探偵主人公

アズ

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13章 見える

05 寝室

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 証言は注意深く聞く必要がある。まるで人狼のように犯人は自分の都合のいいように事実を曲げペラペラと達者に喋るからだ。しかし、時に犯人でない人物まで嘘を混ぜてくる。時にその場にいる全員が嘘をついている場合も。まさに、想定外の事態だ。しかし、そんな状況でも探偵は惑わされてはならない。そう振る舞わなければならない。何故なら、彼らにとって唯一信じられるのが探偵になるのだから。



 リュー・メレディスの家は三角屋根の煙突がある白い家で説明通り2階建てだ。
 家の前には警官ともう一人の男が立っている。背は高く190はあると思われる。スーツ姿で、此方を見る目は鋭い。
 モラーヌはパリに来る途中で事前にフランスの警察に連絡を入れていた。勿論、家に入る為に許可をもらいにだ。
 恐らく、スーツの男は刑事だろう。
「君が噂に聞く探偵ジークかね」
「はい。私のことはご存知なのですね」
「ああ。私だけではない。私の隣にいる彼も、むしろそれどころか警察なら全員誰だってアメリカで起きたことは知っている。ヴェラ・ミラーの件もあるからな」
 ヴェラ・ミラー……彼女はパリにいた。その正体はロバート・エルフマンという裏の顔を持っていたことだが、ミラーは自殺してしまい、警察は逮捕出来なかったことに多少の恨みを持たれていたりもした。
「あの一件、出来れば先に我々警察に一報をいただきたかった」
「そうすればミラーは自殺する前に捕まえられたでしょうか? 私はそうは思いません。ミラーに辿り着けたのは実際には私だけでしたし、ミラーも気付けるとしたら私だと思っていた筈ですよ。ミラーは私にだから最後に会った。まるで、私が現れるのを待っていたかのように。恐らくそれはアメリカで元大佐や部下がやられたことを知ったミラーは潮時だと思ったんじゃないでしょうか。私はミラーがフランス警察に簡単に捕まっていたとは思えません」
「あなたは我々を見くびっているようだ。確かに、あなたの功績を考えれば探偵という称号を得たことに不満があるわけではありません。勿論、ルールに従いあなたには協力をしましょう。しかし、少しは我々警察も信用していただかないと」
「ええ、勿論です」
「その言葉に偽りはないようなので、では早速中を拝見しますか?」
 すると、警官がトムを指差して「子どもまで入れるんですか」と訊いた。
「構いませんよ。責任は彼が持ってくれますから」
 警官は不思議そうな顔をした。
 それから全員が入ると刑事は「それでどこから見て行きますか?」と訊いてきた。
 ジークは「まずは寝室からお願いします」と答えた。
「分かりました」
 そう言って全員が階段を登りだした。その間にジークはモラーヌに質問をする。
「この家は最終的にどうなるのですか?」
「売られることになります。遺産は彼の家族になります」
「そう言えば、ご家族とはお会いになられたことはありますか?」
「ええ、あります。とても親切にしていただきました。ただ、彼が亡くなってからはすっかり別人のように冷たく扱われて……あの刑事と同じ私のことを疑っているんでしょう」
「なる程。因みに、お二人のご結婚を家族が反対されたりはしませんでしたか?」
「いいえ。むしろ、結婚できないまま一生独身じゃないのかと彼はからかわれた感じです。彼は酷いなって笑っていました」
「事件前は関係は良かったんですね」
「ええ」
「しかし、今は事件であなたを疑っている。どうしてですか?」
「分かりません」
「金目当てだとしたら、むしろ結婚した後ならまだ分かります。しかし、実際はそうではない。そして、あなたの愛は本物だ。それでも疑っているのはあなたが不利な状況からということでしょうか?」
「そうだと思います。警察もそうですし」
「なる程」
 ジークは顎を擦りながら考え事をした。
「ここです」
 案内されたジークは寝室に入った。ベッドと壁には絵画がかけられ、奥には窓がある。
 ジークは窓の方へと歩み、窓の外を眺めた。
 庭があり、奥に塀と向こう側の一軒家が見える。
 緑が多い場所だが、あの向こう側の窓からこちら側の庭は見える筈だ。今は窓のレースがかかっている。
「モラーヌさん、あちらには住人はいますか?」
「ええ、います」
「モラーヌさん、もしあなたが夜中に見たという光があの庭から見れたとしたら、当然向こう側の住人にも見えたかもしれません。もしくは他の可能性も出てきました。向こう側の住人が出した光だったかもしれません」
 モラーヌは答えようとしたが、それを遮るように刑事が先に「そのことでしたら我々警察が確認済みですよ」と説明を始めた。
「真夜中のこともありお宅はその時間帯寝ていたそうです。つまり、その光を見たという証言をしているのはモラーヌさんだけなんです。しかし、それは今回の殺人事件を解決する為にそれ程重要ではないと思いますが?」
「ええ、今のところは。まだ、モラーヌさんの見間違いという可能性も無いわけではありませんし」
「あなた! さっき言っていたことと違うわよ」
「いいえ、違いませんよ。私は可能性を複数上げているだけです。しかし、真実は必ず一つに絞られます。今は真相が見えませんから視野を広く、あらゆる可能性を考慮し、その中で否定されるものを消去法で潰していくんです。しかし、刑事さんが仰った通り、それが今回の犯人の手掛かりになるかはまた別の話しなんです。となれば、次に見るべき部屋は書斎でしょう」
「では、こちらです」
 刑事はそう言って案内した。
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