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10章 悲劇の女神
04 凶器
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ジークはもう一度警部のところへと来ていた。
「警部、ルーカス・ノリントンが起こした事件の捜査資料を見せて欲しいんですが」
「なんだ、今度はノリントンの事件か。まぁ、いいだろ」
そう言って前回と同じ部屋に行って、そこで警部が持ってきた資料を受け取った。
「まさかとは思うが、ノリントンの事件と関係しているんじゃないだろうな?」
「それはまだ分かりません」
「分からないって」
ジークは資料に目を落とした。
最初の事件は2年前になっている。最初の犠牲者はモンゴメリー、20歳女性だ。犯行時刻は20時頃、犯人ルーカス・ノリントンは被害者のドアをノックし、宅配を装いドアを開けた被害者を襲い殺害。複数の刺し傷があり、当初捜査では怨恨と思われていたが、ルーカス・ノリントンとモンゴメリーに接点は無し。
資料を読んでいくと、全ての被害者はノリントンと接点がない女性ばかりだ。
ルーカス・ノリントンは孤児院出身らしい。あれ? この孤児院どっかで……ああ! ジュリエットとレベッカがいた孤児院と同じじゃないか。
こんな偶然を見つけるとは…… 。
両親は事故死とあり、その後ノリントンは孤児院で生活している。
「まるで、切り裂きジャックより深刻な事件ですね」
「言われてみればそうだな。犯人はわざわざ家を訪ねて殺害するわけだからな。通り魔とは違う。無差別殺人だが、犯人は被害者を計画的に狙っている。必ず被害者は一人でいる時に狙われている。しかも、自宅でだ」
「悲鳴は聞かれているんですよね」
「ああ。だが、最初から2件目は口を塞いで殺害している。それに、最初の事件は死亡した後も何度も刺していることが解剖で分かっている」
「念入りに? 快楽?」
「快楽だと周りの捜査員は言っていたがな」
「3件目以降は犯行がより派手になってますね」
「慣れたんだろう」
「1件目と2件目と殺害は玄関で行われてますが、3件目以降は被害者は逃げようと廊下を這いずりながらリビングへ向かっているところを背中からめった刺しし、最後はリビングで殺害していますね。快楽殺人に変貌したのは被害者を直ぐには殺さずじっくり殺害していることから犯人は楽しんでいるようにも見える。一方で1件目はまるで違う。暴力的で快楽というより殺意を強く感じる殺人」
「何が言いたい?」
「犯人は明らかに殺人を繰り返すことで成長していっているということです。殺人鬼として」
「ああ、そうだな」
「では、その1件目前はどうでしょうか?」
「は?」
「殺人がノリントンの初めての犯罪になっていますよね。ノリントンが変貌するきっかけが捜査資料のどこにもないのはどうしてですか?」
「そんな馬鹿な。こういった事件はな、犯人の生い立ちまで詳しい捜査資料が残るものだ」
「ええ、そうでしょう」
だが、いくら警部が探してもなかった。
「何故だ」
「警部、もしかしてハーグリーブス警部が持ち出したとは考えられませんか?」
「ハーグリーブス警部が?」
「犯人はそれを奪う為にハーグリーブス警部を殺害しなければならなかった。犯人の狙いは自分を捜査していた警部ではなく、警部が持っていたものだったとしたら、それまでの被害者が全員女性だった理由がつきます。被害者が男性のように抵抗を受けないからです。しかし、警部を殺害するのは今までの被害者とは違います。警察をやるんですからね。勿論、これまで狩る側だったライオンが自信過剰になり警部を狙ったとも考えられますが。しかし、警部から捜査資料を犯人が奪っても鑑識は気づくことはなかったのではないですか? 基本、捜査資料を持ち出すには申請が必要ですから」
「だが、そんな申請はない」
「それと、気になる点は他にもあります。凶器です。犯人は同じ刃物を使っています。凶器にこだわりがあるというより使っていくうちに愛着がついた感じでした。私もなんだかんだ片手剣をよく使うので分かります。犯人も使っていくうちにその凶器がしっくりきたかもしれません」
「それは捜査の段階で皆が注目してきたことだ」
「そして、興味深いことにサーティースが犯したとされる殺人未遂事件の刃渡りが一致しています」
「何だと!?」
「ノリントンの凶器は刃渡りが長く幅が狭いものです。市販でよく使われるようなものと比べると特殊ですよね? 偶然一致したでしょうか? そう考えるのは難しいと思いますよ。プロがよく使われる刃物だからです。そして、ノリントンは精肉店で働いていました」
そう言ってジークは警部に二つの事件の捜査資料を並べた。
「確かに! 凶器はノリントンが犯人である重要な手掛かりだった。だが、犯行手口が違うじゃないか」
「最初は違ってたんじゃありませんか?」
「違っていただと!?」
「犯人の手口は徐々に成長しています。しかし、相変わらず抵抗されても力では負けない相手ばかり狙っている。サーティースの事件も見て下さい。老人が被害者です。しかし、殺すことは出来なかった。被害者は助かっているからです。その時の犯人はまだ殺人には慣れていなかった。ちゃんとは確認せず急いでその場から離れてしまった」
「だが、被害者はサーティースが犯人だと証言しているんだ。似顔絵をもとにサーティースを逮捕した後で警察は被害者に確認をとっている。その時にしっかりと指を差してこの人だと答えている。更に、裁判所でも証言しているんだ。どうして被害者はサーティースだと言ったんだ?」
「そこはまだ謎なんです。謎と言えばダイイングメッセージも謎のままです。カラーとはどういう意味か……」
「あんまり考え過ぎじゃないのか? そう言えばマーニーは寂しがってたぞ」
「え?」
「少しは事件を忘れたらどうだ? 気晴らしにな。そしたら頭もスッキリするだろ」
ジークは少し考えてから「そうですね」と答えた。
「警部、ルーカス・ノリントンが起こした事件の捜査資料を見せて欲しいんですが」
「なんだ、今度はノリントンの事件か。まぁ、いいだろ」
そう言って前回と同じ部屋に行って、そこで警部が持ってきた資料を受け取った。
「まさかとは思うが、ノリントンの事件と関係しているんじゃないだろうな?」
「それはまだ分かりません」
「分からないって」
ジークは資料に目を落とした。
最初の事件は2年前になっている。最初の犠牲者はモンゴメリー、20歳女性だ。犯行時刻は20時頃、犯人ルーカス・ノリントンは被害者のドアをノックし、宅配を装いドアを開けた被害者を襲い殺害。複数の刺し傷があり、当初捜査では怨恨と思われていたが、ルーカス・ノリントンとモンゴメリーに接点は無し。
資料を読んでいくと、全ての被害者はノリントンと接点がない女性ばかりだ。
ルーカス・ノリントンは孤児院出身らしい。あれ? この孤児院どっかで……ああ! ジュリエットとレベッカがいた孤児院と同じじゃないか。
こんな偶然を見つけるとは…… 。
両親は事故死とあり、その後ノリントンは孤児院で生活している。
「まるで、切り裂きジャックより深刻な事件ですね」
「言われてみればそうだな。犯人はわざわざ家を訪ねて殺害するわけだからな。通り魔とは違う。無差別殺人だが、犯人は被害者を計画的に狙っている。必ず被害者は一人でいる時に狙われている。しかも、自宅でだ」
「悲鳴は聞かれているんですよね」
「ああ。だが、最初から2件目は口を塞いで殺害している。それに、最初の事件は死亡した後も何度も刺していることが解剖で分かっている」
「念入りに? 快楽?」
「快楽だと周りの捜査員は言っていたがな」
「3件目以降は犯行がより派手になってますね」
「慣れたんだろう」
「1件目と2件目と殺害は玄関で行われてますが、3件目以降は被害者は逃げようと廊下を這いずりながらリビングへ向かっているところを背中からめった刺しし、最後はリビングで殺害していますね。快楽殺人に変貌したのは被害者を直ぐには殺さずじっくり殺害していることから犯人は楽しんでいるようにも見える。一方で1件目はまるで違う。暴力的で快楽というより殺意を強く感じる殺人」
「何が言いたい?」
「犯人は明らかに殺人を繰り返すことで成長していっているということです。殺人鬼として」
「ああ、そうだな」
「では、その1件目前はどうでしょうか?」
「は?」
「殺人がノリントンの初めての犯罪になっていますよね。ノリントンが変貌するきっかけが捜査資料のどこにもないのはどうしてですか?」
「そんな馬鹿な。こういった事件はな、犯人の生い立ちまで詳しい捜査資料が残るものだ」
「ええ、そうでしょう」
だが、いくら警部が探してもなかった。
「何故だ」
「警部、もしかしてハーグリーブス警部が持ち出したとは考えられませんか?」
「ハーグリーブス警部が?」
「犯人はそれを奪う為にハーグリーブス警部を殺害しなければならなかった。犯人の狙いは自分を捜査していた警部ではなく、警部が持っていたものだったとしたら、それまでの被害者が全員女性だった理由がつきます。被害者が男性のように抵抗を受けないからです。しかし、警部を殺害するのは今までの被害者とは違います。警察をやるんですからね。勿論、これまで狩る側だったライオンが自信過剰になり警部を狙ったとも考えられますが。しかし、警部から捜査資料を犯人が奪っても鑑識は気づくことはなかったのではないですか? 基本、捜査資料を持ち出すには申請が必要ですから」
「だが、そんな申請はない」
「それと、気になる点は他にもあります。凶器です。犯人は同じ刃物を使っています。凶器にこだわりがあるというより使っていくうちに愛着がついた感じでした。私もなんだかんだ片手剣をよく使うので分かります。犯人も使っていくうちにその凶器がしっくりきたかもしれません」
「それは捜査の段階で皆が注目してきたことだ」
「そして、興味深いことにサーティースが犯したとされる殺人未遂事件の刃渡りが一致しています」
「何だと!?」
「ノリントンの凶器は刃渡りが長く幅が狭いものです。市販でよく使われるようなものと比べると特殊ですよね? 偶然一致したでしょうか? そう考えるのは難しいと思いますよ。プロがよく使われる刃物だからです。そして、ノリントンは精肉店で働いていました」
そう言ってジークは警部に二つの事件の捜査資料を並べた。
「確かに! 凶器はノリントンが犯人である重要な手掛かりだった。だが、犯行手口が違うじゃないか」
「最初は違ってたんじゃありませんか?」
「違っていただと!?」
「犯人の手口は徐々に成長しています。しかし、相変わらず抵抗されても力では負けない相手ばかり狙っている。サーティースの事件も見て下さい。老人が被害者です。しかし、殺すことは出来なかった。被害者は助かっているからです。その時の犯人はまだ殺人には慣れていなかった。ちゃんとは確認せず急いでその場から離れてしまった」
「だが、被害者はサーティースが犯人だと証言しているんだ。似顔絵をもとにサーティースを逮捕した後で警察は被害者に確認をとっている。その時にしっかりと指を差してこの人だと答えている。更に、裁判所でも証言しているんだ。どうして被害者はサーティースだと言ったんだ?」
「そこはまだ謎なんです。謎と言えばダイイングメッセージも謎のままです。カラーとはどういう意味か……」
「あんまり考え過ぎじゃないのか? そう言えばマーニーは寂しがってたぞ」
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ジークは少し考えてから「そうですね」と答えた。
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