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2章 箱の中身は
04 トラブル発生
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警部が立ち去った後でジークは警部の話しを振り返りながら考えた。もし、これが強盗殺人だとしたなら、ここにいる乗客は格好の的だったろう。となれば大胆な犯行になるが警部の話しによれば、犯行時刻と思われる時間帯にはあの老人にもアリバイが存在する筈だし、これが強盗殺人である場合あの脅迫文に意味がないことになる。本当にあの老人の犯行なのだろうか?
そもそも、今回の殺人事件と宝石が盗まれた事件は同一犯と決めつけられるのだろうか?
疑問は沢山あるが、何一つそれを示す答えは少ない。
事実は、今のところ疑われているのは女優のエレンと老人になるが、二人にはアリバイがあるということだ。そもそも、アリバイがないのは車掌になるが、車掌には動機がない。
では、犯人の動機は何か?
それは例の脅迫文が示している。あの記者は間違いなく開けてはならないパンドラの箱、つまりその中身である触れられては困る真実を知ったことだ。そして、犯人にとってそれは殺害の動機になり得るもの。
ジークは顎を擦りながら部屋の真ん中をうろうろと動きながら考えていた。
暫くすると、ノックがあったのでジークは扉を開けた。外には警官が立っていた。
「警部がお呼びです。食堂車までお願いします」
ジークは従うと、食堂車に全員が集められていた。
ジークが最後だったようで、全員が揃うのを確認すると警部は喋り出した。
「皆さんには度々ご協力感謝します。実は新たなことが判明しました。殺人事件以外に乗客の一人から高価なネックレスが盗まれたことが分かりました。そこで、皆さんの行動についてもう一度確認をしたいと思います。まず、皆さんは21時の時間帯、この車両にいたで間違いありませんか?」
「いいえ、あの人はいなかったわ」と人差し指を向けたのはエレンだった。
「ええ、そうでした。ジークさんは自分の部屋で寝ていたと訊いています。それを証明するには、ジークさんが犯行を及ぶにはこの食堂車を一旦通過する必要がありますが、皆さんの誰かはジークさんを見かけましたか?」
全員が首を横に振った。
「では、ジークさんはアリバイがあったことになります。では、皆さんの動きはどうでしたか? 全員がこの車両にいたと言いますが、誰も車両から離れてはいないということで宜しいですか?」
「いいえ」と言ったのはエレンだった。
「ほお? それはどういうことでしょうか?」
「あの偉そうな議員は一度席を立っています。しかも、丁度殺害事件があった時間に」
警部の鋭い目は直ぐさまボーダンに向けられた。
「俺はトイレに行っただけだ。ちょっと飲み過ぎただけだ。だが、トイレはこの車両にある。トイレに行ったのはここの従業員が知っている筈だ」
スタッフは頷いた。
「はい、ボーダン様の仰られる通りトイレに入られたことは間違いありません」
「因みにトイレはどちらに?」
「此方です」
そこは調理場の横にあった。しかし、調理場が影となって食堂車の席からは見えない。
「調理場スタッフは間違いなくトイレから出てきたところを見ているんですね?」
「はい、見ています」
「ほら、俺にもアリバイはあるだろ。変な疑いはよしてもらいたい」とボーダンはエレンに苦情を言ったがエレンは無視をした。
「でも、おかしな話しですわね。全員にアリバイがあるなんて」とスカーレットは言った。
「あら、そうかしら? 全員ではないわ。例えば車掌とかは?」
「まさか車掌がやったわけないだろ」とボーダンは呆れた表情で言った。
「どうしてそう言いきれるの?」
「動機はなんだ? それに、アリバイがないのはまだいるぞ」
そう言ってボーダンはエレンの方を見た。
「あら、何が言いたいのかしら?」
「お前の子どもだってこの場にはいなかった」
エレンは感情的に立ち上がる。
「言ったわね! 私の娘が人殺しをしたとでも言うの!」
「銃が使えない年齢ではないだろ? 引き金を引けば人は殺せる」
「クソったれ議員が!」
「あり得ない話しではないだろう。例えば、あんたは何かスキャンダルをあの記者の女に掴まれていた。なんとかそれをさせない為に脅迫文で脅したが、あの記者は脅しを本気にしなかった。言うことに従わないと分かったあんたは事前に用意してあった銃で記者を殺るつもりだった。だが、想定外なことが起こった。子どもがあんたのいない間に銃を見つけ、玩具だと思ったその子は引き金を引いてしまった。弾は隣の部屋にいたあの記者に運悪く命中した。銃が本物だと知った子どもは慌てて隣の部屋を見に行った。だが、既に記者は死んでいた。驚いた娘は銃を落とし逃げ出した。どうだ? 記者の隣はあんたの部屋だ。可能性はなくはないだろう」
エレンは顔を真っ赤にした。
「銃は持っていないし、第一子どもが見つかるような場所に隠しておくと思う? それに、銃に詳しくない私でも安全装置くらい銃にあることは知っているわ!」
「私もあり得ないと思います」とジークは二人の揉め事に入った。
「なんだ貴様、探偵気取りか。事件を一度解決したくらいで偉そうに。何故分かる? 言ってみろ」
「まず、エレンさんがさっき言ったこともそうですが、銃に指紋がついていなかったことの証明はついていません。車掌が第一発見者で、それ以降はあの部屋には入ることは出来なかった筈です。エレンさんが指紋を拭き取り娘を守る時間はありません。それに、もしそれが正しいとするなら、壁にその穴がある筈です」
警部は「壁にそんな穴はありませんでした」と付け加えた。
「いい加減なことを言って娘を疑うのはやめて頂戴!」
「悪かったよ。ただ、あり得ると思っただけだ」
「そういうあなたはどうなのよ」
「なんだと?」
「政治家なんだから、汚職だってしていたんじゃない? それで実はあの記者にそれがバレて市長選にも影響が出ると思ったあなたはあの記者がどうしても邪魔で殺害を計画した」
「それこそ言いがかりだ! 俺にはアリバイがある! さっきので分かっただろ! お前は馬鹿か」
「なんですって!」
「言い争いはやめて下さい!」警部は二人を叱った。
「あの、そもそもどうして私達の中に犯人がいることになるんでしょうか?」と警部に訊いたのはケイン夫妻の妻だ。
「私達にはアリバイがあるんですからそもそも私達を疑うのはおかしいんじゃありませんか?」
「確かにその通りよね」とスカーレットは同意した。
すると、突然ジークにとって衝撃的で面白いものを目撃した。
同意したスカーレットを何故かケインの妻は睨んだのだ。
何故?
あの二人にもどうやら秘密が隠されているようだ。
と、そこに警官が現れ警部に耳打ちした。
警部の目線が鋭くなった。その先にあるのは例の六人組だ。妙に仲がよさそうな男達だ。
「先程、203号室から盗まれた物が見つかったと報告を受けました」
全員がまさかと六人組に目線がいった。
男達は顔を合わせた。嫌な予感がした。それは、直ぐに的中してしまう。
六人組が一斉に立ち上がると隠し持っていた銃を取り出した。
「全員動くな!」
「やめるんだ! そんなことをしても無駄だぞ。罪が重なるだけだ」
警部の説得は残念ながら彼らには通用する気配はない。
「黙れ! お前、銃を持っているな? お前のをよこせ! さもないと……」
スカーレットが悲鳴をあげた。
「黙れ!」
銃口がスカーレットに向けられる。
「分かった! 従おう」
警部はそう言って銃を取り出し、それを床に置いた。
「蹴ってこっちに寄越すんだ。変なことをしたらその瞬間乗客の一人の頭に風穴があくことになる」
「ああ、従うよ」
そう言って素直に銃を蹴り、それを仲間が拾い上げた。
「他の警官の銃もそこに置け!」
警部は他の警官に目で合図を送り、警官は頷いた。
銃が次々と置かれ、警官は丸腰になった。
「よし。それじゃ警官はもう用無しだ。警官は全員この列車から飛び降りろ!」
「馬鹿な。そんなことをしたら死んでしまう」
「死なないことを祈れ! 怪我だけで済むかもよ。とっととしやがれ!」
しかし、警官は誰一人動けなかった。
ふと、警部がジークに目を向けた。
助けを求める目だと分かった。
当初、犯人との交渉をすすめる為に警部はあえて犯人の言うことに従った。だが、走り続けるこの列車から飛び降りろというのは流石に予期していなかった筈だ。
警部には隠し持っているもう一丁の拳銃があることにはとっくに気づいていた。従っている風に見せかけ、油断させたところを狙いたかったんだろう。
相手が複数人だとそれも難易度が上がる。
ジークは武器を今は装備せずにしまってあるだけで、システム的に瞬時に装備が可能だ。だが、六人相手では万が一にも犠牲者が出てしまう。
所詮NPCだから実際の死とは違っても、このパターンはだいたい誰かが死亡するとゲームオーバーになる可能性がある。
つまり、瞬時の対応力が求められる。
一番乗客に近いのは左にいる男だ。そいつは、先程悲鳴をあげたスカーレットと距離が近い。
自分に面を向けている男、警察と正面に立って銃口を向けているのが3人、右の壁の近くに1人、あとの1人は自分からは死覚に立っている。
この状況を打開する方法は……ふと、ジークはログインボーナスで手に入れたスタングレネードを思い出した。
ジークは目が疲れた振りをして手に両目を当てた。
警部はそれを何かの合図だと気づき、それが両目を隠せというメッセージだと気づいた。となれば、ジークがやろうとすることにも彼は気づく。
ジークはアイテム、スタングレネードを出し、それを男達に放った。
強い光が車両にいる全員に襲った。
身動きが取れなくなったところをジークと警部で男達を拘束させた。
「また、お前に感謝しなきゃな」
警部の態度は最初の時と違い信用されてきた雰囲気を感じた。
手錠をかけ、男達を別室へと警官達によって連行された。
乗客達は暫くスタングレネードの影響を受けていた。
「しかし、犯人はあの六人組の仕業ってことになるのか?」
警部はまだカリン・ペイン殺害の謎が解けていないことを気にしていた。
「六人にはカリン・ペインを殺害しようにもアリバイがあります。窃盗はあの六人の仕業でしょうけど、殺人はまだ解決していません」
「同一犯だったらこれで一件落着なんだが」
「警部はあの六人が食堂車にいながら銃で人を殺害する方法が思いつきますか?」
「いや、全く。そもそも、ここの乗客は普通じゃない。怪しい秘密を抱えた連中ばかりじゃないか」
「誰にでも知られたくはない秘密はあるでしょう」
「お前さんにもあるのか?」
「さぁ?」
「流石に今回はあんたじゃないだろう。もしくは全員が嘘の供述をしているか。そうでもなければ今回の犯行は無理だろう」
「そうなると、列車の従業員も全員グルになりますね。しかし、彼らが嘘の共犯になる理由、動機は何ですか?」
「分からん。まるで、人狼だ。絶対に犯人はこの中にいるのは間違いない。だが、誰かが嘘をついている」
「嘘をついているのは犯人でしょう」
「そうだ。そいつが狼だ。だが、誰が人狼か分からん」
「一つ、気になることがあります」
「何だ?」
「先程のやり取りでケインの妻はスカーレットを睨んでいました。もしかすると、あの二人には接点があるのかもしれません」
「ああ、あれか。俺も気づいたよ。なら、二人の状態が戻ったあとで訊くとしよう」
「警部、お願いがあります。そこに自分も居合わせたいのですが」
「分かった、特別に認めよう」
そもそも、今回の殺人事件と宝石が盗まれた事件は同一犯と決めつけられるのだろうか?
疑問は沢山あるが、何一つそれを示す答えは少ない。
事実は、今のところ疑われているのは女優のエレンと老人になるが、二人にはアリバイがあるということだ。そもそも、アリバイがないのは車掌になるが、車掌には動機がない。
では、犯人の動機は何か?
それは例の脅迫文が示している。あの記者は間違いなく開けてはならないパンドラの箱、つまりその中身である触れられては困る真実を知ったことだ。そして、犯人にとってそれは殺害の動機になり得るもの。
ジークは顎を擦りながら部屋の真ん中をうろうろと動きながら考えていた。
暫くすると、ノックがあったのでジークは扉を開けた。外には警官が立っていた。
「警部がお呼びです。食堂車までお願いします」
ジークは従うと、食堂車に全員が集められていた。
ジークが最後だったようで、全員が揃うのを確認すると警部は喋り出した。
「皆さんには度々ご協力感謝します。実は新たなことが判明しました。殺人事件以外に乗客の一人から高価なネックレスが盗まれたことが分かりました。そこで、皆さんの行動についてもう一度確認をしたいと思います。まず、皆さんは21時の時間帯、この車両にいたで間違いありませんか?」
「いいえ、あの人はいなかったわ」と人差し指を向けたのはエレンだった。
「ええ、そうでした。ジークさんは自分の部屋で寝ていたと訊いています。それを証明するには、ジークさんが犯行を及ぶにはこの食堂車を一旦通過する必要がありますが、皆さんの誰かはジークさんを見かけましたか?」
全員が首を横に振った。
「では、ジークさんはアリバイがあったことになります。では、皆さんの動きはどうでしたか? 全員がこの車両にいたと言いますが、誰も車両から離れてはいないということで宜しいですか?」
「いいえ」と言ったのはエレンだった。
「ほお? それはどういうことでしょうか?」
「あの偉そうな議員は一度席を立っています。しかも、丁度殺害事件があった時間に」
警部の鋭い目は直ぐさまボーダンに向けられた。
「俺はトイレに行っただけだ。ちょっと飲み過ぎただけだ。だが、トイレはこの車両にある。トイレに行ったのはここの従業員が知っている筈だ」
スタッフは頷いた。
「はい、ボーダン様の仰られる通りトイレに入られたことは間違いありません」
「因みにトイレはどちらに?」
「此方です」
そこは調理場の横にあった。しかし、調理場が影となって食堂車の席からは見えない。
「調理場スタッフは間違いなくトイレから出てきたところを見ているんですね?」
「はい、見ています」
「ほら、俺にもアリバイはあるだろ。変な疑いはよしてもらいたい」とボーダンはエレンに苦情を言ったがエレンは無視をした。
「でも、おかしな話しですわね。全員にアリバイがあるなんて」とスカーレットは言った。
「あら、そうかしら? 全員ではないわ。例えば車掌とかは?」
「まさか車掌がやったわけないだろ」とボーダンは呆れた表情で言った。
「どうしてそう言いきれるの?」
「動機はなんだ? それに、アリバイがないのはまだいるぞ」
そう言ってボーダンはエレンの方を見た。
「あら、何が言いたいのかしら?」
「お前の子どもだってこの場にはいなかった」
エレンは感情的に立ち上がる。
「言ったわね! 私の娘が人殺しをしたとでも言うの!」
「銃が使えない年齢ではないだろ? 引き金を引けば人は殺せる」
「クソったれ議員が!」
「あり得ない話しではないだろう。例えば、あんたは何かスキャンダルをあの記者の女に掴まれていた。なんとかそれをさせない為に脅迫文で脅したが、あの記者は脅しを本気にしなかった。言うことに従わないと分かったあんたは事前に用意してあった銃で記者を殺るつもりだった。だが、想定外なことが起こった。子どもがあんたのいない間に銃を見つけ、玩具だと思ったその子は引き金を引いてしまった。弾は隣の部屋にいたあの記者に運悪く命中した。銃が本物だと知った子どもは慌てて隣の部屋を見に行った。だが、既に記者は死んでいた。驚いた娘は銃を落とし逃げ出した。どうだ? 記者の隣はあんたの部屋だ。可能性はなくはないだろう」
エレンは顔を真っ赤にした。
「銃は持っていないし、第一子どもが見つかるような場所に隠しておくと思う? それに、銃に詳しくない私でも安全装置くらい銃にあることは知っているわ!」
「私もあり得ないと思います」とジークは二人の揉め事に入った。
「なんだ貴様、探偵気取りか。事件を一度解決したくらいで偉そうに。何故分かる? 言ってみろ」
「まず、エレンさんがさっき言ったこともそうですが、銃に指紋がついていなかったことの証明はついていません。車掌が第一発見者で、それ以降はあの部屋には入ることは出来なかった筈です。エレンさんが指紋を拭き取り娘を守る時間はありません。それに、もしそれが正しいとするなら、壁にその穴がある筈です」
警部は「壁にそんな穴はありませんでした」と付け加えた。
「いい加減なことを言って娘を疑うのはやめて頂戴!」
「悪かったよ。ただ、あり得ると思っただけだ」
「そういうあなたはどうなのよ」
「なんだと?」
「政治家なんだから、汚職だってしていたんじゃない? それで実はあの記者にそれがバレて市長選にも影響が出ると思ったあなたはあの記者がどうしても邪魔で殺害を計画した」
「それこそ言いがかりだ! 俺にはアリバイがある! さっきので分かっただろ! お前は馬鹿か」
「なんですって!」
「言い争いはやめて下さい!」警部は二人を叱った。
「あの、そもそもどうして私達の中に犯人がいることになるんでしょうか?」と警部に訊いたのはケイン夫妻の妻だ。
「私達にはアリバイがあるんですからそもそも私達を疑うのはおかしいんじゃありませんか?」
「確かにその通りよね」とスカーレットは同意した。
すると、突然ジークにとって衝撃的で面白いものを目撃した。
同意したスカーレットを何故かケインの妻は睨んだのだ。
何故?
あの二人にもどうやら秘密が隠されているようだ。
と、そこに警官が現れ警部に耳打ちした。
警部の目線が鋭くなった。その先にあるのは例の六人組だ。妙に仲がよさそうな男達だ。
「先程、203号室から盗まれた物が見つかったと報告を受けました」
全員がまさかと六人組に目線がいった。
男達は顔を合わせた。嫌な予感がした。それは、直ぐに的中してしまう。
六人組が一斉に立ち上がると隠し持っていた銃を取り出した。
「全員動くな!」
「やめるんだ! そんなことをしても無駄だぞ。罪が重なるだけだ」
警部の説得は残念ながら彼らには通用する気配はない。
「黙れ! お前、銃を持っているな? お前のをよこせ! さもないと……」
スカーレットが悲鳴をあげた。
「黙れ!」
銃口がスカーレットに向けられる。
「分かった! 従おう」
警部はそう言って銃を取り出し、それを床に置いた。
「蹴ってこっちに寄越すんだ。変なことをしたらその瞬間乗客の一人の頭に風穴があくことになる」
「ああ、従うよ」
そう言って素直に銃を蹴り、それを仲間が拾い上げた。
「他の警官の銃もそこに置け!」
警部は他の警官に目で合図を送り、警官は頷いた。
銃が次々と置かれ、警官は丸腰になった。
「よし。それじゃ警官はもう用無しだ。警官は全員この列車から飛び降りろ!」
「馬鹿な。そんなことをしたら死んでしまう」
「死なないことを祈れ! 怪我だけで済むかもよ。とっととしやがれ!」
しかし、警官は誰一人動けなかった。
ふと、警部がジークに目を向けた。
助けを求める目だと分かった。
当初、犯人との交渉をすすめる為に警部はあえて犯人の言うことに従った。だが、走り続けるこの列車から飛び降りろというのは流石に予期していなかった筈だ。
警部には隠し持っているもう一丁の拳銃があることにはとっくに気づいていた。従っている風に見せかけ、油断させたところを狙いたかったんだろう。
相手が複数人だとそれも難易度が上がる。
ジークは武器を今は装備せずにしまってあるだけで、システム的に瞬時に装備が可能だ。だが、六人相手では万が一にも犠牲者が出てしまう。
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つまり、瞬時の対応力が求められる。
一番乗客に近いのは左にいる男だ。そいつは、先程悲鳴をあげたスカーレットと距離が近い。
自分に面を向けている男、警察と正面に立って銃口を向けているのが3人、右の壁の近くに1人、あとの1人は自分からは死覚に立っている。
この状況を打開する方法は……ふと、ジークはログインボーナスで手に入れたスタングレネードを思い出した。
ジークは目が疲れた振りをして手に両目を当てた。
警部はそれを何かの合図だと気づき、それが両目を隠せというメッセージだと気づいた。となれば、ジークがやろうとすることにも彼は気づく。
ジークはアイテム、スタングレネードを出し、それを男達に放った。
強い光が車両にいる全員に襲った。
身動きが取れなくなったところをジークと警部で男達を拘束させた。
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警部の態度は最初の時と違い信用されてきた雰囲気を感じた。
手錠をかけ、男達を別室へと警官達によって連行された。
乗客達は暫くスタングレネードの影響を受けていた。
「しかし、犯人はあの六人組の仕業ってことになるのか?」
警部はまだカリン・ペイン殺害の謎が解けていないことを気にしていた。
「六人にはカリン・ペインを殺害しようにもアリバイがあります。窃盗はあの六人の仕業でしょうけど、殺人はまだ解決していません」
「同一犯だったらこれで一件落着なんだが」
「警部はあの六人が食堂車にいながら銃で人を殺害する方法が思いつきますか?」
「いや、全く。そもそも、ここの乗客は普通じゃない。怪しい秘密を抱えた連中ばかりじゃないか」
「誰にでも知られたくはない秘密はあるでしょう」
「お前さんにもあるのか?」
「さぁ?」
「流石に今回はあんたじゃないだろう。もしくは全員が嘘の供述をしているか。そうでもなければ今回の犯行は無理だろう」
「そうなると、列車の従業員も全員グルになりますね。しかし、彼らが嘘の共犯になる理由、動機は何ですか?」
「分からん。まるで、人狼だ。絶対に犯人はこの中にいるのは間違いない。だが、誰かが嘘をついている」
「嘘をついているのは犯人でしょう」
「そうだ。そいつが狼だ。だが、誰が人狼か分からん」
「一つ、気になることがあります」
「何だ?」
「先程のやり取りでケインの妻はスカーレットを睨んでいました。もしかすると、あの二人には接点があるのかもしれません」
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