探偵主人公

アズ

文字の大きさ
65 / 124
6章 恐怖のラブレター

10 VS少佐①

しおりを挟む
 視界が真っ白になったかと思ったらゲームオーバーの文字が表示された。
 クソッ、油断した。
 まさか、いきなり手榴弾でご挨拶とは。
 セーブポイントからスタートし、再びあの世界へと入り込んだ。
 そして、再び列車の中に戻ると、列車が急停止するところから始まった。
 コロコロと転がっていく手榴弾をキャッチし急いで後方へと投げる。
 手榴弾は爆発し、衝撃を三人が襲った。
 だが、ジークのおかげで三人はなんとか無事に済んだ。
「大丈夫か?」
「あぁ、助かった。よく反応できたな」とリッター刑事はジークに感心した。
 いや、やり直したから反応できただけだ。
 とにかくジークは手榴弾が投げられた後方を覗いた。
 滅茶苦茶に破壊された座席の瓦礫に埋もれた少佐の姿があった。
 頭には血が流れている。
「俺達を殺そうとしたのか?」
 まだ、少佐に意識があるようで、目は微かに開き、此方を見ていた。
「クソッ……しくじった……」
 少佐はそう言いながらポケットから注射器を取り出した。
 注射器の中に緑色の液体が入っている。その緑色の液体は見覚えがあった。研究所の水槽の中がまさに同じ緑色をしていた。
 その緑色の液体が少佐の体内へと入っていく。
 すると、血管が浮かび上がり、少佐は苦しみ始めた。
 体内で何かが起こっていて、その急激な変化に少佐は必死に耐えているようだった。
 手足をバタつかせながら、受けた傷口が徐々に閉ざされていく。
 そして、瞳の色が緑色に変化すると、少佐は落ち着き起き上がった。
 まるで、生き返ったみたいに。
 それから少佐は立ち上がった。手榴弾をまともにくらった男がだ。
「あり得ない」とリッター刑事は自分の目を疑ったが、これは現実だった。
「恐らく、あの注射が少佐の体に異変をもたらしたのでしょう」
「あぁ、その通りだ。君の想像する通り博士の発明品だ。緑色の液体を生物に打ち込めばその生物は急激な進化を与える。進化は単なる強化ではない。生きる為に必要な適応を与えるものだ。例えば、私は瀕死の重傷を負った。その状態で薬品を体内に打ち込めば、私の体はより頑丈なものへと変化を遂げる」
 そう言って少佐は裾を破り腕を見せた。毛はなく、頑丈な皮膚は柔らかい人間の皮膚をしておらず、まるで鉄のような皮膚をしていた。失った爪は鋭い爪へと生え変わり黒い。
「人の進化は脳の発達ではなく、むしろ危機的状況から進化する。人はピンチになると、それを乗り越えようと必死になる。生物の本能だ」
 アニメや漫画で主人公がピンチになる度に強くなっていくのと近い。
「私のピンチは進化に必要な条件だった。だから、君にはむしろ感謝している。おかげで私は誰よりも先に進化を得ることができた」
「進化に必要な条件が瀕死なら、失敗したら死に繋がっていた筈だ。そんなリスクのある研究は成功とは言えない」
「違うな。今まで出来なかったものを発明した時点で博士の研究は成功している。何事も、リスク無しでは得るものも無い。重傷を負った兵士がもう助からないと分かった時点で博士の薬品を打ち込めば、むしろそれはチャンスに繋がる。博士の発明はチャンスを作ったことだ」
「なる程。あなた達はそれを実戦で使いたいわけですね」
「逆に兵器にもなる。瀕死でない状態の人間に博士の研究を打ち込めば、その人物は死ぬ。リスク無しの進化を求める欲求は身を滅ぼすわけだ」
 リッター刑事は銃を取り出し少佐に向けた。
「化け物が」
 そう言って発砲したが、少佐はそれを目でとらえることが出来ないスピードで回避した。
「銃をこの距離で避けたのか!?」
「これが進化だ」
 少佐は大笑いした。この状況に優越感に浸っているのだ。
「市長、俺達でなんとか足止めするのであなただけでも逃げて下さい」
「わ、分かったわ」
 市長はそう言って隣の車両へと逃げ込んだ。
 リッター刑事がかっこよく俺達と言ったのをジークは聞き逃さなかった。どうやら自分は化け物に進化してしまった少佐と戦わなければならないようだ。
 ジークはアイテム欄から武器を装備した。
 ボロボロの片手剣と盾が装備されてからまずいと気づいた。
 エジプトからロンドンに戻った時にバトルは一切なかったのですっかり忘れていた。エジプトでモンスターばかり戦ってレベル上げをしていた時に武器がボロボロで買い替えのタイミングだったことをだ。
 大丈夫なのか、この武器で。
 そういう不安があるまま少佐との戦闘が始まった。
 少佐はいきなりリッター刑事を襲いかかった。
 鋭い爪は凶器で、リッター刑事の体に鋭い5本の縦線を刻んだ。
 大量の血を流しながらリッター刑事は倒れ込んだ。
「リッター刑事! 大丈夫ですか」
 相手が早すぎて反応しきれなかった。
 リッター刑事は口からも吐血しながら「あとは……頼んだ……」と言って意識を失った。
 その直後、視界にバッドエンドの文字が表示された。
 そして、再びセーブポイントに戻された。
 どうやら、リッター刑事を守りながら少佐に勝利しなければならないらしい。
 セーブポイントは、少佐が進化を遂げた後だった。
 市長が隣の車両へ逃げ込むと、戦闘が始まった。
 バッドエンド前と同じく少佐はリッター刑事に襲いかかろうとした。今度は直ぐに対応できたジークは盾でリッター刑事を守りに出た。
 少佐の鋭い爪はジークの盾を破壊し、防具はキラキラと光りながら消滅した。
「よく反応したな」
 少佐は感心し、リッター刑事は「助かった!」とお礼を言った。
「お礼は少佐を倒せたらにして欲しい」
 ジークはそう言った。だってそれは本音だからだ。
 もう、少佐からの攻撃を防ぐ手段はない。
「銃は効かない。どうやって倒す?」
 リッター刑事はジークに訊いたが、それは自分にだって分からなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...