探偵主人公

アズ

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9章 銃弾と煙

02 VS大佐①

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 音楽が流れた。クラシック音楽だ。それもゆったりしたのではなく、激しい音楽だ。聴き覚えがあるのだが、タイトルが思い出せない。そういう時はたまにある。思わず、名前が出ずそれが気持ち悪く感じることが。そして、なんとかしてその名前を知ろうと本来ならばスマホをポケットから出してヒントから名前を導こうとする。今では簡単に思い出すことができる。だが、とても悪いやり方だ。自分の力でアウトプットをしていない。これでは、人間はどんどん馬鹿になっていくだろう。自分でひねり出せなくなる。今はそうはいかない。だが、音楽は今の状況にとても合っていた。
 劇場に音楽が流れれば、次は役者が必要だ。役者は既に揃っており、登場済みだ。銃を構えた悪者に軍服の兵士に、退役した元大佐に、謎の女性。対して探偵に警部に忍者や探検家なんにでもなってしまう女性が一人。
 音楽と役者が揃えば、ステージだ。ステージは今、この場所がまさにそうだ。
 足りないのは観客だ。
 客は無人で、ダンスやオペラをするわけではない。
 生々しい戦いが始まる。
 自分達は今、客席と客席の間の細い下り階段の道に立っている。前方はステージ、後方にはドアがある。
「言っとくがここにいる人間は只者ではないぞ。全員進化薬を使っている」
 進化薬で強くなった相手なら前回経験をしている。銃では全く効いていなかった。まるで、人間をやめた化け物だった。
 警部が持っている武器は銃だ。つまり、この時点で警部はあまり戦闘で活躍はしてくれないだろう。マーニーがいたのは状況的に救いになる。恐らく、警部がやられてしまったらゲームオーバーになるのはだいたい予想がつく。二人で警部を守りながら戦うしかないが……この状況は正直厳しい。
 理由は数と、周りが客席で戦いにくいという点だ。前回も似た感じだった。狭い列車の中で戦わなければならなかった。
「どうやら、色々考えているようだが、少佐を倒した時と同じように毒ガスを使っても無駄だぞ。毒に対する耐性は既に連中に与えてある。更に念の為にガスマスクも与えてある。ここは密室だからな、お前達の考えそうなことは既に対策は取らせてもらっている」
「相手はそう言ってるがどうするつもりだ?」とホランド警部は自分に訊いてきた。
 ジークは発煙弾を出し、警部とマーニーにだけ見せた。
「これを投げたらしゃがんでドアの方に向かうんだ。ここで戦うことを考えるより、一旦逃げた方がいい。外にさえ出れば連中も派手に追いかけは出来ない筈だ」
「よし、分かった」
「了解」
「それじゃ、やるよ」
 ジークは発煙弾を投げた。煙幕ができ、銃声が鳴り響く。
 パロットは「撃つな! 撃つんじゃない!」と怒鳴った。
 煙幕で視界が悪い時に適当に撃っていては仲間に被弾するからである。
 その間に三人は手を繋ぎながらドアの方向へ向かったが、ドアのある方向に人影が見えた。
 そうか。相手は煙幕で此方がそのすきに逃げ出すと判断してドアの前に一人立たせたわけか。銃で襲えば、銃声で場所を知られる。それに、銃では奴らは簡単には倒せない。
 どうする? そう悩んだ時、突然銃声が鳴り響いた。
 よく耳をすませると、自分達に向けて相手が撃ち始めたわけではない。誰かが他に連中に攻撃をしかけていた。
「いったい何が起きているの」とマーニーは混乱した。
 だが、警部は「安心しろ。味方が来てくれた」と言った。
「味方?」
 そう言えば、警部はどうやってこの場所を突き止めたのだろうか?
 すると、ドアを塞いでいた男が撃たれた。
「こっちだって対策ぐらいしてきたさ。殺傷能力が高い銃を使ったんだ」
 頭を撃たれた男はふらついたが、完全には倒れなかった。
 やはり、相変わらずの頑丈さだ。だが、誰かのおかげで、ドア前に立っていた男は低姿勢になりながら、銃声のした方向へ移動してくれたおかげでドアががら空きになった。
「今だ」
 三人はドアから出ると全速力で階段を駆け上がり、もう一つのドアも開け外に出た。
「警部、さっきのは誰だったんです?」
「移動しながら説明しよう」
 ジークは頷いた。と、その時受付の女性が銃を構えて撃ち始めた。
「おっと! そうはさせないよ」
 マーニーは警官のような格好になり、その身で銃弾を受けると、反撃にマーニーは拳銃で女を撃った。
 女は進化薬を使っていなかったのか普通の女だったようで、マーニーの銃弾が当たり、その場で倒れた。
「おい、大丈夫か!?」と警部は心配したが、マーニーは「防弾チョッキしてます」と答えた。
「警部こそ防弾チョッキはしてあるんですか?」
「ああ、念の為にな」
 それを聞いて少しは安心できた。
 すると今度は悲鳴があがった。
 気づけば、沢山人がいる外で撃ち合いをやってしまったのだ。周りは悲鳴を上げながら逃げ出していた。
「まずいな。面倒なことになった」
 だが、最悪なことに更にトラブルは続いた。
 自分達が先程出た扉から黒服と兵士、それにパロットまで銃を持って出てきたのだ。
「まさか、お構いなしか!?」
「探偵も想定外だったか? 私がお構いなしに自ら表に出ることが。この状況をチェスで例えるなら、確かに私は駒を動かすプレイヤーだった。だが、同時に自分も駒として動く。安全地帯からただ駒を動かすだけでは面白みもないだろ? そうは思わないか探偵よ」
「随分と狂ってらっしゃる。自分はどうでもいいと?」
「部下に命をかけさせて自分が安全でいるのが単に嫌なだけだ」
「ジーク! 最悪な状況だぞ。まさか、アメリカで銃撃戦を始める気か? アメリカが怒るぞ!」
「警部、それは相手に言ってもらわないと。ただ、相手は聞く耳を持たないようですが」
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