探偵主人公

アズ

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10章 悲劇の女神

02 面会

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 ジークは刑務所でサーティースと面会をした。サーティースは当然ながら囚人服で、髪は茶髪で、表情からは疲れが見えた。
「酷い顔でしょ? ここでは化粧も出来ない」
「あまり休まれていないようですね」
「出来るわけないわ。頭がどうかしそうよ。でも、こんな場所に自分が慣れてしまうのがこわいのよ。分かるでしょ?」
「ええ」
「ありがとう。手紙読んでくれたんですよね」
「ええ。しかし、お力になれるかはまだ分かりませんよ」
「それでもお願いします」
「気になることは幾つかありますが、最大の問題はラウンズベリーが何故あなただと言ったのか」
「それは私にも分かりません」
「そうですか。本人にも訊いてみたいところですが、既に亡くなられていると聞きました。因みに、弁護士が言うにはあなたは部屋で課題をやっていたそうですが」
「はい」
「しかし、それを証明する人はいなかったと」
「具体的には何時からですか?」
「19時00分から20時30分です」
「その前はどうです?」
「夕食やシャワーの時間ですし、それでしたら証明できる人はいます」
「なる程。弁護士から事件の資料をいただきましたが、それを見ると事件は19時20分に発生しています。充分、余裕はあるでしょう。しかし、ここで疑問なのは何故寮の近場なのか? 犯行を狙う場所としては最も選ばない場所でしょう」
「警察にも言いましたが、全く聞いてくれませんでした」
「因みにラウンズベリーは事件前からご存知ですか?」
「話したことはありません。日中、何度か見かけたことはありますが、多分お互い一方的に気づいて終わりって感じで。でも、それは近いんだからあり得るでしょ?」
「その時見かけるラウンズベリーにおかしな点はありましたか?」
「おかしな点?」
「なんでも構いません」
「いえ……ちゃんとは見てないから分からないですよ」
「そうですか。では、あなたから見て気になる点はありましたか?」
「そう言えば、警察は私に変なことを聞いてきたんです。カラーの意味は分かるかって?」
「それで?」
「色のことですか? と聞いたら警察はそれ以降その話しはしてきませんでした。何のことか分かりますか?」
「いえ、しかし裁判記録ではそのような話は出てきませんね」
「ええ。ですのでその一回だけでしたから」
「分かりました。その点は調べてみましょう」
「ありがとうございます。ジークさん、正直私は少しだけ慣れてきてるんです。昔の私ならトイレやシャワーだってひと目を気にしていたのに、今では前程ではないの。慣れたわけではないけれど。それに、ここの食事も前よりかは食べれるようになった。まるで、本当に囚人よね。他の囚人も私を同類と見ているわ。で、たまに聞いてくるの。お前は何してここに入れられたんだ? って。私、悔しいの」
「努力します」
「ええ……」



 面会が終わったジークはその足で警部に会った。
「悪いが解決した事件については話せないな」
「しかし、おかしな点はあるでしょ?」
「被害者の証言を信じないわけにはいかないだろ? 囚人の言うことよりはよっぽど信用出来る。 ……が、お前さんの言う通り謎は確かにないわけではない。担当した事件ではないが、それぐらいは分かる」
「聞きたいのは、その担当刑事がサーティースにカラーについて訊いたようですが」
「つまり、捜査資料が欲しいってわけだな」
「話が早くて助かります」
 警部は周囲を確認してから「こっちだ」と言った。まるで、ひと目を気にするかのように。
 案内されたのは個室だった。テーブルと椅子、そこに資料を持ってきた警部はそれをテーブルの上に置いた。
「これがその当時の捜査資料だ。だが、言っとくがこの事件はそう簡単にはいかないと思うぜ」
「どうしてですか?」
「その担当刑事は亡くなっているからだ」
「え?」
「殺されたんだ」
「殺された!?」
「去年の話だ。警官殺しで被害者がその担当した刑事だったんだ。だから、担当刑事から話を直接聞くことはもう出来ない」
「その犯人は捕まったんですか?」
「ああ。ルーカス・ノリントンっ奴で郵便配達員のふりをして自宅まで来て被害者が扉を開けた時に銃で殺害した。奴の犯行手口と言っていい。奴は連続殺人鬼で殺された刑事はその事件を捜査しているところだったんだ。被害者は全員若い女性が狙われ……まぁ、酷い殺され方をした。刑事を襲った犯人の動機はその刑事が手掛かりを見つけたからだ」
「そうだったんですか……話は戻しますが、警部は謎がないわけではないと言いましたが、警部が気になった点ってどこですか?」
「昔の事件だが、今でもよく覚えている。担当刑事はハーグリーブス警部で私とは同期だ。その事件は被害者が犯人を見たと言って、似顔絵を作らせあっという間に犯人を捕まえた事件だったから、本人も運が良かったと言っていた。全ての事件がそうもいかないから本当に運が良いなと俺もその時そう言ったんだ。だが、担当検事は難色を示してな。その事件は被害者の目撃証言が証拠だが、捜査資料にある通り外灯はあるとは言え、そこまで明るいってもんじゃない」
 ジークもそこは気になってはいた。ジークの生身の方の世界では今じゃLEDが当たり前だが、この世界ではそのLED程の明るさではない。
「それに、犯人は直ぐに立ち去っているから、本当に犯人の顔を見たのかしつこく確認していてな。だが、ハーグリーブスはそれがどうも気にくわない様子でな、度々他の皆に愚痴をこぼしていた。その場では同情したさ。だが、確かに検事が気にするのは分かる。裁判になった時に弁護士は当然そこを盲点として突いてくるだろうからな」
「でも、裁判では有罪になりましたね」
「ああ。だから、俺もそれ以上は気にしなかったし、他の奴らも解決した事件として気にする奴はいなかった。俺達はな、沢山の事件の山を捜査しなきゃならない。だから、一度解決した事件をまた再捜査するなんてことはしないのさ」
「でも、サーティースは否認を続けています」
「否認した事件を全て再捜査するわけにはいかない。 ……いや、今のは余分だったな。確かに、冤罪は起こしたいわけじゃあない。罪もない人の人生を奪ってしまうんだからな。だが、似顔絵は被害者の供述通りに作成されたのは事実だ」
「見間違いや勘違いといった可能性は? 例えば背格好や服装でサーティースだと被害者は思い込んでしまったとか。被害者はサーティースの名前こそ知らないが、たまに道を歩いている時にすれ違う程度で顔見知りで、その顔を実際襲われた時に見たわけでもないのに証言してしまったとか」
「だが、それを証明するのは不可能だ」
「ええ、もう被害者は亡くなってしまった」
 ジークは資料に目を落とした。資料をめくっていくと、現場写真を見つけた。その中に血文字でカラーと地面に書かれてある。
「これは被害者が残したダイイングメッセージですよね?」
「ああ。だが、被害者は助かったし目撃証言がとれたからそれは重要視されなかったようだ」
「被害者は自分が死ぬかもしれないとなった時に犯人を示す手掛かり、私には証言よりもはるかに信用できる証拠だと思いますが」
「だが、分かるのか? カラーだぞ。色がどうしたって言うんだ?」
「それはまだ分かりません」
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