115 / 124
13章 見える
05 寝室
しおりを挟む
証言は注意深く聞く必要がある。まるで人狼のように犯人は自分の都合のいいように事実を曲げペラペラと達者に喋るからだ。しかし、時に犯人でない人物まで嘘を混ぜてくる。時にその場にいる全員が嘘をついている場合も。まさに、想定外の事態だ。しかし、そんな状況でも探偵は惑わされてはならない。そう振る舞わなければならない。何故なら、彼らにとって唯一信じられるのが探偵になるのだから。
リュー・メレディスの家は三角屋根の煙突がある白い家で説明通り2階建てだ。
家の前には警官ともう一人の男が立っている。背は高く190はあると思われる。スーツ姿で、此方を見る目は鋭い。
モラーヌはパリに来る途中で事前にフランスの警察に連絡を入れていた。勿論、家に入る為に許可をもらいにだ。
恐らく、スーツの男は刑事だろう。
「君が噂に聞く探偵ジークかね」
「はい。私のことはご存知なのですね」
「ああ。私だけではない。私の隣にいる彼も、むしろそれどころか警察なら全員誰だってアメリカで起きたことは知っている。ヴェラ・ミラーの件もあるからな」
ヴェラ・ミラー……彼女はパリにいた。その正体はロバート・エルフマンという裏の顔を持っていたことだが、ミラーは自殺してしまい、警察は逮捕出来なかったことに多少の恨みを持たれていたりもした。
「あの一件、出来れば先に我々警察に一報をいただきたかった」
「そうすればミラーは自殺する前に捕まえられたでしょうか? 私はそうは思いません。ミラーに辿り着けたのは実際には私だけでしたし、ミラーも気付けるとしたら私だと思っていた筈ですよ。ミラーは私にだから最後に会った。まるで、私が現れるのを待っていたかのように。恐らくそれはアメリカで元大佐や部下がやられたことを知ったミラーは潮時だと思ったんじゃないでしょうか。私はミラーがフランス警察に簡単に捕まっていたとは思えません」
「あなたは我々を見くびっているようだ。確かに、あなたの功績を考えれば探偵という称号を得たことに不満があるわけではありません。勿論、ルールに従いあなたには協力をしましょう。しかし、少しは我々警察も信用していただかないと」
「ええ、勿論です」
「その言葉に偽りはないようなので、では早速中を拝見しますか?」
すると、警官がトムを指差して「子どもまで入れるんですか」と訊いた。
「構いませんよ。責任は彼が持ってくれますから」
警官は不思議そうな顔をした。
それから全員が入ると刑事は「それでどこから見て行きますか?」と訊いてきた。
ジークは「まずは寝室からお願いします」と答えた。
「分かりました」
そう言って全員が階段を登りだした。その間にジークはモラーヌに質問をする。
「この家は最終的にどうなるのですか?」
「売られることになります。遺産は彼の家族になります」
「そう言えば、ご家族とはお会いになられたことはありますか?」
「ええ、あります。とても親切にしていただきました。ただ、彼が亡くなってからはすっかり別人のように冷たく扱われて……あの刑事と同じ私のことを疑っているんでしょう」
「なる程。因みに、お二人のご結婚を家族が反対されたりはしませんでしたか?」
「いいえ。むしろ、結婚できないまま一生独身じゃないのかと彼はからかわれた感じです。彼は酷いなって笑っていました」
「事件前は関係は良かったんですね」
「ええ」
「しかし、今は事件であなたを疑っている。どうしてですか?」
「分かりません」
「金目当てだとしたら、むしろ結婚した後ならまだ分かります。しかし、実際はそうではない。そして、あなたの愛は本物だ。それでも疑っているのはあなたが不利な状況からということでしょうか?」
「そうだと思います。警察もそうですし」
「なる程」
ジークは顎を擦りながら考え事をした。
「ここです」
案内されたジークは寝室に入った。ベッドと壁には絵画がかけられ、奥には窓がある。
ジークは窓の方へと歩み、窓の外を眺めた。
庭があり、奥に塀と向こう側の一軒家が見える。
緑が多い場所だが、あの向こう側の窓からこちら側の庭は見える筈だ。今は窓のレースがかかっている。
「モラーヌさん、あちらには住人はいますか?」
「ええ、います」
「モラーヌさん、もしあなたが夜中に見たという光があの庭から見れたとしたら、当然向こう側の住人にも見えたかもしれません。もしくは他の可能性も出てきました。向こう側の住人が出した光だったかもしれません」
モラーヌは答えようとしたが、それを遮るように刑事が先に「そのことでしたら我々警察が確認済みですよ」と説明を始めた。
「真夜中のこともありお宅はその時間帯寝ていたそうです。つまり、その光を見たという証言をしているのはモラーヌさんだけなんです。しかし、それは今回の殺人事件を解決する為にそれ程重要ではないと思いますが?」
「ええ、今のところは。まだ、モラーヌさんの見間違いという可能性も無いわけではありませんし」
「あなた! さっき言っていたことと違うわよ」
「いいえ、違いませんよ。私は可能性を複数上げているだけです。しかし、真実は必ず一つに絞られます。今は真相が見えませんから視野を広く、あらゆる可能性を考慮し、その中で否定されるものを消去法で潰していくんです。しかし、刑事さんが仰った通り、それが今回の犯人の手掛かりになるかはまた別の話しなんです。となれば、次に見るべき部屋は書斎でしょう」
「では、こちらです」
刑事はそう言って案内した。
リュー・メレディスの家は三角屋根の煙突がある白い家で説明通り2階建てだ。
家の前には警官ともう一人の男が立っている。背は高く190はあると思われる。スーツ姿で、此方を見る目は鋭い。
モラーヌはパリに来る途中で事前にフランスの警察に連絡を入れていた。勿論、家に入る為に許可をもらいにだ。
恐らく、スーツの男は刑事だろう。
「君が噂に聞く探偵ジークかね」
「はい。私のことはご存知なのですね」
「ああ。私だけではない。私の隣にいる彼も、むしろそれどころか警察なら全員誰だってアメリカで起きたことは知っている。ヴェラ・ミラーの件もあるからな」
ヴェラ・ミラー……彼女はパリにいた。その正体はロバート・エルフマンという裏の顔を持っていたことだが、ミラーは自殺してしまい、警察は逮捕出来なかったことに多少の恨みを持たれていたりもした。
「あの一件、出来れば先に我々警察に一報をいただきたかった」
「そうすればミラーは自殺する前に捕まえられたでしょうか? 私はそうは思いません。ミラーに辿り着けたのは実際には私だけでしたし、ミラーも気付けるとしたら私だと思っていた筈ですよ。ミラーは私にだから最後に会った。まるで、私が現れるのを待っていたかのように。恐らくそれはアメリカで元大佐や部下がやられたことを知ったミラーは潮時だと思ったんじゃないでしょうか。私はミラーがフランス警察に簡単に捕まっていたとは思えません」
「あなたは我々を見くびっているようだ。確かに、あなたの功績を考えれば探偵という称号を得たことに不満があるわけではありません。勿論、ルールに従いあなたには協力をしましょう。しかし、少しは我々警察も信用していただかないと」
「ええ、勿論です」
「その言葉に偽りはないようなので、では早速中を拝見しますか?」
すると、警官がトムを指差して「子どもまで入れるんですか」と訊いた。
「構いませんよ。責任は彼が持ってくれますから」
警官は不思議そうな顔をした。
それから全員が入ると刑事は「それでどこから見て行きますか?」と訊いてきた。
ジークは「まずは寝室からお願いします」と答えた。
「分かりました」
そう言って全員が階段を登りだした。その間にジークはモラーヌに質問をする。
「この家は最終的にどうなるのですか?」
「売られることになります。遺産は彼の家族になります」
「そう言えば、ご家族とはお会いになられたことはありますか?」
「ええ、あります。とても親切にしていただきました。ただ、彼が亡くなってからはすっかり別人のように冷たく扱われて……あの刑事と同じ私のことを疑っているんでしょう」
「なる程。因みに、お二人のご結婚を家族が反対されたりはしませんでしたか?」
「いいえ。むしろ、結婚できないまま一生独身じゃないのかと彼はからかわれた感じです。彼は酷いなって笑っていました」
「事件前は関係は良かったんですね」
「ええ」
「しかし、今は事件であなたを疑っている。どうしてですか?」
「分かりません」
「金目当てだとしたら、むしろ結婚した後ならまだ分かります。しかし、実際はそうではない。そして、あなたの愛は本物だ。それでも疑っているのはあなたが不利な状況からということでしょうか?」
「そうだと思います。警察もそうですし」
「なる程」
ジークは顎を擦りながら考え事をした。
「ここです」
案内されたジークは寝室に入った。ベッドと壁には絵画がかけられ、奥には窓がある。
ジークは窓の方へと歩み、窓の外を眺めた。
庭があり、奥に塀と向こう側の一軒家が見える。
緑が多い場所だが、あの向こう側の窓からこちら側の庭は見える筈だ。今は窓のレースがかかっている。
「モラーヌさん、あちらには住人はいますか?」
「ええ、います」
「モラーヌさん、もしあなたが夜中に見たという光があの庭から見れたとしたら、当然向こう側の住人にも見えたかもしれません。もしくは他の可能性も出てきました。向こう側の住人が出した光だったかもしれません」
モラーヌは答えようとしたが、それを遮るように刑事が先に「そのことでしたら我々警察が確認済みですよ」と説明を始めた。
「真夜中のこともありお宅はその時間帯寝ていたそうです。つまり、その光を見たという証言をしているのはモラーヌさんだけなんです。しかし、それは今回の殺人事件を解決する為にそれ程重要ではないと思いますが?」
「ええ、今のところは。まだ、モラーヌさんの見間違いという可能性も無いわけではありませんし」
「あなた! さっき言っていたことと違うわよ」
「いいえ、違いませんよ。私は可能性を複数上げているだけです。しかし、真実は必ず一つに絞られます。今は真相が見えませんから視野を広く、あらゆる可能性を考慮し、その中で否定されるものを消去法で潰していくんです。しかし、刑事さんが仰った通り、それが今回の犯人の手掛かりになるかはまた別の話しなんです。となれば、次に見るべき部屋は書斎でしょう」
「では、こちらです」
刑事はそう言って案内した。
0
あなたにおすすめの小説
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが
まっど↑きみはる
ファンタジー
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」
そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる