探偵主人公

アズ

文字の大きさ
33 / 124
3章 クリスマスの夜

04 カルメンの話し

しおりを挟む
 カルメンと会えたのは夕方になってからだった。会場入りする前にカルメンにロビーで会うと、彼女は美しい黒いドレスを着ていた。
「お似合いです」
「ありがとう、そう言ってくれると自信がつくわ。そう言えば、日中は会えなくて申し訳ないわ。予定があったの」
「いえ、お忙しいのは分かっていました」
「それで用件は何かしら?」
「実はここでは申しにくいことでして、出来れば私の部屋でお話出来ませんか?」
「ええ、いいですよ」
「ありがとうございます」
 それから三人は部屋に行き、カルメンが椅子に座ったところでジークは話しを始めた。
「私はある決断をしました。実はカルメンさんにはお願いがあります」
「いいのか? 彼女に話して?」
 ジークは頷いた。そのやり取りを見たカルメンは直ぐに察し、真剣な表情になる。
「協力しますよ、あなたなら尚更」
「実は私はある任務を任されています。それは、機密文書を盗んだドイツの諜報員を見つけ出すことです。そして、その諜報員はこのホテルのパーティーに現れます。しかし、肝心な手掛かりはそこまでで、諜報員が誰か見当もつきません。そこでカルメンさん、あなたの協力が必要なんです。この任務、どうしてもカルメンさんの協力無しでは果たせそうにないんです」
「ええ、そう言うことなら協力します」
「それでは早速お言葉に甘えるようで申し訳ないのですが、まず、カーソン・パロットはご存知でしょうか?」
 その時、カルメンは嫌そうな顔をした。
「知っているんですね。それも悪い方」
「カーソン・パロット元大佐は軍に所属したことがある人ならまずその名を知っているぐらい有名よ。そして、軍人はあの方を尊敬もしている。一方で悪い噂も耳にするわ。かなり暴力的な人で、元大佐を恐れる人もいると聞いたことはあるわ。でも、知っているのはそれくらいよ」
「しかし、パロットをあの方と表現したところをみると、カルメンさんはパロットをかなりご存知では?」
「いえ……私が言えることは、あの人を怒らせてはならないということだけよ」
「それはどうしてですか?」
「分からないわ。知りたくもないし、知ったらどうなるか……」
「あなたも恐れている」
「一つだけ言えるのはカーソン・パロット元大佐は諜報員ではないわ」
「そうですか?」
「ええ」
「では、諜報員がこれから会おうしている人物とか?」
「それは分からないわ。でも、出来ることならカーソン・パロット元大佐には近づかない方がいいし、関わるべきではないわ」
「あなたは元大佐と言いますが」
「これは警告よ。あなたの為を思ってのことなの」
 カルメンがジークの言葉を遮ってまで忠告したのは、本気だということだ。
「分かりました。そのように従います」
「ええ、それを聞いて安心したわ」
「ですが、一つだけ。カーソン・パロットは皆恐れているんですか?」
「……全員ではないと思うわ。でも、元大佐を知っている人なら彼の恐ろしさは承知している筈よ」
 それはつまり、恐れない人物もいるってことだ。
「ありがとうございます」
「まさか、パーティー会場にいる全員を疑うつもり?」
「手掛かりがない以上そうなります」
「それはあまりよくないわね」
「どうしてですか?」
「ジークさん。あなたのことを知る人物はパーティー会場にもいると思います。あなたが目を鋭くして監視していれば、諜報員は警戒するでしょう」
「多分私がホテルに宿泊した時点で警戒されていると思います。私を知っていればですけど」
「ここはロンドンではなくパリ。あなたを知らない人はいるでしょうが、ロンドンからパリに来た諜報員は別でしょ?」
「確かにその通りでした」
「諜報員はむしろあなたを警戒して現れないのでは?」
「まさか、有名が仇になるとは」
「でも、有名でなってなければ依頼もなければ私との会話も出来なかったでしょう」
「まさにその通りです」
「自分もそう思うよ。カルメンさんの言う通り君が現れたことで諜報員は計画を変えたかもしれない」とエリックは言った。
「そうだね……」
「諦めてこの際普通にパーティーを楽しまないか?」
「諦めるのか?」
「それはジークが決めてくれ。俺は単なる案内人。ジークが指示を出せば、そこへ案内するだけさ」
 彼は気楽にそう言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

まっど↑きみはる
ファンタジー
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」 そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...