探偵主人公

アズ

文字の大きさ
102 / 124
11章 探偵の勘

04 怪しい人達

しおりを挟む
 トラファルガー広場に来た3人は沢山いる人から次々と声をかけていったが、誰一人有力な目撃情報は得られなかった。
「ここには来ていないんですかね?」とリヴィエールが言った。
「そうですね」とジークが答えノートを開いた。
「3頁目は時計が描かれてあります。恐らくはビッグ・ベンでしょう」
「ビッグ・ベンへそれじゃ行きましょう」
 こうして、3人はビッグ・ベンへ行き、再び聞き込みを行ったが、ここでも有力な手掛かりは得られなかった。
「ジーク、そもそもこの絵に描かれてあるような場所に一人でお婆さん行けるかしら?」
「こんなに分かりやすい場所ですから、誰かに聞いたらもしやたどり着けるのではと思ったんですがね。それじゃ、このノートに描かれてある絵の通りに探していくのはやめますか?」
「でも、他に手掛かりはあるの?」
「とりあえず一旦、アパートに戻りましょう」
「そうね」
 マーニーはリヴィエールを気にしながら、ジークに近づき小声で言ってきた。
「ジークはこの件本当はどう思っているの?」
「行方不明の女性は認知症でお金は恐らくないでしょう。となれば遠くに行くことは出来ないと思います。例えばタクシーやバスをお金無しで利用すれば、無賃乗車で警察に連絡がいっている筈です。気になるのは一晩が経っているので、誰かに声をかけたりして助けを求めていてもおかしくはないのに、そういった情報もない」
「まさか、誘拐?」
「私は違う可能性を考えてます」
「それって!!」
「もし、誘拐だった場合動機が不明です。別にお金持ちって感じではありませんし、そもそも身代金の要求もないし、そもそも自宅にいた女性を、例え息子が寝ている間に誘拐でも試みますか? いえ、外に出た後で誘拐された可能性も考えられなくはありませんが」
「本気? さっきからあなたがどこを見ているのか知ってるんだけど、あなたが疑っているのって息子だよ」
「疑うことも必要なことですから」



 3人はとりあえずリヴィエールの住まいに向かった。
 その玄関前で、一人の男性が立っていた。その人物がジークを見るなり笑顔になり、手を振ってきた。
「はじめまして、市警のミューレンバーグといいます。名探偵であるあなたがご協力なさっていると聞きまして。いやいや、ご協力ありがとうございます。それで、どうでしょうか、そちらの状況は?」
「行方不明の方が一度は立ち寄ったことがある場所にとりあえず向かってはいますが、一人で歩いていくのには難しいかと」
「ええ、そうですね。お年もありますし。やはり、近場なんでしょうが」
「目撃状況がないんですよね?」
「ええ、全く。本当にどこへ行ってしまったんでしょうね?」
 と、そこに中年の女性が現れた。金髪に前髪のない長めのスカート姿の地味な格好をした女性だった。
「ああ、ファースさん。此方、母の介護士さんです」
「どうでしたか?」
「いえ、見つかりませんでした」
「私、もう一度探して来ます」
 そう言って、またファースは行ってしまった。
「話したいことあったんじゃないの?」とマーニーは直ぐに行ってしまったファースの背中を目で追いながらジークに言った。
「ああ……でも、あの人こっちを見た時驚いた顔をしていた」
「それはあなたが有名だからでしょ?」
 ジークは答えなかった。
 あれは絶対、そんな感じではなかった。
 何かがありそうな気がする。
「そう言えばミューレンバーグさん。ここで私達を待っていたということは何か用があったんではないですか?」
「ああ! そうでした、そうでした。実は誘拐事件が昨年までありましてな。その犯人はまだ捕まっていないんですよ。それで、金持ちの家ばかり狙って身代金を要求するんです。まぁ、今回の場合はそれに当てはまらないと見てますがね」
「つまり、ミューレンバーグさんはこれが誘拐だと思うんですね?」
「いや、誘拐とは決めつけてはいませんよ。ただ、これ程探しても手掛かりがゼロとなると、何かしらの事件に巻き込まれたんじゃないかって思いましてね」
「例えば、事故という可能性はありませんか?」
「事故ですか……交通課に聞いてみないと分かりませんなぁ。少しお待ちいただければ、電話で確認しますよ」
「では、お願いします」
 ミューレンバーグはリヴィエールの方を向き「ということなので、お宅の電話を貸して下さい」とお願いをし、リヴィエールは「ええ、構いませんよ」と即答した。
 それから暫くして、電話で確認を終えたミューレンバーグはジークに説明を始めた。
「事故による通報はなかったそうです」
「分かりました、ありがとうございます」
「いえいえ、少しでも手掛かりを見つけないとですね」
 ジークは笑顔でそれに答えた。
「それじゃ、私は行きます」
 ミューレンバーグが立ち去るのを見届けるとジークは「それじゃ周辺の聞き込みをしよう」と提案した。
 それ以外に具体的な案があるわけでもなかった二人はそれに頷いた。
 最初はアパートの住民による聞き込み、次に向かいの建物の聞き込みを行ったが特に成果はなく、すると、近くの十字路の角のお土産屋の店主が「そう言えば」と言って話しを続けた。
「関係あるかどうか分からないけど、昨日の夕方あたりだったか、この十字路でタイヤの擦る音と、ゴミ箱を倒す物凄い音がそこでしたの。で、車は一旦止まったんだけど、また直ぐに猛スピードで車は行ってしまったわ」
「それって事故じゃ!?」
「でも、誰かが倒れていたとかは見当たらなかったけど」
「だから、誰もそのことを通報したかったんですね」
「でも、ジーク。もし、車だとしたらリヴィエールは車を持っていないから彼ではないわ」とジークにだけ耳打ちした。
「というか、ますます怪し人ばかり増えてくわね」
「そうだね……だが、どれだけ怪しい人物が増えようともし、お婆さんをどこかへやった人がいるなら、そいつはきっと一人さ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...