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5章 呪いの海
05 事件発生
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食事を全員が終えてもゲームどころか、ただ食事をしただけになってしまった。ジークにとっては、警部を除き二人と会話しただけの時間だった。
それも過ぎ、いったい何の時間だったのだろうという謎が残った。
案内人は皆の前に再び現れたのは食後、5分後ぐらいだった。
「皆様、お食事は楽しまれましたでしょうか?」
すると、レオ・ラストが手をあげた。
「そろそろ本題に入ったらどうだ?」
「大変申し訳ありませんが、ゲームも含め本題は後日になります」
「明日だと? そんなのは聞いてないぞ!」
周りもざわめきだした。
ジークはミラーの方を見た。ミラーはずっと一緒のテーブルにいたのだ。
「私だって知らないわ」
「皆はこの会に何度も呼ばれているのですよね?」
「あら、どうしてそう思うの?」
「船が動き出しても誰も驚く様子はありませんでした。船の移動中で密会。なる程、これなら邪魔は入らないでしょう」
「だが、予定にないことならこれ以外にもある」
「探偵と警部がいるってことですか?」
「二人は元大佐の息がかかったわけじゃないから」
「心配ですか?」
「何を?」
「この船ごと消されることです。大量殺人を計画するならこれ以上都合のいい方法はないでしょう。船は海の底へ沈没し証拠は残らなくなります」
「怖いことをサラッと言うのね。まるで、自分は死なないみたいな言い草に聞こえるわよ」
実際これはゲームであって現実に死ぬわけではないからミラーの指摘は正しい。
「そうはならないって思ってるんだろ?」と警部がジークに訊いた。
「元大佐がここにいる全員を殺害する動機が不明です。特に、乗船している中にはバーソロミュー・ムーア少佐もいます。彼のことはよく知りませんが、彼も一緒に沈没させるでしょうか?」
その間、他の乗客が案内人にいくら質問を重ねても答えは得られることはなかった。かわりに、各部屋の鍵が与えられた。
一泊することは確定らしい。
となれば、行き先は海外になるだろう。いったいどこに?
部屋は一人一部屋だった。夫妻だけは二人一部屋だった。
渡された鍵で部屋の扉を開け中に入ると、奥に窓が一つある部屋で、ベッド、ソファ、クローゼット、シャワールーム、テーブルと、広々とした部屋だった。
部屋の扉を閉めると鍵をしめた。それから、ソファを動かしドアをそれで塞いだ。これは念の為だ。スペアがある可能性がある。
それからジークは念入りに部屋の中を見回った。クローゼット、全ての引き出しを開けて中を確認し、ベッドの下まで念入りに仕掛けがないか調べた。
「とりあえず何も無しか……」
ようやく落ち着いたところで、窓の外を見た。
外は夜で周りは何も見えない。見えるのは海だけ。
ポチャ!
「ん?」
水飛沫が見え、ジークはよく海を見る。
すると、海の中から人が見えた。それも泳いでいるように見える。
「まさか人魚!?」
人が見えたのは一瞬で、それ以降ずっと海を睨んでももう見ることは出来なかった。
この世界には人魚も出てくるのか?
ジークはそんなことを考えながら窓の内側の鍵をしっかりしめてから、ベッドの上に横たわった。
今思えばこれは油断だった。眠気がジークの頭の回転をはるかに遅く鈍っていたのだ。無論、これは言い訳にしかならない。
目が覚めた時には朝になっていた。
ドアにノックがされ、それが目覚ましがわり起きたジークはソファを動かし、覗き窓から通路を見ると、警部が立っていた。
鍵を開けてドアを開けた。
「大変だ。船員も船長も全員消えてる! とにかく来てくれ」
「え!?」
ジークは言われた通り警部と一緒に夜に食事をしたあの場所へと来た。
そこには乗客達が既に集められていた。
「警部、全員消えたって本当ですか?」とジークは訊いた。
「ああ、本当だ」
「俺達はこの船ごと殺されるんだ! カーソン・パロットの野郎に!」とレオ・ラストは頭を抱えながらそう叫んだ。
すると、少佐が彼を睨みつけた。
それに怯え男は直ぐに黙った。
ジークは乗客を見渡した。皆、この状況に困惑した表情をしている。
「ん?」
「どうした、ジーク」
「ヒーリーさんは?」
「そう言えば、まだ現れていないな。呼びに行くか」
「なら、私も行きます」
「誰か、ヒーリーさんの部屋を知っている人はいませんか?」
すると、医師であるイアン・ブラウンが挙手をした。
「私が案内します」
「では、お願いします」
こうして三人はヒーリーを起こしに彼の部屋へ向かった。
ブラウンが彼の部屋の扉の前まで来ると、ドアをノックした。
しかし、返事はない。物音すら聞こえて来ない。
ブラウンはもう一度ノックをした。
「イアン・ブラウンです。ヒーリーさん、いますか? 大変なことが起きました。船にいた案内人も船長もいなくなってしまったんです! ヒーリーさん、聞いてますか?」
しかし、変わらず返事がない。
「部屋にいないんでしょうか?」
ブラウンはそう言った。警部は「ちょっと失礼」と言ってから「ヒーリーさん、警部のホランドです。開けますよ」と言ってドアを開けようとした。しかし、ドアは施錠されており、開けることは出来なかった。
「やはり、もう起きていてどっかにいるんじゃありませんか?」
「では、手分けして探しましょう」
それから三人は船内を隅々まで捜索したが、それでもヒーリーを見つけることは出来なかった。
仕方なく、一旦皆のいる場所に戻った。
「あれ、ヒーリー氏はいないじゃないか」とラストが三人を見てそう言った。
「ヒーリーさんを探したのですが、どこにもいませんでした」
「いなかったって? そんなことあり得るのか」
「もしかして、いなくなった人達と一緒に私達が寝ている間にいなくなったんでしょうか?」と、そう言ったのはロウェナだ。
そばにいたヘンリーは「まさか連中とグルだったのか」と驚いた顔をした。
だが、それにはジークは反論する。
「果たしてそうでしょうか? 何故、招待客を演じる一人が必要だったのでしょうか? そもそも、彼らの目的も、それから何を果たしたのかも未だ不明です。気になるのは彼らが昨日言った言葉」
「ゲームか」と警部は言った。
「そうです」
「つまり、これがゲームと言うわけか。いきなり説明も無しに始まるとはな。しかし、だとしたら何故ヒーリー氏はいなくなる?」
「もしくは……まだ部屋の中に」
「何を言っている? 君達が彼の部屋まで確認しに行ったんだろ?」
「部屋には鍵がかかっており返事がなかっただけです。部屋の中までは確認しておりません」
「な、何が言いたいんだ」
「警部」
「ああ。もう一度確認しに行こう」
二人は駆け足でヒーリーの部屋へ向かった。
皆も不安になり、二人のあとをついて行った。
そして、部屋の扉の前まで来ると、警部はドアに向かって体当たりした。
3回体当たりしたところでようやくドアの鍵が壊れる音がした。しかし、ドアは満足に開かず、僅かな隙間だけが開いた。
隙間から警部が覗くと「何かに引っ掛かってるぞ」と言った。
「どうやら自分と同じようにドアを塞いで身の安全を確保したのでしょう」
ジークは警部と一緒にドアを押し、なんとか引っ掛かっていた物を動かせ、一人分の隙間が出来ると、先に警部が入り遮っていた障害物を取り除くと内側から警部がドアを開けた。
「ヒーリーさんは?」
「そこだ」
そこには横たわるヒーリーの姿があった。
「遮っていたのはソファだけじゃなかった」
「では、ヒーリーさんはもう……」
「亡くなっている」
それを聞いたロウェナは悲鳴をあげた。
「まだ、殺されたと決まったわけじゃない」とヘンリーはロウェナを抱き背中を擦りながら言った。
「そうでしょ? 警部さん」
「なんとも言えんな。外傷は見たところないし、急死って可能性もある」
「急死じゃなきゃ他に何があるって言うんですか」
「毒とか」とミラーは言った。
それにロウェナは怯え「ヘンリー」と言った。
「怖いこと言わないでくれ! この中に犯人がいるとでも言うのか」
「いや、違う! 犯人は奴らだ。でなきゃ何故突然消えた。そうとしか考えられん! 奴らならこの部屋のスペアも持っていただろうし、簡単に侵入できた筈だ」
「ソファで部屋を開けられないようにしてあったんだぞ。窓の内側部分にも鍵はかかってある」
「密室ってわけね」とミラーは言った。
「そうだ」
「なら、犯行は不可能だ。そうだろ?」とラストは言う。
皆、死人が出たことで混乱している。いや、一人だけこの状況にも関わらず冷静でいる人物がいた。
バーソロミュー・ムーア少佐だ。
警戒した方がよさそうか?
「ジーク、どう思う? 事件か急死か? もしくは自殺か」
「そう言えば、この中に医者がいましたね」
ジークがそう言うと皆は一斉にブラウンを見た。
「確かに私は医者だが、解剖医ではない。それに毒ならどの毒かもここでは分かることは出来ない。せいぜい、死亡推定時刻ぐらいか」
「では、それだけでもいいのでお願いします」
そうお願いされたブラウンは死体に近づき、死後硬直を確認する。
「そうだな、死後6時から8時の間ぐらいだ」
「となると、ヒーリーさんは朝起きてからその後に亡くなった可能性が高いことになります」
「そうだろうね」
「なら、急死だな。事件はこの状況じゃあり得ないし、自殺なら遺言書を残しておくだろ? それに、何故わざわざこんな場所で自殺する必要がある?」
ラストの言うことは一理ある。しかし、認められるのは自殺の否定のみ。急死かどうかはまだ決めつけるのは早い。
となると、他の可能性。それはミラーが先程言った。毒殺の可能性。
「警部、彼の荷物を確認しましょう。何か手掛かりがあるかもしれません」
「あぁ、そうだな」
「何か手伝おうか?」とヘンリーは言った。
「いや、結構。私と彼の二人で確認します」
こうして、ジークと警部が探すもほとんど物はなかった。
「急な一泊だったからやはり荷物は少ないな」
「しかし、こんなものがありました」
それは薬だった。
「見たところ二種類あるな」
「警部、覚えてますか? 昨日の夜、ヒーリーさんは血圧と糖尿の薬を飲んでいると」
「あぁ、確かに言っていたな。まさか、犯人は」
「もし、毒殺ならすり替えたかもしれません」
「なる程、それならあり得るな。朝起きたヒーリーがいつものように薬を内服しようとしたが、それは毒だった」
「だとしたら、犯人はどうやって毒と薬をすり替えたって言うんだ! 部屋はあの食後に渡された鍵で初めて自分達の部屋を知ったんだぞ。当然、この中にいる人間があらかじめ知っておくなんてことは不可能だ。次にヒーリー氏は部屋を鍵以外でも扉にソファで遮った。窓も内側から鍵がかけられ、しかも外は暗闇の海。まさに密室だ。そして、朝までドアは遮られたままヒーリー氏は毒を誤薬したことになる。チャンスはなかった筈だ。それに、私はヒーリー氏が糖尿と血圧の薬を飲んでいたことを知らなかったぞ!」
ラストに同意するように周りも頷きはじめた。だが、ジークは反論する。
「これが毒殺であった場合、これは完全な計画殺人だということは間違いありません! でなければ毒殺はこの場で用意なんて出来なかったでしょう。では、何故毒殺だったのか? その謎も簡単に解けます! 何故なら私達は全員乗船する前に身体検査を受けたからです。凶器となる物は回収される。例え護身用の銃でさえもです! しかし、犯人は巧妙に抜け穴を考えたのです。そして、見つけた! ヒーリー氏は薬を持ち歩いていました。薬は凶器として見なされず身体検査を受けても回収まではされなかったのです。これに目をつけた犯人は毒殺を思いついた。そして、実行に移したのです」
それも過ぎ、いったい何の時間だったのだろうという謎が残った。
案内人は皆の前に再び現れたのは食後、5分後ぐらいだった。
「皆様、お食事は楽しまれましたでしょうか?」
すると、レオ・ラストが手をあげた。
「そろそろ本題に入ったらどうだ?」
「大変申し訳ありませんが、ゲームも含め本題は後日になります」
「明日だと? そんなのは聞いてないぞ!」
周りもざわめきだした。
ジークはミラーの方を見た。ミラーはずっと一緒のテーブルにいたのだ。
「私だって知らないわ」
「皆はこの会に何度も呼ばれているのですよね?」
「あら、どうしてそう思うの?」
「船が動き出しても誰も驚く様子はありませんでした。船の移動中で密会。なる程、これなら邪魔は入らないでしょう」
「だが、予定にないことならこれ以外にもある」
「探偵と警部がいるってことですか?」
「二人は元大佐の息がかかったわけじゃないから」
「心配ですか?」
「何を?」
「この船ごと消されることです。大量殺人を計画するならこれ以上都合のいい方法はないでしょう。船は海の底へ沈没し証拠は残らなくなります」
「怖いことをサラッと言うのね。まるで、自分は死なないみたいな言い草に聞こえるわよ」
実際これはゲームであって現実に死ぬわけではないからミラーの指摘は正しい。
「そうはならないって思ってるんだろ?」と警部がジークに訊いた。
「元大佐がここにいる全員を殺害する動機が不明です。特に、乗船している中にはバーソロミュー・ムーア少佐もいます。彼のことはよく知りませんが、彼も一緒に沈没させるでしょうか?」
その間、他の乗客が案内人にいくら質問を重ねても答えは得られることはなかった。かわりに、各部屋の鍵が与えられた。
一泊することは確定らしい。
となれば、行き先は海外になるだろう。いったいどこに?
部屋は一人一部屋だった。夫妻だけは二人一部屋だった。
渡された鍵で部屋の扉を開け中に入ると、奥に窓が一つある部屋で、ベッド、ソファ、クローゼット、シャワールーム、テーブルと、広々とした部屋だった。
部屋の扉を閉めると鍵をしめた。それから、ソファを動かしドアをそれで塞いだ。これは念の為だ。スペアがある可能性がある。
それからジークは念入りに部屋の中を見回った。クローゼット、全ての引き出しを開けて中を確認し、ベッドの下まで念入りに仕掛けがないか調べた。
「とりあえず何も無しか……」
ようやく落ち着いたところで、窓の外を見た。
外は夜で周りは何も見えない。見えるのは海だけ。
ポチャ!
「ん?」
水飛沫が見え、ジークはよく海を見る。
すると、海の中から人が見えた。それも泳いでいるように見える。
「まさか人魚!?」
人が見えたのは一瞬で、それ以降ずっと海を睨んでももう見ることは出来なかった。
この世界には人魚も出てくるのか?
ジークはそんなことを考えながら窓の内側の鍵をしっかりしめてから、ベッドの上に横たわった。
今思えばこれは油断だった。眠気がジークの頭の回転をはるかに遅く鈍っていたのだ。無論、これは言い訳にしかならない。
目が覚めた時には朝になっていた。
ドアにノックがされ、それが目覚ましがわり起きたジークはソファを動かし、覗き窓から通路を見ると、警部が立っていた。
鍵を開けてドアを開けた。
「大変だ。船員も船長も全員消えてる! とにかく来てくれ」
「え!?」
ジークは言われた通り警部と一緒に夜に食事をしたあの場所へと来た。
そこには乗客達が既に集められていた。
「警部、全員消えたって本当ですか?」とジークは訊いた。
「ああ、本当だ」
「俺達はこの船ごと殺されるんだ! カーソン・パロットの野郎に!」とレオ・ラストは頭を抱えながらそう叫んだ。
すると、少佐が彼を睨みつけた。
それに怯え男は直ぐに黙った。
ジークは乗客を見渡した。皆、この状況に困惑した表情をしている。
「ん?」
「どうした、ジーク」
「ヒーリーさんは?」
「そう言えば、まだ現れていないな。呼びに行くか」
「なら、私も行きます」
「誰か、ヒーリーさんの部屋を知っている人はいませんか?」
すると、医師であるイアン・ブラウンが挙手をした。
「私が案内します」
「では、お願いします」
こうして三人はヒーリーを起こしに彼の部屋へ向かった。
ブラウンが彼の部屋の扉の前まで来ると、ドアをノックした。
しかし、返事はない。物音すら聞こえて来ない。
ブラウンはもう一度ノックをした。
「イアン・ブラウンです。ヒーリーさん、いますか? 大変なことが起きました。船にいた案内人も船長もいなくなってしまったんです! ヒーリーさん、聞いてますか?」
しかし、変わらず返事がない。
「部屋にいないんでしょうか?」
ブラウンはそう言った。警部は「ちょっと失礼」と言ってから「ヒーリーさん、警部のホランドです。開けますよ」と言ってドアを開けようとした。しかし、ドアは施錠されており、開けることは出来なかった。
「やはり、もう起きていてどっかにいるんじゃありませんか?」
「では、手分けして探しましょう」
それから三人は船内を隅々まで捜索したが、それでもヒーリーを見つけることは出来なかった。
仕方なく、一旦皆のいる場所に戻った。
「あれ、ヒーリー氏はいないじゃないか」とラストが三人を見てそう言った。
「ヒーリーさんを探したのですが、どこにもいませんでした」
「いなかったって? そんなことあり得るのか」
「もしかして、いなくなった人達と一緒に私達が寝ている間にいなくなったんでしょうか?」と、そう言ったのはロウェナだ。
そばにいたヘンリーは「まさか連中とグルだったのか」と驚いた顔をした。
だが、それにはジークは反論する。
「果たしてそうでしょうか? 何故、招待客を演じる一人が必要だったのでしょうか? そもそも、彼らの目的も、それから何を果たしたのかも未だ不明です。気になるのは彼らが昨日言った言葉」
「ゲームか」と警部は言った。
「そうです」
「つまり、これがゲームと言うわけか。いきなり説明も無しに始まるとはな。しかし、だとしたら何故ヒーリー氏はいなくなる?」
「もしくは……まだ部屋の中に」
「何を言っている? 君達が彼の部屋まで確認しに行ったんだろ?」
「部屋には鍵がかかっており返事がなかっただけです。部屋の中までは確認しておりません」
「な、何が言いたいんだ」
「警部」
「ああ。もう一度確認しに行こう」
二人は駆け足でヒーリーの部屋へ向かった。
皆も不安になり、二人のあとをついて行った。
そして、部屋の扉の前まで来ると、警部はドアに向かって体当たりした。
3回体当たりしたところでようやくドアの鍵が壊れる音がした。しかし、ドアは満足に開かず、僅かな隙間だけが開いた。
隙間から警部が覗くと「何かに引っ掛かってるぞ」と言った。
「どうやら自分と同じようにドアを塞いで身の安全を確保したのでしょう」
ジークは警部と一緒にドアを押し、なんとか引っ掛かっていた物を動かせ、一人分の隙間が出来ると、先に警部が入り遮っていた障害物を取り除くと内側から警部がドアを開けた。
「ヒーリーさんは?」
「そこだ」
そこには横たわるヒーリーの姿があった。
「遮っていたのはソファだけじゃなかった」
「では、ヒーリーさんはもう……」
「亡くなっている」
それを聞いたロウェナは悲鳴をあげた。
「まだ、殺されたと決まったわけじゃない」とヘンリーはロウェナを抱き背中を擦りながら言った。
「そうでしょ? 警部さん」
「なんとも言えんな。外傷は見たところないし、急死って可能性もある」
「急死じゃなきゃ他に何があるって言うんですか」
「毒とか」とミラーは言った。
それにロウェナは怯え「ヘンリー」と言った。
「怖いこと言わないでくれ! この中に犯人がいるとでも言うのか」
「いや、違う! 犯人は奴らだ。でなきゃ何故突然消えた。そうとしか考えられん! 奴らならこの部屋のスペアも持っていただろうし、簡単に侵入できた筈だ」
「ソファで部屋を開けられないようにしてあったんだぞ。窓の内側部分にも鍵はかかってある」
「密室ってわけね」とミラーは言った。
「そうだ」
「なら、犯行は不可能だ。そうだろ?」とラストは言う。
皆、死人が出たことで混乱している。いや、一人だけこの状況にも関わらず冷静でいる人物がいた。
バーソロミュー・ムーア少佐だ。
警戒した方がよさそうか?
「ジーク、どう思う? 事件か急死か? もしくは自殺か」
「そう言えば、この中に医者がいましたね」
ジークがそう言うと皆は一斉にブラウンを見た。
「確かに私は医者だが、解剖医ではない。それに毒ならどの毒かもここでは分かることは出来ない。せいぜい、死亡推定時刻ぐらいか」
「では、それだけでもいいのでお願いします」
そうお願いされたブラウンは死体に近づき、死後硬直を確認する。
「そうだな、死後6時から8時の間ぐらいだ」
「となると、ヒーリーさんは朝起きてからその後に亡くなった可能性が高いことになります」
「そうだろうね」
「なら、急死だな。事件はこの状況じゃあり得ないし、自殺なら遺言書を残しておくだろ? それに、何故わざわざこんな場所で自殺する必要がある?」
ラストの言うことは一理ある。しかし、認められるのは自殺の否定のみ。急死かどうかはまだ決めつけるのは早い。
となると、他の可能性。それはミラーが先程言った。毒殺の可能性。
「警部、彼の荷物を確認しましょう。何か手掛かりがあるかもしれません」
「あぁ、そうだな」
「何か手伝おうか?」とヘンリーは言った。
「いや、結構。私と彼の二人で確認します」
こうして、ジークと警部が探すもほとんど物はなかった。
「急な一泊だったからやはり荷物は少ないな」
「しかし、こんなものがありました」
それは薬だった。
「見たところ二種類あるな」
「警部、覚えてますか? 昨日の夜、ヒーリーさんは血圧と糖尿の薬を飲んでいると」
「あぁ、確かに言っていたな。まさか、犯人は」
「もし、毒殺ならすり替えたかもしれません」
「なる程、それならあり得るな。朝起きたヒーリーがいつものように薬を内服しようとしたが、それは毒だった」
「だとしたら、犯人はどうやって毒と薬をすり替えたって言うんだ! 部屋はあの食後に渡された鍵で初めて自分達の部屋を知ったんだぞ。当然、この中にいる人間があらかじめ知っておくなんてことは不可能だ。次にヒーリー氏は部屋を鍵以外でも扉にソファで遮った。窓も内側から鍵がかけられ、しかも外は暗闇の海。まさに密室だ。そして、朝までドアは遮られたままヒーリー氏は毒を誤薬したことになる。チャンスはなかった筈だ。それに、私はヒーリー氏が糖尿と血圧の薬を飲んでいたことを知らなかったぞ!」
ラストに同意するように周りも頷きはじめた。だが、ジークは反論する。
「これが毒殺であった場合、これは完全な計画殺人だということは間違いありません! でなければ毒殺はこの場で用意なんて出来なかったでしょう。では、何故毒殺だったのか? その謎も簡単に解けます! 何故なら私達は全員乗船する前に身体検査を受けたからです。凶器となる物は回収される。例え護身用の銃でさえもです! しかし、犯人は巧妙に抜け穴を考えたのです。そして、見つけた! ヒーリー氏は薬を持ち歩いていました。薬は凶器として見なされず身体検査を受けても回収まではされなかったのです。これに目をつけた犯人は毒殺を思いついた。そして、実行に移したのです」
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