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35.帰らざる風
35-1. 仄白き影の来訪
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聚楽第の屋敷には、春の陽光が柔らかく差し込んでいた。庭の枝垂れ桜は風にゆれ、散り際の花びらが、畳の上にふわりと落ちては、静けさに溶けていく。
忠三郎は縁側に腰を下ろし、ほのかに薬湯の香を残す湯呑を手に、ぼんやりと庭を眺めていた。堺の町医者が処方した妙薬のおかげで、長らく悩まされてきた腹の鈍痛もようやく遠のき、胸の奥に巣くっていた鉛のような重さが、少しずつ抜けてゆくのを感じていた。
──そろそろ、会津に戻るべきか。
帰るべき場所があるというのに、心がまっすぐにそこへ向かわぬのは、春という季節のせいなのか。忠三郎の眼差しは、庭先に咲く山吹の金色に染まる花弁を追う。何故か心は、浮き草のように揺れていた。
「関白殿下がお見えになると知らせが参りました」
障子の向こうから、町野長門守のやや緊張した声が届いた。
「……関白殿下?」
湯上がりの湯呑を静かに置き、庭に面した縁側から立ち上がった忠三郎は、しばし庭石の苔に目をやりながら思案する。
──なにごとであろうか。
関白自らが足を運ぶというのは、尋常の沙汰ではない。
太閤の周囲では、風向き一つで人の運命が変わる。都の空気もまた、何かが変わり始めている気配があった。
豊臣秀次──
かつての名を三好信吉といった。尾張の百姓を父とし、母は秀吉の実姉だ。
一家そろって飛ぶ鳥を落とす勢いであったが、その勢いに陰りが見え始めたのは、昨年末のこと。弟の秀勝が、朝鮮へと渡った遠征のさなか、巨済島にて土地の者でさえも恐れる病に倒れ、そのまま異国の土となった。まだ二十四歳であった。一門の光は、一夜にして翳る。
残された秀次は、秀吉の養子として豊臣家の跡を継ぎ、ついには関白・太政大臣の位にまで昇ったものの、若年で政務にあたる身は、常に重圧と孤独を抱えていた。
その気質は、柔らかく、繊細。諸侯の間でも、その評判は定まらない。
覇気に乏しいと評する者もいれば、学問と礼節を尊ぶ姿勢を好む者もいる。忠三郎は、聚楽第で言葉を交わした折の秀次の眼差しを思い出す。
世に叩かれるには素直で、しかし政道を担うには若い──
そのことは、誰よりも秀吉自身が知っているはずだ。
「……通してやれ」
庭に咲く山吹が、初夏の風にふるえた。
その一輪が、忠三郎の足元に、静かに落ちる。
襖の向こうで控えていた従者が一歩進み出て、名を告げた。
「関白殿下、ご着到にございます──」
忠三郎が襟を正すよりも早く、障子が音もなく開かれ、一人の男が影のように現れた。袴の裾には、どこかで拾ったのか紅色の花びらが貼りついていた。
「ご無礼の段、ご容赦願いたい」
柔らかく微笑むその顔に、どこか張りつめたものがあった。関白・豊臣秀次。 太閤秀吉の甥にして、豊臣家の未来を託された若き宰相。その威容の内側に、春霞のような不確かさをまとっている。
わずかな供だけを連れて現れたその姿に、忠三郎は違和感を覚えた。秀次は小さく会釈し、畳に静かに腰を下ろす。ふたりの間に、春の午後とは思えぬ、張りつめた静寂が広がった。
「黒田官兵衛より、渡海の件で何度も催促が来ておる」
ぽつりと秀次が口を開いた。声は低く、どこか遠い。
「されど、わしは出陣せぬ。……戦など、もうよい」
その言葉は、誰にでもなく、己の胸の底へと落とすようだった。
咲き残った山吹の花が風に揺れ、ひとひら、空を舞った。その花びらの行方を追いながら、秀次はぽつりぽつりと語った。
「日ノ本の政を司るだけで、余は手一杯じゃ。なにゆえ海を越え、さらなる地を求めねばならぬのか……戦の果てに残るは、焼けた里、嘆く民、朽ちる骨ばかり」
忠三郎は何も言わなかった。
──この若者は、疲れている。
それが、忠三郎の率直な印象だった。年若くして関白という重荷を背負い、政の表も裏も知り尽くし、それでもなお「戦をしたくない」と口にできるほどに、疲れていた。
だが──それだけではない。
沈黙のあいだに、忠三郎はじっと秀次の顔を見つめていた。微かな震え。言葉の合間に走る躊躇。眼差しの奥に潜む、言いようのない影。
(何かを恐れている……)
忠三郎の胸に、小さな違和感が宿る。官兵衛からの渡海催促。秀吉の命。政の重圧。それらは確かに重い。だが、秀次の怯えは、それだけではないように思えた。
──何を、恐れているのか。
「官兵衛は、わしの立場を思いやっておるのだろう。太閤殿下に疑われぬよう、忠義を装えと。されど、たとえ咎められようとも、わしは動かぬ。…もう、戦さなどはしとうないのじゃ」
ふたりの間に再び沈黙が落ちた。
外では、春の風が枝垂れ桜を揺らしていた。花びらが舞い、廂を越えて広間にまで入り込み、忠三郎の肩にひとひら、そっと落ちた。
その花びらを見つめながら、忠三郎の胸に、過去の幻影が浮かび上がった。
(あの目は……)
佐々成政。信長の死後、秀吉と敵対し、最後は肥後で起きた一揆の咎を負わされ、切腹に追い込まれた男。その死の間際に見た、あの虚無のまなざし。
今の秀次の目に、それとよく似た影があった。
──まだ若いというのに。
庭には、早咲きの枝垂れ桜が名残の花をつけていた。白砂の上に落ちた花びらが、風にさらわれ、几帳の隙間から座敷へと迷い込む。障子にゆらぐ陽の光が、そこにうっすらとした影を落としていた。
その静けさの中で、忠三郎は思いを巡らせる。
秀次の家は、百姓の出。譜代家臣もおらず、幼い頃から共に過ごした家臣もいない。名を連ねる家来衆はみな、秀吉の恩顧を受けて集まった寄せ集め。いずれも、秀次という人物そのものではなく、太閤秀吉の威光に従っているにすぎない。
その足場の脆さは、忠三郎のような戦国を生き延びてきた者には、骨の髄まで伝わってくる。
その父・三好吉房は、尾張の片隅の、どこにでもいるような百姓であった。苗字もなく、粗末な茅葺の家に住み、田を耕し、雨を見上げ、風に嘆いて生きていた。文字も読めず、言葉も粗く、戦場に立ったのは一、二度あったかどうか。兵を指揮したことなどなく、政を任される器でもない。
だが、時代が動いた。
秀吉が成り上がるにつれ、吉房もまた、見えぬ手に引かれて都へ上がった。そして、いつの間にか「関白の父」となっていた。
──それでも、何ひとつ変わらぬ。中身は、百姓のままか。
忠三郎の脳裏に、大坂城で見かけた吉房の姿が浮かんだ。唐衣の裾を引きずり、上座と下座の区別もつかず、甘茶を出されてもそれが何かと戸惑っていた男。無理やり背を伸ばされた、あの歪な松のような存在。おそらく、本人にも、自らが何者になったのか、わかっていないのではないか。
(その父から、生まれた秀次……)
秀次の弟・秀勝は秀吉の養子となり、淀の方の妹を正室に迎えた。末弟は大和の秀長の婿養子に出された。家中の子らはすべて、秀吉の手によって、それぞれ別の器に注ぎ分けられた。すべては卑しい出自を覆い隠すためだろう。
残された吉房には、何もない。ただ「父」として名を残されただけの、空の器だ。
(それが、果たして「幸い」と呼べるものなのか)
忠三郎は、ふと視線を横に向けた。そこに座す秀次の横顔には、まだ年若き面影が残っていた。だがその眼差しは、早くも老いを宿し、絶えず何かを恐れているようだった。
父のように愚かではない。聡明で、心根も悪くはない。
──それでも、この若者は、あまりに孤独だ。
譜代家臣もなく、根もなく、寄る辺なきままに関白の座についた若者。
「会津少将。もしおぬしがわしであれば…何を第一とする?」
「それがしが、でござりますか」
忠三郎は短く問い返し、すぐには答えなかった。
春の風が、花を撫で、ひとひら、廂から舞い落ちた。
「それがしが天下人であれば、泰平の世を守ることを第一とするかと」
「いかにもおぬしらしい」
秀次はそう言って弱弱しく笑った。
「わしは…今は……静かに、春を見ていたい」
「静かに春を…」
忠三郎は、繰り返すように呟いた。
──誰しも、春の陽を浴びる資格があるはずだ。
けれど、この国では、陽光さえも立場と力で奪われる。
秀次はしばらく黙って座していたが、やがて立ち上がった。
「……長く留まっては、憚られる。これにて失礼いたそう」
忠三郎も席を立ち、深く頭を下げた。
その瞬間、ふと春風が吹き込んだ。廂を越えて舞い込んだ桜の花びらが、秀次の肩にひとひら、そっと落ちた。
秀次はそれに気づくと、ほんの少しだけ、笑みを浮かべた。
「世は美しい」
それが、別れの言葉だった。そう口にしたとき、秀次の瞳に一瞬浮かんだものがあった。それは恐れであり、諦念であり、なによりも──人としての孤独だった。
秀次は静かに蒲生邸を後にした。
忠三郎はそのひとひらを、しばし黙って見つめていた。
それはいずれ失われる者の命のように、慎ましく、儚かった。忠三郎はその背を見送ったまま、しばらく動けなかった。
(あの若者には何があるのか…)
その胸に、言いようのない不安が広がる。
春の陽はなお明るいが、その光が照らす影は、思いのほか深かった。
数日後、忠三郎は町野長門守に命じて洛中の饅頭屋から饅頭を買い求めた。
箱を受け取りながら、どこか懐かしげに口元を緩める。
「義太夫は、いまだにここの饅頭を好んでおるかな」
小さな風呂敷に包み直しながら、忠三郎はひとりごちた。
──素破の家である滝川家の面々であれば、あの秀次の憂いの元を知っているかもしれない。
そう思った忠三郎は、町野長門守ら数名の供を連れ、饅頭を手土産に洛外の暘谷庵へと足を向けた。
これまでの負い目は、今なお忠三郎の胸に重く残っている。ましてや、あの庵を訪れるのは、決して軽い気持ちではなかった。
だが、門をくぐった忠三郎を迎えたのは――意外なまでの温かな笑顔だった。
「忠三郎様!」
驚いて声をあげたのは、かつて蒲生家にいて忠三郎の傍に付き従っていた滝川助太郎。
「ようお越しくださいました。お寒かったことかと。ささ、どうぞ中へ」
戸口から差し込む春の光が、静かな庭をやさしく照らしていた。
忠三郎の胸に、ほのかにぬくもりが戻ったその時、
「やれやれ、ようやく来おったか! 饅頭を手土産にせぬ者は、この義太夫、出迎えもせぬと決めておる!」
苔むした石段の上に、ちょこんと腰掛けていた痩せた男が、大仰な身振りで腕を広げた。
忠三郎は、思わず立ち止まる。
(……義太夫か?)
一瞬、目を疑った。記憶に残る義太夫は、もっとふっくらして、顔色もよかった。今、目の前にいる男は、頬がこけ、顎は尖り、体つきも骨のように細い。
病が長く義太夫を蝕んでいたことは噂に聞いていたが――まさか、ここまでとは。
しかしその口調は、昔のままだった。
「鶴! わしがやせて別人のようになったとは思うておるのか。痩せても枯れても、この口先三寸は衰えぬ。いや、身が軽くなった分、饒舌には磨きがかかったわい!」
ぱたぱたと羽織の裾をはためかせ、義太夫は石段を小走りに下りてくる。だが途中でつまずき、ずるりと尻もちをついた。
「あいたた……。どうも脚ばかり細うなって、腰との釣り合いがとれん。わしの体は、もう竹ひご細工のようじゃ」
忠三郎は、思わず笑った。
たしかに、義太夫の体は衰えていた。だが、その心と口だけは、以前と寸分たがわぬまま。時が巻き戻されたかのようだった。
「……変わらぬな」
「変わったとも! この春には歯が三本も抜けた! しかも全部、饅頭のせいじゃ!」
町野長門守が、懐からそっと包みを取り出し、義太夫の手に渡すと、義太夫は包みを抱きしめて目を細めた。
「おお……これぞ、洛中一の饅頭。世にこれさえあれば、太閤も戦をやめ、関白も心安らかになるであろう。いや、されどこの味には、天下を奪うだけの力があるから危ないのじゃ」
畳みかけるような饒舌に、忠三郎は懐かしさと安堵を覚えた。滝川家を巡る過去のわだかまりが、すっとほどけていくようだった。
義太夫は、饅頭を大切に懐にしまい込むと、ふと真顔になり、庭先の椿に目をやった。
「――さて、饅頭はさておき。おぬし、関白と会うたか?」
その一言に、忠三郎の顔が引き締まる。
「さすが、よう存じておるな」
「物見の義太夫は健在じゃ。洛中に饅頭がいくつ並んだかも見逃さん。さて、あの関白の目に、何が映っておった?」
義太夫は、膝に手を置きながら、じっと忠三郎の顔を見つめた。その目は、先ほどまで饅頭に目を輝かせていた男のものとは思えぬほどに鋭かった。
忠三郎は一瞬、言葉を探したが、やがてぽつりとつぶやいた。
「……空虚といおうか…。あれほどの地位にありながら、何もつかんでおらぬようであった」
義太夫は、ふむ、とひとつ頷くと、懐からうちわを取り出して、ぱたぱたと扇ぎ始めた。
「それも無理はあるまい。関白は今、風の吹く先を測りかねておる。なんというても、淀の方が懐妊したという話じゃ」
「……淀の方が懐妊?それはまことか」
「まだ表沙汰にはなっておらぬ。されど、我らの耳には早うから入っておる」
穏やかな春の陽射しと、相反するような冷たい気配。
「真偽のほどは定かではない。されど、奥に仕える侍女たちの口が騒がしい。もし、子が無事に生まれ、男子であれば……関白の立場など、砂の城よ」
鶴松を喪って以来、秀吉の心は深い淵に沈んでいた。それが再び父の歓びに目覚めれば──甥である秀次の存在は、光の射す場所にはいられぬ影となる。
椿の花が、一輪、枝からはらりと落ちる。
忠三郎はしばし黙したまま、その赤い花が地に触れるのを見届けてから、静かに呟いた。
「ゆえに、あの憂いか……」
「うむ。政のことでもなければ、唐入りのことでもない。関白がまことに恐れておるのは、太閤の挙動、いや、太閤の心であろう」
義太夫はふっと笑った。
「関白は、いまや『天下人の跡継ぎ』として、高く掲げられすぎた。今頃は、転げ落ちる音まで耳に届いてくるのじゃろうて」
忠三郎はうなずき、しばし目を伏せた。
「それで……そのことを、太閤は?」
「未だ耳には届いておらぬであろう」
義太夫は、うちわを静かに膝に置き、ため息をついた。そして唐突に問いかける。
「鶴。おぬしは関白を見下しておるのではないか?」
義太夫の言う通りだ。秀吉や秀次の出自の卑しさ。秀次の父の、いかにも百姓臭さの残る仕草。忠三郎ばかりではない。みな、口には出さずとも、心のどこかでそれを嘲笑している。
「それは…」
「違うとは言えまい」
義太夫は、声の調子を少し緩めながら続ける。
「おぬしは名家の出じゃ。卑しき身分のものを、どのように見ておるか、口に出さずとも端端にでておるわい。されど、わしは関白が好きじゃ。無邪気で、素直。周りの期待に応えようと、懸命に精進しておるではないか」
義太夫は視線を庭の苔に落とし、て静かに語り出した。
「そもそも身分とは何であろうな」
「何…とは…」
「遠い昔、大陸から稲作が伝わり、狩猟の民が農をなすようになってからじゃ。村を作り、蓄えができ、力を持つ者が持たぬ者を支配し始めた。それが『身分』のはじまりじゃ」
「稲を育てるためには大勢の人出がいる。それゆえの村であり、また、収穫したものを蓄えるようになったがために、富を持つものが、持たぬ者を支配するようになる。身分の差も自然と生じるようになったのじゃ」
義太夫は続けた。農耕に用いた鉄は、いずれ武器となり、やがて律令制のもとで身分は制度となり、武士は『武家』という階層を形成するに至った。
「されど、我ら素破は違う」
義太夫は少し誇らしげに言う。
「もともとが半農半士。刀を捨てて田を耕すもよし。里へ下りて薬を売るもよし。生まれに縛られることもなく、定まった名を掲げることもない。おぬしら名家の子とは、まるで異なる風の中に生きておるのじゃ」
忠三郎の胸にかすかな痛みが走った。
会津への移封が決まったとき、日野に戻っていった者たちの顔が浮かんだ。
父祖の墓守をする者、草深い村に戻り畑を耕し直す者、古びた刀を鍬に替える者――その多くは地侍であり、元より土地と共に生きることを選びうる立場にあった。
(皆には、帰る場所があった)
どんなに恋焦がれても、生まれ育った故郷に戻ることができない忠三郎とは違う。
だが、忠三郎にはない。
たとえ幾度夢に見ようとも、先祖伝来の地に足を踏み入れることはもはやかなわない。あの春霞の中に沈む日野の野辺は、ただ遠い追憶のなかにだけ在る。
それでも、なお忘れがたい。
幼き日に野に放たれた鷹の影を追いかけた田畔の道も、夕暮れに灯る紙燈籠のほの赤い光も。
――取り戻すことはできぬと知りながら、心は今もそこにある。
義太夫が語った「縛られぬ者たち」に、ひそかな羨望を覚えた。だが、それは叶わぬ道だった。
家を継ぎ、名を保ち、政の波を生き抜かねばならぬ定めにある者。誰かが敷いたその道を、迷いも許されぬまま、ただ進みゆく者。
ふと、忠三郎は秀次の顔を思い出した。
関白とは名ばかりで、己の影すら掴めぬ男。
太閤の甥として掲げられ、畏れと期待の狭間に置かれた男。
民の声にも、武士の理にも背かず、それでいて何ひとつ自らの意思で選び取れぬまま、足元の砂だけが崩れていく――そんな姿が、ふと己と重なって見えた。
(……関白もまた、帰る場所を持たぬのか)
ただ風の吹くままに生かされ、やがてどこへ流れ着くのかもわからない。
それでも今日という日を生きねばならない。
振り返ることも、選び直すことも許されぬ、名と家に縛られたまま。
どこからか、小鳥のさえずりが聞こえてきた。
風が椿の枝を揺らし、また一輪、赤い花がはらりと地に落ちた。
忠三郎はそれを見つめながら、ただ静かに、目を閉じた。
忠三郎は縁側に腰を下ろし、ほのかに薬湯の香を残す湯呑を手に、ぼんやりと庭を眺めていた。堺の町医者が処方した妙薬のおかげで、長らく悩まされてきた腹の鈍痛もようやく遠のき、胸の奥に巣くっていた鉛のような重さが、少しずつ抜けてゆくのを感じていた。
──そろそろ、会津に戻るべきか。
帰るべき場所があるというのに、心がまっすぐにそこへ向かわぬのは、春という季節のせいなのか。忠三郎の眼差しは、庭先に咲く山吹の金色に染まる花弁を追う。何故か心は、浮き草のように揺れていた。
「関白殿下がお見えになると知らせが参りました」
障子の向こうから、町野長門守のやや緊張した声が届いた。
「……関白殿下?」
湯上がりの湯呑を静かに置き、庭に面した縁側から立ち上がった忠三郎は、しばし庭石の苔に目をやりながら思案する。
──なにごとであろうか。
関白自らが足を運ぶというのは、尋常の沙汰ではない。
太閤の周囲では、風向き一つで人の運命が変わる。都の空気もまた、何かが変わり始めている気配があった。
豊臣秀次──
かつての名を三好信吉といった。尾張の百姓を父とし、母は秀吉の実姉だ。
一家そろって飛ぶ鳥を落とす勢いであったが、その勢いに陰りが見え始めたのは、昨年末のこと。弟の秀勝が、朝鮮へと渡った遠征のさなか、巨済島にて土地の者でさえも恐れる病に倒れ、そのまま異国の土となった。まだ二十四歳であった。一門の光は、一夜にして翳る。
残された秀次は、秀吉の養子として豊臣家の跡を継ぎ、ついには関白・太政大臣の位にまで昇ったものの、若年で政務にあたる身は、常に重圧と孤独を抱えていた。
その気質は、柔らかく、繊細。諸侯の間でも、その評判は定まらない。
覇気に乏しいと評する者もいれば、学問と礼節を尊ぶ姿勢を好む者もいる。忠三郎は、聚楽第で言葉を交わした折の秀次の眼差しを思い出す。
世に叩かれるには素直で、しかし政道を担うには若い──
そのことは、誰よりも秀吉自身が知っているはずだ。
「……通してやれ」
庭に咲く山吹が、初夏の風にふるえた。
その一輪が、忠三郎の足元に、静かに落ちる。
襖の向こうで控えていた従者が一歩進み出て、名を告げた。
「関白殿下、ご着到にございます──」
忠三郎が襟を正すよりも早く、障子が音もなく開かれ、一人の男が影のように現れた。袴の裾には、どこかで拾ったのか紅色の花びらが貼りついていた。
「ご無礼の段、ご容赦願いたい」
柔らかく微笑むその顔に、どこか張りつめたものがあった。関白・豊臣秀次。 太閤秀吉の甥にして、豊臣家の未来を託された若き宰相。その威容の内側に、春霞のような不確かさをまとっている。
わずかな供だけを連れて現れたその姿に、忠三郎は違和感を覚えた。秀次は小さく会釈し、畳に静かに腰を下ろす。ふたりの間に、春の午後とは思えぬ、張りつめた静寂が広がった。
「黒田官兵衛より、渡海の件で何度も催促が来ておる」
ぽつりと秀次が口を開いた。声は低く、どこか遠い。
「されど、わしは出陣せぬ。……戦など、もうよい」
その言葉は、誰にでもなく、己の胸の底へと落とすようだった。
咲き残った山吹の花が風に揺れ、ひとひら、空を舞った。その花びらの行方を追いながら、秀次はぽつりぽつりと語った。
「日ノ本の政を司るだけで、余は手一杯じゃ。なにゆえ海を越え、さらなる地を求めねばならぬのか……戦の果てに残るは、焼けた里、嘆く民、朽ちる骨ばかり」
忠三郎は何も言わなかった。
──この若者は、疲れている。
それが、忠三郎の率直な印象だった。年若くして関白という重荷を背負い、政の表も裏も知り尽くし、それでもなお「戦をしたくない」と口にできるほどに、疲れていた。
だが──それだけではない。
沈黙のあいだに、忠三郎はじっと秀次の顔を見つめていた。微かな震え。言葉の合間に走る躊躇。眼差しの奥に潜む、言いようのない影。
(何かを恐れている……)
忠三郎の胸に、小さな違和感が宿る。官兵衛からの渡海催促。秀吉の命。政の重圧。それらは確かに重い。だが、秀次の怯えは、それだけではないように思えた。
──何を、恐れているのか。
「官兵衛は、わしの立場を思いやっておるのだろう。太閤殿下に疑われぬよう、忠義を装えと。されど、たとえ咎められようとも、わしは動かぬ。…もう、戦さなどはしとうないのじゃ」
ふたりの間に再び沈黙が落ちた。
外では、春の風が枝垂れ桜を揺らしていた。花びらが舞い、廂を越えて広間にまで入り込み、忠三郎の肩にひとひら、そっと落ちた。
その花びらを見つめながら、忠三郎の胸に、過去の幻影が浮かび上がった。
(あの目は……)
佐々成政。信長の死後、秀吉と敵対し、最後は肥後で起きた一揆の咎を負わされ、切腹に追い込まれた男。その死の間際に見た、あの虚無のまなざし。
今の秀次の目に、それとよく似た影があった。
──まだ若いというのに。
庭には、早咲きの枝垂れ桜が名残の花をつけていた。白砂の上に落ちた花びらが、風にさらわれ、几帳の隙間から座敷へと迷い込む。障子にゆらぐ陽の光が、そこにうっすらとした影を落としていた。
その静けさの中で、忠三郎は思いを巡らせる。
秀次の家は、百姓の出。譜代家臣もおらず、幼い頃から共に過ごした家臣もいない。名を連ねる家来衆はみな、秀吉の恩顧を受けて集まった寄せ集め。いずれも、秀次という人物そのものではなく、太閤秀吉の威光に従っているにすぎない。
その足場の脆さは、忠三郎のような戦国を生き延びてきた者には、骨の髄まで伝わってくる。
その父・三好吉房は、尾張の片隅の、どこにでもいるような百姓であった。苗字もなく、粗末な茅葺の家に住み、田を耕し、雨を見上げ、風に嘆いて生きていた。文字も読めず、言葉も粗く、戦場に立ったのは一、二度あったかどうか。兵を指揮したことなどなく、政を任される器でもない。
だが、時代が動いた。
秀吉が成り上がるにつれ、吉房もまた、見えぬ手に引かれて都へ上がった。そして、いつの間にか「関白の父」となっていた。
──それでも、何ひとつ変わらぬ。中身は、百姓のままか。
忠三郎の脳裏に、大坂城で見かけた吉房の姿が浮かんだ。唐衣の裾を引きずり、上座と下座の区別もつかず、甘茶を出されてもそれが何かと戸惑っていた男。無理やり背を伸ばされた、あの歪な松のような存在。おそらく、本人にも、自らが何者になったのか、わかっていないのではないか。
(その父から、生まれた秀次……)
秀次の弟・秀勝は秀吉の養子となり、淀の方の妹を正室に迎えた。末弟は大和の秀長の婿養子に出された。家中の子らはすべて、秀吉の手によって、それぞれ別の器に注ぎ分けられた。すべては卑しい出自を覆い隠すためだろう。
残された吉房には、何もない。ただ「父」として名を残されただけの、空の器だ。
(それが、果たして「幸い」と呼べるものなのか)
忠三郎は、ふと視線を横に向けた。そこに座す秀次の横顔には、まだ年若き面影が残っていた。だがその眼差しは、早くも老いを宿し、絶えず何かを恐れているようだった。
父のように愚かではない。聡明で、心根も悪くはない。
──それでも、この若者は、あまりに孤独だ。
譜代家臣もなく、根もなく、寄る辺なきままに関白の座についた若者。
「会津少将。もしおぬしがわしであれば…何を第一とする?」
「それがしが、でござりますか」
忠三郎は短く問い返し、すぐには答えなかった。
春の風が、花を撫で、ひとひら、廂から舞い落ちた。
「それがしが天下人であれば、泰平の世を守ることを第一とするかと」
「いかにもおぬしらしい」
秀次はそう言って弱弱しく笑った。
「わしは…今は……静かに、春を見ていたい」
「静かに春を…」
忠三郎は、繰り返すように呟いた。
──誰しも、春の陽を浴びる資格があるはずだ。
けれど、この国では、陽光さえも立場と力で奪われる。
秀次はしばらく黙って座していたが、やがて立ち上がった。
「……長く留まっては、憚られる。これにて失礼いたそう」
忠三郎も席を立ち、深く頭を下げた。
その瞬間、ふと春風が吹き込んだ。廂を越えて舞い込んだ桜の花びらが、秀次の肩にひとひら、そっと落ちた。
秀次はそれに気づくと、ほんの少しだけ、笑みを浮かべた。
「世は美しい」
それが、別れの言葉だった。そう口にしたとき、秀次の瞳に一瞬浮かんだものがあった。それは恐れであり、諦念であり、なによりも──人としての孤独だった。
秀次は静かに蒲生邸を後にした。
忠三郎はそのひとひらを、しばし黙って見つめていた。
それはいずれ失われる者の命のように、慎ましく、儚かった。忠三郎はその背を見送ったまま、しばらく動けなかった。
(あの若者には何があるのか…)
その胸に、言いようのない不安が広がる。
春の陽はなお明るいが、その光が照らす影は、思いのほか深かった。
数日後、忠三郎は町野長門守に命じて洛中の饅頭屋から饅頭を買い求めた。
箱を受け取りながら、どこか懐かしげに口元を緩める。
「義太夫は、いまだにここの饅頭を好んでおるかな」
小さな風呂敷に包み直しながら、忠三郎はひとりごちた。
──素破の家である滝川家の面々であれば、あの秀次の憂いの元を知っているかもしれない。
そう思った忠三郎は、町野長門守ら数名の供を連れ、饅頭を手土産に洛外の暘谷庵へと足を向けた。
これまでの負い目は、今なお忠三郎の胸に重く残っている。ましてや、あの庵を訪れるのは、決して軽い気持ちではなかった。
だが、門をくぐった忠三郎を迎えたのは――意外なまでの温かな笑顔だった。
「忠三郎様!」
驚いて声をあげたのは、かつて蒲生家にいて忠三郎の傍に付き従っていた滝川助太郎。
「ようお越しくださいました。お寒かったことかと。ささ、どうぞ中へ」
戸口から差し込む春の光が、静かな庭をやさしく照らしていた。
忠三郎の胸に、ほのかにぬくもりが戻ったその時、
「やれやれ、ようやく来おったか! 饅頭を手土産にせぬ者は、この義太夫、出迎えもせぬと決めておる!」
苔むした石段の上に、ちょこんと腰掛けていた痩せた男が、大仰な身振りで腕を広げた。
忠三郎は、思わず立ち止まる。
(……義太夫か?)
一瞬、目を疑った。記憶に残る義太夫は、もっとふっくらして、顔色もよかった。今、目の前にいる男は、頬がこけ、顎は尖り、体つきも骨のように細い。
病が長く義太夫を蝕んでいたことは噂に聞いていたが――まさか、ここまでとは。
しかしその口調は、昔のままだった。
「鶴! わしがやせて別人のようになったとは思うておるのか。痩せても枯れても、この口先三寸は衰えぬ。いや、身が軽くなった分、饒舌には磨きがかかったわい!」
ぱたぱたと羽織の裾をはためかせ、義太夫は石段を小走りに下りてくる。だが途中でつまずき、ずるりと尻もちをついた。
「あいたた……。どうも脚ばかり細うなって、腰との釣り合いがとれん。わしの体は、もう竹ひご細工のようじゃ」
忠三郎は、思わず笑った。
たしかに、義太夫の体は衰えていた。だが、その心と口だけは、以前と寸分たがわぬまま。時が巻き戻されたかのようだった。
「……変わらぬな」
「変わったとも! この春には歯が三本も抜けた! しかも全部、饅頭のせいじゃ!」
町野長門守が、懐からそっと包みを取り出し、義太夫の手に渡すと、義太夫は包みを抱きしめて目を細めた。
「おお……これぞ、洛中一の饅頭。世にこれさえあれば、太閤も戦をやめ、関白も心安らかになるであろう。いや、されどこの味には、天下を奪うだけの力があるから危ないのじゃ」
畳みかけるような饒舌に、忠三郎は懐かしさと安堵を覚えた。滝川家を巡る過去のわだかまりが、すっとほどけていくようだった。
義太夫は、饅頭を大切に懐にしまい込むと、ふと真顔になり、庭先の椿に目をやった。
「――さて、饅頭はさておき。おぬし、関白と会うたか?」
その一言に、忠三郎の顔が引き締まる。
「さすが、よう存じておるな」
「物見の義太夫は健在じゃ。洛中に饅頭がいくつ並んだかも見逃さん。さて、あの関白の目に、何が映っておった?」
義太夫は、膝に手を置きながら、じっと忠三郎の顔を見つめた。その目は、先ほどまで饅頭に目を輝かせていた男のものとは思えぬほどに鋭かった。
忠三郎は一瞬、言葉を探したが、やがてぽつりとつぶやいた。
「……空虚といおうか…。あれほどの地位にありながら、何もつかんでおらぬようであった」
義太夫は、ふむ、とひとつ頷くと、懐からうちわを取り出して、ぱたぱたと扇ぎ始めた。
「それも無理はあるまい。関白は今、風の吹く先を測りかねておる。なんというても、淀の方が懐妊したという話じゃ」
「……淀の方が懐妊?それはまことか」
「まだ表沙汰にはなっておらぬ。されど、我らの耳には早うから入っておる」
穏やかな春の陽射しと、相反するような冷たい気配。
「真偽のほどは定かではない。されど、奥に仕える侍女たちの口が騒がしい。もし、子が無事に生まれ、男子であれば……関白の立場など、砂の城よ」
鶴松を喪って以来、秀吉の心は深い淵に沈んでいた。それが再び父の歓びに目覚めれば──甥である秀次の存在は、光の射す場所にはいられぬ影となる。
椿の花が、一輪、枝からはらりと落ちる。
忠三郎はしばし黙したまま、その赤い花が地に触れるのを見届けてから、静かに呟いた。
「ゆえに、あの憂いか……」
「うむ。政のことでもなければ、唐入りのことでもない。関白がまことに恐れておるのは、太閤の挙動、いや、太閤の心であろう」
義太夫はふっと笑った。
「関白は、いまや『天下人の跡継ぎ』として、高く掲げられすぎた。今頃は、転げ落ちる音まで耳に届いてくるのじゃろうて」
忠三郎はうなずき、しばし目を伏せた。
「それで……そのことを、太閤は?」
「未だ耳には届いておらぬであろう」
義太夫は、うちわを静かに膝に置き、ため息をついた。そして唐突に問いかける。
「鶴。おぬしは関白を見下しておるのではないか?」
義太夫の言う通りだ。秀吉や秀次の出自の卑しさ。秀次の父の、いかにも百姓臭さの残る仕草。忠三郎ばかりではない。みな、口には出さずとも、心のどこかでそれを嘲笑している。
「それは…」
「違うとは言えまい」
義太夫は、声の調子を少し緩めながら続ける。
「おぬしは名家の出じゃ。卑しき身分のものを、どのように見ておるか、口に出さずとも端端にでておるわい。されど、わしは関白が好きじゃ。無邪気で、素直。周りの期待に応えようと、懸命に精進しておるではないか」
義太夫は視線を庭の苔に落とし、て静かに語り出した。
「そもそも身分とは何であろうな」
「何…とは…」
「遠い昔、大陸から稲作が伝わり、狩猟の民が農をなすようになってからじゃ。村を作り、蓄えができ、力を持つ者が持たぬ者を支配し始めた。それが『身分』のはじまりじゃ」
「稲を育てるためには大勢の人出がいる。それゆえの村であり、また、収穫したものを蓄えるようになったがために、富を持つものが、持たぬ者を支配するようになる。身分の差も自然と生じるようになったのじゃ」
義太夫は続けた。農耕に用いた鉄は、いずれ武器となり、やがて律令制のもとで身分は制度となり、武士は『武家』という階層を形成するに至った。
「されど、我ら素破は違う」
義太夫は少し誇らしげに言う。
「もともとが半農半士。刀を捨てて田を耕すもよし。里へ下りて薬を売るもよし。生まれに縛られることもなく、定まった名を掲げることもない。おぬしら名家の子とは、まるで異なる風の中に生きておるのじゃ」
忠三郎の胸にかすかな痛みが走った。
会津への移封が決まったとき、日野に戻っていった者たちの顔が浮かんだ。
父祖の墓守をする者、草深い村に戻り畑を耕し直す者、古びた刀を鍬に替える者――その多くは地侍であり、元より土地と共に生きることを選びうる立場にあった。
(皆には、帰る場所があった)
どんなに恋焦がれても、生まれ育った故郷に戻ることができない忠三郎とは違う。
だが、忠三郎にはない。
たとえ幾度夢に見ようとも、先祖伝来の地に足を踏み入れることはもはやかなわない。あの春霞の中に沈む日野の野辺は、ただ遠い追憶のなかにだけ在る。
それでも、なお忘れがたい。
幼き日に野に放たれた鷹の影を追いかけた田畔の道も、夕暮れに灯る紙燈籠のほの赤い光も。
――取り戻すことはできぬと知りながら、心は今もそこにある。
義太夫が語った「縛られぬ者たち」に、ひそかな羨望を覚えた。だが、それは叶わぬ道だった。
家を継ぎ、名を保ち、政の波を生き抜かねばならぬ定めにある者。誰かが敷いたその道を、迷いも許されぬまま、ただ進みゆく者。
ふと、忠三郎は秀次の顔を思い出した。
関白とは名ばかりで、己の影すら掴めぬ男。
太閤の甥として掲げられ、畏れと期待の狭間に置かれた男。
民の声にも、武士の理にも背かず、それでいて何ひとつ自らの意思で選び取れぬまま、足元の砂だけが崩れていく――そんな姿が、ふと己と重なって見えた。
(……関白もまた、帰る場所を持たぬのか)
ただ風の吹くままに生かされ、やがてどこへ流れ着くのかもわからない。
それでも今日という日を生きねばならない。
振り返ることも、選び直すことも許されぬ、名と家に縛られたまま。
どこからか、小鳥のさえずりが聞こえてきた。
風が椿の枝を揺らし、また一輪、赤い花がはらりと地に落ちた。
忠三郎はそれを見つめながら、ただ静かに、目を閉じた。
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