探偵主人公

アズ

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3章 クリスマスの夜

02 ディナー

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 クリスマスの飾りつけがされたロビーには沢山の人がいて、ソファーは全て他の客で埋まっていた。受付のカウンターでは行列が出来ている。エリックは客室が取れるかどうか訊いてくると言ったが、これでは期待も出来そうにない。
 そう思っていたのだが、エリックが戻ってくるなり「客室が取れたよ。ギリギリ残りひと部屋だった」と言った。
「え、こんなにいるのに?」
 ジークはカウンター前の行列を見た。並んでいるほとんどはプレイヤーでNPCではない。それなのに、カウンターでの会話では「クリスマスパーティーの参加チケットを購入したいんですが」「大変申し訳ありません、チケットは完売しております」と、誰もが諦め状態だった。
 そこに、一人のプレイヤーが現れる。
「さっきの会話聞いたぞ。どうやって宿泊出来た?」
 ソルジャーの格好をした男に訊かれても、自分にも分からなかった。
 だが、もしかするとクエストを受けなければそもそもパーティーには参加出来ないのかもしれない。
「お待たせ致しました。荷物があればお持ちします」
 ホテルマンに案内され、ジークとエリックは3階にある部屋に入った。
 部屋の奥にはベッドが二つとテーブルに椅子がある。トイレとシャワーもあり、残りひと部屋だった割には豪華で不満はなかった。
「そう言えばロビーにいた人達の中にかなり有名人までいましたね?」
「有名人?」
「はい。例えばカルメン。市長選に立候補予定の方です。ライバルだったボーダンが消えたことで、彼女に有利です。世論調査でもカルメンが勝つだろうと言われています。カルメンがこのホテルにいたのは意外でした。他にもピアニストのサブリナ。私が知っているのはこれぐらいですが、それ以外も皆オーラが違う。恐らくはパーティーに出る人達皆何かしらの有名人の筈ですよ」
「そんなに有名なパーティーなの?」
「クリスマスだからでは?」
「私はクリスマスは家でむかえる方なんだけど」
「なら、きっと特別な日になりますね」
「楽しみにしてるところ悪いけど、私達の目的は忘れていないよね?」
「ああ、そうでした」
「占い師によればこのパーティーに現れるって言う話しだけど、諜報員が何の為にパーティーに現れるのか?」
「楽しむ為……な筈ないですもんね」
「パーティーを利用して、人混みに紛れて密会とか? でも、わざわざ大勢の場所を選ぶ理由は?」
「それは分かりませんが、ここには有名な方が沢山集まっている。その事は間違いありません」



 ジークはホテルの部屋を出て、ホテル内を散策した。ここのフロアはスタンダードと言ってよく、上の階がグレードの高い客室のあるフロアになる。と言っても客室のあるフロアはほとんど散策しても意味がない。明日のパーティーのメイン会場の下見の為にジークは階段を降りた。
 案内板を頼りに大宴会の方へ向かったのだが、その手前で立入禁止の看板がその先の道を塞いでいた。
 そこにホテルマンがジークに気づき声を掛けてきた。
「申し訳ありません、此方は明日のパーティーの為の準備をしている為、入ることは出来ません」
「そうでしたか。いや、パーティー前にどんな風なのか興味があって来たんですが、そういうことでしたら明日にとっておきます」
「パーティーにご参加されるのですね。会場は立食式で、ステージでは色々なイベントをご用意させております。是非明日をお楽しみ下さい」
「そうします」
 ジークは諦め部屋に戻った。
「どうでしたか、ジークさん」
「会場は当日でなければ入れないようです」
「まぁ、そんな気はしましたが。しかし、大勢の中から諜報員を探すのはかなり大変では?」
「多分、今まで解決した事件よりも難しいかもしれません」
 それは本音だった。



 結局、それからはすることもなく、ディナーの時間になったのでそろそろエリックと一緒に下の階へ向かった。
 沢山のテーブルには白いテーブルクロスがされており、従業員に案内されたテーブルに二人は座った。
 テーブルにはワイングラスとメニュー表が置かれてあった。
 メニューを開くと、意外とどれも手頃な価格だった。私はオススメを選ぶと、彼もそれを選んだ。
「ワインはどういたしますか?」
「ああ、私はワインは飲まないので水を」
「ジークさん。私はせっかくこのホテルに来たので飲んでも構わないですか?」
「ええ! 私に構わずどうぞ」
「では、そうさせていただきます」
 ジークはワインを頼み、料理が来るのを待った。その間にジークは周りを見渡した。
 全員、高そうな身なりをしており、自分達はまるで場違いな感じがした。と、自分達のテーブルに一人の女性が近づいてきた。
「これはこれはカルメン市議ではありませんか」エリックは興奮気味にそう言った。
「あら、私をご存知でいてくれたんですの?」
「勿論ですとも。未来の市長にお会いできて光栄です」
「この方がカルメンさん」
 ジークはもう一度カルメン市議を見た。
 容姿端麗なカルメンは金髪で歯並びのいい白い歯の持ち主だった。
「あなたはジークさんですね?」
「はい。私のことをご存知なんですか?」
 カルメンは笑った。
「勿論ですよ。ロンドンを恐怖に陥れた切り裂きジャックは消え、あなたは2度殺人事件を解決した探偵じゃありませんか」
 ふと、カルメンが言葉にした「探偵」という言葉の直後に誰かの目線を感じた。しかも、一つではない。複数だ。
 何だ、この感じは。
「どうかされましたか?」
「いえ、何でもありません。まさか、覚えてもらえて光栄です」
「ご謙遜を。あなたは有名な探偵ですよ」
「カルメンさんは現在市議会議員で、市長選に立候補されるんでしたか?」
「皆私が勝つと思っているようですけど、選挙は結果が出るまで油断は出来ないんです」
「それでもあなたが勝つと信じてます」
「あなたは?」
「あ、失礼しました。私はジークさんにパリを案内しているエリックと申します」
「パリへ来たのは明日のパーティーに参加される為ですか? 私も参加する予定なんですよ! もし、良かったらご一緒に参加しませんか?」
「いいんですか? 是非」
「分かりました。では、また明日」
 カルメンが去ったのを見てエリックは小声で「カルメン市議に好意があるの?」と訊いてきた。
「そうではなくて、カルメン市議ならもしかするとパーティーの参加者のことを知っているかもと思ったからなんだ」
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