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36.心短き春の山風
36-1. 鵜羽(うのは)
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忠三郎は、腹を押さえながら、障子の外に滲む月を見つめていた。
ひとたび深く息を吸えば、熱のこもる躯に、夜の冷気が針のように突き刺さる。だが、それすら遠い出来事のように感じられた。今、この身を満たしているのは、名もなき影。
不安か。決意か。それとも、己が越えてはならぬ一線に触れつつあるという、どす黒い直感か。
明日、帝の御前で「鵜羽」を舞う。
それは奇妙な能だった。物語はおぼろで、定まらず、主題は『白鷺の霊』とされているが、実際には「声なき哀しみ」と「清らかなるものの堕落」が、謎めいた詞章と共に描かれる。
忠三郎は、支度のなかでふと気づいた。
(これは、舞うためのものではない。……討つために作られた舞)
まず、「鵜羽」の詞章は異様に散文的である。
起承転結を持たず、まるで観客の注意を逸らし、焦点を曖昧にするような構成だ。
肝となる「羽搏き」の場面――シテが白羽をゆっくりと広げ、見所に向かって羽ばたく動作――は、一太刀を振るう型と完全に一致していた。
しかも、舞台上の演出には「見得」も「叫び」もなく、観客は知らず知らずのうちに、沈黙と暗闇のなか、シテの動きだけを凝視させられる。
その静けさのなかで、一瞬だけ太刀が振るわれたとしても、誰もそれを舞の一部としか思わない。
さらに奇妙なのは、「鵜羽」には脇役のワキが登場しない。
本来、ワキは神官や僧侶など「理の立場」として舞台に現れ、物語を俯瞰し、現実に引き戻す役目を担う。
だが「鵜羽」はその「目撃者」を排しており、すべてがシテと地謡の声によって閉じられている。
つまり、舞台に立ったシテが「何をしても」、それを止める者がいない構造になっているのだ。
そのことに、忠三郎は背筋が粟立つのを感じた。
(これは……舞台を借りた殺し。もはや「猿楽」という形を借りた密やかな武器)
将軍暗殺以来、誰も舞うことがなかったために、誰一人気づかなかったのだろうか。
作者は大和の猿楽師・世阿弥。将軍・義教に疎まれた世阿弥は、次々に要職を奪われ、父にも劣らぬと称された嫡男・観世元雅を暗殺され、さらには無実の罪により佐渡へと流された。
「鵜羽」は流刑先の佐渡で書かれたものだ。そして将軍暗殺のその日、「鵜羽」のシテ(主役)を務めたのは将軍お抱えの猿楽師であった世阿弥の甥・音阿弥。
袖を振り上げるたびに、太刀の所在が観客の意識から外れてゆく構成。そして、能舞台特有の構造――舞台と見所を遮るものはなく、太刀を抜いても見えにくい薄明の空間。
(すべてが、最初から仕組まれていたとしたら……)
いや、証はない。ただ、猿楽とは――
本来、怨霊を鎮め、魂を弔い、為政者の安寧を祈る遊芸であったはず。
だが、その形式を借り、逆に為政者を断罪する場に変えたとすれば――その者こそ、真に恐るべき謀の者ではないか。
世阿弥は言う、「花は常ならむ」と。
若さも、力も、栄華も、いずれは失われる。だが、花の心を知る者のみが、時を越えて舞い続ける。
忠三郎は、ふと手を見下ろす。
その掌が、熱に震えているのか、それとも決意に震えているのか、自分でもわからなかった。
己は、和歌を愛で、先祖伝来の地と、そこに住む民を第一とするを家に生まれた。だが、今やその手に宿るのは、裁きの太刀。
障子を透かして、月が仄白く照らす。
その光のなかで、揺れていたのは忠三郎の影――
否、白羽をまとい、仇を討たんとする亡霊の影かもしれなかった。
遠く、能管の音が聞こえる。
それは風のように夜をわたり、舞台の幕なき時を告げていた。
明日、「鵜羽」が舞われる。
それが、命をもって語る――最後の言葉となるかもしれない。
*
秀吉の指先が、膝上の扇をわずかに揺らした。
その動きに呼応するように、風がまたひと吹き、障子を撫でる。
香の煙がのぼり、金箔の茶器の縁に映る炎の影が、誰かの顔のように揺らめいた。
「……忠三郎が『鵜羽』を選んだ。そうか」
かすれた声。言葉の奥には、得体の知れぬ何かが篭められる。
(あやつは……見透かしておるのか)
己がこの世を手に入れたと思いし矢先から、なぜか、何もかもが指の隙間からこぼれてゆくような感覚――
唐入りに始まり、官兵衛の離反、渡海を拒む秀次、淀の方の懐妊。
その隙間に忍び寄るものの正体に、秀吉自身、未だ言葉を与えられずにいた。
「『鵜羽』か……」
呟きながら、秀吉はひとたび目を閉じた。
かつて、信長は、戦の合間に謡い、舞い、時に敵の前でさえその足取りを崩さなかった。
それに比すれば、自身の猿楽などは真似事にすぎない。だが、猿楽は言葉を用いぬ言葉。姿に託された意志が、誰よりも鋭く為政者の胸を撃つことを、秀吉もまた知っていた。
「『鵜羽』……白き羽を広げて、空へ昇らんとする鳥よ。その白羽が血に染まり、地を這う日を、世阿弥は待ち侘びたのかもしれぬな」
三成が、そっと顔を上げた。
「御意ながら、いかようにも受け取れる詞章にございます。会津殿の心根を信じると申すは容易きことにございませぬが……されど、あの者がこれまで成してきた働き、その誠を思えば、あまりに……」
「誠とな?」
秀吉の声が、不意に茶室を貫いた。
「誠があれば、主君に逆らってもよいと申すか。いや、違う。あやつは、己が誠とやらを、わしの上に置く。故右府様御存命の折より、蒲生忠三郎はわしを侮り、見下しておったわい」
静けさが、音を持って落ちてきたようだった。
「わしはのう…」
しばし沈黙し、秀吉はふと口の端を吊り上げた。
それは笑みというより、かつて敵将を討ったときの、口元のこわばりに似ていた。
「わしは、討たれずにきた。誰よりも先に斬った。そうして、ここまで来た。されど猿楽の名を借り、わしを斬ろうというなら、それもまた、見ものよのう」
三成の背筋が凍った。
その眼差しの底に、秀吉の若き日――
まだ、木綿の直垂を纏い、泥にまみれて槍を構えていたころの、鬼気を宿す顔がちらついていた。
「……では」
三成は低く問う。
「お控えなさいますか。会津殿の猿楽を」
秀吉は、答えなかった。
ただ、ひとつ深く息を吐き、扇をそっと閉じた。
風の音はやんでいた。だが、茶室の空気はなお重いまま。
「……参るとも。見届けてくれよう。『鵜羽』が舞となるか――それとも、刃となるか」
その瞳に、かすかな戦慄が浮かんでいた。
太閤秀吉。その男に、久しく忘れていた“死”の気配が、影のように寄り添い始めていた。
*
翌日の午後、二日目の演目が粛々と進む中、「鵜羽」の演者として控えていた忠三郎のもとに、密かに使いがやってきた。
「太閤殿下の仰せにてござる。時刻、すでに暮れ近く、帝の御前にてのご奏は控えるべしと。中止、との御沙汰にてござる」
忠三郎は、わずかに眼を伏せた。
「……然様か」
やがて、舞台へと続く廊下に一人立ち、微かに空を見上げた。日は傾き、夕陽が格子越しに射し込んでいた。
町野長門守が、傍に現れた。
「殿。お心残りにござるか」
忠三郎は、しばしの黙考の末、口を開く。
「残りはせぬ。ただ、時の沙汰とはかくも脆きものかとな……わしが望んだのは、あの舞にて、太閤殿下と向き合うことにすぎなんだ。それを……怖れられたというのであれば、むしろ本望であったかもしれぬ」
そう語る目は、どこか寂しげであったが、静謐だった。
もはや舞わずとも、何かを伝え得たという確信が、そこにはあった。
忠三郎は、ふと襖をあけ、遠くにのぼる月を見た。
薄雲にけぶる銀の光が、頬を静かに照らした。
その夜、忠三郎はひとり、伏見の館にて燈を落とし、月明かりのもとに坐していた。
夜の静けさが、腹の痛みをいっそう際立たせる。呻きを漏らすことさえはばかられるような沈黙の中、忠三郎はふぅと息をはいた。
で太閤を討っていれば、世は変わったかもしれない――だがその変わり目に、己が流す血の意味を、誰が正しく覚えていてくれるのか。
薬を飲んだあとの痛みが、腹の奥でじんじんと波を打つ。
それでも、目を閉じれば浮かんでくるのは――猿楽の舞台。
舞いそこねた「鵜羽」の情景。白鷺が水面を切り裂くその一瞬に込められた、己の怒りと、誇りと、孤独。
(太閤を討てば、時代は変わったのか……)
だが、その刃が、果たして「理」に適っているのか。
忠三郎は唇を噛んだ。
信長を失い、滝川家は裂かれ、古里も奪われた。
それでも、天下に理を求め、太閤に従った。
だが――
(もし、太閤が理に背くのであれば……)
それを正すは、誰の務めか。
「わしなのか……本当に、それが、わしの役目なのか」
いや、違う。そうではない。
佐助の言うがごとく、自ら手を下すことはあまりにも短慮だ。
刃が理を越えてしまえば、それはただの恨みでしかなくなる――
忠三郎は、掌を腹にあてた。
じんと、疼く痛み。その芯にあるのは、太閤に刃を向けずにすんだ安堵か、それとも舞えぬ悔しさか。
――もうわかっておる。
あの「鵜羽」は、舞われずとも、すでに飛んだ。
白鷺のごとく、太閤の心を掠め、帝の帳の奥へと舞い降りた。
恐れられたのは、舞ではなく、自らのなかにある「理の声」なのだ。
それを告げる一閃の身振りが、太閤の胸中に何を残したのか――それは、誰にも知りようのないこと。
襖の向こう、風が庭の葉をなでる音がした。
月は雲間を抜け、いよいよ澄んだ光を地に降らせていた。
その光に照らされた庭先に、一羽の白き影が立つのを、忠三郎はふと見た気がした。
それは白鷺か、それとも――幻か。
しばし見つめたのち、忠三郎はそっと襖を閉じ、再び月明かりの座へ戻った。
灯はもう点さず、ただ夜の静けさと、腹に息づく鈍い痛みとが、ともに在った。
と、不意に、襖がしずかに開いた。
「……長門か」
「はい」
町野長門守は、そっと近づき、忠三郎のそばに膝をついた。
手には新しい薬包と、水の入った椀がある。
「薬師殿より、新たに湯あげされたものにございます。少しばかり、眠りも深くなるとか」
「然様か……気が利く」
椀を受け取る手の震えを、長門守は見て見ぬふりをした。
忠三郎は薬を含み、水で流しこみ、ひとつ息をついた。
「たとえ刃を振るわずとも、恐れは伝わるものであろうか」
長門守は何も答えず、ただ静かに頭を垂れた。
「かの者が、わしを恐れたのであれば――それは、舞えぬことの悔しさとは、また異なる報いよ」
長門守の顔に、わずかに安堵の色が射した。
「殿のなされることに、常に『理』がありますように」
忠三郎は、それを受けるように目を伏せ、やがて眠るようにその場に身をゆだねた。
月光が、障子をすかして室内に降る。
その光は、まるで「鵜羽」の白き羽のようであった。
――その夜、伏見の空は静かだった。
ただ、舞わぬ舞の余韻だけが、残された者たちの胸に、長く、深く、染み入っていた。
伏見の冬は、音もなく深まっていった。
昼下がりの空にかかる薄雲が、時折、陽をさえぎり、街の屋根をくすんだ灰に染める。
そんなある日――
「会津様が、太閤殿下の御命を狙っておられる、とな……?」
都の茶屋、橋のたもとの飯屋、御所裏の辻にいたるまで、ささやかれる声は日を追って増し、やがて名のある大名の耳にまで届いた。
「いやはや、猿楽の舞をもって近づき、やがて刃を振るう腹積もりとか……」
「とうに討たれて然るべき御仁。信長公に忠あれど、太閤殿下には一度も膝を屈してはおらぬという」
「しかし、病に伏しておるとも聞くぞ。何ゆえに……」
事の発端は定かではなかった。
が、帝の御前にて舞うはずの「鵜羽」が突如取りやめとなった折の空気が、人々の心に何かを残したことは確かである。
舞われぬ舞の余韻こそが、逆に人々の想像を駆り立てた。
その噂を、忠三郎自身が耳にしたのは、ある寒い冬の朝。
町野長門守が口ごもりながら告げると、忠三郎は薬茶を啜り、苦笑した。
「……世もついに、わしをそう見るか。面白いではないか。では、二心なき旨、世に示してやろう」
その日のうちに、忠三郎は伏見の屋敷を開け払い、家中に触れを出した。
「来たる日、太閤殿下をはじめ、諸侯御大名、かたじけなくも我が屋敷へお招きし、ささやかな酒宴を催す」
これを聞いた町野左近は、思わず声を潜めた。
「殿、まことに……? この時勢に、しかも……太閤殿下を、こちらへ?」
「うむ。大広間を拭い清め、舞台も仮設でよい。囲炉裏を据えて、鹿鍋などこしらえよう。病と噂と、どちらが人の心を動かすか――確かめてみとうなった」
忠三郎の目に、かすかな炎が灯っていた。
決して怒りではない。
ただ、己の身に巣食う「疑い」という影に、己の手で明かりを投げ入れようとする意志の光だった。
そして日は巡り、宴の日。
冬晴れの空が伏見の屋敷を静かに包んでいた。
門前には、諸侯の駕籠がつぎつぎと到着し、羽織に裃の家臣らが整列する。
秀吉と、前田利家、徳川家康らの大名。そして石田三成、前田玄以、増田長盛ら政中枢の者たちが、気配を伺うように顔をそろえた。
庭には火桶が並べられ、囲炉裏には鴨と猪の鍋が香りを立てていた。
忠三郎は、黒漆の杖を携え、重ねの羽織をまとってその中央に現れた。
「本日は、拙者が命を狙っておるという噂ゆえ……皆様には、腹を割って飲んでいただこうと思うてのう」
言い切ると、場には一瞬の沈黙。
が、やがて、それが冗談とわかると、どっと笑いが広がった。
前田利家などは、豪快に笑いながら猪鍋の大椀を平らげていた。
「忠三郎。これでは命を狙うどころか、命を拾わせてもらう宴じゃ!」
加賀山隼人が杯を手に、忠三郎の背後に控えていた。
町野長門守は、慎重な目で諸大名の様子を見ていたが、宴が進むにつれ、その顔も和らいでいった。
やがて、忠三郎は杖を手放し、静かに立ち上がった。
火桶の揺らぎに包まれた座敷に、ひとつの影が浮かび上がる。
「先日、帝の御前にて舞うはずであった『鵜羽』。ささやかながら、今宵ここに、舞わせていただく」
その声は静かで、よく澄んでいた。もう誰かと争う気も、訴える気もないかのように――ただ、届けたい想いだけが、そこにあった。
仮設の舞台には、何の囃子もなかった。
笛も太鼓もなく、ただ風が襖を鳴らし、火桶の炎がかすかに音を立てる。
だが、その沈黙こそが、忠三郎の「場」を整えていた。
忠三郎は、すっと一歩を踏み出す。
重ねの裾がさらりと舞い、膝を折る動きに合わせて、衣擦れの音が冴え渡る。
白鷺が、水面に降り立つ一刹那。
その脚が水を打ち、羽がひととき空を撫で、やがて何もなかったように水面が凪ぐ。
――忠三郎の舞は、まさにそれであった。
柔らかに、しかし鋭く。
憤怒でもなく、哀傷でもなく。その舞には、命尽きる淵に立つ者にしか到達できぬ、透きとおる静けさがあった。
息を呑む空気の中、石田三成が思わず膝を乗り出した。
前田玄以は、まぶたを伏せてその姿を胸に焼きつけようとした。
秀吉でさえ、手の酒椀を持ったまま、動かせなかった。
やがて、舞の終わりに、忠三郎はただ一度だけ、右の袖を大きくひるがえす。
白羽が風を裂くような、その一挙。
――それは、世を斬り、理を正し、なお己の死すべき運命を潔く受け容れる者の、最期の呼吸のようであった。
場に、沈黙が落ちた。
風が止み、火桶の炭が微かに爆ぜた。
「……見事な……」
誰ともなく、ぽつりとつぶやいた声に続き、ざわ、ざわと賞賛の声が湧いた。
「これぞまことの舞」
「忠三郎殿、まさに天与の器なればこそ」
「この眼にしかと焼きつけ申した……」
だがその称賛の波の底に――何か、静かに流れていた。
見事であるがゆえに、あまりにも潔く、あまりにも美しかったがゆえに――
居並ぶ大名たちの心に、一つの認識が、ひとしく芽生えた。
この人は、長くはない。
――誰の胸にも、静かにその言葉が降り積もった。
命を削り、魂を燃やしてこそ成る舞。
もはや、舞い終えた忠三郎の肩は、骨の影が透けて見えるようだった。
その立ち姿は凛然たるものだったが、ひとたび風が吹けば、白露のごとく消えてしまいそうな儚さがあった。
まるで、この世に在ることそのものが、すでに舞の一部であったかのように――。
加賀山隼人が密かに目を伏せた。
町野長門守は、拳を固く握りしめ、胸中にあふれるものを抑え込んでいた。
そして、誰よりもそのことを察していたのは――舞台の真正面で、まばたきひとつせず、忠三郎を凝視していた秀吉であった。
秀吉の瞳は、あくまで静かだった。
征服者の眼ではない。策をもて遊ぶ男の眼でもない。
その奥底に宿っていたのは、遠い昔、戦塵のただなかで一つの理想を見上げた男の、かすかな名残だった。
――あれが、蒲生忠三郎か。
――あれが、理を信じ続けた男の、最後の舞か。
小さく吐いた息は、夜の空気に溶けてゆく。
秀吉の肩にも、年老いた影がかすかに落ちていた。
舞台の灯りが、ひとつ、またひとつと消されていく。
余韻の中にただ、忠三郎が去ってゆく音――衣の擦れる音だけが、いつまでも耳に残っていた。
まだどこかに舞の名残が漂っているように。
そして、夜の風が襖の隙間から入り込み、誰もが口を噤んだまま、その場に残された静けさだけが、すべてを語っていた。
ひとたび深く息を吸えば、熱のこもる躯に、夜の冷気が針のように突き刺さる。だが、それすら遠い出来事のように感じられた。今、この身を満たしているのは、名もなき影。
不安か。決意か。それとも、己が越えてはならぬ一線に触れつつあるという、どす黒い直感か。
明日、帝の御前で「鵜羽」を舞う。
それは奇妙な能だった。物語はおぼろで、定まらず、主題は『白鷺の霊』とされているが、実際には「声なき哀しみ」と「清らかなるものの堕落」が、謎めいた詞章と共に描かれる。
忠三郎は、支度のなかでふと気づいた。
(これは、舞うためのものではない。……討つために作られた舞)
まず、「鵜羽」の詞章は異様に散文的である。
起承転結を持たず、まるで観客の注意を逸らし、焦点を曖昧にするような構成だ。
肝となる「羽搏き」の場面――シテが白羽をゆっくりと広げ、見所に向かって羽ばたく動作――は、一太刀を振るう型と完全に一致していた。
しかも、舞台上の演出には「見得」も「叫び」もなく、観客は知らず知らずのうちに、沈黙と暗闇のなか、シテの動きだけを凝視させられる。
その静けさのなかで、一瞬だけ太刀が振るわれたとしても、誰もそれを舞の一部としか思わない。
さらに奇妙なのは、「鵜羽」には脇役のワキが登場しない。
本来、ワキは神官や僧侶など「理の立場」として舞台に現れ、物語を俯瞰し、現実に引き戻す役目を担う。
だが「鵜羽」はその「目撃者」を排しており、すべてがシテと地謡の声によって閉じられている。
つまり、舞台に立ったシテが「何をしても」、それを止める者がいない構造になっているのだ。
そのことに、忠三郎は背筋が粟立つのを感じた。
(これは……舞台を借りた殺し。もはや「猿楽」という形を借りた密やかな武器)
将軍暗殺以来、誰も舞うことがなかったために、誰一人気づかなかったのだろうか。
作者は大和の猿楽師・世阿弥。将軍・義教に疎まれた世阿弥は、次々に要職を奪われ、父にも劣らぬと称された嫡男・観世元雅を暗殺され、さらには無実の罪により佐渡へと流された。
「鵜羽」は流刑先の佐渡で書かれたものだ。そして将軍暗殺のその日、「鵜羽」のシテ(主役)を務めたのは将軍お抱えの猿楽師であった世阿弥の甥・音阿弥。
袖を振り上げるたびに、太刀の所在が観客の意識から外れてゆく構成。そして、能舞台特有の構造――舞台と見所を遮るものはなく、太刀を抜いても見えにくい薄明の空間。
(すべてが、最初から仕組まれていたとしたら……)
いや、証はない。ただ、猿楽とは――
本来、怨霊を鎮め、魂を弔い、為政者の安寧を祈る遊芸であったはず。
だが、その形式を借り、逆に為政者を断罪する場に変えたとすれば――その者こそ、真に恐るべき謀の者ではないか。
世阿弥は言う、「花は常ならむ」と。
若さも、力も、栄華も、いずれは失われる。だが、花の心を知る者のみが、時を越えて舞い続ける。
忠三郎は、ふと手を見下ろす。
その掌が、熱に震えているのか、それとも決意に震えているのか、自分でもわからなかった。
己は、和歌を愛で、先祖伝来の地と、そこに住む民を第一とするを家に生まれた。だが、今やその手に宿るのは、裁きの太刀。
障子を透かして、月が仄白く照らす。
その光のなかで、揺れていたのは忠三郎の影――
否、白羽をまとい、仇を討たんとする亡霊の影かもしれなかった。
遠く、能管の音が聞こえる。
それは風のように夜をわたり、舞台の幕なき時を告げていた。
明日、「鵜羽」が舞われる。
それが、命をもって語る――最後の言葉となるかもしれない。
*
秀吉の指先が、膝上の扇をわずかに揺らした。
その動きに呼応するように、風がまたひと吹き、障子を撫でる。
香の煙がのぼり、金箔の茶器の縁に映る炎の影が、誰かの顔のように揺らめいた。
「……忠三郎が『鵜羽』を選んだ。そうか」
かすれた声。言葉の奥には、得体の知れぬ何かが篭められる。
(あやつは……見透かしておるのか)
己がこの世を手に入れたと思いし矢先から、なぜか、何もかもが指の隙間からこぼれてゆくような感覚――
唐入りに始まり、官兵衛の離反、渡海を拒む秀次、淀の方の懐妊。
その隙間に忍び寄るものの正体に、秀吉自身、未だ言葉を与えられずにいた。
「『鵜羽』か……」
呟きながら、秀吉はひとたび目を閉じた。
かつて、信長は、戦の合間に謡い、舞い、時に敵の前でさえその足取りを崩さなかった。
それに比すれば、自身の猿楽などは真似事にすぎない。だが、猿楽は言葉を用いぬ言葉。姿に託された意志が、誰よりも鋭く為政者の胸を撃つことを、秀吉もまた知っていた。
「『鵜羽』……白き羽を広げて、空へ昇らんとする鳥よ。その白羽が血に染まり、地を這う日を、世阿弥は待ち侘びたのかもしれぬな」
三成が、そっと顔を上げた。
「御意ながら、いかようにも受け取れる詞章にございます。会津殿の心根を信じると申すは容易きことにございませぬが……されど、あの者がこれまで成してきた働き、その誠を思えば、あまりに……」
「誠とな?」
秀吉の声が、不意に茶室を貫いた。
「誠があれば、主君に逆らってもよいと申すか。いや、違う。あやつは、己が誠とやらを、わしの上に置く。故右府様御存命の折より、蒲生忠三郎はわしを侮り、見下しておったわい」
静けさが、音を持って落ちてきたようだった。
「わしはのう…」
しばし沈黙し、秀吉はふと口の端を吊り上げた。
それは笑みというより、かつて敵将を討ったときの、口元のこわばりに似ていた。
「わしは、討たれずにきた。誰よりも先に斬った。そうして、ここまで来た。されど猿楽の名を借り、わしを斬ろうというなら、それもまた、見ものよのう」
三成の背筋が凍った。
その眼差しの底に、秀吉の若き日――
まだ、木綿の直垂を纏い、泥にまみれて槍を構えていたころの、鬼気を宿す顔がちらついていた。
「……では」
三成は低く問う。
「お控えなさいますか。会津殿の猿楽を」
秀吉は、答えなかった。
ただ、ひとつ深く息を吐き、扇をそっと閉じた。
風の音はやんでいた。だが、茶室の空気はなお重いまま。
「……参るとも。見届けてくれよう。『鵜羽』が舞となるか――それとも、刃となるか」
その瞳に、かすかな戦慄が浮かんでいた。
太閤秀吉。その男に、久しく忘れていた“死”の気配が、影のように寄り添い始めていた。
*
翌日の午後、二日目の演目が粛々と進む中、「鵜羽」の演者として控えていた忠三郎のもとに、密かに使いがやってきた。
「太閤殿下の仰せにてござる。時刻、すでに暮れ近く、帝の御前にてのご奏は控えるべしと。中止、との御沙汰にてござる」
忠三郎は、わずかに眼を伏せた。
「……然様か」
やがて、舞台へと続く廊下に一人立ち、微かに空を見上げた。日は傾き、夕陽が格子越しに射し込んでいた。
町野長門守が、傍に現れた。
「殿。お心残りにござるか」
忠三郎は、しばしの黙考の末、口を開く。
「残りはせぬ。ただ、時の沙汰とはかくも脆きものかとな……わしが望んだのは、あの舞にて、太閤殿下と向き合うことにすぎなんだ。それを……怖れられたというのであれば、むしろ本望であったかもしれぬ」
そう語る目は、どこか寂しげであったが、静謐だった。
もはや舞わずとも、何かを伝え得たという確信が、そこにはあった。
忠三郎は、ふと襖をあけ、遠くにのぼる月を見た。
薄雲にけぶる銀の光が、頬を静かに照らした。
その夜、忠三郎はひとり、伏見の館にて燈を落とし、月明かりのもとに坐していた。
夜の静けさが、腹の痛みをいっそう際立たせる。呻きを漏らすことさえはばかられるような沈黙の中、忠三郎はふぅと息をはいた。
で太閤を討っていれば、世は変わったかもしれない――だがその変わり目に、己が流す血の意味を、誰が正しく覚えていてくれるのか。
薬を飲んだあとの痛みが、腹の奥でじんじんと波を打つ。
それでも、目を閉じれば浮かんでくるのは――猿楽の舞台。
舞いそこねた「鵜羽」の情景。白鷺が水面を切り裂くその一瞬に込められた、己の怒りと、誇りと、孤独。
(太閤を討てば、時代は変わったのか……)
だが、その刃が、果たして「理」に適っているのか。
忠三郎は唇を噛んだ。
信長を失い、滝川家は裂かれ、古里も奪われた。
それでも、天下に理を求め、太閤に従った。
だが――
(もし、太閤が理に背くのであれば……)
それを正すは、誰の務めか。
「わしなのか……本当に、それが、わしの役目なのか」
いや、違う。そうではない。
佐助の言うがごとく、自ら手を下すことはあまりにも短慮だ。
刃が理を越えてしまえば、それはただの恨みでしかなくなる――
忠三郎は、掌を腹にあてた。
じんと、疼く痛み。その芯にあるのは、太閤に刃を向けずにすんだ安堵か、それとも舞えぬ悔しさか。
――もうわかっておる。
あの「鵜羽」は、舞われずとも、すでに飛んだ。
白鷺のごとく、太閤の心を掠め、帝の帳の奥へと舞い降りた。
恐れられたのは、舞ではなく、自らのなかにある「理の声」なのだ。
それを告げる一閃の身振りが、太閤の胸中に何を残したのか――それは、誰にも知りようのないこと。
襖の向こう、風が庭の葉をなでる音がした。
月は雲間を抜け、いよいよ澄んだ光を地に降らせていた。
その光に照らされた庭先に、一羽の白き影が立つのを、忠三郎はふと見た気がした。
それは白鷺か、それとも――幻か。
しばし見つめたのち、忠三郎はそっと襖を閉じ、再び月明かりの座へ戻った。
灯はもう点さず、ただ夜の静けさと、腹に息づく鈍い痛みとが、ともに在った。
と、不意に、襖がしずかに開いた。
「……長門か」
「はい」
町野長門守は、そっと近づき、忠三郎のそばに膝をついた。
手には新しい薬包と、水の入った椀がある。
「薬師殿より、新たに湯あげされたものにございます。少しばかり、眠りも深くなるとか」
「然様か……気が利く」
椀を受け取る手の震えを、長門守は見て見ぬふりをした。
忠三郎は薬を含み、水で流しこみ、ひとつ息をついた。
「たとえ刃を振るわずとも、恐れは伝わるものであろうか」
長門守は何も答えず、ただ静かに頭を垂れた。
「かの者が、わしを恐れたのであれば――それは、舞えぬことの悔しさとは、また異なる報いよ」
長門守の顔に、わずかに安堵の色が射した。
「殿のなされることに、常に『理』がありますように」
忠三郎は、それを受けるように目を伏せ、やがて眠るようにその場に身をゆだねた。
月光が、障子をすかして室内に降る。
その光は、まるで「鵜羽」の白き羽のようであった。
――その夜、伏見の空は静かだった。
ただ、舞わぬ舞の余韻だけが、残された者たちの胸に、長く、深く、染み入っていた。
伏見の冬は、音もなく深まっていった。
昼下がりの空にかかる薄雲が、時折、陽をさえぎり、街の屋根をくすんだ灰に染める。
そんなある日――
「会津様が、太閤殿下の御命を狙っておられる、とな……?」
都の茶屋、橋のたもとの飯屋、御所裏の辻にいたるまで、ささやかれる声は日を追って増し、やがて名のある大名の耳にまで届いた。
「いやはや、猿楽の舞をもって近づき、やがて刃を振るう腹積もりとか……」
「とうに討たれて然るべき御仁。信長公に忠あれど、太閤殿下には一度も膝を屈してはおらぬという」
「しかし、病に伏しておるとも聞くぞ。何ゆえに……」
事の発端は定かではなかった。
が、帝の御前にて舞うはずの「鵜羽」が突如取りやめとなった折の空気が、人々の心に何かを残したことは確かである。
舞われぬ舞の余韻こそが、逆に人々の想像を駆り立てた。
その噂を、忠三郎自身が耳にしたのは、ある寒い冬の朝。
町野長門守が口ごもりながら告げると、忠三郎は薬茶を啜り、苦笑した。
「……世もついに、わしをそう見るか。面白いではないか。では、二心なき旨、世に示してやろう」
その日のうちに、忠三郎は伏見の屋敷を開け払い、家中に触れを出した。
「来たる日、太閤殿下をはじめ、諸侯御大名、かたじけなくも我が屋敷へお招きし、ささやかな酒宴を催す」
これを聞いた町野左近は、思わず声を潜めた。
「殿、まことに……? この時勢に、しかも……太閤殿下を、こちらへ?」
「うむ。大広間を拭い清め、舞台も仮設でよい。囲炉裏を据えて、鹿鍋などこしらえよう。病と噂と、どちらが人の心を動かすか――確かめてみとうなった」
忠三郎の目に、かすかな炎が灯っていた。
決して怒りではない。
ただ、己の身に巣食う「疑い」という影に、己の手で明かりを投げ入れようとする意志の光だった。
そして日は巡り、宴の日。
冬晴れの空が伏見の屋敷を静かに包んでいた。
門前には、諸侯の駕籠がつぎつぎと到着し、羽織に裃の家臣らが整列する。
秀吉と、前田利家、徳川家康らの大名。そして石田三成、前田玄以、増田長盛ら政中枢の者たちが、気配を伺うように顔をそろえた。
庭には火桶が並べられ、囲炉裏には鴨と猪の鍋が香りを立てていた。
忠三郎は、黒漆の杖を携え、重ねの羽織をまとってその中央に現れた。
「本日は、拙者が命を狙っておるという噂ゆえ……皆様には、腹を割って飲んでいただこうと思うてのう」
言い切ると、場には一瞬の沈黙。
が、やがて、それが冗談とわかると、どっと笑いが広がった。
前田利家などは、豪快に笑いながら猪鍋の大椀を平らげていた。
「忠三郎。これでは命を狙うどころか、命を拾わせてもらう宴じゃ!」
加賀山隼人が杯を手に、忠三郎の背後に控えていた。
町野長門守は、慎重な目で諸大名の様子を見ていたが、宴が進むにつれ、その顔も和らいでいった。
やがて、忠三郎は杖を手放し、静かに立ち上がった。
火桶の揺らぎに包まれた座敷に、ひとつの影が浮かび上がる。
「先日、帝の御前にて舞うはずであった『鵜羽』。ささやかながら、今宵ここに、舞わせていただく」
その声は静かで、よく澄んでいた。もう誰かと争う気も、訴える気もないかのように――ただ、届けたい想いだけが、そこにあった。
仮設の舞台には、何の囃子もなかった。
笛も太鼓もなく、ただ風が襖を鳴らし、火桶の炎がかすかに音を立てる。
だが、その沈黙こそが、忠三郎の「場」を整えていた。
忠三郎は、すっと一歩を踏み出す。
重ねの裾がさらりと舞い、膝を折る動きに合わせて、衣擦れの音が冴え渡る。
白鷺が、水面に降り立つ一刹那。
その脚が水を打ち、羽がひととき空を撫で、やがて何もなかったように水面が凪ぐ。
――忠三郎の舞は、まさにそれであった。
柔らかに、しかし鋭く。
憤怒でもなく、哀傷でもなく。その舞には、命尽きる淵に立つ者にしか到達できぬ、透きとおる静けさがあった。
息を呑む空気の中、石田三成が思わず膝を乗り出した。
前田玄以は、まぶたを伏せてその姿を胸に焼きつけようとした。
秀吉でさえ、手の酒椀を持ったまま、動かせなかった。
やがて、舞の終わりに、忠三郎はただ一度だけ、右の袖を大きくひるがえす。
白羽が風を裂くような、その一挙。
――それは、世を斬り、理を正し、なお己の死すべき運命を潔く受け容れる者の、最期の呼吸のようであった。
場に、沈黙が落ちた。
風が止み、火桶の炭が微かに爆ぜた。
「……見事な……」
誰ともなく、ぽつりとつぶやいた声に続き、ざわ、ざわと賞賛の声が湧いた。
「これぞまことの舞」
「忠三郎殿、まさに天与の器なればこそ」
「この眼にしかと焼きつけ申した……」
だがその称賛の波の底に――何か、静かに流れていた。
見事であるがゆえに、あまりにも潔く、あまりにも美しかったがゆえに――
居並ぶ大名たちの心に、一つの認識が、ひとしく芽生えた。
この人は、長くはない。
――誰の胸にも、静かにその言葉が降り積もった。
命を削り、魂を燃やしてこそ成る舞。
もはや、舞い終えた忠三郎の肩は、骨の影が透けて見えるようだった。
その立ち姿は凛然たるものだったが、ひとたび風が吹けば、白露のごとく消えてしまいそうな儚さがあった。
まるで、この世に在ることそのものが、すでに舞の一部であったかのように――。
加賀山隼人が密かに目を伏せた。
町野長門守は、拳を固く握りしめ、胸中にあふれるものを抑え込んでいた。
そして、誰よりもそのことを察していたのは――舞台の真正面で、まばたきひとつせず、忠三郎を凝視していた秀吉であった。
秀吉の瞳は、あくまで静かだった。
征服者の眼ではない。策をもて遊ぶ男の眼でもない。
その奥底に宿っていたのは、遠い昔、戦塵のただなかで一つの理想を見上げた男の、かすかな名残だった。
――あれが、蒲生忠三郎か。
――あれが、理を信じ続けた男の、最後の舞か。
小さく吐いた息は、夜の空気に溶けてゆく。
秀吉の肩にも、年老いた影がかすかに落ちていた。
舞台の灯りが、ひとつ、またひとつと消されていく。
余韻の中にただ、忠三郎が去ってゆく音――衣の擦れる音だけが、いつまでも耳に残っていた。
まだどこかに舞の名残が漂っているように。
そして、夜の風が襖の隙間から入り込み、誰もが口を噤んだまま、その場に残された静けさだけが、すべてを語っていた。
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