51 / 124
5章 呪いの海
04 二人の話
しおりを挟む
案内人が言っていたゲームがいつから始まるのかも分からないまま食事が順調に進み、次でデザートとなる。すると、燕尾服の歳は40過ぎくらいの男性が此方の席にやって来た。
「やぁ。私はヒーリーだ」
「ええ、存じてます」と警部は言った。
「ああ、そう。で、君達は何で招待されたんだ?」
警部とジークは顔を合わせた。
「全く」と警部は答えた。
「そんなわけないだろう。君達も何かしらの理由があって招待された筈だ。ここにいる全員がそうさ」
「ヒーリーさんはどうなんですか?」とジークは訊いてみた。
「恐らく資金目当てだろう。投資をしないかと持ち掛けるんだ。そう言ったパーティに誘われたことは前にもある」
「どんな投資だと思います?」
「それは……」
言えないという顔をしていた。少なくとも、彼は元大佐のしようとすることを知っている。もっと言えば、ロバート・エルフマンの研究の投資ではないかという自覚を。
「そう言えば、あのホテルはどうなりましたか?」
「ああ! あれね。せっかく君が事件を解決してくれたが、殺人事件の起こったホテルにもう客は来ないよ。興味本位で来てくれる人がいたとしても最初だけさ。それに多くない。あのホテルは諦めたんだ」
「そうでしたか。そろそろデザートが来るようですが」
「ああ、いいんです。糖尿でね。いつも朝は糖尿の薬と血圧の薬を毎日飲まなければならないんだ」
「ああ」
ジークは納得した。
「でも、君達のデザートの邪魔してはいけないから戻るとするよ」
それはまるで自分から逃げるようだった。そうでなければ質問を沢山されると思ったのだ。
ふと、ジークは後ろの席にいるヴェラ・ミラーを見た。すると、直ぐに目が合ってしまった。どうも、あの人はずっと此方を見ていたようだ。人探しにあの占い師を頼ったのが出会いだ。今となっては信用ならない。あの人物は元大佐の息がかかっている。
淡い紫色のドレスに真珠のネックレスをしたヴェラ・ミラーはにっこりと微笑んだ。ジークは思わず目をそらした。
「どうかしたか?」
「いや」
しかし、目をそらした筈のヴェラ・ミラーが此方のテーブルまでやって来てしまった。
失敗だ。自分が招いてしまったようなものだ。
「ご一緒してもよいかしら?」
「ええ、構いませんよ」
ミラーは警部に向かって言った。あいていた椅子(先程ヒーリーが座っていた席)に座った。
座ってしまった以上、ジークは少しでも情報を得る為に仕事を始めることにした。
「お久しぶりです、ミラーさん」
「あら、てっきり無視され続けるのかと思ったわ」
「いいえ。むしろ、あなたからは色々と訊きたいことがあります」
「先に言っておくと、私は元大佐と繋がりはないわ。あなたがあの一件で私を敵視していることぐらい分かる。でも、私はお金を受け取り演じただけに過ぎない」
「本職は役者でしたか」
「それは褒め言葉と受け取っておくわ。でも、私の本職は占いよ。結果的にはゆくべき道は示せたでしょ?」
「本職を忘れ私を騙しましたけど」
「占いは依頼者の思い通りの結果にならないことの方が当たり前なの」
「では、本当に報酬を貰っただけ?」
「誤解が解けたようで良かったわ。正直、あれは私も不本意だった」
「報酬を受け取っておいて不本意だったと?」
すると、目がキリッとなった。
「無知な坊やね。誰もがカーソン・パロットという男を恐れている。私がやすやすと本職を放り出し違う占いをすると思われるのは心外ね。あなたはあの男の恐怖を知らないだけ。誰もカーソン・パロットのお願いを断われないのよ」
「直接依頼されたのですか?」
「それは違うわ。その手下ね」
「カーソン・パロットを恐れる理由は何ですか?」
「あら、無知なだけでなく無頓着だったの? 男は皆恐怖のかたまりよ。暴力、暴言、ギャンブル、酒、煙草、それを女は騙されて魅力的に感じてしまうだけで、それは偽りだと後で気づき後悔するものよ。まぁ、女性でも煙草やギャンブルもやるようになったけれど、結婚をするならどれもやめなければならないけど。でなければ、男は女に寄り付かない」
「随分と偏見がおありのようだ」
「あら、盲目でもあったのかしら。どっちにしろ、カーソン・パロットはその中でもとても危険人物よ。同じ男ですら恐怖するんだから」
「それは簡単に説明がつきますよ。彼は人殺しをする。誰だって恐怖しますよ。それは本能です。それがない人はむしろ危険だ」
「その人物は痛みを知らないから。だから、そういった人物は同じ殺人鬼になりやすい」
「そうです」
「サイコパスも似たようなものだ。では、君はカーソン・パロットはサイコパスとでも言いたいのか?」
「まともでないのは確定しています。まともであれば、まず人殺しはしないでしょう」
「目の前に恋人や家族が殺されても?」
「話しが逸れましたよ、ミラーさん。ですが、そうですね。因果応報はまともな結果を生み出さないでしょう。裁くのは法律です」
「それはあなたがまだ正気だから。でも、犯人は何かのきっかけで殺人を犯す。それは決して冷静ではない。あなたはずっと冷静でいられると言うわけ? 最初に殺人を犯した犯人が生まれた時から子どもの時もずっと人殺しのことを考えているとでも思っているのかしら? いいえ、違う。皆、冷静だから、冷静でない殺人鬼を狂っていると表現する。それ事態は正しい。だけど、最初から狂っていた人間はいない。そうは思わない?」
「あなたなの話しは面白いですね」
「よく言われるわ。占い師はまず喋りがうまくなくてはね」
「なる程」
すると、最後のデザートが運ばれた。
ジークは最後まで何一つ手をつけることはしなかった。
「やぁ。私はヒーリーだ」
「ええ、存じてます」と警部は言った。
「ああ、そう。で、君達は何で招待されたんだ?」
警部とジークは顔を合わせた。
「全く」と警部は答えた。
「そんなわけないだろう。君達も何かしらの理由があって招待された筈だ。ここにいる全員がそうさ」
「ヒーリーさんはどうなんですか?」とジークは訊いてみた。
「恐らく資金目当てだろう。投資をしないかと持ち掛けるんだ。そう言ったパーティに誘われたことは前にもある」
「どんな投資だと思います?」
「それは……」
言えないという顔をしていた。少なくとも、彼は元大佐のしようとすることを知っている。もっと言えば、ロバート・エルフマンの研究の投資ではないかという自覚を。
「そう言えば、あのホテルはどうなりましたか?」
「ああ! あれね。せっかく君が事件を解決してくれたが、殺人事件の起こったホテルにもう客は来ないよ。興味本位で来てくれる人がいたとしても最初だけさ。それに多くない。あのホテルは諦めたんだ」
「そうでしたか。そろそろデザートが来るようですが」
「ああ、いいんです。糖尿でね。いつも朝は糖尿の薬と血圧の薬を毎日飲まなければならないんだ」
「ああ」
ジークは納得した。
「でも、君達のデザートの邪魔してはいけないから戻るとするよ」
それはまるで自分から逃げるようだった。そうでなければ質問を沢山されると思ったのだ。
ふと、ジークは後ろの席にいるヴェラ・ミラーを見た。すると、直ぐに目が合ってしまった。どうも、あの人はずっと此方を見ていたようだ。人探しにあの占い師を頼ったのが出会いだ。今となっては信用ならない。あの人物は元大佐の息がかかっている。
淡い紫色のドレスに真珠のネックレスをしたヴェラ・ミラーはにっこりと微笑んだ。ジークは思わず目をそらした。
「どうかしたか?」
「いや」
しかし、目をそらした筈のヴェラ・ミラーが此方のテーブルまでやって来てしまった。
失敗だ。自分が招いてしまったようなものだ。
「ご一緒してもよいかしら?」
「ええ、構いませんよ」
ミラーは警部に向かって言った。あいていた椅子(先程ヒーリーが座っていた席)に座った。
座ってしまった以上、ジークは少しでも情報を得る為に仕事を始めることにした。
「お久しぶりです、ミラーさん」
「あら、てっきり無視され続けるのかと思ったわ」
「いいえ。むしろ、あなたからは色々と訊きたいことがあります」
「先に言っておくと、私は元大佐と繋がりはないわ。あなたがあの一件で私を敵視していることぐらい分かる。でも、私はお金を受け取り演じただけに過ぎない」
「本職は役者でしたか」
「それは褒め言葉と受け取っておくわ。でも、私の本職は占いよ。結果的にはゆくべき道は示せたでしょ?」
「本職を忘れ私を騙しましたけど」
「占いは依頼者の思い通りの結果にならないことの方が当たり前なの」
「では、本当に報酬を貰っただけ?」
「誤解が解けたようで良かったわ。正直、あれは私も不本意だった」
「報酬を受け取っておいて不本意だったと?」
すると、目がキリッとなった。
「無知な坊やね。誰もがカーソン・パロットという男を恐れている。私がやすやすと本職を放り出し違う占いをすると思われるのは心外ね。あなたはあの男の恐怖を知らないだけ。誰もカーソン・パロットのお願いを断われないのよ」
「直接依頼されたのですか?」
「それは違うわ。その手下ね」
「カーソン・パロットを恐れる理由は何ですか?」
「あら、無知なだけでなく無頓着だったの? 男は皆恐怖のかたまりよ。暴力、暴言、ギャンブル、酒、煙草、それを女は騙されて魅力的に感じてしまうだけで、それは偽りだと後で気づき後悔するものよ。まぁ、女性でも煙草やギャンブルもやるようになったけれど、結婚をするならどれもやめなければならないけど。でなければ、男は女に寄り付かない」
「随分と偏見がおありのようだ」
「あら、盲目でもあったのかしら。どっちにしろ、カーソン・パロットはその中でもとても危険人物よ。同じ男ですら恐怖するんだから」
「それは簡単に説明がつきますよ。彼は人殺しをする。誰だって恐怖しますよ。それは本能です。それがない人はむしろ危険だ」
「その人物は痛みを知らないから。だから、そういった人物は同じ殺人鬼になりやすい」
「そうです」
「サイコパスも似たようなものだ。では、君はカーソン・パロットはサイコパスとでも言いたいのか?」
「まともでないのは確定しています。まともであれば、まず人殺しはしないでしょう」
「目の前に恋人や家族が殺されても?」
「話しが逸れましたよ、ミラーさん。ですが、そうですね。因果応報はまともな結果を生み出さないでしょう。裁くのは法律です」
「それはあなたがまだ正気だから。でも、犯人は何かのきっかけで殺人を犯す。それは決して冷静ではない。あなたはずっと冷静でいられると言うわけ? 最初に殺人を犯した犯人が生まれた時から子どもの時もずっと人殺しのことを考えているとでも思っているのかしら? いいえ、違う。皆、冷静だから、冷静でない殺人鬼を狂っていると表現する。それ事態は正しい。だけど、最初から狂っていた人間はいない。そうは思わない?」
「あなたなの話しは面白いですね」
「よく言われるわ。占い師はまず喋りがうまくなくてはね」
「なる程」
すると、最後のデザートが運ばれた。
ジークは最後まで何一つ手をつけることはしなかった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
合成師
盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる