探偵主人公

アズ

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11章 探偵の勘

04 怪しい人達

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 トラファルガー広場に来た3人は沢山いる人から次々と声をかけていったが、誰一人有力な目撃情報は得られなかった。
「ここには来ていないんですかね?」とリヴィエールが言った。
「そうですね」とジークが答えノートを開いた。
「3頁目は時計が描かれてあります。恐らくはビッグ・ベンでしょう」
「ビッグ・ベンへそれじゃ行きましょう」
 こうして、3人はビッグ・ベンへ行き、再び聞き込みを行ったが、ここでも有力な手掛かりは得られなかった。
「ジーク、そもそもこの絵に描かれてあるような場所に一人でお婆さん行けるかしら?」
「こんなに分かりやすい場所ですから、誰かに聞いたらもしやたどり着けるのではと思ったんですがね。それじゃ、このノートに描かれてある絵の通りに探していくのはやめますか?」
「でも、他に手掛かりはあるの?」
「とりあえず一旦、アパートに戻りましょう」
「そうね」
 マーニーはリヴィエールを気にしながら、ジークに近づき小声で言ってきた。
「ジークはこの件本当はどう思っているの?」
「行方不明の女性は認知症でお金は恐らくないでしょう。となれば遠くに行くことは出来ないと思います。例えばタクシーやバスをお金無しで利用すれば、無賃乗車で警察に連絡がいっている筈です。気になるのは一晩が経っているので、誰かに声をかけたりして助けを求めていてもおかしくはないのに、そういった情報もない」
「まさか、誘拐?」
「私は違う可能性を考えてます」
「それって!!」
「もし、誘拐だった場合動機が不明です。別にお金持ちって感じではありませんし、そもそも身代金の要求もないし、そもそも自宅にいた女性を、例え息子が寝ている間に誘拐でも試みますか? いえ、外に出た後で誘拐された可能性も考えられなくはありませんが」
「本気? さっきからあなたがどこを見ているのか知ってるんだけど、あなたが疑っているのって息子だよ」
「疑うことも必要なことですから」



 3人はとりあえずリヴィエールの住まいに向かった。
 その玄関前で、一人の男性が立っていた。その人物がジークを見るなり笑顔になり、手を振ってきた。
「はじめまして、市警のミューレンバーグといいます。名探偵であるあなたがご協力なさっていると聞きまして。いやいや、ご協力ありがとうございます。それで、どうでしょうか、そちらの状況は?」
「行方不明の方が一度は立ち寄ったことがある場所にとりあえず向かってはいますが、一人で歩いていくのには難しいかと」
「ええ、そうですね。お年もありますし。やはり、近場なんでしょうが」
「目撃状況がないんですよね?」
「ええ、全く。本当にどこへ行ってしまったんでしょうね?」
 と、そこに中年の女性が現れた。金髪に前髪のない長めのスカート姿の地味な格好をした女性だった。
「ああ、ファースさん。此方、母の介護士さんです」
「どうでしたか?」
「いえ、見つかりませんでした」
「私、もう一度探して来ます」
 そう言って、またファースは行ってしまった。
「話したいことあったんじゃないの?」とマーニーは直ぐに行ってしまったファースの背中を目で追いながらジークに言った。
「ああ……でも、あの人こっちを見た時驚いた顔をしていた」
「それはあなたが有名だからでしょ?」
 ジークは答えなかった。
 あれは絶対、そんな感じではなかった。
 何かがありそうな気がする。
「そう言えばミューレンバーグさん。ここで私達を待っていたということは何か用があったんではないですか?」
「ああ! そうでした、そうでした。実は誘拐事件が昨年までありましてな。その犯人はまだ捕まっていないんですよ。それで、金持ちの家ばかり狙って身代金を要求するんです。まぁ、今回の場合はそれに当てはまらないと見てますがね」
「つまり、ミューレンバーグさんはこれが誘拐だと思うんですね?」
「いや、誘拐とは決めつけてはいませんよ。ただ、これ程探しても手掛かりがゼロとなると、何かしらの事件に巻き込まれたんじゃないかって思いましてね」
「例えば、事故という可能性はありませんか?」
「事故ですか……交通課に聞いてみないと分かりませんなぁ。少しお待ちいただければ、電話で確認しますよ」
「では、お願いします」
 ミューレンバーグはリヴィエールの方を向き「ということなので、お宅の電話を貸して下さい」とお願いをし、リヴィエールは「ええ、構いませんよ」と即答した。
 それから暫くして、電話で確認を終えたミューレンバーグはジークに説明を始めた。
「事故による通報はなかったそうです」
「分かりました、ありがとうございます」
「いえいえ、少しでも手掛かりを見つけないとですね」
 ジークは笑顔でそれに答えた。
「それじゃ、私は行きます」
 ミューレンバーグが立ち去るのを見届けるとジークは「それじゃ周辺の聞き込みをしよう」と提案した。
 それ以外に具体的な案があるわけでもなかった二人はそれに頷いた。
 最初はアパートの住民による聞き込み、次に向かいの建物の聞き込みを行ったが特に成果はなく、すると、近くの十字路の角のお土産屋の店主が「そう言えば」と言って話しを続けた。
「関係あるかどうか分からないけど、昨日の夕方あたりだったか、この十字路でタイヤの擦る音と、ゴミ箱を倒す物凄い音がそこでしたの。で、車は一旦止まったんだけど、また直ぐに猛スピードで車は行ってしまったわ」
「それって事故じゃ!?」
「でも、誰かが倒れていたとかは見当たらなかったけど」
「だから、誰もそのことを通報したかったんですね」
「でも、ジーク。もし、車だとしたらリヴィエールは車を持っていないから彼ではないわ」とジークにだけ耳打ちした。
「というか、ますます怪し人ばかり増えてくわね」
「そうだね……だが、どれだけ怪しい人物が増えようともし、お婆さんをどこかへやった人がいるなら、そいつはきっと一人さ」
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