探偵主人公

アズ

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10章 悲劇の女神

07 息子の話

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 息子の名前はマシューで、自宅は一軒家。家は相続で引き継いだもので父親は既にいない。
 庭にある花壇には何も植えられていない。
 ドアをノックすると、息子のマシューが玄関の扉を開け出てきた。かなりの大男でつなぎ服を着ていた。
「はい、どなたですか?」
「私はジークといいます」
「私はマーニーよ」
「実はある事件を調べておりまして」
 事件という言葉でマシューは眉をピクリと動かした。
「あんた知ってるよ。探偵だろ? 噂になってる」
「ご存知でしたか」
「事件って言うとあれか、殺人未遂の事件か」
「ええ、そんなところです」
「だが、あれは犯人が逮捕されたろ?」
「ええ、そうですがもう一度調べ直して欲しいと依頼がありまして」
「へぇーそりゃ興味深いな。誰か当ててやろうか? サーティースだろ?」
「依頼人の個人情報については申し上げられないのです」
「別に構わないぜ。でも、隠したって無駄さ。一度解決した事件を調べて欲しいだなんて言ってくるのはそいつぐらいしかいないんだからよ。しかし、あんたも依頼人なら誰でも受けるのか?」
「いえ、決してそうではありません。話しを聞くところによると、気になる点がありまして。それでそれをハッキリさせた上でもし犯人がサーティースを示すならそれを告げるまでです」
「いいのかそれで?」
「私は弁護士ではない。サーティースを無罪にさせたいわけではありません。真実が何かそれを明らかにしたいのです」
「なる程、変わり者だな、あんたは。で、何が聞きたい?」
「被害者は何かあなたに言ってませんでしたか、事件について」
「いや、全く」
「全く?」
「ああ、全くだ。だからこっちも聞いたりはしなかった」
「そうですか。では、カラーという言葉に何か心当たりはありませんか? 襲われた時に残した言葉です。本人に本来なら伺いたいところですが、それは叶いませんから」
「カラー? さぁな。色とか以外に何か意味があるのか?」
「いえ、分からないのなら構いません」
「あっそ。ああ、話しなら俺に聞くよりリリー・セイバーヘーゲンさんに聞いた方がいい。うちのと仲も良かったしな」
「ご近所の?」
「ああ。なんだ、もうそっちは話し済ませたのか? なら、もう分かることはないだろ。それじゃもういいかな」
「はい。ありがとうございました」
 ドアが閉まり、結局何も分からないまま時が過ぎていくみたいだ。
 すると、マーニーが「そのセイバーヘーゲンはここから近いの?」
「ええ。案内するよ」
 ジークはそう言って近所の家を案内した。
「その近所からも話しは聞いたりはしてみたんだが」
 そう言って案内すると、庭には綺麗な花が沢山植えられてあった。
 マーニーはその花をじっと見た。
「ねぇ、ジークってさ花とかに興味無いんでしょ?」
「え? まぁ、趣味ではないね」
「なる程。どうりであなたがこの事件の謎が解けないわけよ。これ、スランプというより単に専門外だったってとこかしら」
「どういう意味だい?」
「ラウンズベリーはちゃんと手掛かりを残していたのよ。ヒントは花」
「花?」
「カラーという花があるの。もしくはカラーリリー」
「なっ!?」
「ご近所の顔なら一瞬であっても気づくし、ダイイングメッセージを残す時にカラーと残したのは、あの被害者のお婆さんも花が好きだったから。息子の家に来た時、花壇があったでしょ? 息子は花に興味がなかったみたいだけど、あれはラウンズベリーお婆さんが使っていたからよ」
「なる程、花の名前だったのか」
 ふと、二人は気配を感じ後ろを振り返った。
 すると、そこにはエプロン姿のリリー・セイバーヘーゲンが立っていた。
「あら……また、あなたなのね」
「リリー・セイバーヘーゲンさん」
「探偵もあちこち駆け回って大変ね。やはり、捜査は地道に足を動かせってことかしら」
「花、綺麗ですね」
 すると、セイバーヘーゲンは眉をピクリと動かした。
「ありがとう。でも、私は犯人ではないわよ」
「聞いていたんですか」
「ええ。盗み聞きするつもりはなかったんですけどね」
「気配が途中まで全く感じませんでしたよ」
「あら、驚かせてしまったかしら」
「いえ……」
「探偵さん、人を疑うのがお仕事でしょうからそれをやめろとは言いません。しかし、疑うならちゃんと証拠は用意してもらわないといけません。変な噂が広まっては困ります」
「ええ、必ず証拠をお持ちします」
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