探偵主人公

アズ

文字の大きさ
83 / 124
9章 銃弾と煙

04 VS大佐③

しおりを挟む
 物語の登場人物は魅力的でなければならない。鉄則中の鉄則。例えば、その物語がファンタジーであれば、強いスキルで敵を圧倒するシーン。しかし、それだけでは単調になってしまう。したがって、自分より格上の敵を登場させ、時に主人公に敗北を与え更なる成長のきっかけをつくる。そうして、いつしか一度は敗北した相手に再び挑み勝利することで達成感を与える。重要なことは、その相手がいつかは勝利できる相手であること。
 そして、周りには盛り上げ役として、時にヒロインを登場させたり、相棒や仲間を登場させ、共に困難を乗り越える手助けを与える。
 ミステリーであれば助手、恋愛であれば好きな人だ。
 ジークにとっては警部の存在は大きい。警察という協力者は捜査の情報を流してくれるからだ。
 マーニーはつい最近過ぎる。
 では、敵はどうだろうか? 様々な動機を持った犯人、少佐、元大佐、大尉、謎の女、未だ会えぬ博士。
 登場人物はある一つの目的に向かって行動する。探偵なら推理。勇者なら世界を救うこと。学生なら青春。
 敵ならどうだろうか? 敵は世界を支配、または滅ぼすこと。犯人なら事件を起こしトリックで推理から逃れる。恋愛ならライバル。
 さて、ジークの目の前にいる登場人物は、人物と言っていいのか? メラメラと燃える人をやめてしまった大尉だ。大尉の目的は復讐? それとも大佐の命令の為? しかし、どれも自分の為ではない。兄弟や慕っている大佐は他人でしかない。彼自身はどうなのか?
「大尉、あなたは何がしたいのですか?」
 ジークの問に彼は直ぐには答えれなかった。
 暫くの沈黙。それから彼は口を開く。
「どういう意味だ」
「あなたは例えば私達を殺し復讐を果たせたとしましょう。その後はどうするのですか?」
「……」
「また、大佐の命令通りに働くのですか? そして、今度は私達の命では飽き足らずここにいる全員を皆殺しにするのですか? どうなんですか? あなたは大量虐殺をしたいのですか?」
「お前には関係ない。死ね!」
 鋭い爪がジークを襲った。
 直前でジークは回避した。その後も尚ジークは話を続けた。
「私の質問に答えていただくまでは死ねませんね!」
「なら、教えよう。それに何の意味がある」
「自分で考えるのを放棄して全ての決定権を大佐にさせるのですか? あなたは思わないのですか? 過ちだとは? 大量虐殺があなたのすべきことですか?」
「何をしている大尉! 早く奴を仕留めるんだ!」
 大尉はまた鋭い爪で攻撃した。
 回避したつもりが、さっきよりスピードが増していて、横っ腹に深い傷が出来た。ジークは出血を手でおさえながらも尚続けた。
「どうやらあなたはいいように大佐に支配されているようだ。そうまでして、大佐に忠実でいいことはありましたか? いや、ない! 忠実でなければ、あなたの兄弟は失わずに済んだ。忠実でなければ、反抗さえすれば、兄弟揃って道を踏み外したりはしなかったでしょう。何故、抗うことをやめたのですか? どうして、そこまでして大佐に繋がれているのか。まるで、あなたは大佐の犬だ。だが、それには理由がある。あなたは大佐はどんな人ですか? 大佐? 違う。主人? 違う。あなたという人物から見てパロットはどんな人物ですか!」



 その時、大尉の視界が真っ白になった。
 次に視界が晴れると、そこは田舎村だった。
 後ろを振り返ると、そこは孤児院だった。
 そこにあの人がやって来た。軍服を着た男だ。
 彼はパロットと言った。
 パロットは軍人で、結婚はしていたが子供に恵まれず、僕たちを引き取りにきた。
 だが、パロットは僕たちに今の姓をつかわせた。
「君たちは知らないだろうが、どんな理由があれ、孤児院に預けた両親は決して君たちを手放すことを望んでいたわけではない。いいか、生みの親を恨むんじゃないぞ。君たちの生みの親は私達ではなれないのだから」
 それから、兄は大きくなり軍に入隊し、私はその後で入隊した。パロットは別に私達に軍に入るよう促したわけではなかった。気づいたら、あの人に嫌われないように、自然とそうすべきだと体が動いていた。それを自分達が選んだことだと思っていた。
 だが、あの探偵の言うとおりかもしれない。私達は結局、自分達の幸せを掴もうとはしなかった。
 ある日、パロットは血相を変えて戻ってきた。外国である占い師に会っていたという。少し心配した。占い師は嫌いだった。人を操りその気にさせる。兄も同じだった。
 それから、パロットは別人になった。
 人生という歯車があるのなら、いつからそれは狂い始めたのだろう。そうか、私達が、私が兄を、あの人を止めるべきだった。従うのではなく。その選択肢があったのだ。
 殺すべきは目の前の探偵ではない。僕たちを狂わせたあの占い師だ。



 鋭い爪を持った両手を見た大尉はそれをそのまま自分の腹に突き刺した。
「何をしてる!?」
 全員が驚愕する中、大尉は「こんな自分を殺せるのは自分しかいない」と言って倒れた。
「クソッ!」
 パロットは自分の拳銃でジークに向かって撃った。
 だが、ジークの前に警部が飛び出し、警部の胸に弾が命中した。
「警部!」
「わ、忘れたのか……防弾チョッキは着てる」
 パロットは他の兵士と警官によって発砲を受け、その場に倒れた。
「どうしてパロットは撃ったりなんかしたんだ」
 パロットの体からは血が流れている。
「奴は進化薬を使わなかったのか」
「なんか、凄い結末になっちゃったね」とマーニーは言った。
「警部」
「なんだ? お礼なら構わんよ。たいしたことじゃない」
「全ての謎が解けました」
「なんだと!? それは本当か」
「ええ。彼が、大尉が教えてくれたんです」
「大尉が? いや、俺には分からんよ。教えてくれ、何が分かった?」
 そう警部が訊いた時だった!
 突然ゴオッ! という音と共に炎があがった。それは、大尉の火だった。
「だ、誰か……俺を殺してくれ……」
 大尉は死んではいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...