34 / 124
3章 クリスマスの夜
05 案内の先は
しおりを挟む
パーティー会場が開く時間。遂にこの時が訪れてしまった。
結局、得られるものはほとんどなく、三人はとりあえず会場入りした。
会場では美味しそうな料理が並んでおり、それを取って食べるというもの。既にエリックはシャンパンを飲み始めていた。彼は単にパリの案内人だから自分の助手ということではないし、責めるのは間違いだった。
しかし、ジークの中ではまだ諦めがついていなかった。
確かに、二人が言っていた通りこれだけの情報では諜報員を見つけるのはそもそも困難だ。
では、誰が怪しいか? やはり思いつくのはパロットだ。しかし、カルメンは違うと否定した。信じていいのだろうか? そもそも彼女が嘘をつく理由は? それは彼を恐れているからか? しかし、それだけの理由で機密文書が盗まれたことをよしと出来るのか? それとも弱みを握られているとか? だとしたらあり得る。カルメンは次の選挙でリードをとっている。しかし、そこにスキャンダルがあったらどうだろうか。選挙は当日になってみないと分からない。カルメンにとってはまだ油断出来ない状況だ。
他に怪しい人物はいないだろうか? 分からない。
ジークは周囲を見渡した。
皆楽しそうに会話をしている。と、そこに例の男があろうことか現れた。
「ジークだね?」
「はい、そうですが」
「君は私のことを知っているんだろ?」
「どうしてですか?」
「カルメンと一緒にいたところを見たからだ。それに、私の質問に否定はしなかった」
「はい、知っています。カーソン・パロット元大佐」
パロットは笑った。
「元大佐か。パロットでいい」
「他の皆はあなたをどう呼ぶんですか?」
「パロットでいいと言ったろ? それより切り裂きジャック事件を解決した探偵に会ってお礼をしたいと思っていたところだったんだ。なんという偶然」
「偶然? いや、それよりお礼ってどういう意味ですか?」
「切り裂きジャック事件の最初の被害者サラは私の娘だった」
「え!?」
「と言っても義理だが。それでも家族であることにはかわりがない。本当ならこの手で犯人をとっ捕まえて始末したかったさ。犯人が死んでいたとは残念だ。まぁ、なんであれ君には感謝するよ、探偵さん」
パロットはそう言うと、人ごみの中へと消えていった。
その後でエリックが現れた。
「さっきパロットと話してなかったか」
「あちらから話しかけられた」
「パロットの方から!? 君に何て話したのさ」
「それより一つ明らかになったことがある」
「なんだ急に」
「君は言っただろ? 私が指示を出せばその場所へと案内するって。だが、君が案内したのはあのパロットじゃなかったのか?」
「なっ」
「最初、君が私に案内させたのは占い師だ。占い師はこのパーティー会場に私の探している人物が現れると言った。かなり具体的な占いで、私の知る占いと違っていたが、最初はそんなものかと思っていた。でも、君もあの占い師も、そして私に依頼をした市長ですら私を騙していたと考えれば、そのちょっとした疑問も解ける。そもそも、諜報員なんていなかった。私にあの男を会わせるのが目的だったんだ」
「何を言っているんだ。そもそもそんな回りくどいやり方をする理由はなんだ」
「市長選へ立候補し勝つ見込みがあるカルメンが恐れ、現職の市長を動かすことができ、自分には協力者がいることをあの男はこの短い期間で分かりやすく説明したじゃないか。切り裂きジャック事件の最初の被害者が義理の娘かどうかの真意はともかくとして、あの男の狙い通りになったわけだ。ホランド警部が事件を解決した時に私に警告した理由も納得できる」
その時、会場に警官達が入り込んだ。
「殺人事件がこのホテルで発生しました。皆さんはこの場所から動かないようお願いします」
警察のアナウンスにエリックはジークに「殺人事件だって!?」と言った。
だが、ジークは冷静に答える。
「被害者は3階の宿泊客だろ。犯人は分かっている」
「え!?」
「酔っていて覚えていない? 私達は昨日カーソン・パロットとすれ違った。彼がやったんだ。だが、きっと恐らく証拠は出てこない筈だ。何故なら、このホテルも全て彼の言いなりだからだ。まさに、殺人を犯しても自分は捕まらないと私に教えてくれたんだよ。腹立たしいことにね」
(第三章・完)
結局、得られるものはほとんどなく、三人はとりあえず会場入りした。
会場では美味しそうな料理が並んでおり、それを取って食べるというもの。既にエリックはシャンパンを飲み始めていた。彼は単にパリの案内人だから自分の助手ということではないし、責めるのは間違いだった。
しかし、ジークの中ではまだ諦めがついていなかった。
確かに、二人が言っていた通りこれだけの情報では諜報員を見つけるのはそもそも困難だ。
では、誰が怪しいか? やはり思いつくのはパロットだ。しかし、カルメンは違うと否定した。信じていいのだろうか? そもそも彼女が嘘をつく理由は? それは彼を恐れているからか? しかし、それだけの理由で機密文書が盗まれたことをよしと出来るのか? それとも弱みを握られているとか? だとしたらあり得る。カルメンは次の選挙でリードをとっている。しかし、そこにスキャンダルがあったらどうだろうか。選挙は当日になってみないと分からない。カルメンにとってはまだ油断出来ない状況だ。
他に怪しい人物はいないだろうか? 分からない。
ジークは周囲を見渡した。
皆楽しそうに会話をしている。と、そこに例の男があろうことか現れた。
「ジークだね?」
「はい、そうですが」
「君は私のことを知っているんだろ?」
「どうしてですか?」
「カルメンと一緒にいたところを見たからだ。それに、私の質問に否定はしなかった」
「はい、知っています。カーソン・パロット元大佐」
パロットは笑った。
「元大佐か。パロットでいい」
「他の皆はあなたをどう呼ぶんですか?」
「パロットでいいと言ったろ? それより切り裂きジャック事件を解決した探偵に会ってお礼をしたいと思っていたところだったんだ。なんという偶然」
「偶然? いや、それよりお礼ってどういう意味ですか?」
「切り裂きジャック事件の最初の被害者サラは私の娘だった」
「え!?」
「と言っても義理だが。それでも家族であることにはかわりがない。本当ならこの手で犯人をとっ捕まえて始末したかったさ。犯人が死んでいたとは残念だ。まぁ、なんであれ君には感謝するよ、探偵さん」
パロットはそう言うと、人ごみの中へと消えていった。
その後でエリックが現れた。
「さっきパロットと話してなかったか」
「あちらから話しかけられた」
「パロットの方から!? 君に何て話したのさ」
「それより一つ明らかになったことがある」
「なんだ急に」
「君は言っただろ? 私が指示を出せばその場所へと案内するって。だが、君が案内したのはあのパロットじゃなかったのか?」
「なっ」
「最初、君が私に案内させたのは占い師だ。占い師はこのパーティー会場に私の探している人物が現れると言った。かなり具体的な占いで、私の知る占いと違っていたが、最初はそんなものかと思っていた。でも、君もあの占い師も、そして私に依頼をした市長ですら私を騙していたと考えれば、そのちょっとした疑問も解ける。そもそも、諜報員なんていなかった。私にあの男を会わせるのが目的だったんだ」
「何を言っているんだ。そもそもそんな回りくどいやり方をする理由はなんだ」
「市長選へ立候補し勝つ見込みがあるカルメンが恐れ、現職の市長を動かすことができ、自分には協力者がいることをあの男はこの短い期間で分かりやすく説明したじゃないか。切り裂きジャック事件の最初の被害者が義理の娘かどうかの真意はともかくとして、あの男の狙い通りになったわけだ。ホランド警部が事件を解決した時に私に警告した理由も納得できる」
その時、会場に警官達が入り込んだ。
「殺人事件がこのホテルで発生しました。皆さんはこの場所から動かないようお願いします」
警察のアナウンスにエリックはジークに「殺人事件だって!?」と言った。
だが、ジークは冷静に答える。
「被害者は3階の宿泊客だろ。犯人は分かっている」
「え!?」
「酔っていて覚えていない? 私達は昨日カーソン・パロットとすれ違った。彼がやったんだ。だが、きっと恐らく証拠は出てこない筈だ。何故なら、このホテルも全て彼の言いなりだからだ。まさに、殺人を犯しても自分は捕まらないと私に教えてくれたんだよ。腹立たしいことにね」
(第三章・完)
0
あなたにおすすめの小説
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが
まっど↑きみはる
ファンタジー
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」
そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる