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31.会津
31-2. 雪裂
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夜が明けると、会津の空気は一段と冷え込んでいた。
その日は朝から、しんしんと雪が降っていた。風もなく、音もなく、ただ静かに、無数の白い粒が空から舞い降りてくる。町も野も、景色という景色が沈黙のうちに覆い隠されていく――その静けさからは、底知れぬ圧力を感じさせられる。
忠三郎は広縁に立ち、凍える手を袖に差し入れながら、白く沈む城下を見下ろしていた。
「これが会津の冬か……」
思わず漏れた呟きは、冷え切った空気に吸い込まれて消えた。屋根に積もった雪の重みが、時折、軒をぎしりときしませる。忠三郎はその音にわずかに目を細め、ふうと白い息を吐いた。
「これでは町割りどころではない……春を待つしかあるまい」
その時、廊下を駆ける激しい足音が響いた。
飛び込んできたのは町野長門守。雪をかぶったまま、まるで何かに追われるかのように広間へと駆け入ってきた。
「これは、ご無礼を! 殿、急ぎの報せにございます!」
その慌ただしさに、忠三郎は思わず苦笑する。
「如何した。何事じゃ」
「はっ……木村殿の領内にて、一揆が発生いたしました。ただの騒ぎではございませぬ――武装蜂起にございます!」
その一言が、凍てつく朝の空気をさらに冷たくした。
「一揆?」
忠三郎はゆっくりと振り返る。外では相変わらず雪が降り続いていた。あまりに静かなその雪が、むしろ報せの異様さを際立たせていた。
「はい。白河城にいる浅野殿からの急使にて」
長門守の声はかすかに震えていた。懐から取り出された文は、指先ごと薄く濡れている。
だが忠三郎はそれを受け取らず、ただ目で続きを促した。
「……発端は岩手沢城にございます。旧城主・氏家吉継の遺臣らが領民と結託し、城を乗っ取ったのが始まりとか。厳しすぎる検地に対する怨嗟が、ついに火となって――その炎は、木村領全土を呑み込みつつあります」
遠くで、屋根から雪の塊が落ちる鈍い音がした。重く、地を打つようなその音は、どこか不吉だった。
「名生《みょう》城の城主、木村清久殿は、父・吉清殿の籠る寺池城に赴き、一揆鎮圧のために評定を開いたとのことでござりますが…」
長門守は言葉を切った。口にするのをためらっているのが見て取れる。
「……続けよ」
「は……名生に戻る途中、立ち寄った佐沼城にて、一揆勢に包囲されました。救援に向かった吉清殿もまた囲まれ、いまや父子ともに佐沼城の中に幽閉されております」
忠三郎は静かに目を閉じた。冷たい空気が、胸の奥に入り込んできたようだった。
「では……名生も寺池も、すでに一揆勢の手に落ちたか」
「はっ……木村領は、今や『一揆もち』と呼ばれておりまする」
広間を支配するのは、雪の静寂と、沈黙の圧力。言葉ひとつ動かせば、崩れ落ちそうな緊張が張りつめている。
忠三郎はしばし動かず、ただ雪に覆われた庭をじっと見つめた。
会津の雪――それはただ美しいだけのものではなかった。白く降り積もるその静けさは、何かを封じ込めるような重たさを孕み、大地の息をも凍らせていた。
だが、その下では確かに何かが軋み、軋んで、いまにも崩れ出そうとしている。
その予兆を、忠三郎の背に吹きつける風が、はっきりと告げていた。
「浅野殿より命が下りました。蒲生勢、そして伊達勢も動員し、木村父子を救出せよとのことにございます」
長門守の声が、広間の静寂に沈み込むように響く。
「……伊達左京大夫と、共にか」
忠三郎の声は低く、どこか押し殺されていた。
伊達政宗――この会津の地を巡って、幾度となく揺さぶりをかけてくる男。眼光鋭く、気まぐれにして野心家。
その政宗と手を携えねばならない。
一揆の鎮圧という急を要する大義が、よりにもよって、最も不確かな隣人と肩を並べることを強いてくる。
忠三郎は、わずかに視線を上げた。外には、相変わらず音もなく雪が降り続いている。
だがその白はもはや、無垢でも静穏でもなかった。そこにあるのは、崩壊の前の沈黙。足元をすくうような、目に見えぬ裂け目。
踏み出す一歩の先に、何が待つのか。自ら、その深淵を覗かねばならぬときが来たのだ。
沈黙の中で、忠三郎はゆっくりと口を開いた。
「……長門。伊達勢の動きを逐一報せよ。浅野殿の書状、ただちに写しを作り、佐竹・上杉へも回せ」
声は低く抑えられていたが、その内に潜む決意は、雪よりも冷たく、刃よりも鋭かった。
(いよいよ会わねばなるまい)
伊達政宗に――。
会い、膝を突き合わせ、剣呑な火花を散らしながらも、共に一揆鎮圧の道を探らねばならぬ。
そのためには命を捨てる覚悟もある。
「浅野殿は二本松まで引き返す途上とのことでござりまする」
「承知した。では伊達左京大夫に使者を送れ。一揆鎮圧の協議のため、この忠三郎みずからが、伊達殿の領内へ出向くと」
「は?!そ、それは…しばし、お待ちくだされ!そのようなことをしては…」
長門守が顔面蒼白になり、畳を滑るように忠三郎の前へとにじり出る。
震える声で、なおも押しとどめようとする。
「伊達左京大夫は、ただ者ではござりませぬ! 今や一揆を口実に、こちらの隙を突く好機を伺っているやもしれませぬ! 殿のお身が狙われぬ保証など――」
忠三郎は、穏やかな笑顔を返して首を振った。
「――分かっておる。されどここで命を惜しんでいては、この会津において、もはや誰も、わしの言葉に従うまい。奥州の守りとして置かれた蒲生忠三郎が、今、動かずして何を守れるというのだ。わしが動かねば、誰も動けぬ。もとよりこの命を捨つる覚悟じゃ」
声音は低く穏やかだったが、芯には鋼のごとき決意があった。
その瞳には、凍てついた大地のような静謐な覚悟が、雪明かりに照らされていた。
国を守るとは、ただ城を堅めることではない。
戦を避け、民を守り、日々の灯火を絶やさぬことこそが、真の統治だ。
そのためならば、己の首を賭ける覚悟も、とうにできている。
白き静寂の向こうに広がるのは、雪解けより早く、血に染まる地の気配――。
それでもなお、忠三郎の背は揺るがず、広縁に立つその姿は、あたかも降りしきる雪そのもののように、凛として動かなかった。
雪は今も、絶えることなく降り続いていた。
すべてを覆い隠し、やがて何かが始まる音を、ただ、静かに待っていた。
夜が更けていく。寝所には、凍てつくような静寂が満ちていた。
屏風の向こうから微かに薪のはぜる音が聞こえる。だがその音さえ、どこか遠く、魂の底には届かない。
忠三郎は、ひとり床の中にありながら、眠ることなく天井を見つめていた。
障子越しにさし込む月光が、白く長い影を畳に落とす。
その光は、天より降る審判のように、胸の奥を照らしていた。
ふと、脳裏に浮かんだのは、かつて南蛮寺で耳にした、ある話だった。
それは主イエスが、十字架上の死を目前にした夜、ゲツセマネと呼ばれる園で弟子たちから離れ、ひとり祈ったという場面。
――「この杯を、わたしから取りのけてください」
神の子であるはずのイエスが、呻くようにそう願ったと語られていた。
悲しみのあまり、死ぬほどだったとも。
聖なる者さえ、苦悩し、逃れたいと願った夜――その祈りの声は、忠三郎の胸を刺すように響いた。
――「しかし、わたしの願うことではなく、あなたのみこころのままを、なさってください。」
その一言に、すべてが込められていた。
逃れたいという人の弱さも、それを超えて進まねばならぬ覚悟も。
忠三郎は、じっとその言葉を思い返し、自らの心と静かに向き合った。
己が背負わねばならぬ杯――それは、伊達政宗と向き合い、戦か和かの岐路を命を懸けて渡るという、重く苦い杯だった。
もちろん、恐れがないわけではない。
この奥州の果てで土となって果てるなら、それはあまりにも無念であった。
政宗はただの武将ではない。冷酷で、時に人の情をも断ち切るような切れ味を持った男だ。
対峙するには覚悟がいる。命を手放す覚悟だけでは足りぬ。言葉を尽くし、道をつなぐ覚悟が――
だが、それでも、と忠三郎は思う。
恐れを越えてなお、進まねばならぬときがある。
この会津の地に、まだ見ぬ明日を灯すために。
民の営みを、子らの笑いを、春を迎えるはずの麦畑を、守りたいと願うなら。
それが、わが道。
それが、神の御心に叶う道であるなら。
「……ならば、行かねばなるまい」
ぽつりと、誰にともなく漏らした声は、月明かりの中に溶けていった。
忠三郎はゆっくりと身を起こし、床几に腰を下ろすと、襖を細く開けた。
白く澄んだ夜気が、頬を打つ。
空には雲一つなく、冴え冴えと満ちた月が、天の眼のように見つめていた。
忠三郎は、やがて手を胸に当て、目を閉じた。
それは祈りというにはあまりに短く、声にもならぬほどの静かな誓いだった。
けれどその胸に去来していたのは、まぎれもなく、揺るぎない覚悟だった。
――明日、杯を受け取ろう。
逃げずに、ただ神のみこころのままに。
月は、静かに忠三郎を照らしていた。
それは、滅びを告げる光ではない。試練の先にある、わずかな希望のしるしのようでもあった。
そして、十月二十六日。
忠三郎は、政宗との会見のため、伊達領である下草城へと向かった。
城を発つ直前、ひとりの男がそっと前に立つ。
素破頭である三雲定持だった。
「……殿」
定持は誰にも悟られぬよう、懐から一包みを取り出した。
白布に包まれたそれは、小さな薬紙。中には、ひときわ苦く冷たい粉が封じられていた。
「もし――万が一、毒を盛られたときは、すぐにこれをお飲みくだされ。甲賀に伝わる秘薬、命を繋ぐ望み、ここにございます」
その声音には、いつもの老獪さもしたたかさもなかった。
ただ、主君を思う一人の男の、切実な願いだけが滲んでいた。
忠三郎は、それを静かに受け取ると、ふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「案ずるな、定持。毒など、もはや怖くはない。命をかけると決めたのは、もうあの日――雪が、音もなく降っていたあの朝よ」
薬を懐にしまい込むと、忠三郎は馬上へと躍り上がった。
その背中は、静かに燃えていた。
もはや恐れではなく、決意と慈しみが、心を満たしていた。
やがて一行は山を越え、雪深き伊達領へと踏み込んでいく。
――下草城にて、忠三郎と伊達政宗が相まみえる時が、刻一刻と近づいていた。
季節外れの風が、山の梢を揺らす。奥州の地が震えている、微かな前触れのようでもあった。
下草城の広間には、奥州の空気そのままの、張りつめた静けさが満ちていた。湿った畳の匂いと、石造りの壁が持つ冷気は、この地の意思を伝えているかのようだ。
忠三郎は、ゆっくりと歩を進め、政宗の前に座す。政宗は、片眉をわずかに上げ、じっと忠三郎を見据えた。年若くして陣頭に立ち、幾たびも戦場を駆けたその眼差しには、まぎれもなく猛き獣の光が宿っていた。
その顔に、忠三郎はかすかな笑みを湛えた。
(――若い。されど、目は曇っていない。ならば、語るに足る)
政宗は二十四歳。忠三郎よりも十一歳下の、まさに血潮燃ゆる時であった。 だが忠三郎には、もはや熱を帯びて振り上げる剣より、凍てつく刃のごとき沈黙のほうが強しと知れていた。
忠三郎は、敵意に満ちたその視線を受け止めながらも、表情一つ変えぬまま、穏やかな口調で語り出す。
「この度は、直々の対面の栄を賜り、恐悦至極に存じます」
「……そのような飾り言は不要。用件を」
政宗の声は冷たく、氷をすべらせるように響く。
だが忠三郎はその冷気を受け入れ、初春の陽のごときまなざしで返した。
「一つ願いは、木村親子の命。浅野殿からの命により、我らが協力して木村殿を救いだす必要がござります」
しばしの沈黙の後、政宗はわずかに眉を寄せた。
「ならば、蒲生殿は我が下知に従うと?」
その言葉に、陪臣たちがざわめいた。だが忠三郎は、静かに首を横に振った。
「そのようなことを申すために、ここまで来たのではござらぬ」
どこまでも変わらぬ飄々とした態度。政宗の目に、かすかな苛立ちが浮かぶ。
「ならば、いかにして命を拾うつもりか?」
「兵をあげましょう。それがしと伊達殿、それぞれが相応の兵を出し、木村親子を共に救う。そこに私欲もなく、名もいらぬ。ただ、ただ人を救うための働きとして」
政宗の目が細くなる。若き将は、一瞬、獲物を測る鷹のように忠三郎を見つめ――やがて、ふっと口の端をつり上げた。
「…上方からの命であれば致し方ない」
あたかも従順に見せかけながら、どこか底知れぬものを含んでいた。
広間に満ちていた重苦しい空気がわずかに緩み、陪臣たちも安堵の息を漏らす。だが、忠三郎の眉は微動だにしなかった。
やがて対談が終わりに近づくと、政宗は何気ない風を装い、低く声をかけた。
「客人に、茶を」
そう言って政宗の家臣が差し出した茶碗を、忠三郎は一瞥した。
――これは、試みの杯。
湯気に混じって立ちのぼる微かな香。
柔らかな甘みの奥に、どこか薬草を混ぜたような、不自然な苦みを含んでいた。
(毒か。あるいは、毒を匂わせた駆け引きか……)
飲まねば、命惜しさと笑われよう。飲めば、政宗の掌の上に立たされる。
政宗の瞳が鋭く、忠三郎の指先の動きを追っていた。
だが、忠三郎の手は止まらない。
迷いなく、杯を取り、静かに唇へと運んだ。
命は天に預けたもの。
己はただ、誠を尽くして道を通すのみ――そう腹を定めた忠三郎の手には、一片の震えもなかった。
「…これはかたじけない」
茶をゆるりと飲み干し、静かに礼を述べた忠三郎は、背筋を正したまま広間を辞した。
襖が閉まりゆくその刹那。
政宗の目が、蛇のように鋭く、忠三郎の背を射抜いた。
その瞳は笑っていた――まるで何かを「確かめた」という満足を携えて。
城を出た忠三郎は、人目を避け、ひそかに竹林の奥へと身を移した。
喉奥を突き刺すような苦味が舌を襲うと同時に、胃の腑を抉るような痛みに、口中のものを激しく吐き出す。
「……やはり、そうであったか」
薄紅に染まった唾を吐き捨て、額の汗を拭う。
すぐさま懐から白布を取り出し、その中に包まれていた小さな薬紙を開いた。
三雲定持より託された、甲賀伝来の解毒薬。
忠三郎は何のためらいもなく、それを口に含む。
喉を焼くような辛苦が、全身に広がる。
だがその痛みの中に、命を繋いだ確かな実感があった。
――生き延びること。それは、己一人のためではない。
幾人もの命と志を、この身に託された責がある。
「と、殿!も、もしやそれは…」
後を追ってきた町野長門守が真っ青な顔で駆け寄る。
だが忠三郎は、冷や汗を拭いながら、その顔に清々しい笑みを浮かべた。
「案ずるな。大事にない」
袖で口を拭い、忠三郎は再び馬へと向かった。
吐き出した苦味の余韻がまだ喉に残る。だが、その瞳には、一片の濁りもなかった。
――己の命さえ、天に預けてなお、人の道を守るために。
毒を盛られてもなお、己は義を通す。
忠三郎の歩みに迷いはなかった。
その背に漂うのは、恐怖ではなく、ただ一つの誠。
それは、刃にも毒にも穢されることはない。
馬にまたがり、遠ざかる城を一瞥したとき――
忠三郎は確かに感じた。政宗の眼差しが、まだ己の背に注がれていることを。
その視線の意味を、忠三郎は深く問おうとはしなかった。
自らの歩む道には、一点の曇りもない。
鞍の上にまっすぐ背を伸ばし、忠三郎は馬の腹を軽く蹴った。
踏み出した道の先には、雪と霜の気配漂う奥州の大地が待っている。
その日は朝から、しんしんと雪が降っていた。風もなく、音もなく、ただ静かに、無数の白い粒が空から舞い降りてくる。町も野も、景色という景色が沈黙のうちに覆い隠されていく――その静けさからは、底知れぬ圧力を感じさせられる。
忠三郎は広縁に立ち、凍える手を袖に差し入れながら、白く沈む城下を見下ろしていた。
「これが会津の冬か……」
思わず漏れた呟きは、冷え切った空気に吸い込まれて消えた。屋根に積もった雪の重みが、時折、軒をぎしりときしませる。忠三郎はその音にわずかに目を細め、ふうと白い息を吐いた。
「これでは町割りどころではない……春を待つしかあるまい」
その時、廊下を駆ける激しい足音が響いた。
飛び込んできたのは町野長門守。雪をかぶったまま、まるで何かに追われるかのように広間へと駆け入ってきた。
「これは、ご無礼を! 殿、急ぎの報せにございます!」
その慌ただしさに、忠三郎は思わず苦笑する。
「如何した。何事じゃ」
「はっ……木村殿の領内にて、一揆が発生いたしました。ただの騒ぎではございませぬ――武装蜂起にございます!」
その一言が、凍てつく朝の空気をさらに冷たくした。
「一揆?」
忠三郎はゆっくりと振り返る。外では相変わらず雪が降り続いていた。あまりに静かなその雪が、むしろ報せの異様さを際立たせていた。
「はい。白河城にいる浅野殿からの急使にて」
長門守の声はかすかに震えていた。懐から取り出された文は、指先ごと薄く濡れている。
だが忠三郎はそれを受け取らず、ただ目で続きを促した。
「……発端は岩手沢城にございます。旧城主・氏家吉継の遺臣らが領民と結託し、城を乗っ取ったのが始まりとか。厳しすぎる検地に対する怨嗟が、ついに火となって――その炎は、木村領全土を呑み込みつつあります」
遠くで、屋根から雪の塊が落ちる鈍い音がした。重く、地を打つようなその音は、どこか不吉だった。
「名生《みょう》城の城主、木村清久殿は、父・吉清殿の籠る寺池城に赴き、一揆鎮圧のために評定を開いたとのことでござりますが…」
長門守は言葉を切った。口にするのをためらっているのが見て取れる。
「……続けよ」
「は……名生に戻る途中、立ち寄った佐沼城にて、一揆勢に包囲されました。救援に向かった吉清殿もまた囲まれ、いまや父子ともに佐沼城の中に幽閉されております」
忠三郎は静かに目を閉じた。冷たい空気が、胸の奥に入り込んできたようだった。
「では……名生も寺池も、すでに一揆勢の手に落ちたか」
「はっ……木村領は、今や『一揆もち』と呼ばれておりまする」
広間を支配するのは、雪の静寂と、沈黙の圧力。言葉ひとつ動かせば、崩れ落ちそうな緊張が張りつめている。
忠三郎はしばし動かず、ただ雪に覆われた庭をじっと見つめた。
会津の雪――それはただ美しいだけのものではなかった。白く降り積もるその静けさは、何かを封じ込めるような重たさを孕み、大地の息をも凍らせていた。
だが、その下では確かに何かが軋み、軋んで、いまにも崩れ出そうとしている。
その予兆を、忠三郎の背に吹きつける風が、はっきりと告げていた。
「浅野殿より命が下りました。蒲生勢、そして伊達勢も動員し、木村父子を救出せよとのことにございます」
長門守の声が、広間の静寂に沈み込むように響く。
「……伊達左京大夫と、共にか」
忠三郎の声は低く、どこか押し殺されていた。
伊達政宗――この会津の地を巡って、幾度となく揺さぶりをかけてくる男。眼光鋭く、気まぐれにして野心家。
その政宗と手を携えねばならない。
一揆の鎮圧という急を要する大義が、よりにもよって、最も不確かな隣人と肩を並べることを強いてくる。
忠三郎は、わずかに視線を上げた。外には、相変わらず音もなく雪が降り続いている。
だがその白はもはや、無垢でも静穏でもなかった。そこにあるのは、崩壊の前の沈黙。足元をすくうような、目に見えぬ裂け目。
踏み出す一歩の先に、何が待つのか。自ら、その深淵を覗かねばならぬときが来たのだ。
沈黙の中で、忠三郎はゆっくりと口を開いた。
「……長門。伊達勢の動きを逐一報せよ。浅野殿の書状、ただちに写しを作り、佐竹・上杉へも回せ」
声は低く抑えられていたが、その内に潜む決意は、雪よりも冷たく、刃よりも鋭かった。
(いよいよ会わねばなるまい)
伊達政宗に――。
会い、膝を突き合わせ、剣呑な火花を散らしながらも、共に一揆鎮圧の道を探らねばならぬ。
そのためには命を捨てる覚悟もある。
「浅野殿は二本松まで引き返す途上とのことでござりまする」
「承知した。では伊達左京大夫に使者を送れ。一揆鎮圧の協議のため、この忠三郎みずからが、伊達殿の領内へ出向くと」
「は?!そ、それは…しばし、お待ちくだされ!そのようなことをしては…」
長門守が顔面蒼白になり、畳を滑るように忠三郎の前へとにじり出る。
震える声で、なおも押しとどめようとする。
「伊達左京大夫は、ただ者ではござりませぬ! 今や一揆を口実に、こちらの隙を突く好機を伺っているやもしれませぬ! 殿のお身が狙われぬ保証など――」
忠三郎は、穏やかな笑顔を返して首を振った。
「――分かっておる。されどここで命を惜しんでいては、この会津において、もはや誰も、わしの言葉に従うまい。奥州の守りとして置かれた蒲生忠三郎が、今、動かずして何を守れるというのだ。わしが動かねば、誰も動けぬ。もとよりこの命を捨つる覚悟じゃ」
声音は低く穏やかだったが、芯には鋼のごとき決意があった。
その瞳には、凍てついた大地のような静謐な覚悟が、雪明かりに照らされていた。
国を守るとは、ただ城を堅めることではない。
戦を避け、民を守り、日々の灯火を絶やさぬことこそが、真の統治だ。
そのためならば、己の首を賭ける覚悟も、とうにできている。
白き静寂の向こうに広がるのは、雪解けより早く、血に染まる地の気配――。
それでもなお、忠三郎の背は揺るがず、広縁に立つその姿は、あたかも降りしきる雪そのもののように、凛として動かなかった。
雪は今も、絶えることなく降り続いていた。
すべてを覆い隠し、やがて何かが始まる音を、ただ、静かに待っていた。
夜が更けていく。寝所には、凍てつくような静寂が満ちていた。
屏風の向こうから微かに薪のはぜる音が聞こえる。だがその音さえ、どこか遠く、魂の底には届かない。
忠三郎は、ひとり床の中にありながら、眠ることなく天井を見つめていた。
障子越しにさし込む月光が、白く長い影を畳に落とす。
その光は、天より降る審判のように、胸の奥を照らしていた。
ふと、脳裏に浮かんだのは、かつて南蛮寺で耳にした、ある話だった。
それは主イエスが、十字架上の死を目前にした夜、ゲツセマネと呼ばれる園で弟子たちから離れ、ひとり祈ったという場面。
――「この杯を、わたしから取りのけてください」
神の子であるはずのイエスが、呻くようにそう願ったと語られていた。
悲しみのあまり、死ぬほどだったとも。
聖なる者さえ、苦悩し、逃れたいと願った夜――その祈りの声は、忠三郎の胸を刺すように響いた。
――「しかし、わたしの願うことではなく、あなたのみこころのままを、なさってください。」
その一言に、すべてが込められていた。
逃れたいという人の弱さも、それを超えて進まねばならぬ覚悟も。
忠三郎は、じっとその言葉を思い返し、自らの心と静かに向き合った。
己が背負わねばならぬ杯――それは、伊達政宗と向き合い、戦か和かの岐路を命を懸けて渡るという、重く苦い杯だった。
もちろん、恐れがないわけではない。
この奥州の果てで土となって果てるなら、それはあまりにも無念であった。
政宗はただの武将ではない。冷酷で、時に人の情をも断ち切るような切れ味を持った男だ。
対峙するには覚悟がいる。命を手放す覚悟だけでは足りぬ。言葉を尽くし、道をつなぐ覚悟が――
だが、それでも、と忠三郎は思う。
恐れを越えてなお、進まねばならぬときがある。
この会津の地に、まだ見ぬ明日を灯すために。
民の営みを、子らの笑いを、春を迎えるはずの麦畑を、守りたいと願うなら。
それが、わが道。
それが、神の御心に叶う道であるなら。
「……ならば、行かねばなるまい」
ぽつりと、誰にともなく漏らした声は、月明かりの中に溶けていった。
忠三郎はゆっくりと身を起こし、床几に腰を下ろすと、襖を細く開けた。
白く澄んだ夜気が、頬を打つ。
空には雲一つなく、冴え冴えと満ちた月が、天の眼のように見つめていた。
忠三郎は、やがて手を胸に当て、目を閉じた。
それは祈りというにはあまりに短く、声にもならぬほどの静かな誓いだった。
けれどその胸に去来していたのは、まぎれもなく、揺るぎない覚悟だった。
――明日、杯を受け取ろう。
逃げずに、ただ神のみこころのままに。
月は、静かに忠三郎を照らしていた。
それは、滅びを告げる光ではない。試練の先にある、わずかな希望のしるしのようでもあった。
そして、十月二十六日。
忠三郎は、政宗との会見のため、伊達領である下草城へと向かった。
城を発つ直前、ひとりの男がそっと前に立つ。
素破頭である三雲定持だった。
「……殿」
定持は誰にも悟られぬよう、懐から一包みを取り出した。
白布に包まれたそれは、小さな薬紙。中には、ひときわ苦く冷たい粉が封じられていた。
「もし――万が一、毒を盛られたときは、すぐにこれをお飲みくだされ。甲賀に伝わる秘薬、命を繋ぐ望み、ここにございます」
その声音には、いつもの老獪さもしたたかさもなかった。
ただ、主君を思う一人の男の、切実な願いだけが滲んでいた。
忠三郎は、それを静かに受け取ると、ふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「案ずるな、定持。毒など、もはや怖くはない。命をかけると決めたのは、もうあの日――雪が、音もなく降っていたあの朝よ」
薬を懐にしまい込むと、忠三郎は馬上へと躍り上がった。
その背中は、静かに燃えていた。
もはや恐れではなく、決意と慈しみが、心を満たしていた。
やがて一行は山を越え、雪深き伊達領へと踏み込んでいく。
――下草城にて、忠三郎と伊達政宗が相まみえる時が、刻一刻と近づいていた。
季節外れの風が、山の梢を揺らす。奥州の地が震えている、微かな前触れのようでもあった。
下草城の広間には、奥州の空気そのままの、張りつめた静けさが満ちていた。湿った畳の匂いと、石造りの壁が持つ冷気は、この地の意思を伝えているかのようだ。
忠三郎は、ゆっくりと歩を進め、政宗の前に座す。政宗は、片眉をわずかに上げ、じっと忠三郎を見据えた。年若くして陣頭に立ち、幾たびも戦場を駆けたその眼差しには、まぎれもなく猛き獣の光が宿っていた。
その顔に、忠三郎はかすかな笑みを湛えた。
(――若い。されど、目は曇っていない。ならば、語るに足る)
政宗は二十四歳。忠三郎よりも十一歳下の、まさに血潮燃ゆる時であった。 だが忠三郎には、もはや熱を帯びて振り上げる剣より、凍てつく刃のごとき沈黙のほうが強しと知れていた。
忠三郎は、敵意に満ちたその視線を受け止めながらも、表情一つ変えぬまま、穏やかな口調で語り出す。
「この度は、直々の対面の栄を賜り、恐悦至極に存じます」
「……そのような飾り言は不要。用件を」
政宗の声は冷たく、氷をすべらせるように響く。
だが忠三郎はその冷気を受け入れ、初春の陽のごときまなざしで返した。
「一つ願いは、木村親子の命。浅野殿からの命により、我らが協力して木村殿を救いだす必要がござります」
しばしの沈黙の後、政宗はわずかに眉を寄せた。
「ならば、蒲生殿は我が下知に従うと?」
その言葉に、陪臣たちがざわめいた。だが忠三郎は、静かに首を横に振った。
「そのようなことを申すために、ここまで来たのではござらぬ」
どこまでも変わらぬ飄々とした態度。政宗の目に、かすかな苛立ちが浮かぶ。
「ならば、いかにして命を拾うつもりか?」
「兵をあげましょう。それがしと伊達殿、それぞれが相応の兵を出し、木村親子を共に救う。そこに私欲もなく、名もいらぬ。ただ、ただ人を救うための働きとして」
政宗の目が細くなる。若き将は、一瞬、獲物を測る鷹のように忠三郎を見つめ――やがて、ふっと口の端をつり上げた。
「…上方からの命であれば致し方ない」
あたかも従順に見せかけながら、どこか底知れぬものを含んでいた。
広間に満ちていた重苦しい空気がわずかに緩み、陪臣たちも安堵の息を漏らす。だが、忠三郎の眉は微動だにしなかった。
やがて対談が終わりに近づくと、政宗は何気ない風を装い、低く声をかけた。
「客人に、茶を」
そう言って政宗の家臣が差し出した茶碗を、忠三郎は一瞥した。
――これは、試みの杯。
湯気に混じって立ちのぼる微かな香。
柔らかな甘みの奥に、どこか薬草を混ぜたような、不自然な苦みを含んでいた。
(毒か。あるいは、毒を匂わせた駆け引きか……)
飲まねば、命惜しさと笑われよう。飲めば、政宗の掌の上に立たされる。
政宗の瞳が鋭く、忠三郎の指先の動きを追っていた。
だが、忠三郎の手は止まらない。
迷いなく、杯を取り、静かに唇へと運んだ。
命は天に預けたもの。
己はただ、誠を尽くして道を通すのみ――そう腹を定めた忠三郎の手には、一片の震えもなかった。
「…これはかたじけない」
茶をゆるりと飲み干し、静かに礼を述べた忠三郎は、背筋を正したまま広間を辞した。
襖が閉まりゆくその刹那。
政宗の目が、蛇のように鋭く、忠三郎の背を射抜いた。
その瞳は笑っていた――まるで何かを「確かめた」という満足を携えて。
城を出た忠三郎は、人目を避け、ひそかに竹林の奥へと身を移した。
喉奥を突き刺すような苦味が舌を襲うと同時に、胃の腑を抉るような痛みに、口中のものを激しく吐き出す。
「……やはり、そうであったか」
薄紅に染まった唾を吐き捨て、額の汗を拭う。
すぐさま懐から白布を取り出し、その中に包まれていた小さな薬紙を開いた。
三雲定持より託された、甲賀伝来の解毒薬。
忠三郎は何のためらいもなく、それを口に含む。
喉を焼くような辛苦が、全身に広がる。
だがその痛みの中に、命を繋いだ確かな実感があった。
――生き延びること。それは、己一人のためではない。
幾人もの命と志を、この身に託された責がある。
「と、殿!も、もしやそれは…」
後を追ってきた町野長門守が真っ青な顔で駆け寄る。
だが忠三郎は、冷や汗を拭いながら、その顔に清々しい笑みを浮かべた。
「案ずるな。大事にない」
袖で口を拭い、忠三郎は再び馬へと向かった。
吐き出した苦味の余韻がまだ喉に残る。だが、その瞳には、一片の濁りもなかった。
――己の命さえ、天に預けてなお、人の道を守るために。
毒を盛られてもなお、己は義を通す。
忠三郎の歩みに迷いはなかった。
その背に漂うのは、恐怖ではなく、ただ一つの誠。
それは、刃にも毒にも穢されることはない。
馬にまたがり、遠ざかる城を一瞥したとき――
忠三郎は確かに感じた。政宗の眼差しが、まだ己の背に注がれていることを。
その視線の意味を、忠三郎は深く問おうとはしなかった。
自らの歩む道には、一点の曇りもない。
鞍の上にまっすぐ背を伸ばし、忠三郎は馬の腹を軽く蹴った。
踏み出した道の先には、雪と霜の気配漂う奥州の大地が待っている。
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