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10章 悲劇の女神
03 現場
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事件があった時間帯、ジークは現場に来ていた。
高い塀があって、等間隔に外灯がある。道は車が普通に通れるが、夜間は交通量はほとんどないといっていい。周辺は大学の学生寮とあとは住宅が囲んでいるが、この道では塀で目撃者を見つけるのは困難だ。
「やはり暗いな……これで被害者は犯人の顔を覚えていたんだよな……」
被害者宅と卵を売っている店は確かにこの道を通るし、強盗をするならこの場所は狙いやすい場所になる。
だが、気になるのはもう一つ。犯人は車や自転車はいっさい使ってはおらず、犯人は走って逃げていったと捜査資料にはある。確かに、サーティースはまだ車を持っていなかった。しかし、自転車は持っていた。何故、自転車を使わなかったのか? そして、気になるのは犯人が凶器を持ち歩いていたことだ。強盗が狙いなら、犯人は強盗殺人も厭わなかったということだ。わざわざ罪の重い犯罪を犯したが、そもそも強盗が犯人の目的と決まったわけではない。例えば、殺人。
そもそも強盗と言っているのは、サーティースが犯人だった場合に考えられる動機として警察があげたものだ。
もし、犯人がサーティースでなく仮にXだったとして、そのXは初めて人を殺そうとしたに違いない。犯人はひと目のない場所を選び凶器を用意していることから計画的だったが、肝心のところが抜け落ちている。被害者がちゃんと死んだか確認しなかったことだ。不慣れだったとも言える。
後日、被害者を知るご近所のところへ伺いジークは白髪のお婆さんから話を訊いた。
「事件当時のことを覚えていますか?」
「ええ、覚えてますよ。まさか、近くでこんな物騒なことが起きるなんてねぇ。息子さんも驚いてましたよ」
「その息子さんは今はどうされていますか? 家に向かったら不在だったので」
「ああ、仕事じゃないかしら。塗装関係の仕事をしてましたよ」
「塗装?」
「ええ。たまにペンキのあの嫌な臭いがしてね。息子さんのことは嫌いではないんだけど」
「ペンキ……」
ジークは一旦頭を整理する為に自分の家に戻り書斎に入った。すると、そこにはマーニーがいた。
「お邪魔してるよ」
「ああ、マーニーか」
「まさか、また事件の捜査? 懲りないねぇ。いや、それ言っちゃ駄目か」
そう言ってマーニーは笑った。
「ああ、事件だよ。と言っても変わった依頼だけど」
そう言ってジークはマーニーに今受けている事件について説明した。
「なる程。つまり、犯人は他にいるってわけね。それで、その犯人が誰かを探してる」
「まぁ、そうなんだけど」
「犯人はもう分かったじゃん」
「え?」
「それじゃ今回は私が推理ショーを披露しよう! ズバリ、犯人は被害者の息子! 証拠は被害者が残したダイイングメッセージにあるの。ジークも唯一信用出来る証拠だって言った通りにね。カラーは色。それはまさにペンキを示していたの。犯行時刻は外灯はあるもののまだまだ暗い。でも、被害者は襲われている時にペンキの独特の臭いだけは気づけた。視界が駄目なら嗅覚ってね! で、カラーって書いた。でも、意識を取り戻した被害者は冷静になってまさか自分の息子の仕業ではないかと気づいてしまった。でも、本当のことを言ってしまったら息子は逮捕されてしまう。どうしようか考えた被害者は頭の中にある記憶から適当に見たことのある人物の顔を思わず証言してしまった。似顔絵を作成するには具体的に説明しなきゃいけない。説明していくうちに、無関係のサーティースの顔になってしまった。しかし、被害者は言い出せず、サーティースは誤認逮捕されてしまった。どう?」
「その推理は間違いだ」
「ええっ!? なんで?」
「悪くない推理だとは思うよ。でも、それじゃ決定打に欠けるんだ。何故なら被害者は何故カラーではなくそのままペンキとダイイングメッセージを残さなかったのかという疑問が残るからだ。それに息子さんが殺害する動機が不明だ」
「た、確かに」
「でも、かなり情報は得た筈だけど、何かが足りない……」
ジークは捜査資料を広げた。
そう言えば、ハーグリーブス警部は去年殺害され、その警部はそれより前から続く殺人事件の捜査をしていた。
いや、でも犯行手口が違うか。
その時、ジークの脳内に電流が走った。
「でかけてくる」
「いってらっしゃい」
マーニーは手を振って見送った。
「また、私一人じゃん」
高い塀があって、等間隔に外灯がある。道は車が普通に通れるが、夜間は交通量はほとんどないといっていい。周辺は大学の学生寮とあとは住宅が囲んでいるが、この道では塀で目撃者を見つけるのは困難だ。
「やはり暗いな……これで被害者は犯人の顔を覚えていたんだよな……」
被害者宅と卵を売っている店は確かにこの道を通るし、強盗をするならこの場所は狙いやすい場所になる。
だが、気になるのはもう一つ。犯人は車や自転車はいっさい使ってはおらず、犯人は走って逃げていったと捜査資料にはある。確かに、サーティースはまだ車を持っていなかった。しかし、自転車は持っていた。何故、自転車を使わなかったのか? そして、気になるのは犯人が凶器を持ち歩いていたことだ。強盗が狙いなら、犯人は強盗殺人も厭わなかったということだ。わざわざ罪の重い犯罪を犯したが、そもそも強盗が犯人の目的と決まったわけではない。例えば、殺人。
そもそも強盗と言っているのは、サーティースが犯人だった場合に考えられる動機として警察があげたものだ。
もし、犯人がサーティースでなく仮にXだったとして、そのXは初めて人を殺そうとしたに違いない。犯人はひと目のない場所を選び凶器を用意していることから計画的だったが、肝心のところが抜け落ちている。被害者がちゃんと死んだか確認しなかったことだ。不慣れだったとも言える。
後日、被害者を知るご近所のところへ伺いジークは白髪のお婆さんから話を訊いた。
「事件当時のことを覚えていますか?」
「ええ、覚えてますよ。まさか、近くでこんな物騒なことが起きるなんてねぇ。息子さんも驚いてましたよ」
「その息子さんは今はどうされていますか? 家に向かったら不在だったので」
「ああ、仕事じゃないかしら。塗装関係の仕事をしてましたよ」
「塗装?」
「ええ。たまにペンキのあの嫌な臭いがしてね。息子さんのことは嫌いではないんだけど」
「ペンキ……」
ジークは一旦頭を整理する為に自分の家に戻り書斎に入った。すると、そこにはマーニーがいた。
「お邪魔してるよ」
「ああ、マーニーか」
「まさか、また事件の捜査? 懲りないねぇ。いや、それ言っちゃ駄目か」
そう言ってマーニーは笑った。
「ああ、事件だよ。と言っても変わった依頼だけど」
そう言ってジークはマーニーに今受けている事件について説明した。
「なる程。つまり、犯人は他にいるってわけね。それで、その犯人が誰かを探してる」
「まぁ、そうなんだけど」
「犯人はもう分かったじゃん」
「え?」
「それじゃ今回は私が推理ショーを披露しよう! ズバリ、犯人は被害者の息子! 証拠は被害者が残したダイイングメッセージにあるの。ジークも唯一信用出来る証拠だって言った通りにね。カラーは色。それはまさにペンキを示していたの。犯行時刻は外灯はあるもののまだまだ暗い。でも、被害者は襲われている時にペンキの独特の臭いだけは気づけた。視界が駄目なら嗅覚ってね! で、カラーって書いた。でも、意識を取り戻した被害者は冷静になってまさか自分の息子の仕業ではないかと気づいてしまった。でも、本当のことを言ってしまったら息子は逮捕されてしまう。どうしようか考えた被害者は頭の中にある記憶から適当に見たことのある人物の顔を思わず証言してしまった。似顔絵を作成するには具体的に説明しなきゃいけない。説明していくうちに、無関係のサーティースの顔になってしまった。しかし、被害者は言い出せず、サーティースは誤認逮捕されてしまった。どう?」
「その推理は間違いだ」
「ええっ!? なんで?」
「悪くない推理だとは思うよ。でも、それじゃ決定打に欠けるんだ。何故なら被害者は何故カラーではなくそのままペンキとダイイングメッセージを残さなかったのかという疑問が残るからだ。それに息子さんが殺害する動機が不明だ」
「た、確かに」
「でも、かなり情報は得た筈だけど、何かが足りない……」
ジークは捜査資料を広げた。
そう言えば、ハーグリーブス警部は去年殺害され、その警部はそれより前から続く殺人事件の捜査をしていた。
いや、でも犯行手口が違うか。
その時、ジークの脳内に電流が走った。
「でかけてくる」
「いってらっしゃい」
マーニーは手を振って見送った。
「また、私一人じゃん」
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