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29.関東騒乱
29-4. 松井田に帰す風
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上野の国にそびえる堅城――松井田城。
かつて、滝川一益が関東を治めていた折、与力・津田小平次が守将を務めた城であり、一益が敗れて上方へと引き上げた後は、北条の手に渡って久しかった。
そして今――その城には、豊臣方の軍旗がはためいていた。
落城から数日、焼け跡に煤けた石垣の隙間には、まだ戦の余韻が滲んでいる。
しかし、城門はすでに開かれ、修復のための人足が行き交い、山あいの春の風が、かすかな安堵をもたらしていた。
城の中庭に立つ滝川三九郎は、ただ黙って天守を仰いでいた。
「三九郎殿、よもやこの日が来ようとはな」
背後から声をかけたのは、同じく豊臣勢として入城した真田昌幸であった。
その顔には、勝利の笑みと、戦を共にした者に向ける温かさがあった。
「まことに……あの折は、真田殿が国境まで我らを見送ってくだされた」
三九郎は、ゆっくりと振り返りながら応えた。
「父・滝川左近も、真田殿のご厚情を、生涯忘れたことはないと申しておりました」
言葉の端に、微かに湿り気が宿る。
敗れて去るということは、ただ領地を失うだけではなかった。
家の誇り、兵の信義、そして未来を託したこの地の空と土――それらすべてを残して、背を向けねばならなかった悔しさが、いまも胸の奥に残っている。
三九郎は、そっと視線を山の斜面へ向けた。
かつて父が館を構えた場所。かつて弟・八郎と共に歩いた道。
そこに、今は何もない。だが風の音が記憶を呼び覚ます。
初陣から共にあった家臣たち。命を賭して守り抜いた津田三兄弟。
彼らの声が、斜面の松林のざわめきに重なるようだった。
「……皆、よく戦った」
誰にともなく呟いた声が、風にかき消された。
蟹江城の敗戦の後、畿内追放。北伊勢の本領も奪われ、頼る地もなかった。
ただ一人、三九郎は再起を誓い、真田昌幸のもとに身を寄せた。
北条と戦い、徳川とも剣を交え、幾多の戦いをくぐり抜け、ようやくここに辿り着いたのだ。
そして今――松井田城は、滝川三九郎の目の前に、落城後の静けさの中にある。
(……この地に戻ってくるまで、どれほどの血が流れたか)
だが、いま自分は、敵ではなく味方としてこの地を踏んでいる。
勝者として。豊臣の旗のもと、再び立つ者として。
(三度この城に立つなど、夢にも思わなかった)
だが、心が晴れることはない。勝って得たこの地に、亡き者たちの声がこだまする。
忠義とは、誇りとは何か。
あの日の父の選択も、己が戦ってきた道も、正しかったのか。
ただ一つ確かなのは、いまこの城に、自分の足跡を刻めるということだ。
三九郎は、ふと天を仰いだ。
春の陽が、まだ冷たい風を受けながら、静かに城の石垣を照らしている。
――過去は変えられぬ。ならば、これからを正せばよい。
父が成しえなかったことを、自らの手で。
この天下に、再び滝川の名を――
それは誰にも明かせぬ、密やかなる祈りであった。
だがその祈りは、敗北を知る者だけが灯せる、深く静かな火でもあった。
夏の陽は容赦なく照りつけ、忍城の堤に立ちこめる蒸気が、戦の空気をいよいよ重くしていた。湿った風に包まれた陣地の一角で、滝川三九郎は汗にぬれた兜を脱ぎ、額の汗をぬぐった。
そこに、真田の使者を名乗る男が駆け寄ってくる。
「滝川三九郎殿。韮山へ向かわれた織田信包様の陣より、使者が参っておりまする」
三九郎が驚いて顔を上げると、使者に続いて、まだあどけなさの残る青年が駆けてくる。羽織の紋は――滝川家の縦木瓜。
「兄上!」
振り向いたその先、槍を背負い、若武者のような面立ちの男が駆けてくる。 まだ少年の面影を残しながらも、その身には紋付の胴丸が凛々しく光っていた。
一瞬、誰かと見間違う。しかし、その声が、目が、どこか懐かしい響きを持っていた。
「……七郎、か?」
「はい!兄上、七郎でございます!」
三九郎はまじまじと弟の顔を見た。八年ぶりだ。あのときはまだ小柄で、母の袖を握って離さなかった幼子が、今はこうして槍を握り、戦場に立っている。
「初陣とは聞いていたが……まさか、ここで会うとは」
「はい。信包様の軍勢とともに、韮山城攻めの途中、忍城の状況を物見せよとの命を受け、ここに参りました。兄上にお会いできようとは、夢にも……!」
七郎は目を潤ませながら頭を下げた。三九郎は無言のまま、弟の肩に手を置いた。
「よく来た……長かったのう、七郎」
幼き弟が、織田信包のもとに預けられたのは、父である一益が世を去ってのち。三九郎自身は真田の陣に身を投じ、弟とは音信も絶えがちであった。
「兄上、私はこの日を、どれほど待ち望んでいたことか。滝川の名が、再び日の下に立つ日を……」
七郎の言葉に、三九郎は胸が熱くなるのを感じた。家は潰えかけた。父も多くの家臣も失った。だが、それでも、弟は信包の庇護のもとで刀を鍛え、武士としてここに立っている。
「この地は初めてであろう」
「はい。私は伊勢へ行ったのちは国を一歩も出たことがなく……この目で見る景色のすべてが新しゅうございます」
目を輝かせる七郎の横顔に、三九郎は微笑をこぼした。かつて自分が父とともに踏みしめた関東の土を、今度は弟とともに歩いている。失ったものは多い。だが――
「七郎。滝川の血は、まだ絶えてはおらぬ」
「はい、兄上!」
二人は手を取り合い、言葉少なに再会の喜びを交わした。が、その背後に控えていた一人の男が、静かに進み出る。
「若殿。ご無沙汰しておりました。わたくし、助太郎めにございまする」
「助太郎殿…! 生きていてくれたか……!」
旧臣・滝川助太郎。かつてともに戦い、伊勢へと戻り、その後は七郎に付き従っていた。
忍城の堀端に、夕暮れの影が落ち始めていた。戦はなおも続き、堅城・忍は水をたたえたまま、豊臣方の攻撃をしのいでいた。
その一角で、三九郎と七郎の兄弟は、つかの間の再会の時間を過ごしていた。
「兄上、それがしはこれより、信包様の本陣へ戻ります」
まだ幼さの残る顔に、凛とした決意がにじんでいた。七郎は元服して日が浅く、これが初陣だった。伊勢から出たことも、戦場に立ったことも初めて。けれどその目はまっすぐに兄を見つめていた。
三九郎は、弟の肩にそっと手を置いた。
「そうか」
「兄上は、少しも変わっておられませぬ。いや……やはり、どこかご立派になられたように思います」
「七郎も大人になった。もう、昔のように稽古で泣かせることもできん」
二人の間に、微かな笑みが交わされる。けれどそれも束の間、七郎は深々と頭を下げた。
「兄上……どうか、お身体を。生きて、またお会いしましょう。今度こそ、兄弟揃って酒を飲める日が来ますように」
「七郎も。……初陣、決して無理をするな。信包様のそばを離れるなよ」
「心得ております」
そう答えると、七郎は馬に飛び乗り、すでに移動を始めた信包勢へと戻っていった。その背中は頼りなくも、どこか誇らしくもあった。
三九郎は、遠ざかっていく弟の背を見送ったまま、しばらく立ち尽くしていた。
風が吹く。
あの少年が、いつかこの戦乱の世を生き抜いていくのだろうか。三九郎の心には、喜びとともに、名状しがたい予感がふと去来していた。
――そして、その夜。
風に揺れる蝋燭の灯が、仮の陣所の帳の中で揺れていた。兵は皆、疲労の中で眠りについている。忍城の夜は、あまりにも静かだった。
背後に、ふと人の気配がした。
「……若殿」
帳がわずかに揺れ、一人の影が現れる。先ほど七郎に従っていた滝川家の旧臣――滝川助太郎である。
「助太郎か。何かあったのか」
三九郎の声は落ち着いていたが、心にはかすかな緊張が走った。
助太郎は周囲を気にしながら膝を折り、低く頭を垂れる。
「若殿……本日、七郎様とともに参った折、本当は申し上げるべきことがあったのですが、あの場では……とても口にできませなんだ」
「……何を?」
助太郎はしばし躊躇い、それでも意を決したように顔を上げた。
「三年前のことにございます。お虎様が……御子をお産みになられました」
風が止んだような静けさが陣の中を包んだ。三九郎は、言葉の意味を一瞬理解できず、ただ目を見開いた。
「……何?」
助太郎は深く頷いた。
「生まれた御子は、若殿の……御子にございます」
その言葉に、胸の奥で何かが裂けるような音がした。お虎の面影が、苦しげな表情とともに脳裏をよぎる。
動揺を隠せないまま、三九郎は言葉を失った。お虎――かつての正室。今は秀吉の側室となった幸薄い忠三郎の妹。あの別れの日から、すでに長い歳月が流れていた。
助太郎は静かに続けた。
「お虎様は、御子を抱いたまま泣き崩れられました。ですが、その御子を側に置くことは許されなかった……。御子は、お虎様の兄君――忠三郎様が、自分の子として育てておられます」
「忠三郎が……?」
三九郎の脳裏に、あの静かに笑う男の顔が浮かんだ。信長の娘婿として迎えられながら、それを捨てて秀吉に下った義兄。自らの過去を胸に、今は松坂に入封されたと聞いていた。
「関白の御威光を考えれば、決して表に出すことは叶いませぬ。お虎様は……誰にも何も申されませなんだ。ただ、御子を見つめながら、ひとつだけ……『若殿に似ている』と、そう呟かれました」
三九郎はその場に膝をついた。何か大きなものに心を掴まれたような、動悸のようなものが胸を打つ。
「その子の……名は?」
「お籍様と……。忠三郎様が名付けられました」
「お籍……」
名を呼んだ瞬間、胸の奥に熱いものがこみ上げる。自らが知らぬうちにこの世に生まれ、生きている我が子。その存在を知ったいま、どうすればよいのか、三九郎には答えが見えなかった。
(わしの子と知れればただでは済むまい。お虎も、子も、忠三郎さえも……)
しばしの沈黙ののち、三九郎は苦しげに問うた。
「……助太郎。もし、わしがその子を……返してほしいと訴えたら、忠三郎は如何すると思う?」
助太郎は答えず、ただ静かに頭を下げた。
夜風が帳の隙間から吹き込み、三九郎の髪を揺らした。目を閉じれば、かつての愛しい日々が、あの冷たい別れが、そして――未だ見ぬ「お籍」の面差しが、胸の奥で揺れていた。
(会いたい。名を呼びたい。だが……)
三九郎は目を閉じ、深く息を吸った。
風が肌をなで、心を冷やす。
「……助太郎。このことは他言するでないぞ」
「はっ」
助太郎は、深々と頭を垂れた。
空にはいつの間にか雲が広がり、星の光が隠れていた。
三九郎はただ、闇の向こうに眠る我が子の顔を想像しながら、ひとり、夜の風に身をさらしていた。
とっぷりと暮れた忍城の夜。
沼と田に囲まれたこの地には、昼間の喧噪も今は鳴りをひそめ、ただ時折、どこからともなく水鳥の羽ばたきが聞こえてくるばかりだった。
忍城を包囲する軍勢の陣は、遠く山林のふちまで及び、松明の火が点々と、夜の帳に浮かび上がっている。
黒々と広がる沼の向こう、ぽつりと光る城の灯り。
それは、決して揺らがぬ意志のように、じっと夜を見返していた。
周囲の山々は、しっとりと濡れた風をはらみ、風が笹をすり抜ける音が耳にやさしい。
ふと見上げれば、木々のあいだから星のまたたきがのぞいていた。
この地に流れるのは、戦の夜にしてはあまりに穏やかな時間。
けれどその静けさの奥には、いずれ来たる激戦の予感と、そこに身を置く者たちの胸に宿る無言の覚悟が、濃く潜んでいた。
滝川三九郎は、そうした夜の静寂のただなかにあって、一人、陣の外れに佇んでいた。
遠く、去ってゆく弟の背を見送ったあと、何かが胸の奥で崩れ、また築かれようとしていた。
――あれが、八年前の別れのときに見た背中と同じ少年であろうか。
成長した七郎の姿に、胸の奥が不意に熱くなった。たしかに、あれは兄と慕っていたあの幼子だった。だが、その肩には、今はもう鎧があり、命を懸ける覚悟があった。
三九郎は、そっと眉をひそめて天を仰いだ。
(まさか、この関東の戦場で……再び弟に会うことになるとは……)
兄弟の再会。それは何よりも喜ばしいはずだった。けれど、胸に去来するのは、素直な歓びだけではなかった。
お虎のことが――頭を離れない。
彼女は、今や豊臣秀吉の側室。だが、かつては三九郎の正室であり、心通わせた人だった。伊勢・長島城で、ともに四季を重ねた日々。あの優しく線の細い横顔が、ふと七郎の声や仕草に重なる。
(虎にも立派になった七郎を見せてやりたい。きっと喜んでくれるだろう……)
けれど、それは同時に、叶わぬ願いだった。お虎は今や、日ノ本の主の側にある女。自分が踏み入ることすら叶わぬ世界に、遠く行ってしまった。
それでいい。そう思おうとした。
――だが。
胸の奥には、今も消えぬ怒りが残っていた。
(……忠三郎)
三九郎は唇をかみしめた。
兄とも慕い、若き日には何度も戦場をともに駆けた男。だが忠三郎は、三九郎の不在のあいだに、お虎を秀吉に差し出し、秀吉の下に従う道を選んだ。
――あれは裏切りだった。そう思いたくはなかったが、胸の底には今も燻ぶるような怒りが沈んでいた。
「己の立身出世のために、虎を……」
吐き出すように呟き、拳を握る。
夜風が静かに笹を鳴らす。遠くでふくろうの声が短く響いた。
三九郎は、自らの中に渦巻く想いの濁流に呑まれそうになっていた。
お虎への恋しさ、あの夜の別れの苦しさ。
そして、二人目の子――己の血を引く命が、もうひとつ、この世にあった。
だが、その子は、三九郎の名も知らず、別の男の名のもとに育っているのだ。
「……返してほしい」
口からこぼれた言葉は、誰に向けたのか、自分でもわからなかった。
取り戻したい。だが、それは許されぬことだ。
秀吉の怒りを買えば、子も、お虎も、滝川の名までも、地に落ちる。
忠三郎はそのことを計算して、このやり方を選んだのだ。
(忠三郎……おまえは、何もかも勝手に決めて、わしから奪ったものを、今度は隠して育てているのか)
心が激しく揺れた。取り返したいという欲が湧いた。失われた家も、家臣も、愛も。まだ見ぬ我が子を抱きしめて、己が血を注いで育てたいとさえ、思ってしまう。
だが、現実はそれを許さない。
秀吉の子とされぬ子を、自分が引き取れば――お虎の立場は危うくなり、忠三郎はもとより、滝川家に繋がる多くの者にも累が及ぶかもしれない。
すべてを飲み込み、沈黙を貫いた女と、黙して子を育てる兄。
三九郎は、腰に手をやり、ぐっと拳を握った。
(わしは……父上のように、運命に抗う男になれるであろうか)
風が吹いた。陣幕がふわりと揺れ、蝋燭の火がかすかに揺らいだ。
その瞬間、三九郎の胸のなかには、はっきりとした葛藤が芽生えていた。
願いがある。けれど、それを貫けば誰かを傷つける。
――それでも、あの子が生きているのなら。
名乗らずとも、そっと見守る道があるのではないか。
空にはいつの間にか雲が広がり、星の光が隠れていた。
三九郎はただ、闇の向こうに眠る我が子の顔を想像しながら、ひとり、夜の風に身をさらしていた。
かつて、滝川一益が関東を治めていた折、与力・津田小平次が守将を務めた城であり、一益が敗れて上方へと引き上げた後は、北条の手に渡って久しかった。
そして今――その城には、豊臣方の軍旗がはためいていた。
落城から数日、焼け跡に煤けた石垣の隙間には、まだ戦の余韻が滲んでいる。
しかし、城門はすでに開かれ、修復のための人足が行き交い、山あいの春の風が、かすかな安堵をもたらしていた。
城の中庭に立つ滝川三九郎は、ただ黙って天守を仰いでいた。
「三九郎殿、よもやこの日が来ようとはな」
背後から声をかけたのは、同じく豊臣勢として入城した真田昌幸であった。
その顔には、勝利の笑みと、戦を共にした者に向ける温かさがあった。
「まことに……あの折は、真田殿が国境まで我らを見送ってくだされた」
三九郎は、ゆっくりと振り返りながら応えた。
「父・滝川左近も、真田殿のご厚情を、生涯忘れたことはないと申しておりました」
言葉の端に、微かに湿り気が宿る。
敗れて去るということは、ただ領地を失うだけではなかった。
家の誇り、兵の信義、そして未来を託したこの地の空と土――それらすべてを残して、背を向けねばならなかった悔しさが、いまも胸の奥に残っている。
三九郎は、そっと視線を山の斜面へ向けた。
かつて父が館を構えた場所。かつて弟・八郎と共に歩いた道。
そこに、今は何もない。だが風の音が記憶を呼び覚ます。
初陣から共にあった家臣たち。命を賭して守り抜いた津田三兄弟。
彼らの声が、斜面の松林のざわめきに重なるようだった。
「……皆、よく戦った」
誰にともなく呟いた声が、風にかき消された。
蟹江城の敗戦の後、畿内追放。北伊勢の本領も奪われ、頼る地もなかった。
ただ一人、三九郎は再起を誓い、真田昌幸のもとに身を寄せた。
北条と戦い、徳川とも剣を交え、幾多の戦いをくぐり抜け、ようやくここに辿り着いたのだ。
そして今――松井田城は、滝川三九郎の目の前に、落城後の静けさの中にある。
(……この地に戻ってくるまで、どれほどの血が流れたか)
だが、いま自分は、敵ではなく味方としてこの地を踏んでいる。
勝者として。豊臣の旗のもと、再び立つ者として。
(三度この城に立つなど、夢にも思わなかった)
だが、心が晴れることはない。勝って得たこの地に、亡き者たちの声がこだまする。
忠義とは、誇りとは何か。
あの日の父の選択も、己が戦ってきた道も、正しかったのか。
ただ一つ確かなのは、いまこの城に、自分の足跡を刻めるということだ。
三九郎は、ふと天を仰いだ。
春の陽が、まだ冷たい風を受けながら、静かに城の石垣を照らしている。
――過去は変えられぬ。ならば、これからを正せばよい。
父が成しえなかったことを、自らの手で。
この天下に、再び滝川の名を――
それは誰にも明かせぬ、密やかなる祈りであった。
だがその祈りは、敗北を知る者だけが灯せる、深く静かな火でもあった。
夏の陽は容赦なく照りつけ、忍城の堤に立ちこめる蒸気が、戦の空気をいよいよ重くしていた。湿った風に包まれた陣地の一角で、滝川三九郎は汗にぬれた兜を脱ぎ、額の汗をぬぐった。
そこに、真田の使者を名乗る男が駆け寄ってくる。
「滝川三九郎殿。韮山へ向かわれた織田信包様の陣より、使者が参っておりまする」
三九郎が驚いて顔を上げると、使者に続いて、まだあどけなさの残る青年が駆けてくる。羽織の紋は――滝川家の縦木瓜。
「兄上!」
振り向いたその先、槍を背負い、若武者のような面立ちの男が駆けてくる。 まだ少年の面影を残しながらも、その身には紋付の胴丸が凛々しく光っていた。
一瞬、誰かと見間違う。しかし、その声が、目が、どこか懐かしい響きを持っていた。
「……七郎、か?」
「はい!兄上、七郎でございます!」
三九郎はまじまじと弟の顔を見た。八年ぶりだ。あのときはまだ小柄で、母の袖を握って離さなかった幼子が、今はこうして槍を握り、戦場に立っている。
「初陣とは聞いていたが……まさか、ここで会うとは」
「はい。信包様の軍勢とともに、韮山城攻めの途中、忍城の状況を物見せよとの命を受け、ここに参りました。兄上にお会いできようとは、夢にも……!」
七郎は目を潤ませながら頭を下げた。三九郎は無言のまま、弟の肩に手を置いた。
「よく来た……長かったのう、七郎」
幼き弟が、織田信包のもとに預けられたのは、父である一益が世を去ってのち。三九郎自身は真田の陣に身を投じ、弟とは音信も絶えがちであった。
「兄上、私はこの日を、どれほど待ち望んでいたことか。滝川の名が、再び日の下に立つ日を……」
七郎の言葉に、三九郎は胸が熱くなるのを感じた。家は潰えかけた。父も多くの家臣も失った。だが、それでも、弟は信包の庇護のもとで刀を鍛え、武士としてここに立っている。
「この地は初めてであろう」
「はい。私は伊勢へ行ったのちは国を一歩も出たことがなく……この目で見る景色のすべてが新しゅうございます」
目を輝かせる七郎の横顔に、三九郎は微笑をこぼした。かつて自分が父とともに踏みしめた関東の土を、今度は弟とともに歩いている。失ったものは多い。だが――
「七郎。滝川の血は、まだ絶えてはおらぬ」
「はい、兄上!」
二人は手を取り合い、言葉少なに再会の喜びを交わした。が、その背後に控えていた一人の男が、静かに進み出る。
「若殿。ご無沙汰しておりました。わたくし、助太郎めにございまする」
「助太郎殿…! 生きていてくれたか……!」
旧臣・滝川助太郎。かつてともに戦い、伊勢へと戻り、その後は七郎に付き従っていた。
忍城の堀端に、夕暮れの影が落ち始めていた。戦はなおも続き、堅城・忍は水をたたえたまま、豊臣方の攻撃をしのいでいた。
その一角で、三九郎と七郎の兄弟は、つかの間の再会の時間を過ごしていた。
「兄上、それがしはこれより、信包様の本陣へ戻ります」
まだ幼さの残る顔に、凛とした決意がにじんでいた。七郎は元服して日が浅く、これが初陣だった。伊勢から出たことも、戦場に立ったことも初めて。けれどその目はまっすぐに兄を見つめていた。
三九郎は、弟の肩にそっと手を置いた。
「そうか」
「兄上は、少しも変わっておられませぬ。いや……やはり、どこかご立派になられたように思います」
「七郎も大人になった。もう、昔のように稽古で泣かせることもできん」
二人の間に、微かな笑みが交わされる。けれどそれも束の間、七郎は深々と頭を下げた。
「兄上……どうか、お身体を。生きて、またお会いしましょう。今度こそ、兄弟揃って酒を飲める日が来ますように」
「七郎も。……初陣、決して無理をするな。信包様のそばを離れるなよ」
「心得ております」
そう答えると、七郎は馬に飛び乗り、すでに移動を始めた信包勢へと戻っていった。その背中は頼りなくも、どこか誇らしくもあった。
三九郎は、遠ざかっていく弟の背を見送ったまま、しばらく立ち尽くしていた。
風が吹く。
あの少年が、いつかこの戦乱の世を生き抜いていくのだろうか。三九郎の心には、喜びとともに、名状しがたい予感がふと去来していた。
――そして、その夜。
風に揺れる蝋燭の灯が、仮の陣所の帳の中で揺れていた。兵は皆、疲労の中で眠りについている。忍城の夜は、あまりにも静かだった。
背後に、ふと人の気配がした。
「……若殿」
帳がわずかに揺れ、一人の影が現れる。先ほど七郎に従っていた滝川家の旧臣――滝川助太郎である。
「助太郎か。何かあったのか」
三九郎の声は落ち着いていたが、心にはかすかな緊張が走った。
助太郎は周囲を気にしながら膝を折り、低く頭を垂れる。
「若殿……本日、七郎様とともに参った折、本当は申し上げるべきことがあったのですが、あの場では……とても口にできませなんだ」
「……何を?」
助太郎はしばし躊躇い、それでも意を決したように顔を上げた。
「三年前のことにございます。お虎様が……御子をお産みになられました」
風が止んだような静けさが陣の中を包んだ。三九郎は、言葉の意味を一瞬理解できず、ただ目を見開いた。
「……何?」
助太郎は深く頷いた。
「生まれた御子は、若殿の……御子にございます」
その言葉に、胸の奥で何かが裂けるような音がした。お虎の面影が、苦しげな表情とともに脳裏をよぎる。
動揺を隠せないまま、三九郎は言葉を失った。お虎――かつての正室。今は秀吉の側室となった幸薄い忠三郎の妹。あの別れの日から、すでに長い歳月が流れていた。
助太郎は静かに続けた。
「お虎様は、御子を抱いたまま泣き崩れられました。ですが、その御子を側に置くことは許されなかった……。御子は、お虎様の兄君――忠三郎様が、自分の子として育てておられます」
「忠三郎が……?」
三九郎の脳裏に、あの静かに笑う男の顔が浮かんだ。信長の娘婿として迎えられながら、それを捨てて秀吉に下った義兄。自らの過去を胸に、今は松坂に入封されたと聞いていた。
「関白の御威光を考えれば、決して表に出すことは叶いませぬ。お虎様は……誰にも何も申されませなんだ。ただ、御子を見つめながら、ひとつだけ……『若殿に似ている』と、そう呟かれました」
三九郎はその場に膝をついた。何か大きなものに心を掴まれたような、動悸のようなものが胸を打つ。
「その子の……名は?」
「お籍様と……。忠三郎様が名付けられました」
「お籍……」
名を呼んだ瞬間、胸の奥に熱いものがこみ上げる。自らが知らぬうちにこの世に生まれ、生きている我が子。その存在を知ったいま、どうすればよいのか、三九郎には答えが見えなかった。
(わしの子と知れればただでは済むまい。お虎も、子も、忠三郎さえも……)
しばしの沈黙ののち、三九郎は苦しげに問うた。
「……助太郎。もし、わしがその子を……返してほしいと訴えたら、忠三郎は如何すると思う?」
助太郎は答えず、ただ静かに頭を下げた。
夜風が帳の隙間から吹き込み、三九郎の髪を揺らした。目を閉じれば、かつての愛しい日々が、あの冷たい別れが、そして――未だ見ぬ「お籍」の面差しが、胸の奥で揺れていた。
(会いたい。名を呼びたい。だが……)
三九郎は目を閉じ、深く息を吸った。
風が肌をなで、心を冷やす。
「……助太郎。このことは他言するでないぞ」
「はっ」
助太郎は、深々と頭を垂れた。
空にはいつの間にか雲が広がり、星の光が隠れていた。
三九郎はただ、闇の向こうに眠る我が子の顔を想像しながら、ひとり、夜の風に身をさらしていた。
とっぷりと暮れた忍城の夜。
沼と田に囲まれたこの地には、昼間の喧噪も今は鳴りをひそめ、ただ時折、どこからともなく水鳥の羽ばたきが聞こえてくるばかりだった。
忍城を包囲する軍勢の陣は、遠く山林のふちまで及び、松明の火が点々と、夜の帳に浮かび上がっている。
黒々と広がる沼の向こう、ぽつりと光る城の灯り。
それは、決して揺らがぬ意志のように、じっと夜を見返していた。
周囲の山々は、しっとりと濡れた風をはらみ、風が笹をすり抜ける音が耳にやさしい。
ふと見上げれば、木々のあいだから星のまたたきがのぞいていた。
この地に流れるのは、戦の夜にしてはあまりに穏やかな時間。
けれどその静けさの奥には、いずれ来たる激戦の予感と、そこに身を置く者たちの胸に宿る無言の覚悟が、濃く潜んでいた。
滝川三九郎は、そうした夜の静寂のただなかにあって、一人、陣の外れに佇んでいた。
遠く、去ってゆく弟の背を見送ったあと、何かが胸の奥で崩れ、また築かれようとしていた。
――あれが、八年前の別れのときに見た背中と同じ少年であろうか。
成長した七郎の姿に、胸の奥が不意に熱くなった。たしかに、あれは兄と慕っていたあの幼子だった。だが、その肩には、今はもう鎧があり、命を懸ける覚悟があった。
三九郎は、そっと眉をひそめて天を仰いだ。
(まさか、この関東の戦場で……再び弟に会うことになるとは……)
兄弟の再会。それは何よりも喜ばしいはずだった。けれど、胸に去来するのは、素直な歓びだけではなかった。
お虎のことが――頭を離れない。
彼女は、今や豊臣秀吉の側室。だが、かつては三九郎の正室であり、心通わせた人だった。伊勢・長島城で、ともに四季を重ねた日々。あの優しく線の細い横顔が、ふと七郎の声や仕草に重なる。
(虎にも立派になった七郎を見せてやりたい。きっと喜んでくれるだろう……)
けれど、それは同時に、叶わぬ願いだった。お虎は今や、日ノ本の主の側にある女。自分が踏み入ることすら叶わぬ世界に、遠く行ってしまった。
それでいい。そう思おうとした。
――だが。
胸の奥には、今も消えぬ怒りが残っていた。
(……忠三郎)
三九郎は唇をかみしめた。
兄とも慕い、若き日には何度も戦場をともに駆けた男。だが忠三郎は、三九郎の不在のあいだに、お虎を秀吉に差し出し、秀吉の下に従う道を選んだ。
――あれは裏切りだった。そう思いたくはなかったが、胸の底には今も燻ぶるような怒りが沈んでいた。
「己の立身出世のために、虎を……」
吐き出すように呟き、拳を握る。
夜風が静かに笹を鳴らす。遠くでふくろうの声が短く響いた。
三九郎は、自らの中に渦巻く想いの濁流に呑まれそうになっていた。
お虎への恋しさ、あの夜の別れの苦しさ。
そして、二人目の子――己の血を引く命が、もうひとつ、この世にあった。
だが、その子は、三九郎の名も知らず、別の男の名のもとに育っているのだ。
「……返してほしい」
口からこぼれた言葉は、誰に向けたのか、自分でもわからなかった。
取り戻したい。だが、それは許されぬことだ。
秀吉の怒りを買えば、子も、お虎も、滝川の名までも、地に落ちる。
忠三郎はそのことを計算して、このやり方を選んだのだ。
(忠三郎……おまえは、何もかも勝手に決めて、わしから奪ったものを、今度は隠して育てているのか)
心が激しく揺れた。取り返したいという欲が湧いた。失われた家も、家臣も、愛も。まだ見ぬ我が子を抱きしめて、己が血を注いで育てたいとさえ、思ってしまう。
だが、現実はそれを許さない。
秀吉の子とされぬ子を、自分が引き取れば――お虎の立場は危うくなり、忠三郎はもとより、滝川家に繋がる多くの者にも累が及ぶかもしれない。
すべてを飲み込み、沈黙を貫いた女と、黙して子を育てる兄。
三九郎は、腰に手をやり、ぐっと拳を握った。
(わしは……父上のように、運命に抗う男になれるであろうか)
風が吹いた。陣幕がふわりと揺れ、蝋燭の火がかすかに揺らいだ。
その瞬間、三九郎の胸のなかには、はっきりとした葛藤が芽生えていた。
願いがある。けれど、それを貫けば誰かを傷つける。
――それでも、あの子が生きているのなら。
名乗らずとも、そっと見守る道があるのではないか。
空にはいつの間にか雲が広がり、星の光が隠れていた。
三九郎はただ、闇の向こうに眠る我が子の顔を想像しながら、ひとり、夜の風に身をさらしていた。
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