探偵主人公

アズ

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3章 クリスマスの夜

04 カルメンの話し

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 カルメンと会えたのは夕方になってからだった。会場入りする前にカルメンにロビーで会うと、彼女は美しい黒いドレスを着ていた。
「お似合いです」
「ありがとう、そう言ってくれると自信がつくわ。そう言えば、日中は会えなくて申し訳ないわ。予定があったの」
「いえ、お忙しいのは分かっていました」
「それで用件は何かしら?」
「実はここでは申しにくいことでして、出来れば私の部屋でお話出来ませんか?」
「ええ、いいですよ」
「ありがとうございます」
 それから三人は部屋に行き、カルメンが椅子に座ったところでジークは話しを始めた。
「私はある決断をしました。実はカルメンさんにはお願いがあります」
「いいのか? 彼女に話して?」
 ジークは頷いた。そのやり取りを見たカルメンは直ぐに察し、真剣な表情になる。
「協力しますよ、あなたなら尚更」
「実は私はある任務を任されています。それは、機密文書を盗んだドイツの諜報員を見つけ出すことです。そして、その諜報員はこのホテルのパーティーに現れます。しかし、肝心な手掛かりはそこまでで、諜報員が誰か見当もつきません。そこでカルメンさん、あなたの協力が必要なんです。この任務、どうしてもカルメンさんの協力無しでは果たせそうにないんです」
「ええ、そう言うことなら協力します」
「それでは早速お言葉に甘えるようで申し訳ないのですが、まず、カーソン・パロットはご存知でしょうか?」
 その時、カルメンは嫌そうな顔をした。
「知っているんですね。それも悪い方」
「カーソン・パロット元大佐は軍に所属したことがある人ならまずその名を知っているぐらい有名よ。そして、軍人はあの方を尊敬もしている。一方で悪い噂も耳にするわ。かなり暴力的な人で、元大佐を恐れる人もいると聞いたことはあるわ。でも、知っているのはそれくらいよ」
「しかし、パロットをあの方と表現したところをみると、カルメンさんはパロットをかなりご存知では?」
「いえ……私が言えることは、あの人を怒らせてはならないということだけよ」
「それはどうしてですか?」
「分からないわ。知りたくもないし、知ったらどうなるか……」
「あなたも恐れている」
「一つだけ言えるのはカーソン・パロット元大佐は諜報員ではないわ」
「そうですか?」
「ええ」
「では、諜報員がこれから会おうしている人物とか?」
「それは分からないわ。でも、出来ることならカーソン・パロット元大佐には近づかない方がいいし、関わるべきではないわ」
「あなたは元大佐と言いますが」
「これは警告よ。あなたの為を思ってのことなの」
 カルメンがジークの言葉を遮ってまで忠告したのは、本気だということだ。
「分かりました。そのように従います」
「ええ、それを聞いて安心したわ」
「ですが、一つだけ。カーソン・パロットは皆恐れているんですか?」
「……全員ではないと思うわ。でも、元大佐を知っている人なら彼の恐ろしさは承知している筈よ」
 それはつまり、恐れない人物もいるってことだ。
「ありがとうございます」
「まさか、パーティー会場にいる全員を疑うつもり?」
「手掛かりがない以上そうなります」
「それはあまりよくないわね」
「どうしてですか?」
「ジークさん。あなたのことを知る人物はパーティー会場にもいると思います。あなたが目を鋭くして監視していれば、諜報員は警戒するでしょう」
「多分私がホテルに宿泊した時点で警戒されていると思います。私を知っていればですけど」
「ここはロンドンではなくパリ。あなたを知らない人はいるでしょうが、ロンドンからパリに来た諜報員は別でしょ?」
「確かにその通りでした」
「諜報員はむしろあなたを警戒して現れないのでは?」
「まさか、有名が仇になるとは」
「でも、有名でなってなければ依頼もなければ私との会話も出来なかったでしょう」
「まさにその通りです」
「自分もそう思うよ。カルメンさんの言う通り君が現れたことで諜報員は計画を変えたかもしれない」とエリックは言った。
「そうだね……」
「諦めてこの際普通にパーティーを楽しまないか?」
「諦めるのか?」
「それはジークが決めてくれ。俺は単なる案内人。ジークが指示を出せば、そこへ案内するだけさ」
 彼は気楽にそう言った。
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