探偵主人公

アズ

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2章 箱の中身は

05 ケインの妻の話

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 食堂車はケインの妻と警部、ジークのみになった。
「さて、もう話しを伺っても大丈夫でしょうか?」
 警部はケインの妻に訊いた。
「ええ」
 女は複雑そうな顔をしていた。
「恐らく警部さんはお気づきなのでしょうね」
「話してくれますか?」
「はい。実は私の夫は不倫をしています。気づいたのは数カ月前ですが。それで相手が誰か私立探偵にお願いをしました。すると、あの女、スカーレットだと分かりました」
「その女性とは」
「知りません。しかし、探偵が見せた顔写真の女がこの列車にいたのには驚きました。勿論、こんな偶然はないでしょう。恐らく、私の知らないところで夫とあの女は私がいるというのに大胆に一緒になろうと企んだに違いないでしょう。ですが警部さん、私が恨みを持つならその女で殺害された記者ではありません」
「ええ、分かりました」



 女が去った後で警部はどう思うかジークに訊いた。
「あの女性がやったわけではないでしょう。記者を殺害する動機はありません」
「スカーレットも同様だろうな。だとしたら、犯人は誰になる? そもそも、乗客にはどう考えても不可能だ」
 確かに、どんなに動機を探ったところで、可能な犯人が見当たらない。
「そう言えば、警部はあの市議のことはご存知ですか?」
「ボーダン市議のことか?」
「あの女優が言っていたことが気になりまして」
「汚職の件か。確かにあの市議には悪い噂がある。だが、証拠はない」
「ということは警察は捜査していたんですね」
「密かにな。だが、ボーダン市議にはくれぐれも黙っておいてくれよ」
「市議は次の市長選に立候補するそうですね?」
「政治にでも興味を持ったのか?」
「因みに、あの市議を支持する大元はどこですか?」
「色々だな。あの市議に恩義を持っている者、恩義を期待する者だ。特にこの列車の会社だって今回の市長選ではボーダン市議を支持している。まさかだとは思うが、会社がボーダン市議を今回の犯行を守っていると言うんじゃないだろうな?」
「唯一、市議はスタッフの証言のみが頼りです。その証言をする人物と市議の関係があるのであれば証言は怪しくなります」
「家族や友人の証言がまさにそうだが、従業員がわざわざ市議を守るか?」
「今回、凶器を用意したところを見れば、計画殺人であることに間違いありません。あらかじめ、打ち合わせがなされていたのかもしれません」
 警部は天井を見て考え事をしてから「少し時間をくれ」と言った。
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