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25.南勢の鳳凰
25-3. 厄災
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十一月二十九日――。
三河へ向けて出陣の支度を整えていた。
夕暮れまで家臣たちとの軍議が続き、夜遅くなってから寝所に戻った。疲れた体を横たえてから、どれほどの時がたったのかは覚えていない。突然の大きな揺れと、夜の静寂を打ち破る大きな音に、忠三郎は飛び起きた。
最初、徳川勢が攻め込んできたかと思ったが、城が傾くかと思うほど建物全体が大きく揺れ、未曽有の天変地異が起きていると気づいた。
(これは尋常ならざること)
『長門!』
大声で叫ぶと、暗がりの中、町野長門守が踊るように転げながら姿を現した。
「ここは危のうござりまする。早う外へ!」
このままでは館が倒壊して押しつぶされる。二人は慌てて外へと飛び出した。
「殿!あれを!」
町野長門守が指さす方向を見ると、月明かりの下で輝いていた天守が右へ左へ激しく揺さぶられ、今にも崩れ落ちようとしている。
「あれではもたぬ。皆、天守から離れよ」
忠三郎は傍にいた家人たちを従え、取るものも取り敢えず、本丸から二の丸へ、二の丸から三の丸へと走った。
地が波打つように揺れ、土塁が裂け、石垣が雷音を立てて崩れ落ちていく。
『城から離れねば、落ちてきた天守に押しつぶされましょう』
『皆に伝えよ。内堀を越え、一瞬も早く城から遠くへ逃れるようにと』
忠三郎自身も馬にまたがり、混乱と闇に包まれた城内を後にする。
幸いにも、外へと続く門は、今なお辛うじてその形を保っていた。大手門を潜り、内堀を越えたところで馬の脚を止めた。振り返ると、いつしか揺れ収まり、城は、ただ月光の下に沈黙していた。
『恐ろしき天変地異でござります』
『まことに…。されどこれでは、天守を立て直さねばなるまいて』
見渡せば、石垣は無残に崩れ、土塁も押し流されたかのように崩壊している。今立っている場所から天守を望むことはかなわぬが、既に倒壊しているのは疑う余地もない。
しかし――この惨状では、修復を試みようとも、再びこの地に天守を築くことは、あまりに困難だ。
などと考えていると、ふと目に映ったのは、城下に住むまう人々の姿だった。皆、一様に恐慌をきたし、悲鳴を上げながら四方へと逃げ惑っている。
(揺れは収まったというのに、皆、何故に急いで逃げようとしておるのか)
解せない。
『羽なければ、空をも飛ぶべからず。竜ならばや雲にも乗らむ。恐れのなかに恐るべかりけるはただ地震なりけりとこそ覚え侍りしか』
忠三郎が方丈記の一節を思い起こしていると、町野左近が慌てた様子で走ってくる姿が見えた。
『殿!まだかような場所におられたか』
『おぉ、爺。無事であったか』
『今すぐお逃げくだされ』
『逃げる?とは?』
『まもなくここを津波が襲うと、城下に住む者たちが口々に申しておりまする』
『津波?』
『百年前の明応地震のとき、潮が沖まで引き、それを見ていた民は干上がった砂地にはねる魚を拾おうとしたとか。されど、間もなく唸りを発した山の如き大波が襲いかかり、船も人も家屋も、ことごとく飲まれたと。その有様はさながら数万の軍勢が海の底から襲い掛かって来たかのようであったと言い伝えられておりまする。こたびも城を飲み込むほどの大波が襲うと恐れ、皆、我先にと逃げ出しておるところで』
無論、波を見たことはある。 しかし、内陸に生まれ育った忠三郎には、城を呑み込むほどの大きな波と言われても、それがどれほどのものなのか、想像がつかない。
『山は崩れて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせりとも言うが…。落ち着け、爺。崩れ落ちた家屋の下敷きになったものもおろう。もう揺れは収まっておるのじゃ。まずはその者どもを助け出し…』
『いえ。もう遅うござります』
町野左近の声が、鋭く忠三郎の言葉を遮る。
『そのような悠長なことをしていては、我らが命を落とすこととなりましょう』
『何を申すか。あの下には我が家の家人どもが助けを求めて…』
『殿!』
町野左近はじれたように忠三郎の馬の手綱を取って馬首を返した。
『このままでは間に合いません!』
言うが早いか、町野左近はなおも手綱を引き、忠三郎を城から遠ざけようと、ひた走りに走り、城から遠くへと連れ出した。
――その直後、津波が松ヶ島を襲った。
忠三郎は家臣たちに急ぎ遠方へと連れ出され、ただ慌ただしく逃げるばかりであった。潮の匂いは濃く、風は異様に湿っていたが、大波そのものを忠三郎の目が捉えることはなかった。
だが、再び松ヶ島へと戻ったとき、忠三郎の知る町の姿は、どこにもなかった。
かつて人々が暮らし、賑わい、喧騒に満ちていた町並みはすべて消え去り、ただ荒涼とした風景が広がるばかり。民家は影も形もなく、織田信雄が築いた誇り高き城の天守すらも見えない。かろうじて数本の松が点々と立っているのが見えたが、それも強風に煽られ、今にも倒れそうだった。
天守の下敷きとなった者たちは、どうなったのか。
忠三郎は茫然と立ち尽くした。目の前に広がるのは、見渡す限りのがれきの山。無惨にも打ち捨てられた町の姿。
『城にいた者たちは?』
掠れた声で家臣たちに尋ねる。
『……大波により、倒壊した家屋や城と共に、多くの者が呑まれていったようにございます』
その言葉が、まるで遠い場所から聞こえてくるように感じられた。
(誰一人、助けてやることができなかった)
どれほど多くの命が失われたのかもわからない。すぐ目の前にいたというのに、ただ為す術もなく、奪われていった。かつてここまでの死者を出すような戦場があっただろうか。
『かくの如く恐ろしきことが起きれば、人は無力なものだ……』
自然の猛威を前に、忠三郎は初めて心の底から恐れを抱いた。
そして、それ以上に痛感したのは、自らの無力さであった。
(この惨状から、どうやって町を復興させればよいのか……)
考えるだけでも気が遠くなる。
忠三郎は隣国・安濃津の織田信包へと急ぎ知らせを送った。もしや安濃津は無事か――そう願わずにはいられなかった。
だが、返ってきた報せは無情なものだった。
安濃津もまた、大波に呑まれたという。
そればかりではない。北伊勢の長島、尾張の蟹江――どちらも津波に襲われ、城の片鱗さえ残されていないという。あれほど堅牢を誇った城郭も、大自然の猛威の前では砂上の楼閣にすぎなかったのか。
美濃では大垣城が大地の揺れの直後、火の手に包まれた。揺れに怯え、逃げ惑う者たちの目の前で、燃え盛る炎が城を呑み込んでいったという。城内に蓄えられていた三河攻めのための兵糧も、すべて灰燼に帰した。戦のために備えたものが、戦でなく天の怒りによって失われるとは――誰が予想したであろうか。
尾張では、五条川を内堀とする清須城にも被害が及んだ。元来、地盤の緩い土地に築かれた城である。地震の揺れとともに地から水が噴き出し、町の家屋は次々に傾いていったという。
忠三郎は天を仰いだ。
これは、ただの地震や津波ではない。まるで、天地そのものが人の営みを否定するかのような、大いなる災厄。
(戦場ならば、敵を討てば道は開けよう。だが、この天の災いに、我らはどう抗えばよいというのか)
胸の内に広がるのは、果てしない無力感と、それでも立ち上がらねばならぬという、重く苦しい覚悟だった。
(これはもはや、戦どころではない)
忠三郎は拳を握りしめた。
三河や駿河もまた、同じような被害を受けているに違いない。いや、むしろこの未曽有の震災と大津波の猛威の前には、いかなる城郭も、いかなる武威も、何の意味も持たぬ。戦どころではないのは、家康もまた同じであろう。
城が倒れ、町が消え、多くの者が波に呑まれた。
だが、それだけでは終わらなかった。
震災と津波の傷跡が癒える間もなく、大地はなおも揺れ続けた。十一日間、絶え間なく続く余震に、人々の心は疲弊しきっていた。
そして、ついに――疫病が蔓延し始めた。
「次は疫病とは……」
忠三郎は深いため息をついた。
地震も津波も、誰もが経験したことのないものであった。それでも、人々は手探りで復興に取り掛かろうとしていた。だが、そこへさらに疫病の流行――。
どうすればよいのか。
思いあぐね、ただ天を仰ぐことしかできないまま、途方に暮れていたそのとき。
越前の一益から、一通の書状が届いた。
忠三郎は書状を開く。
どうやら一益は水面下で、家康と和睦するよう秀吉に進言していたらしい。
順調にことが運べば、三河への侵攻は避けられるかもしれない。
(義兄上は、やはり和睦をお考えであったか)
忠三郎は静かに目を閉じ、ふうと息をついた。
そして、心の奥底では安堵していた。戦が避けられるということもさることながら、何より――苦手な船に乗らずに済むということが、大いに有難かった。海上の揺れに身を委ねることなく済むのだ。
(まことに、義兄上の慧眼には恐れ入る)
一益は、詮無き戦さは無用と、かねてより言っていた。戦を仕掛けるのではなく、秀吉が和睦を受け入れる好機を見極めていたのだろう。
しかし――
書状の最後に記された一文だけが、どうにも理解できなかった。
まるで、何かを暗示するかのような、その言葉。
忠三郎は首を傾げ、もう一度書状を読み返した。
(……これは、一体どういう意味なのか?)
戦の行方に一筋の光が差す中、不可解な言葉が、忠三郎の胸に小さな棘となって残った。
三河へ向けて出陣の支度を整えていた。
夕暮れまで家臣たちとの軍議が続き、夜遅くなってから寝所に戻った。疲れた体を横たえてから、どれほどの時がたったのかは覚えていない。突然の大きな揺れと、夜の静寂を打ち破る大きな音に、忠三郎は飛び起きた。
最初、徳川勢が攻め込んできたかと思ったが、城が傾くかと思うほど建物全体が大きく揺れ、未曽有の天変地異が起きていると気づいた。
(これは尋常ならざること)
『長門!』
大声で叫ぶと、暗がりの中、町野長門守が踊るように転げながら姿を現した。
「ここは危のうござりまする。早う外へ!」
このままでは館が倒壊して押しつぶされる。二人は慌てて外へと飛び出した。
「殿!あれを!」
町野長門守が指さす方向を見ると、月明かりの下で輝いていた天守が右へ左へ激しく揺さぶられ、今にも崩れ落ちようとしている。
「あれではもたぬ。皆、天守から離れよ」
忠三郎は傍にいた家人たちを従え、取るものも取り敢えず、本丸から二の丸へ、二の丸から三の丸へと走った。
地が波打つように揺れ、土塁が裂け、石垣が雷音を立てて崩れ落ちていく。
『城から離れねば、落ちてきた天守に押しつぶされましょう』
『皆に伝えよ。内堀を越え、一瞬も早く城から遠くへ逃れるようにと』
忠三郎自身も馬にまたがり、混乱と闇に包まれた城内を後にする。
幸いにも、外へと続く門は、今なお辛うじてその形を保っていた。大手門を潜り、内堀を越えたところで馬の脚を止めた。振り返ると、いつしか揺れ収まり、城は、ただ月光の下に沈黙していた。
『恐ろしき天変地異でござります』
『まことに…。されどこれでは、天守を立て直さねばなるまいて』
見渡せば、石垣は無残に崩れ、土塁も押し流されたかのように崩壊している。今立っている場所から天守を望むことはかなわぬが、既に倒壊しているのは疑う余地もない。
しかし――この惨状では、修復を試みようとも、再びこの地に天守を築くことは、あまりに困難だ。
などと考えていると、ふと目に映ったのは、城下に住むまう人々の姿だった。皆、一様に恐慌をきたし、悲鳴を上げながら四方へと逃げ惑っている。
(揺れは収まったというのに、皆、何故に急いで逃げようとしておるのか)
解せない。
『羽なければ、空をも飛ぶべからず。竜ならばや雲にも乗らむ。恐れのなかに恐るべかりけるはただ地震なりけりとこそ覚え侍りしか』
忠三郎が方丈記の一節を思い起こしていると、町野左近が慌てた様子で走ってくる姿が見えた。
『殿!まだかような場所におられたか』
『おぉ、爺。無事であったか』
『今すぐお逃げくだされ』
『逃げる?とは?』
『まもなくここを津波が襲うと、城下に住む者たちが口々に申しておりまする』
『津波?』
『百年前の明応地震のとき、潮が沖まで引き、それを見ていた民は干上がった砂地にはねる魚を拾おうとしたとか。されど、間もなく唸りを発した山の如き大波が襲いかかり、船も人も家屋も、ことごとく飲まれたと。その有様はさながら数万の軍勢が海の底から襲い掛かって来たかのようであったと言い伝えられておりまする。こたびも城を飲み込むほどの大波が襲うと恐れ、皆、我先にと逃げ出しておるところで』
無論、波を見たことはある。 しかし、内陸に生まれ育った忠三郎には、城を呑み込むほどの大きな波と言われても、それがどれほどのものなのか、想像がつかない。
『山は崩れて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせりとも言うが…。落ち着け、爺。崩れ落ちた家屋の下敷きになったものもおろう。もう揺れは収まっておるのじゃ。まずはその者どもを助け出し…』
『いえ。もう遅うござります』
町野左近の声が、鋭く忠三郎の言葉を遮る。
『そのような悠長なことをしていては、我らが命を落とすこととなりましょう』
『何を申すか。あの下には我が家の家人どもが助けを求めて…』
『殿!』
町野左近はじれたように忠三郎の馬の手綱を取って馬首を返した。
『このままでは間に合いません!』
言うが早いか、町野左近はなおも手綱を引き、忠三郎を城から遠ざけようと、ひた走りに走り、城から遠くへと連れ出した。
――その直後、津波が松ヶ島を襲った。
忠三郎は家臣たちに急ぎ遠方へと連れ出され、ただ慌ただしく逃げるばかりであった。潮の匂いは濃く、風は異様に湿っていたが、大波そのものを忠三郎の目が捉えることはなかった。
だが、再び松ヶ島へと戻ったとき、忠三郎の知る町の姿は、どこにもなかった。
かつて人々が暮らし、賑わい、喧騒に満ちていた町並みはすべて消え去り、ただ荒涼とした風景が広がるばかり。民家は影も形もなく、織田信雄が築いた誇り高き城の天守すらも見えない。かろうじて数本の松が点々と立っているのが見えたが、それも強風に煽られ、今にも倒れそうだった。
天守の下敷きとなった者たちは、どうなったのか。
忠三郎は茫然と立ち尽くした。目の前に広がるのは、見渡す限りのがれきの山。無惨にも打ち捨てられた町の姿。
『城にいた者たちは?』
掠れた声で家臣たちに尋ねる。
『……大波により、倒壊した家屋や城と共に、多くの者が呑まれていったようにございます』
その言葉が、まるで遠い場所から聞こえてくるように感じられた。
(誰一人、助けてやることができなかった)
どれほど多くの命が失われたのかもわからない。すぐ目の前にいたというのに、ただ為す術もなく、奪われていった。かつてここまでの死者を出すような戦場があっただろうか。
『かくの如く恐ろしきことが起きれば、人は無力なものだ……』
自然の猛威を前に、忠三郎は初めて心の底から恐れを抱いた。
そして、それ以上に痛感したのは、自らの無力さであった。
(この惨状から、どうやって町を復興させればよいのか……)
考えるだけでも気が遠くなる。
忠三郎は隣国・安濃津の織田信包へと急ぎ知らせを送った。もしや安濃津は無事か――そう願わずにはいられなかった。
だが、返ってきた報せは無情なものだった。
安濃津もまた、大波に呑まれたという。
そればかりではない。北伊勢の長島、尾張の蟹江――どちらも津波に襲われ、城の片鱗さえ残されていないという。あれほど堅牢を誇った城郭も、大自然の猛威の前では砂上の楼閣にすぎなかったのか。
美濃では大垣城が大地の揺れの直後、火の手に包まれた。揺れに怯え、逃げ惑う者たちの目の前で、燃え盛る炎が城を呑み込んでいったという。城内に蓄えられていた三河攻めのための兵糧も、すべて灰燼に帰した。戦のために備えたものが、戦でなく天の怒りによって失われるとは――誰が予想したであろうか。
尾張では、五条川を内堀とする清須城にも被害が及んだ。元来、地盤の緩い土地に築かれた城である。地震の揺れとともに地から水が噴き出し、町の家屋は次々に傾いていったという。
忠三郎は天を仰いだ。
これは、ただの地震や津波ではない。まるで、天地そのものが人の営みを否定するかのような、大いなる災厄。
(戦場ならば、敵を討てば道は開けよう。だが、この天の災いに、我らはどう抗えばよいというのか)
胸の内に広がるのは、果てしない無力感と、それでも立ち上がらねばならぬという、重く苦しい覚悟だった。
(これはもはや、戦どころではない)
忠三郎は拳を握りしめた。
三河や駿河もまた、同じような被害を受けているに違いない。いや、むしろこの未曽有の震災と大津波の猛威の前には、いかなる城郭も、いかなる武威も、何の意味も持たぬ。戦どころではないのは、家康もまた同じであろう。
城が倒れ、町が消え、多くの者が波に呑まれた。
だが、それだけでは終わらなかった。
震災と津波の傷跡が癒える間もなく、大地はなおも揺れ続けた。十一日間、絶え間なく続く余震に、人々の心は疲弊しきっていた。
そして、ついに――疫病が蔓延し始めた。
「次は疫病とは……」
忠三郎は深いため息をついた。
地震も津波も、誰もが経験したことのないものであった。それでも、人々は手探りで復興に取り掛かろうとしていた。だが、そこへさらに疫病の流行――。
どうすればよいのか。
思いあぐね、ただ天を仰ぐことしかできないまま、途方に暮れていたそのとき。
越前の一益から、一通の書状が届いた。
忠三郎は書状を開く。
どうやら一益は水面下で、家康と和睦するよう秀吉に進言していたらしい。
順調にことが運べば、三河への侵攻は避けられるかもしれない。
(義兄上は、やはり和睦をお考えであったか)
忠三郎は静かに目を閉じ、ふうと息をついた。
そして、心の奥底では安堵していた。戦が避けられるということもさることながら、何より――苦手な船に乗らずに済むということが、大いに有難かった。海上の揺れに身を委ねることなく済むのだ。
(まことに、義兄上の慧眼には恐れ入る)
一益は、詮無き戦さは無用と、かねてより言っていた。戦を仕掛けるのではなく、秀吉が和睦を受け入れる好機を見極めていたのだろう。
しかし――
書状の最後に記された一文だけが、どうにも理解できなかった。
まるで、何かを暗示するかのような、その言葉。
忠三郎は首を傾げ、もう一度書状を読み返した。
(……これは、一体どういう意味なのか?)
戦の行方に一筋の光が差す中、不可解な言葉が、忠三郎の胸に小さな棘となって残った。
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