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12章 ハロウィン
01 ゲーム
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パチパチと鳴るのは暖炉の薪の音。その薄暗い部屋に聞こえるのは電話機の音だ。この部屋からではない。少し離れた部屋だ。ドアが開きっぱなしになっており、そこからは通路と、更に向こうの部屋が見える。向こう側の部屋も扉が開いたままだ。
そこに忍び足で歩く黒い紐付きの靴が通路から現れた。
二足は部屋を一周し、先程出てきた入りから出ようとしたその直後、部屋はいきなりパッと明かりがついた。
「ああ~」
マーニーは残念そうに明かりを付けた人物、つまりこの屋敷の主人であるジークを見て言った。
「もう少し手加減してよ」
「どうして隠れんぼをやっているのに、隠れている筈の人間がうろついているんです?」
「見つからないよう移動すれば見つからないじゃん?」
ジークはため息をついた。
そこに、沢山の足音が此方に向かってきた。
その足は小さいのが複数。
現れたのは可愛らしい子供達だ。
「あー! お姉ちゃん見つかっちゃったの」
「お姉ちゃんなら絶対に見つからないと思ったのに」
マーニーは手を合わせ「ごめん」と謝った。
「流石は名探偵。見つけるのは容易いか」と、いっちょう前に小太りの男の子がジークを見ながらそう言った。彼はマーニーより自分に興味があるようだった。
明かりのついた部屋には薄暗くて見えなかったカボチャの飾りがされてあった。
そう、今日はハロウィンだった。
ジークとマーニーは子供達の遊びに付き合っていたのだ。まぁ、そういうクエストがあって受けたのだが、このクエストには妙な噂があった。
ハロウィンの子供達の遊びに単に付き合う筈のクエスト、一見したら簡単なものだが、去年これを受けたプレイヤーはクエストを失敗していた。その前も。
毎年同じ時期に同じクエストが発生するこの恒例クエストに噂を聞きつけたマーニーはジークを誘い二人でこのクエストにチャレンジすることにしたのだ。
子ども達は遊びを終えると、下の階に向かった。下には子ども達の保護者がカボチャを使った料理が準備されてあるからだ。
マーニーとジークだけになるとマーニーは「今のところは普通そうだね」とジークに言った。
「ええ」
残念ながらこのクエストに失敗したプレイヤーとのコンタクトはとれず、この後の状況はほとんど知らない。
ただ、失敗が連続しているあたり、何かしらのトラブル……事件が起きるんじゃないかとマーニーと自分は考えているんだけど…… 。
マーニーと自分はとりあえず子ども達が下に向かったので、自分達も階段を降りていった。
そして、食堂に向かうと出来上がった料理がズラッと並べられてあったのだが、子ども達と保護者の姿がどこにもなかった。
「あれ? 皆は?」
「さぁ?」
とりあえず探してみたが、やはりこの屋敷には自分達二人以外、気配が感じられない。
「いた?」
「いや」
「ということは」
「ああ、どうやら始まったようですね。とりあえず、もう一度食堂に戻りましょう」
「ええ、分かったわ」
二人は食堂に戻ろうと通路を歩いていると、何故か明かりがついている筈の食堂が暗くなっていた。
「あれ? ジーク、明かり消していった?」
「消してませんよ」
二人は急ぎ足で食堂に戻った。そして、中に入ると食堂は荒らされており、食べ物はぐしゃぐしゃに、皿は床に落ち割れている。そして、決めてはなんといっても壁に書かれた血文字だ。
「これって神隠し!?」
しかし、ジークは冷静に血文字をよく見た。壁にはこう書かれてある。
謎を解け。でなければ消えた者は永遠に戻ることはない。
両腕と頭のない天使より。
「両腕と頭のない天使?」
「多分、それがヒントなんでしょう。恐らく神話か、もしくはそういった彫刻を示している」
「彫刻なら美術館ね。そこにいるってことかしら? しかし、どうやって全員を隠したって言うの? それとも、ゲームだからあまり気にしちゃいけないのかな?」
「いや、マーニーの疑問は正しいよ」
ジークはそう言って血文字の端を指で取ると、それを舐めた。
「え!? ジーク、それ血だよ」
「いや、血じゃないよ。これはケチャップだ」
「ケチャップ?」
ジークは頷いた。
「そもそも、血は壁以外にないでしょ? ということは少なくとも怪我人はいない。それに、部屋が荒らされているのは誰かの仕業だと思わせるものだとしたら、多分これは偽装」
「偽装? 何の為に?」
「本題のゲームは隠れんぼじゃなくて、私達と勝負することじゃないのかな? 謎解きのね」
「ああ、なる程。それなら、全員が悲鳴をあげずに一斉に消えた理由が納得できるわ。それじゃ、負けてられないわね」
「ええ。まずは、両腕と頭のない天使」
「うん、全く思いつかない」
「多分、これはサモトラケのニケのことでは?」
「うん、何それ?」
「ルーヴル美術館にある彫刻だよ」
「それってパリだよね? まさか、全員パリに行ったの?」
「いや、ゴールはパリじゃないと思う。つまり、謎は複数存在し、それを解いていき最終的にはゴールに辿り着ける。そこに皆がいるんでしょう」
マーニーは時計を見た。
「もしかして、ハロウィンが終わる前にこれゴールしなきゃダメみたいな?」
「ええ、多分ね」
そこに忍び足で歩く黒い紐付きの靴が通路から現れた。
二足は部屋を一周し、先程出てきた入りから出ようとしたその直後、部屋はいきなりパッと明かりがついた。
「ああ~」
マーニーは残念そうに明かりを付けた人物、つまりこの屋敷の主人であるジークを見て言った。
「もう少し手加減してよ」
「どうして隠れんぼをやっているのに、隠れている筈の人間がうろついているんです?」
「見つからないよう移動すれば見つからないじゃん?」
ジークはため息をついた。
そこに、沢山の足音が此方に向かってきた。
その足は小さいのが複数。
現れたのは可愛らしい子供達だ。
「あー! お姉ちゃん見つかっちゃったの」
「お姉ちゃんなら絶対に見つからないと思ったのに」
マーニーは手を合わせ「ごめん」と謝った。
「流石は名探偵。見つけるのは容易いか」と、いっちょう前に小太りの男の子がジークを見ながらそう言った。彼はマーニーより自分に興味があるようだった。
明かりのついた部屋には薄暗くて見えなかったカボチャの飾りがされてあった。
そう、今日はハロウィンだった。
ジークとマーニーは子供達の遊びに付き合っていたのだ。まぁ、そういうクエストがあって受けたのだが、このクエストには妙な噂があった。
ハロウィンの子供達の遊びに単に付き合う筈のクエスト、一見したら簡単なものだが、去年これを受けたプレイヤーはクエストを失敗していた。その前も。
毎年同じ時期に同じクエストが発生するこの恒例クエストに噂を聞きつけたマーニーはジークを誘い二人でこのクエストにチャレンジすることにしたのだ。
子ども達は遊びを終えると、下の階に向かった。下には子ども達の保護者がカボチャを使った料理が準備されてあるからだ。
マーニーとジークだけになるとマーニーは「今のところは普通そうだね」とジークに言った。
「ええ」
残念ながらこのクエストに失敗したプレイヤーとのコンタクトはとれず、この後の状況はほとんど知らない。
ただ、失敗が連続しているあたり、何かしらのトラブル……事件が起きるんじゃないかとマーニーと自分は考えているんだけど…… 。
マーニーと自分はとりあえず子ども達が下に向かったので、自分達も階段を降りていった。
そして、食堂に向かうと出来上がった料理がズラッと並べられてあったのだが、子ども達と保護者の姿がどこにもなかった。
「あれ? 皆は?」
「さぁ?」
とりあえず探してみたが、やはりこの屋敷には自分達二人以外、気配が感じられない。
「いた?」
「いや」
「ということは」
「ああ、どうやら始まったようですね。とりあえず、もう一度食堂に戻りましょう」
「ええ、分かったわ」
二人は食堂に戻ろうと通路を歩いていると、何故か明かりがついている筈の食堂が暗くなっていた。
「あれ? ジーク、明かり消していった?」
「消してませんよ」
二人は急ぎ足で食堂に戻った。そして、中に入ると食堂は荒らされており、食べ物はぐしゃぐしゃに、皿は床に落ち割れている。そして、決めてはなんといっても壁に書かれた血文字だ。
「これって神隠し!?」
しかし、ジークは冷静に血文字をよく見た。壁にはこう書かれてある。
謎を解け。でなければ消えた者は永遠に戻ることはない。
両腕と頭のない天使より。
「両腕と頭のない天使?」
「多分、それがヒントなんでしょう。恐らく神話か、もしくはそういった彫刻を示している」
「彫刻なら美術館ね。そこにいるってことかしら? しかし、どうやって全員を隠したって言うの? それとも、ゲームだからあまり気にしちゃいけないのかな?」
「いや、マーニーの疑問は正しいよ」
ジークはそう言って血文字の端を指で取ると、それを舐めた。
「え!? ジーク、それ血だよ」
「いや、血じゃないよ。これはケチャップだ」
「ケチャップ?」
ジークは頷いた。
「そもそも、血は壁以外にないでしょ? ということは少なくとも怪我人はいない。それに、部屋が荒らされているのは誰かの仕業だと思わせるものだとしたら、多分これは偽装」
「偽装? 何の為に?」
「本題のゲームは隠れんぼじゃなくて、私達と勝負することじゃないのかな? 謎解きのね」
「ああ、なる程。それなら、全員が悲鳴をあげずに一斉に消えた理由が納得できるわ。それじゃ、負けてられないわね」
「ええ。まずは、両腕と頭のない天使」
「うん、全く思いつかない」
「多分、これはサモトラケのニケのことでは?」
「うん、何それ?」
「ルーヴル美術館にある彫刻だよ」
「それってパリだよね? まさか、全員パリに行ったの?」
「いや、ゴールはパリじゃないと思う。つまり、謎は複数存在し、それを解いていき最終的にはゴールに辿り着ける。そこに皆がいるんでしょう」
マーニーは時計を見た。
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「ええ、多分ね」
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