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episode 北×森村

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「なんでそんな顔してほぼ童貞なわけ?」

 北の言葉にぐっと喉が詰まった。
 まっすぐ見てくるからこちらもストレートに答える。

「直球ですね……ずっと好きな子がいたんですが、その友達とつき合うよう勧められて、ヤケになってだらだらつき合ったというだけです。……その相手とあまりしたいと思わなかったので」
「なにそれ、らしくない」

 初めて肌を重ねて、お互いに触れながらありのまま話す。
 北の腰にゆるく腕を回し背骨を撫で、時々合わせるだけのキスをする。
 北は脚を絡めて、足指ですりすり撫でてくる、多分無意識に。
 元カノとはこんな時間さえ持たなかった。

「ヤケになって、つき合うと言ったものの、好きな子の手前うまくいってる振りをしてしまったんです、馬鹿ですよね」

 馬鹿だねぇ、と笑われて髪をくしゃくしゃにされる。
 お返しに、と北の髪を撫でて、頭にキスする。
 
「森村……イケメンにそんなことされると照れる」
「北さん、この顔好きですか?」
「うーん、いいんじゃない?整ってて」

 好ましく思ってもらえるなら十分、と思っていると、優しく顔を撫でるからこちらからすり寄った。

「北さんに触れられると元気になってしまうんですが」
「じゃあ、少し休んでから、ね?」
「すでに過去の経験回数を超えましたよ。好きな人とするのは気持ちも感じ方も違うんですね……勉強になります」

 そんなこと言われると、こっちもやる気出ると笑う。
 とりあえず、お腹減ったから何か食べようと、北が起き上がって床に足を下ろした後、がくんと膝から落ちた。

「えっ?」

 北が驚いて森村を振り返った。

「腰が抜けてるんだけど? どうにかして」

 そう言われて北を抱き上げるとベットに戻した。

「そんなにやりすぎた?」
「ちょっと、僕にはよくわかりません」

 二人の間に沈黙がおちた。

「……三回?……え、もっとだっけ? ゴム、いくつ開けたっけ……?」
「多分……五個か、と」
「やだ、森村、すごい」
「いえ、だって、半分は北さんが……」

 北が恥ずかしくなってベッドに伏せる。
 
「森村のせいっ」
「……じゃあ、それでいいです。……何か作りましょうか?それか、ピザとか……はもう宅配は終わってそうですね」
「冷凍庫にグラタンとピザがある……それでよければ」

 




 
 グラタンとピザをそれぞれチンし、北を抱っこして運ぶと椅子に座らせた。

「ビール飲まない? 今日は嫌?」
「飲みます」

 冷蔵庫から五百ミリの缶ビールを出し、グラス二つに分けて片方を手渡した。
 
「ありがとう」

 北が嬉しそうに一気に飲み干した。
 もう一缶出してきて、注ぐ。

「私、今幸せだわ。やってもらえるって感動。森村、これからもよろしく……歩けなかったのは想定外だけど」
「北さん……この後もお世話するので、もう一度やりたいです」
「…………とりあえず、食べよう?」

 シェアして食べながら、追加で枝豆とポテトも食べようと言われて冷凍庫を漁る。
 ぎっしりと詰まった冷凍庫からフライドポテトを出してトースターにぶち込み、枝豆はさっと茹でた。

「本当に普段料理してるんだ」
「このくらい誰でもしますよ?」
「枝豆、流水解凍やレンチンでもできるのに茹でたのがいいよね。一番好き」

 さらにビールを飲む。
 時々、北がポテトを口に突っ込んでくるから、こっちからもポテトを差し出す。
 口を開けてぱくりと食べる姿はかわいい。
 普段は見せない少し甘えた姿に今すぐ抱きしめたくてしかたない。
 ここに男前で頼りになる北はいない。
 少し酒に酔ってきたのか、とろんとした目もかわいい。

 昔好きだった子のことは元カノとつき合っている間に彼氏ができて、すっぱり諦めがついた。
 元カノは入社して少しした頃、結婚を匂わせるようになったから、これが限界だなと別れている。
 入社前から女にうんざりしていたし、北とも距離を置いていた。
 大学を卒業したばかりで生意気な態度をとっていたのに、おおらかで。
 細やかな気遣いのおかげで教えてもらった仕事はわかりやすく、はかどった。
 察しがよくて男前、そう言われている北が気にならないはずがない。
 年上だったのも変に気負わなくてよかったのだろう。
 一緒にいるうちにだんだん好きになった。
 本人は気づいていないが、社内で人気があるから彼氏がいるか探れとか、飲み会企画しろとかかなり無理を言われる。今も、たまに。
 
「口開けて」

 北に言われてまっすぐ目を見ると、枝豆を突っ込まれる。
 さやから出した豆を持つ指が唇に触れた。
 女の人にしては大きいらしいが、男から見たら小さくて細い指。
 思わずスイッチが入る。
 
「北さんも、口開けて下さい」

 こちらも真似してさやから豆を出すと口に放り込む。
 にっこり笑ってありがとう、と言う。
 もう一粒唇に押し当てた。
 口を開けて、指ごとペロリと舐めた。

「何か考えてる? さっきから黙ってる」

 やることしか考えてない。
 北のグラスは空だ。
 自分のグラスを一気に飲むとテーブルの上のものをざっとカウンターに移動した。
 それから北をじっと見つめて言った。
 もうずっと、目が離せない。

「北さん、今、ここでお願いします」

 テーブルを回り、椅子に座ったまま見上げる北に口づけを落とした。

「え? 何?」

 抱き上げてテーブルの端に座らせる。

「ちょっと! 酔ってる?」

 黙らせるように最初から舌を入れて口内を嬲る。
 テーブルに押し倒して防備力の低いスウェット地のワンピースの裾から手を入れた。

「すみません。早く繋がりたいです。それしか考えられません」
「ゴム、寝室だからっ」
「ここにあります」

 服の上から胸に噛みつき、下着は一気に下げて脚のあわいに触れる。
 とろんとやわらかいそこは何度か上下にさするだけでほどけてくる。
 二本の指を突き立てて、くぐもった声を上げる北の表情を探った。

「痛いですか……?」
「痛くない……けど、キスして」

 北の薄く開いた唇に無遠慮に舌を滑り込ませる。
 甘い吐息に股間が反応する。
 指を抜いてゴムをつけると蜜口に当てて腰を前に突き出した。

「んんんっ」

 きつい。
 ぴったりと張りついてくる内壁に我慢できず抽挿する。
 テーブルがガタガタと音を立て、不安定に揺れる北が強い口調で言う。

「もり、むらっ、移動、して!」

 涙を浮かべた北を見下ろして、欲に駆られ自分本位に動いたことに気持ちが沈んだ。
 それでもどくどくと激しく心臓が打つ。

「背中、痛い」
「すみません……熱くなりすぎました」

 何度も意識して呼吸する。
 ちらりと北を見ると、肘をついて上半身を起こそうとしていた。
 肩と腰に腕を回して抱き起こす。

「そんなに求めてくれるんだ? ここは嫌だから、ベッドに行こう?」

 少し治まっていた高ぶりがむくむくと育つ。
 北に髪を撫でられて、呆れていても嫌われていないことに安堵した。
 肩先に口づけして顔を上げる。

「北さんが好きすぎて優しくできません」
「……いいよ? 森村といる時だけ、女になれる」
「……はぁ。北さんはいつだって女ですよ」

 ゴムが外れていないのを確認してから北を持ち上げた。

「ぐ……」
「なんですか? それ……?」

 ベッドまでそれほど距離がないのが惜しい。
 歩くたびに思わぬところに当たるのか、北がぎゅっと抱きついてきて腰に絡めた足に力が入る。
 よいしょ、とお尻を持ち上げれば喉の奥からまたなんとも言えない声を上げた。

「森村ぁ……あとでみてろよ?」
「楽しみにしてます」

 ベットに乗り上げると北の脚を高く上げて上から落とし込むように抽挿する。

「はぁっん……わざとっ、きついの、……んあっ、ばっかり……!」
「攻めさせて、下さいって……言いました、よっ!」
「ばかぁ!」

 勢いよく揺さぶって指で溢れる愛液を陰核にこすりつける。

「ぃやぁぁぁっー」

 がくがくと震えて達した身体に、一瞬止まりかけるがすぐさま激しく揺さぶり続ける。
 ぎゅうぎゅう締めつけられながら、もったいなくてイキたくない。

「イってますねっ……中が、うねって……気持ち、いいですっ」
「……っ、も、おかし、なる……あぁっ」

 脚を下ろして腰を打ちつける。
 その度に北の胸が大きく揺れて欲が高まった。
 
「あーっ、イくっ、絶対、離しませんからっ」

 気持ち良くてたまらない。
 力の抜けた北を抱きしめる。
 漏れるからどいて、と言われるまでがっちりとしがみついた。
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