探偵主人公

アズ

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5章 呪いの海

04 二人の話

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 案内人が言っていたゲームがいつから始まるのかも分からないまま食事が順調に進み、次でデザートとなる。すると、燕尾服の歳は40過ぎくらいの男性が此方の席にやって来た。
「やぁ。私はヒーリーだ」
「ええ、存じてます」と警部は言った。
「ああ、そう。で、君達は何で招待されたんだ?」
 警部とジークは顔を合わせた。
「全く」と警部は答えた。
「そんなわけないだろう。君達も何かしらの理由があって招待された筈だ。ここにいる全員がそうさ」
「ヒーリーさんはどうなんですか?」とジークは訊いてみた。
「恐らく資金目当てだろう。投資をしないかと持ち掛けるんだ。そう言ったパーティに誘われたことは前にもある」
「どんな投資だと思います?」
「それは……」
 言えないという顔をしていた。少なくとも、彼は元大佐のしようとすることを知っている。もっと言えば、ロバート・エルフマンの研究の投資ではないかという自覚を。
「そう言えば、あのホテルはどうなりましたか?」
「ああ! あれね。せっかく君が事件を解決してくれたが、殺人事件の起こったホテルにもう客は来ないよ。興味本位で来てくれる人がいたとしても最初だけさ。それに多くない。あのホテルは諦めたんだ」
「そうでしたか。そろそろデザートが来るようですが」
「ああ、いいんです。糖尿でね。いつも朝は糖尿の薬と血圧の薬を毎日飲まなければならないんだ」
「ああ」
 ジークは納得した。
「でも、君達のデザートの邪魔してはいけないから戻るとするよ」
 それはまるで自分から逃げるようだった。そうでなければ質問を沢山されると思ったのだ。
 ふと、ジークは後ろの席にいるヴェラ・ミラーを見た。すると、直ぐに目が合ってしまった。どうも、あの人はずっと此方を見ていたようだ。人探しにあの占い師を頼ったのが出会いだ。今となっては信用ならない。あの人物は元大佐の息がかかっている。
 淡い紫色のドレスに真珠のネックレスをしたヴェラ・ミラーはにっこりと微笑んだ。ジークは思わず目をそらした。
「どうかしたか?」
「いや」
 しかし、目をそらした筈のヴェラ・ミラーが此方のテーブルまでやって来てしまった。
 失敗だ。自分が招いてしまったようなものだ。
「ご一緒してもよいかしら?」
「ええ、構いませんよ」
 ミラーは警部に向かって言った。あいていた椅子(先程ヒーリーが座っていた席)に座った。
 座ってしまった以上、ジークは少しでも情報を得る為に仕事を始めることにした。
「お久しぶりです、ミラーさん」
「あら、てっきり無視され続けるのかと思ったわ」
「いいえ。むしろ、あなたからは色々と訊きたいことがあります」
「先に言っておくと、私は元大佐と繋がりはないわ。あなたがあの一件で私を敵視していることぐらい分かる。でも、私はお金を受け取り演じただけに過ぎない」
「本職は役者でしたか」
「それは褒め言葉と受け取っておくわ。でも、私の本職は占いよ。結果的にはゆくべき道は示せたでしょ?」
「本職を忘れ私を騙しましたけど」
「占いは依頼者の思い通りの結果にならないことの方が当たり前なの」
「では、本当に報酬を貰っただけ?」
「誤解が解けたようで良かったわ。正直、あれは私も不本意だった」
「報酬を受け取っておいて不本意だったと?」
 すると、目がキリッとなった。
「無知な坊やね。誰もがカーソン・パロットという男を恐れている。私がやすやすと本職を放り出し違う占いをすると思われるのは心外ね。あなたはあの男の恐怖を知らないだけ。誰もカーソン・パロットのお願いを断われないのよ」
「直接依頼されたのですか?」
「それは違うわ。その手下ね」
「カーソン・パロットを恐れる理由は何ですか?」
「あら、無知なだけでなく無頓着だったの? 男は皆恐怖のかたまりよ。暴力、暴言、ギャンブル、酒、煙草、それを女は騙されて魅力的に感じてしまうだけで、それは偽りだと後で気づき後悔するものよ。まぁ、女性でも煙草やギャンブルもやるようになったけれど、結婚をするならどれもやめなければならないけど。でなければ、男は女に寄り付かない」
「随分と偏見がおありのようだ」
「あら、盲目でもあったのかしら。どっちにしろ、カーソン・パロットはその中でもとても危険人物よ。同じ男ですら恐怖するんだから」
「それは簡単に説明がつきますよ。彼は人殺しをする。誰だって恐怖しますよ。それは本能です。それがない人はむしろ危険だ」
「その人物は痛みを知らないから。だから、そういった人物は同じ殺人鬼になりやすい」
「そうです」
「サイコパスも似たようなものだ。では、君はカーソン・パロットはサイコパスとでも言いたいのか?」
「まともでないのは確定しています。まともであれば、まず人殺しはしないでしょう」
「目の前に恋人や家族が殺されても?」
「話しが逸れましたよ、ミラーさん。ですが、そうですね。因果応報はまともな結果を生み出さないでしょう。裁くのは法律です」
「それはあなたがまだ正気だから。でも、犯人は何かのきっかけで殺人を犯す。それは決して冷静ではない。あなたはずっと冷静でいられると言うわけ? 最初に殺人を犯した犯人が生まれた時から子どもの時もずっと人殺しのことを考えているとでも思っているのかしら? いいえ、違う。皆、冷静だから、冷静でない殺人鬼を狂っていると表現する。それ事態は正しい。だけど、最初から狂っていた人間はいない。そうは思わない?」
「あなたなの話しは面白いですね」
「よく言われるわ。占い師はまず喋りがうまくなくてはね」
「なる程」
 すると、最後のデザートが運ばれた。
 ジークは最後まで何一つ手をつけることはしなかった。
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