出していない。ああ、それと」
そう言ってホランド警部は二つ折りされた一枚の手紙を見せた。
「こんな物が被害者の客室にあったんだが、どういうことか分かるか?」
あなたは、パンドラの箱を開けてしまった! パンドラの中は死だ。あなたはこれから先ずっとパンドラを開けてしまったことを後悔する。そして永遠に恐怖することになる。
「パンドラの箱?」
「単純に理解するなら、開けてはならない秘密を記者はどうやら開けてしまったってことだろう。パンドラの箱の中身は真実。だが、それを知ることは犯人にとって殺害の動機になる。ますますエレンが怪しいってことだ」
「しかし、もし犯人がエレンだとしたらわざわざ自分が疑われるような証拠を残すでしょうか?」
「そもそもカリン・ペインはこの脅迫を半分冗談程度だと思っていた筈だ。でなければ、車掌とかに通報するなりした筈だ。だが、車掌はこの脅迫文を知らん。残念なことは、それが単なる脅迫では済まなかったことだ。それは被害者も想定外だったろう。彼女自身、記者である以上、色んなところから恨みを受けていた可能性がある。この脅迫文ももしかすると、過去にも似たような脅しがあって、だからこそカリン・ペインは本気にしなかった。犯人もあの記者の問題さを理解し、脅しても通用しないと分かったからこそ今回の犯行に及んだ。確かに、状況からしてエレンは怪しいことにかわりがないが、そのエレンには鉄壁のアリバイがある」
と、そこに警官一人が警部に近づき耳打ちした。
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